スポーツのあなぐら

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2014・2019年のドラフトは5年後・10年後の2024年に結びついたのか

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2019年の各チーム寸評全体総評

「ドラフトは10年先のチームを見ろ」の「定説」は正しいか

「ドラフトは今現在じゃなく10年先のチームを見ろ」。
これはドラフト評論家だけではなく
プロのスカウトも口にする言葉である。
また最近は
ドラフト評論家、元スカウトなどによる
ドラフト採点への批判として
このような書き込みを非常に多く見かけるようになったが、
「5年先、10年先じゃないとわからない」と言いながら
5年後、10年後の結果の検討を
自分では行わないし、
そもそも
自分の贔屓チームに高得点がつけられてる採点や
逆にフロントに激怒している際の
自分と同じ低評価がつけられている採点に対しては
このような批判は行われない。

ところで
そもそもドラフトの本義は
チームを強化し順位を上げることであり、
ドラフトによるアマチュア選手獲得と育成は
チームを強化するための数ある手段の一つ
にすぎない。
なのに
ドラフト評論・採点における「ドラフトの成果」は
「大成功の選手を1人でも輩出すること」しか見られず、
チームの成績や
大物選手を輩出すること以外でチーム成績に結びつく成果は
すべて排除されることがほとんどである。

それでは
5年前・10年前のドラフトは
ちょうど5年後・10年後の将来のチームに
どのような結果をもたらしたのだろうか。
今回は
2024年から5年前・10年前のドラフトにさかのぼり
指名選手の2024年の成績とチームの順位を
見ていこう。

 

「10年先を見たドラフト」の5年後・10年後

5年後戦力になっていた高卒選手は

ドラフトにおいて
「5年後・10年後を見据えろ」と言う場合、
大学生だと5年後・10年後は27歳と32歳。
社会人は
大卒2年目でも5年後ならまだ29歳、
高卒3年目では10年後でも31歳と
まだまだ働き盛りな年齢のはずなのだが、
ドラフト採点ではよく
大学生・社会人中心の指名は
「来年のことだけを考えた指名」と非難され、
高校生中心の指名をしたときだけ
「3~5年後の将来を見た指名」と言われる

ならちょうど5年後の2024年には
どのくらいの高卒選手が
どの程度戦力になっていたのだろうか。

5年高卒選手

2019年の高卒勢は
既に何年も一軍で使われている選手が多い。
投手は極端な投高打低の恩恵を受けている部分も
あるにはあるだろうが、
特に佐々木と宮城は
そうした点も関係ないレベルの活躍ぶりを見せている。
チームの平均順位も3.2と悪くない。
一方の野手。
打撃成績がいまいち良くないのはともかく
平均順位が5.0と異常な低さになっている。
しかも
実働1~3年目にリーグ三連覇を経験した紅林や
実働1年目に優勝した長岡が
プロ入り5年目の今年は5位に終わる
なんとも不可思議な結果だった。
結局のところ
高卒選手を早くに使い続けても
良い意味でも悪い意味でも
チーム成績と比例することはないという
当たり前に見えて
当たり前として語られることがない結論しか出てこない。
今年のライオンズに対する
補強ポイントドラフト採点記事を見てもわかるように、
「高卒野手を指名して使えば暗黒期は脱する(順位が大きく上がる)」
という信仰は今も非常に根強いのだ。

 

10年先のチームに貢献した選手は誰か

もう一つの「10年先」では
どの程度の選手が戦力になっていたか。
こちらは出自関係なく見てみよう。

10年投手

高卒勢はリリーフで活躍した選手が多く
大卒勢は数が少ないかわりに先発投手が2人いる。
ただ12年と13年組の質・量が充実していたので
この2年間に比べると物足りない印象が出てしまう。
藤井、有原がホークス、
山崎福也がファイターズと
今年より上位のチームへ移籍した選手が多いため
平均順位は高い。

10年野手

野手は
岡本、栗原が主力へ成長して年齢的にもちょうど全盛期。
今年優勝もしたので平均順位が高い。
一方
同じく主力に成長した中村と外崎は
調子がいまいちな年が多くなってきており、
この点は高卒勢と大卒勢で明暗が分かれている。
30代中盤の今年
久々に好調を維持した西野の例もあるのが
また面白いところだが。

 

