スポーツのあなぐら

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オリックス暗黒期前のドラフトを振り返る

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今回はオリックス
90年代後半までは常時Aクラスの強豪だったが、
活躍する選手は伝統的に社会人出身が多いとされ、
特にBクラスが続くようになってからは
「高校生を獲らないから弱い」と
20年以上批判され続けているチームだ。
実はこのチーム、
「いつからいつまでが暗黒期なのか」の判定が難しい。
一般的には監督が代わって最下位に転落した2002年からと考えるだろうが、
2000年と2001年も4位に終わっているし、
1998年は勝率5割での同率3位。
じゃあいつまでとなると、
Aクラスが2008年と14年の2回しかないのだから今も暗黒期と言えるが、
その2回はいずれも2位、
特に2014年は高い勝率でほぼ最終戦まで優勝を争っている。
だから暗黒期からは一度脱出した、ともとれなくはない。

そんなこのチームの場合は、
今まで取り上げた3チームとは異なるドラフト戦略をとってきた。
普段なら2002年の10年前からなのだが、
今回は阪急からオリックスに代わった1988年から見ておこう。

くじ運の良かった上位指名

阪急ブレーブス時代は1位抽選を外し続けていたこのチームが、
オリックスになってからは
くじ運がかなり良くなった。

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  高投 高野 大投 大野 社投 社野
1988         1 1
1989         1 1
1990 1   1      
1991   1   1    
1992     1   1  
1993 1         1
1994 1   1      
1995 1 1        
1996     1     1
1997 1       1  
1998         1  
1999       1 1  
2000         1  
2001     1 1    
2002     1   1  
2003 1       1  
2004         2  

全体的には上位では大卒・社会人が多いか。
逆指名時代は2位を逆指名枠にあてながら、
1位では高校生を狙うことが多かった。
それゆえ、逆指名以降に高校生の数が増えている。
赤字は入団拒否。

高校生指名が多いオリックス

上位で高校生があまりおらず、
95・96年に連覇したがその後暗黒期に突入。
さぞかし高校生が少なかったのだろう。
と、思われていそうなオリックスのドラフト。

  高投 高野 大投 大野 社投 社野 高投 高野 大投 大野 社投 社野  
1988 3 1     1 1 6   1       2 3
1989 1 2 1 1   1 6 1 1       1 3
1990 1 1 1   2   5             0
1991 1 3   1 2   7             0
1992 1 2 1   1   5              
1993 1 2       1 4              
1994 1 1 1   1   4              
1995 2 3         5              
1996     2 1   2 5              
1997 1   1   3 1 6              
1998     1 1 2   4              
1999   1   1 2   4              
2000   2 2   1 2 7              
2001 1   2 3 2 6 14              
2002 1 1 1 1 2 1 7              
2003 1 1 2 2 1   7              
2004       1 3   4              
88~95 11 15 4 2 7 3 42              
96~01 2 3 8 6 10 11 40              
02~04 2 2 3 4 6 1 18              

現実は、しばらく高校生偏重に近いドラフトが続いていた。
88~95年は本指名42人中26人(61.9%)が高校生である。
特に逆指名導入の93年から3年間は顕著。
大社偏重になるのは96年以降の話だ。

あまりに偉大すぎた活躍選手

とはいえ、96年に大社偏重になってから急激に弱くなったのだから、
弱くなったのは大卒と社会人を獲ったからだ、
高校生を獲らないからだ。
そんな声が聞こえてきそうである。
これらの指名から活躍した選手を見てみよう。
まず投手から。

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例によって、高校生があまり戦力になっていない。
高橋と平井は優勝に貢献したがその後すぐ低迷し、
長く戦力になるのは9・10年目になってから。
戎も戦力になったのが10年目の2000年から2年間だ。
阪急時代も高卒投手の指名自体は多く、
82年から87年までは毎年指名し、
本指名だけで10人を獲得している。
その中からオリックスで長く活躍したのは星野伸之だけだった。
96年以降は4人しか入団してないので、いないのは仕方ない。
また、先発がまるで出てこないのは横浜と似たところがある。

