スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

エクスパンション新規球団のチーム編成

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プロ野球関係者による「16球団構想」の話が出てから
はや1年。
ただでさえ実現まで時間のかかる構想なうえに
現在のこの状況では
一歩先へ進んだ話が出ないのは仕方ない一方で、
プロ野球ファンにとっては夢のある話なのも事実。
現状での実現性は置いておいて
そうした夢を語る話題や企画がときおり出てくるのも
むしろこの先の見えない社会情勢だからこそなのかもしれない。

今回は過去の新チームが
どんなチーム編成をしたのか見ていきたい。
といってもNPBだと
近鉄オリックスの合併後に
両チームの選手を軸として作られた東北楽天があるぐらいで
球団増としての最新の新規加入が高橋ユニオンズでは
あまりにも昔すぎる。
なのでここでは
MLBの最新の新規チームである
アリゾナダイヤモンドバックス
タンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)を見ることにしよう。

 

 

ダイヤモンドバックスデビルレイズの1年目

まずは1998年のダイヤモンドバックス

ARI1998F

ARI1998P

青く塗られている選手は
エクスパンションドラフトで獲得した選手、
薄い水色で塗っている選手は
エクスパンションドラフトで獲得した選手とのトレードで
チームに加入した選手である。
主力合計30人中野手11人投手6人が
エクスパンションドラフトに関連した選手になる。

ARI1999F

ARI1999P

ダイヤモンドバックスの場合は
このあとすぐに大補強を敢行。
1年目に主力だった選手もかなり入れ替えられた。
その甲斐あってかチームは参入2年目で地区優勝、
4年目の2001年にはワールドシリーズ制覇も成し遂げる。

一方のデビルレイズ

TBD1998F

TBD1998P

こちらはさらに多く
エクスパンションドラフトに関連した選手は
29人中19人におよんだ。
20代前半の若い選手が何人かいるが、
逆に40歳のボッグスなどベテランもちらほら見受けられる。

デビルレイズが初めて勝ち越したのは
チーム名がレイズに変わった11年目の2008年。
プレーオフも勝ち進みワールドシリーズへ進んだ。

TBR2008F

TBR2008P

レイズというと当時も今も
若手育成に特化した印象を持っている人が多いようだけども、
いわゆる「生え抜き」は多くない。
主力と若手有望株のトレードも多いMLBだからなおさらだが
レイズの場合は若手だけじゃなく
他チームでくすぶっている中堅選手を見出すのも得意としており
低年俸でのチーム強化が可能になっている。

 

チーム作りにおける「不正解」

今回紹介した両チームは
大補強を敢行してすぐに強くなったダイヤモンドバックス
あまり金をかけず結果的に長い時間をかけて強くなったレイズの
両極端な構図になった。
だがどちらも「チームが強くなった」事実に変わりはなく、
「チームを作る」「強化する」方法において
「正攻法」「邪道」といったものは存在しない。
ただ一つ「不正解」と言えるのは、
誕生直後*1楽天
つい最近なら横浜DeNAのドラフトに対して
自分の趣味や信仰を唯一絶対の「正攻法」として押しつけ
それ以外の戦略を「邪道」と切り捨てる
ことだけである。

 

エクスパンションは「長い目で見る」はずだが

さてMLBのエクスパンションについて
日本ではあまり知られていないと思われる点がある。
ここまででもヒントはいくつか出しているのだが
何だかおわかりだろうか。

答えはこちらなどで確認できる。
ウェーバー順は最後になっているが
ダイヤモンドバックスデビルレイズとも
ドラフトにはMLB参入2年前の1996年から参加しているのだ。
結果として1年目から主力になっていた指名選手はいなかったが、
両チームのマイナーリーグ
96年から段階的に増えている。
つまり彼らに対しては
最低でも2年間*2の育成期間が設けられていたことになるのだ。
またドラフト時に指名されたツインズともめて
FA後ダイヤモンドバックスとと契約済みだったリーは
A+のハイデザート・マーベリックスでプレーしていたが、
ダイヤモンドバックス
97年時点でAAAのチームをまだ傘下にしていなかった。
そのためAAAでは
ブリュワーズ傘下のツーソン・トロスに
預けられる形になっていたと思われる。

