スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

2024年プロ野球ドラフト会議総評

スポンサーリンク

 

1位入札と指名全体

1位

1位入札が全員大学生だったのは2010年以来14年ぶり。
その時も入札は4人で、
こちらは2018年以来6年ぶりの出来事である。
外れ1位で野手入札が多くなったり
1位ではあまり獲られない
社会人投手が指名されたりしたかわりに
大学生投手の入札がなかったのも
どこか2010年を再現する年となった。
金丸、中村以外の大卒投手の力が
今年はかなりシビアに見られていたということか。
大競合が2つあったにも関わらず
リーグをまたいだ抽選対決は
宗山と石塚しかなく、
この点は2019年に近い。

指名数

全体で異変が起こったのは高校生野手。
高卒野手の本指名一桁は
4人までしか指名できなかった
1979年以来45年ぶりだった。
二刀流での育成が予想される柴田獅子を含めても10人で
これは2008年以来のこと。
野手自体は
社会人、独立リーグからの指名が増え
育成指名の高校生野手は例年通りだったので、
野手も高卒野手も軽視した結果ではないのはたしかだ。
低反発金属バットの影響が早くも出たからじゃ
なければいいが。

 

各チーム寸評

埼玉西武ライオンズ

主なポイント
①「毎年繰り返される投手偏重指名」の現実
②数年後のスラッガーよりも今年優先したいポイント

L

L人数

 

LF

LP

宗山の抽選を外した後は
長打力重視の指名を敢行。
投手も育成の佐藤爽以外高校生を指名したため
結果的には高校生偏重のドラフトとなった。
源田、外崎の後継候補育成は
間に合わないかもしれないが仕方がない。
2年目から使われ始めた松井稼頭央の平均超えは4年目で
中島裕之の本格的な起用も4年目、
浅村の起用は3年目からで5年目までは一塁だったので
齋藤起用への過剰な期待と首脳陣バッシングはしないように。
高卒1年目からショートで活躍した豊田泰光
70年も前の選手である。

 

中日ドラゴンズ

主なポイント
①若手が多すぎて育てる場所が限られている野手陣
②「3年先を見据えた」投手指名の具体的な中身

D

D人数

DF

DP

高校生の大競合には特攻しても
大学生投手の大競合は可能な限り避けてきたドラゴンズが
今年は金丸に特攻し、
しかも抽選を引き当てた。
統一ドラフトでの中日の大社投手3球団以上競合は
1990年の小池秀郎以来34年ぶりである。
その後はこちらも評価の高い吉田を獲り、
野手は
補強ポイントになっていた
社会人捕手と高校生サードを獲得した。
一方で
これで補強ポイントは埋め終わったということなのか
5位以降と育成は
スカウト陣の好みが反映された高校生指名。
地元枠にはこだわっていないものの
この点はやや不安がよぎる。

 

オリックスバファローズ

主なポイント
①センターをどのようにして育成するか
②深刻な事態になりうる数年後の先発候補

Bs

Bs人数

BsF

BsP

センターの人材難を解消するため
1位入札はセンターにこだわる指名。
とはいえ1年目からの即戦力を期待するよりも
当面は中川、西川の復活を期待しつつ
杉澤、渡部、来田など外野全体で競争する中で
成長してほしいところだろう。
山中はほとんど守っていないはずの捕手指名だが
公式のコメントにも
「俊足、強肩を活かした守備」とあるので
基本的には外野での起用になるかもしれない。
投手は
怪我等に悩まされてきた寺西をはじめ素材重視。
東山はリリーフでの三振率が高いので
即戦力リリーフとして期待されているか。

 

東京ヤクルトスワローズ

主なポイント
①もう間に合わないポジションと間に合わせたいポジション
②「即戦力」に費やせる指名枠の数

S

S人数

SF

SP

今年は
投手の頭数が足りなさすぎると考えたのか
育成枠でも高校生投手を獲らず、
指名全体の指名数は
支配下、育成込ともに野手のほうが多かった。
その野手は
村上の抜ける再来年などよりも
現在の若手、中堅の後を考えた指名。
もっとも今年のスワローズや
筒香嘉智が渡米する2019年のベイスターズなど
1年以内にチームを去る予定の主砲の後継者を
その年の高校生野手で賄えると断言する論調のほうが
近視眼的と言わざるを得ないのだが。
社会人でもリリーフの荘司は
左のリリーフを期待されていると思われる一方、
公式のコメントを見る限りでは
中村優を1年目からの即戦力とは考えていないようで、
奥川など必ずしもうまくいってはいないが
現在のスワローズらしい考え方と言える。
また今回指名された根岸やくふうハヤテの大山盛一郎が
二軍で1年プレーしてどういう結果を残すかは
アメリカの大学留学を考える選手や各球団にとっても
重要な試金石となるだろう。

 

東北楽天ゴールデンイーグルス

主なポイント
①一軍成績以上に将来への弱点が多い野手陣
②投手は再び高卒、素材に走る危険性も

E

E人数

EF

EP

入札数の少ない選手どころか
宗山の大競合に特攻して抽選にも勝利。
「入江(と村林)がいるのに」
「左打者ばかり」といった批判も多いようだが、
ライバルとなる2人が右打者なので
ある意味左右のバランスはとれている。
吉納の指名で
外部から言われていた外野の強打者候補もとりあえず押さえた。
投手のほうは
高校生に走ることはなかったものの
故障が多い徳山に
リリーフの中込、江原。
徳山をうまく育てられないと
先発不足の早期解消は難しい。