そして野手。

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全体的に実働の短い選手が多く、
高卒に限らず育成がうまくいっていなかった様子が見てとれる。
そんな中、珍しく高卒で主力に成長したのがイチローだった。
ただ、イチローという50年・100年に1人の逸材が出現したことで、
この選手がチームを離れた時のマイナスがあまりにも大きくなり、
代替要員を獲得することもほぼ不可能になっていた。
なにせ50年・100年に1人しか出ないのだから。
せめてそれまでに野手の層が厚くなっていれば良かったのだが、
結果としてはむしろ全体的に若手中堅が伸び悩んでいるところで
アメリカへ行く形になってしまった。

余談だが、
イチローは1・2年目にここの基準での戦力にはなっていないものの、
1年目が40試合99打席(.581)、2年目は43試合67打席(.478)を与えられている。
特に2年目は外野の主力に
藤井康雄(.840)、高橋(.730)、タイゲイニー(.976)が
揃って好結果を残していた中で起用されていたわけで、
高卒1・2年目にしては干されていたどころか
優先的に抜擢された部類に入っている。

むしろ96~04年が異質なオリックスドラフト

以前書いたように、
日本一になった1996年の時点で
オリックスの主力野手陣は29歳未満がイチロー、田口、中嶋聡しかいなかった。
そして95年までの指名から想像できることだが、
この時点で二軍にいるのはまだ一軍経験を積ませるにも早い高卒選手ばかり
と考えられる。
96年以降に大社偏重ドラフトに転じたのは、
2、3年以内に世代交代を迫られる一軍の年齢層と、
未熟すぎる高卒選手の育成時間の確保とを
考慮したゆえの選択だったと考えられる。
野手の指名数が2000年以降に急増しているのも、
後者で説明がつく*1

そして、これまでイチローは「数少ない高卒指名から花開いた選手」
という印象を植え付けられていたが、
ここで見たように、現実のオリックスはしばらく高卒重視だった。
世代交代に即戦力ドラフトをしなければならなかった理由は、
たくさん獲った高卒選手がイチローしか育たなかったから
に他ならないのだ。
また言い換えれば、オリックスのドラフトに対して
現実とは違う嘘のイメージを植え付けた人間がいるということでもある。

最近のオリックス
やはり高卒を獲っていないから強くなれないのだろうか。
そう思っている人は今も多数見かけるが、間違いだ。

  高投 高野 大投 大野 社投 社野 高投 高野 大投 大野 社投 社野  
2005   2 1   3 1 7             0
2006 3 1   1 1   6             0
2007 1 2 1 1     5         1   1
2008 2   1 1 1   5             0
2009 1   1   3   5             0
2010 1 2       2 5             0
2011   1     2 5 8   2         2
2012   1 2 1 2   6           2 2
2013   4     4   8           1 1
2014 3 1 1   2 2 9             0
2015 2     2 4 2 10     1     1 2
2016 2 2 2   2 1 9 1   1 2   1 5
2017 1 2     2 3 8 1 3         4
2018   2   2 3   7     1       1

オリックスは、
いわゆるバランス型から投手偏重、野手偏重など、
ありとあらゆるドラフトの手法を試してきたように思う。
その中には2006~08年の中村GM時代のように、
分離ではあるが高校生重視の指名をした時期もある。
近年は大量指名の時代といったところか。
そろそろ数年に一度の優勝争いの時期でもある。
外野と投手の有望株に高卒が何人かいるので、
優勝争いになった時は、
ドラフト指名戦略の中だと
高卒選手と吉田正尚だけがクローズアップされる可能性は高い。
ただし、暗黒期は高卒を獲っていれば防げるものではないし、
たとえ獲った後に無理やり抜擢してもダメなときはダメだ。
どのチームのファンにも言えることだが、
暗黒期が来ると「高校生が少ないからだ」と安易に考えてはいけないし、
そう主張する評論家の声にも惑わされないようにしよう。

*1:つまり、育成の最終結果が出始める時期だ