パリーグチーム別

1位 福岡ソフトバンクホークス

H

10年前は徹底した高校生指名を行ったホークス。
現在松本と栗原が主力として活躍しているが
他は笠谷以外一軍戦力になった選手はおらず
成果が両極端なドラフトだった。
2019年は
育成に危機感を持った野手重視の指名。
その中で2人獲得した大学生投手が
どちらも主力になるうれしい展開となった。
野手では柳町が主力に成長し
海野は甲斐の後継候補一番手。
また二軍では
今年外野で起用された石塚が好調で
栗原というよりは近藤健介の後継候補に
名乗りを上げつつある。

 

2位 北海道日本ハムファイターズ

F

5年前の2019年から続いた5位以下を
今年久々に脱したファイターズだが
その5年前のドラフトの成果は
河野以外いまいち。
投手が21、2歳の素材型、
野手が守備走塁型中心だったとはいえ
今年は厳しい結果になっている。
鈴木の調子が再び上向けばもう少し良くなるのだが。
逆に高校生偏重指名だった10年前も
早くに一軍で使われた清水、石川が
ここ数年苦戦続きで
他球団へ移籍した高濱、太田もあまり良くない。
有原がポスティングを経て今他球団なので
さらにつらい結果だったが、
淺間が終盤復活してCS争いのチームへ貢献したのが救い。

 

3位 千葉ロッテマリーンズ

M

2014年は
中村、岩下と他5人との結果がはっきりと分かれた。
ここ2年不調が続く中村は
例年通りならこの後2年好調になるはずだが
年齢的にも今度はどうなるか。
この時期のマリーンズは
1位候補とされる選手を2位で獲得するも
育成できないケースが11、12年、この14年と続いていた。
2019年のほうは
現状かなりの当たり年。
4球団競合の佐々木は
能力に身体の耐久力が追いついてないものの
出られるときはなかなかの活躍で、
佐藤、高部、横山も主力に成長してきた。
こうして並べてみると
どちらも高卒投手と大卒野手が当たり、
逆に大卒投手を育成しきれない状況になっている。

 

4位 東北楽天ゴールデンイーグルス

E

3年連続で高校生投手の競合を制した2014年は
4位以下で
スラッガーと即戦力投手を狙った指名をしたものの
うまくいかず、
安樂と小野も時間がかかった後にリリーフで台頭と
ドラフト時の目算からは大きくずれた結果になった。
逆に地元高校生の抽選を外した2019年は
一転して上位2人を野手で固め
投手は素質に重点を置いたドラフト。
小深田は
リーグ平均程度の結果を残す年が続いていたが
今年は大きく成績を下げた。
黒川と武藤は
本人の調子と一軍の空きとがかみ合わず、
投手陣は
マチュア時代に実績のあった瀧中以外が
一軍戦力に成長できていない。

 

5位 オリックスバファローズ

Bs

今年はリーグ四連覇を逃したオリックス
度重なる主力の海外移籍に加えて
長年先発ローテの一角を担ってきた山崎が
FA移籍したのも大きかったが、
ここ2年成績を下げ続けている宗や
昨年初めてリーグ平均を超えた紅林の成績が
下降したのも痛く、
宮城の頑張りや西野の復活では補いきれなかった。
言い換えれば
この2年のドラフトは
それだけ多くの主力を輩出した成功ドラフトであり、
佐野、小田もベンチ要員として戦力になっているが
長打力の育成がいまいち軌道に乗らないのはネックか。
齋藤は本格的な活躍は3球団目のドラゴンズから。
今期待がかけられている佐藤一は
来年から再来年にかけてローテ入りできると
東晃平とほぼ同じ速度での成長になる。

 

6位 埼玉西武ライオンズ

L

2014年と19年のライオンズのドラフトは
断トツ最下位に沈んだ今年を象徴するような内容。
長年活躍してきた高橋と外崎は
今年かなり調子を落とし、
柘植と岸はなかなか打撃成績が向上しない。
この2年で指名された投手は
一見大社偏重に思えるが、
宮川以外の大社投手は
高卒1年目、3年目と大学生という
若さと素材にこだわった指名だった。
こうした投手の育成もうまくいってないところが
西武のもう一つ辛い点である。

 

 

セリーグチーム別

1位 読売ジャイアンツ

G

4年目から本格的に使われ始めた岡本が
主砲として活躍し続けている2014年のジャイアンツ。
戸根もそれなりに長く当たり年に近いのだが
3年目以降は四球に苦しんでおり
高木ともども短命の印象になってしまうのが瑕。
奥川、宮川の抽選を外した後
2年連続で高校生偏重指名となった2019年は
昨年よりもスタミナを増した井上が本格的に開花。
このブログでの基準は満たさなかったが
堀田も17試合51.1イニングを投げ
本格化に近づいてきている。
反面こちらは野手が苦戦しており、
前年指名の増田陸、松井義弥、山下航汰に続いて
菊田も期待されながら戦力にならず。
岡本の後継候補を育成できる気配が見えてこない。

