スポーツのあなぐら

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オリックスの若手野手育成に必要な「我慢」と「勇気」

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「5年後」じゃなく「今年」の評価が高いオリックス

ここ最近
オリックスに対する巷の期待値が急上昇しているようだ。
そのせいか
今後1、2年の期待値を高く見積もる記事はべた褒めされ
今年の期待値を低く見積もる記事や動画は
かなりけなされている。
低く見積もっている記事や動画を見ても
別に5年先、10年先の期待値を低く見てるわけではないのだが
「目先の勝利にとらわれない将来を見据えた高校生ドラフト」を
絶賛している人ほど激怒している。

それはともかく
オリックスで高卒野手がなかなか育たない理由は何だろう。
大体においては
「中途半端な即戦力ばかりで高校生を獲らずなかなか使わないから」が
大きな理由とされていて、
最近ドラフトで高卒偏重指名をしてきた
オリックスが今年高評価されている一因もここにある。
でもどうなんだろう。
オリックス
これまでに高校生野手をそこそこ獲ってきたのは
今までにも何度か説明してきたとおりだが、
この高卒選手たちは本当に抜擢されてこなかったのか。

 

〇すぎる若手起用

先に結論から言うと、
オリックスの若手起用はむしろかなり早い
まずは
主な成功選手たちを見てみよう。

Bs若手抜擢1

高卒の坂口、T-岡田
いずれも二軍平均を大きく上回る成績を残しての
一軍起用だった。
大卒の吉田正は打席数が非常に少ないがこちらも好成績。
一軍ではいまいちバッティングが伸びなかった安達でも
二軍平均より.072高い数字になっている。
このほかには
二軍出場がないまま
1年目から一軍固定された大引啓次のような例もある。

では他の高卒選手はどうか。

Bs若手抜擢2

二軍平均を超えているのは伊藤と佐野の2人だけ。
しかも2人とも打席数はかなり少ない。
ここでは一軍起用のタイミングを調べていないので
二軍での成績が一軍でいったん起用された後の可能性もあるが、
二軍で一年間好結果を出した選手があまりいないのだ。

これを
オリックスが参考にしているというホークスと比べてみよう。
H主要成功選手

大卒、高卒に限らず
大成するのは
二軍でかなりの好成績を残してから
一軍経験を積んだ選手が多い。
やや例外になっているのは
川崎宗則が移籍したため
明石健志に次ぐ二番手ショートとして一軍に定着した今宮と
二軍2年目の2016年に調子を落としたものの
2017年開幕から一軍で使われた上林。
今宮は一軍でのOPS.700超が一軍6年目の2017年から。
上林は2018年まで結果を出したが
怪我の影響もあってか翌年から低迷している。
また牧原は2014年時点で二軍レベルをクリアし
翌年からそれなりに一軍経験も積ませていた*1のだが
さあいよいよとなりそうだった
2017年から二軍でも成績が落ち込んでしまった。
それでも
初めて戦力になった2018年は一軍で結果を出したが
ここ2年間は状態がいまいちだ。

というように
二軍で結果を出した若手を使ったとしても
一軍で何年も戦力になるとは限らない。
しかし
オリックスでもソフトバンクでも
まだ二軍でも結果を出していない若手に比べれば
二軍でしっかり結果を残した若手のほうが
成功する確率がかなり高い
のは間違いない。
逆に二軍でも実績を残せないまま使われた選手は
ことごとく伸び悩むか、
いったん好成績を残しても後が続かないのだ。
たとえば後藤は2014年に打撃成績が向上したが
これ以降のOPS.600以上は2017年と19年*2の2回だけ。
若月にいたっては
一軍5年目の2020年が初めての.600超えだった。
2019年に一軍で悪くなかった宗も
昨年はかなり苦戦した。
もちろん身体能力や守備力など
光るものがあるから一軍起用されたのだろうが、
バッティングに関しては
早々に使われてもなかなか成長が伴わず
守備などでの貢献に頼る結果となっている。

そして
今まで起用されてきたオリックスの高卒選手は
ホークスの高卒選手と比べて抜擢の年齢も早い。
時間をかけて二軍で結果を出してからの起用が多いホークスは
即戦力だった大卒2人と1歳程度の違いしかないのに対し、
二軍で結果を出しきらなくても起用するオリックス
野手転向から日が浅かった佐野以外
21、2歳まででの起用がやけに多いのだ。
そうやって早くに起用されても
伸び悩んだまま使われ続けているうちに
故障を抱えるなどして
本来ならこれから全盛期という年齢で
新しい未熟な若手や「中途半端な即戦力」に代えられ、
見飽きたファンからは「聖域」認定される*3のでは
シャレになってない。
これを見ると
二軍で1年結果を出すだけの打力と体力を身につけるまで待ってから
一軍の打席数を増やしたらどうなってたんだろう
とどうしても思ってしまう。

 

オリックスに必要なのは「我慢」と「勇気」

ここで問題になるのが
現在巷で期待されている若手たち。

Bs若手

二軍で結果を残している選手がほとんどいない。
唯一二軍平均を超えたのは太田だが
2年目は怪我による離脱もあって平均ギリギリ程度だったので
今年ももう少し様子を見たいところだ。
その他の選手は
大卒の大下も含めて
二軍卒業レベルに到達したとは言えない。
まだまだ若く故障明けの選手もいるのに
何を焦って一軍で伸び悩ませる必要があるのだろうか。
一方で不運な面もある。
昨年一軍では結果を出せなかったものの
西浦は二軍だとHR以外の長打と四球の多さで.758を記録。
抜擢してもいいタイミングがやってきつつあったのだが
病気で長期戦線離脱を余儀なくされた。
こうした点も含めて、
なんだか今のオリックス
かつて同じ大阪に本拠地を置いていたチームそっくりになっている。

 

以上のことから考えると、
オリックスの若手育成に必要なのは「我慢」と「勇気」である。
「ロマンがある」「守備・走塁が良い」「少し調子がいい」
といった理由で
若手を一軍で「我慢」して起用し続ける「勇気」ではない。
起用するべき打力を身につけるまで
一軍抜擢を「我慢」する「勇気」
だ。

そしてこの若手育成のために必要なのは補強である。
いくら抜擢を我慢すると言っても
二軍平均レベルに達してない若手がチーム内No.1の選手になったら
未熟であってもその若手を使い続けるしかない

だがそうした起用で若手が一気に成長する確率は低く*4
たいていの若手は停滞したまま何年も時が過ぎていってしまう。
これでは
「中途半端な即戦力を獲って使い続けるオリックス」と
選手の出自以外に何の違いもない。
そんな状況を防ぐのは
FA、トレードや外国人での補強、
ドラフトでの即戦力の補強だ。
それもままならないなら
あとはたとえあと数年暗黒期が続いても
現在の一軍戦力で我慢して
二軍以下の若手が成長するのを待つしかない。
巷で推奨されている未熟な若手の抜擢は、
若手の育成のためには
むしろ一番やってはいけないことなのである。
過去のオリックスに学び
本当に「5年先、10年先の未来を見据え」させたいのならね。

*1:2015年43試合51打席、16年41試合97打席。二軍ではショート中心の育成

*2:.637、.635

*3:ファン感情に関しては監督やチーム全体に対しての要素も大きいので、シーズン前かつ中嶋監督へのヘイトがまだたまっていない現時点ではこうした感情が昨年序盤までよりも若干抑えられている

*4:0%ではないので、まれにうまく成長した例が出ると全チームに対して「右へ倣えしろ」と世間が圧力をかけてくる