2004年の楽天の場合、
形の上では急遽12チーム目を作ることになったわけだから
新規球団といっても
参入前年からのドラフト参加だったのは仕方ない。
だが球団数を純粋に増やすとなれば
この2チームと同様に
何らかの準備期間を設けないと
二軍・三軍といった
各リーグをこなすために必要な選手数を
そろえることもできないだろう。
その準備期間中は
既に入団した選手が一軍出場できないため
何らかの対策を考えねばならないだろうが、
「16球団構想」は
「『既存球団のやる気さえあれば』
ナベツネさえいなくなれば』すぐ実現可能」
なものではないのだ。

 

「16球団構想」賛成派は「16球団」を望んでいない!?

ダイヤモンドバックスデビルレイズ
1年目は主力の半数以上が
エクスパンションドラフトで獲得した選手か
獲得した選手を使ったトレードで獲った選手で占められている。
メジャーリーグでスタメン固定されていた選手は多くないが
二番手として主力になっている選手もいれば
若手有望株も少なくない。
言い換えると
各チームがそれだけの選手を
新球団のために供出していることになる。

こう書くと
ゴールデンイーグルスやユニオンズなどが誕生した際に
主力選手を供出しなかった既存チームを批判できるため
大喜びする人が多いと思うが、
「16球団構想」で同じことをさせようとすると
とんでもない事態になる。
何せ今まで12チームだったところに
4チームも増やすというのだ。
既存の各チームが供出しなければならない選手数は
どう少なく見積もっても最低5、6人。
しかも
トレードやFA移籍が非常に少ないNPBの事情や
楽天誕生の際の批判などを総合すると、
「16球団構想」賛成派は
MLBの両チームが獲得したよりもはるかに格上の選手、
それこそ岩隈久志磯部公一クラスの選手を
大量に供出しろと主張すると思われる。
こうなると
エクスパンションドラフトによる選手の大量流出で
既存のチームが崩壊する危険が生じるのである。

以前オリックスの宮内オーナーが
「16球団よりもファームのマイナーリーグ化が先」と述べた理由は
先ほど挙げた新規球団のファーム組織設立問題に加えて
エクスパンションドラフトにもあるのだろう。
既存の選手枠そのものを拡充し、
若手の輩出に限らず
そこそこの力を持った中堅・ベテラン選手を確保しておくことで
エクスパンションドラフトによる戦力の大幅低下を防ごう
という狙いだ。

戦力が崩壊し人気も低下したチームの経営が
最終的にたちいかなくなった時、
身売りで済むならまだましなほうだ。
新たにチームを買い取る企業や団体が現われなければ
最悪の場合チームの消滅もありうる。
何とか1、2チーム減る程度で済むのか
4チームが一気に減って元の12球団に戻るのか
もっと減って10チーム以下になるのかはわからないが、
いずれにせよ
新球団誕生によって既存球団が潰れるのでは
それは「16球団構想」ではありえない


当然
実際に「16球団構想」を推進している人たち
そんなことは百も承知で、
既存球団が極端な不利益を被り
せっかく増やした球団数が減ることのないように
調整しようとするだろう。
だが外部の「16球団」賛成派は
そういった点にあまりにも無関心。
それどころか
既得権益で甘い汁を吸っていたのだから潰れて当然」とすら
思っているふしがある。
また「新球団のために既存球団が潰れるのは努力してないだけ」
というこの人たちの主張は
彼らが何かにつけて批判対象にしている
「『巨人さえよければいい』読売やナベツネの考え方」と
全く同じ
と言える。
たしかに
「経営・年俸等の格差が極度に激しい独立リーグCPBLを取り込めば
16球団以上に増やすのは簡単」だの
「どれだけ年俸が安くても収入が激減しても
選手は指名さえされればプロになるはずだ」
といった意識が透けて見える彼らの主張も
「未来の野球選手のため」「野球人口を増やすため」と言いながら
たかが選手が」が本音だとすると
全て納得がいくわけだが。

*1:特に2004、05年ごろ

*2:MLBのドラフトは6月なので指名した年からリーグ戦が可能