 

2位 阪神タイガース

T

2014年が大社偏重、2019年は高校生偏重と
一見正反対なドラフトだが
14年は
評論家の評価が高かった横山、石崎、江越らがいたため、
19年は
甲子園で特に注目された高校生をかき集めたため
抽選を外したにもかかわらず
どちらもドラフト後の採点では軒並み高評価だった。
14年のほうは
投手陣が怪我や制球難に苦しんで活躍できず、
江越は期待された長打力を生かすことができないまま
植田と同じく守備、代走要員としての活躍にとどまった。
2019年は
今年主力となった選手こそいないものの
西と及川、特に及川は先発待機要員の印象が強く
既にチームにとって欠かせない存在となっている。
井上は二軍での内容が今年大きく向上したが
一軍の両翼に同年代の若手がそろっているため
競争を勝ち抜くのが難しい。
ところでこの19年以降毎年高評価されていた
タイガースのドラフト採点が今年低評価だったのは
指名そのものの評価よりも
遠藤の戦力外による好感度の低下がトリガーになっていた、
とは思いたくないところだ。

 

3位 横浜DeNAベイスターズ

By

2014年は有原の抽選を外したが
外れ競合で引き当てた山﨑と2位指名の石田が
1年目からずっと活躍する大成功ドラフト。
野手では倉本も長年戦力になっていたものの
打力、守備力ともいまいち伸びなかった。
そのショート問題を解決しようと
前年の小園海斗に続いて
高校生ショートを1位入札したのが2019年。
森もなかなかバッティングが開花しないが
まだ20代前半なのでこれからに期待したいところだろう。
投手の結果は
伊勢が5年間戦力になっている点が
14年と似ていて、
坂本もリリーフで戦力になりつつある。
14年との違いは
蛯名も着実に主力へ成長していることだ。

 

4位 広島東洋カープ

C

地元出身の有原の抽選を外した後に獲得したのは野間。
最近の野間は
リーグ平均を少し超える成績が続いており、
二軍でも平均を安定して上回る外野手が少ない中では
外せない戦力になっている。
2位では大学時代ほとんど登板のない薮田を獲得し
早い段階で戦力に育ったが
長く続かなかったのがやや誤算だった。
2014年の高卒勢では塹江と藤井も戦力に。
高校時代きれいなフォームが絶賛されていた塹江は
現在サイドスローに転向して制球を改善し、
藤井は戦力外になった後
アイランドリーグを経て移籍したホークスで開花した。
2019年のほうは
単独指名に成功した森下が5年間ローテに定着。
現時点では
石原と玉村もそれなりの戦力となっている一方で
宇草がいまいち伸びきらず
野間らの壁を崩せずにいるのが痛い。

 

5位 東京ヤクルトスワローズ

S

2014年は安樂の抽選を外して竹下を指名し
2位では1位に入るかとも言われた風張を獲得するも
結果は風張がリリーフで1年戦力になっただけ。
他の選手も全て戦力になれないままと
非常に厳しい結果だった。
2019年は逆に高校生奥川の抽選を当て
2021年の優勝に大きく貢献したものの
その後は怪我の影響でまだ本来の力を取り戻せていない。
大学生投手3人は大西がリリーフで活躍しているが
前評判からするとかなり物足りない結果。
下位で獲得した高卒野手2人が早くに使われ始め
今年の長岡はバッティングでも進境を見せた。
バファローズの紅林も
長岡と同じく実働3年目で初めて一軍平均を上回ったが
来年の長岡はどういう結果を残すか。
ちなみに長岡と武岡は
1、2年目の二軍と3年目以降で
ポジションが逆転している。

 

6位 中日ドラゴンズ

D

準地元枠だった野村をはじめ
投手は全て22歳以下、
支配下の野手は
ポジションが異なる22歳以上で固めた2014年だったが
1年目の遠藤と5年目の加藤以外は
サブ要員、ベンチ要員が育っただけになってしまった。
2019年のほうは
地元枠の石川の抽選を引き当て
それなりの戦力になってはいるものの
まだ主砲という活躍には至っていない。
3年連続最下位の今年は
去年一昨年とそこそこの活躍を見せた岡林が
絶不調なのも痛かった。
ファイターズへ移籍していた郡司は
サード、ファーストに入ることがほとんどで、
ドラゴンズに残っていても
石川とポジションがかなり被っている。