 

広島東洋カープ

主なポイント
①獲っても獲っても足りないセンターラインとスラッガー
②早くに出てきそうな投手をどう獲得する

C

C人数

CF

CP

全チームで唯一公言していた宗山の抽選は外し
次に入札したのは佐々木。
4HRを打った1年春以外の個人の実績には乏しいが
主将も務めているチームの実績は非常に豊富な選手で、
そのロマンと経験は巷でも高く評価されていた。
渡邉も獲得して
ただでさえ飽和しかけていた一、三塁が
とんでもないことになっているが
一、二軍合わせてどう起用していくのだろう。
センターは懸案の補強ポイントなのだが
ドラフトでひたすら獲り続けて
若手、中堅がありあまってる状態ではあるので、
彼らの育成を重視したものと思われる。
この選択を
ただのサンクコストととらえるか
雇用した個々の人間への保障ととらえるかは
人によって分かれるところだ。
投手指名も素材重視で
佐藤柳にかかる期待が大きくなりそう。

 

千葉ロッテマリーンズ

主なポイント
①野手育成にまつわる俗説への反証
②上位指名で投手を指名する意味

M

M人数

MF

MP

昨年三度抽選を外したマリーンズだが
今年は西川の抽選を引き当てた。
岡、藤原、怪我明けになるが高部などがいるので
いきなり一軍で使い続ける必要がないのはむしろプラス材料。
山本、西川、山口と外野の強打者候補は
右打者に寄っている。
藤岡の後継候補も池田だけでは不安だったのか
宮崎を2位で獲ってきた。
小柄な選手だがパンチ力もある。
投手は素材重視の指名になったが
必死のやりくりを続ける間に
彼らを育てられるか。

 

横浜DeNAベイスターズ

主なポイント
①次世代候補を一通り埋めたあとの野手指名
ベイスターズに求められる流れ論と現実の投手事情

By

By人数

ByF

ByP

戦力外は野手が多かったが
ドラフトは投手主体の指名。
結果的に
戦力外になった投手と同じ年齢の投手が指名された。
竹田以外は
素材に重点を置いたドラフトと言える。
加藤は事実上3年連続の大学生ショート指名。
野球部を退部して独立リーグ所属だが
在籍している大学は石上と同じ東洋大である。

 

北海道日本ハムファイターズ

主なポイント
①昨年の野手ドラフトで獲り切れなかったポジション
②素材型投手に走りすぎないことが肝要

F

F人数

FF

FP

昨年の野手偏重から一転して
今年は投手偏重のドラフト。
野手もやはりと言うべきか
昨年指名しきれなかったショートを狙ってきた。
今年の二軍で投手育成にかなり自信を持ったのか
投手は
高校生偏重に大学生も制球や実績に乏しい2人と
徹底した素材重視の指名。
支配下の藤田と清水大が高身長なのも
自信の表われなのだろう。
二刀流の柴田を抽選で当てたのは
これまで作り上げたチームのイメージに
運も味方しているということか。

 

阪神タイガース

主なポイント
①意義が見づらくなっている上位での素材指名
②誰を狙っても一長一短ある1位入札

T

T人数

TF

TP

大卒社会人投手を1位で獲得したのは14年ぶり。
伊原はリリーフ評価とのことなので
この点でも榎田指名と似ているが
20代前半の先発候補が伸び悩んだ今年の状況に
合っているかは疑問符が付く。
今朝丸や投手経験の短い木下のほうが
将来の先発候補として考えられているのか。
木下は四球があまり多くなく
今までのタイガースの傾向と異なるタイプではある。
4位以下と育成は
全て独立リーグと二軍球団からの指名。
佐野は1球団相手とはいえ
長打が少なく四球が多い点で
遠藤と似ているが、
ショートに入れる右打者なのが大きかったか。

 

福岡ソフトバンクホークス

主なポイント
①野手の指名を左右する2人の若手捕手の位置づけ
②投手育成の成果はどこに出ているか

H

H人数

HF

HP

宗山、柴田の抽選を外した後は村上を指名。
高校生投手は今年もこの村上だけにしたかわりに
育成で6人を獲得した。
安徳は今年のリーグ戦では
四球が極端に少なく三振が非常に多い。
今宮の後継候補は
早めに庄子を指名して何とか補った形。
キャッチャー、ファースト、外野の支配下指名はなく
吉田と石塚の来年のポジションは
このドラフトでは不明なままだった。
大友が早くに支配下登録されるなら
どちらかは正式にコンバートとなるかもしれない。

 

読売ジャイアンツ

主なポイント
①菅野の離脱でも変わらない投手指名戦略
②1位入札に薦めづらい本来の補強ポイント

G

G人数

GF

GP

金丸の抽選を外したものの
野手指名に切り替えて石塚の抽選を当て、
上位3人が野手になった。
石塚に加えて浦田、荒巻を獲得したのは
時々噂にあがる岡本和の海外移籍に合わせて
内野全体を適宜入れ替える起用を想定してのことなのか。
ポジションがやや被る3人を
門脇、中山らも含めて
どういう形で育成していくかも注目される。
荒巻はHRがそこまで多くないものの
OPSは過去関甲新で抜きんでていた大山を上回る。
投手は宮原以外が全て高校生。
5年先、7年先に期待したい指名となった。