1位入札と指名全体

1位入札が全員大学生だったのは2010年以来14年ぶり。
その時も入札は4人で、
こちらは2018年以来6年ぶりの出来事である。
外れ1位で野手入札が多くなったり
1位ではあまり獲られない
社会人投手が指名されたりしたかわりに
大学生投手の入札がなかったのも
どこか2010年を再現する年となった。
金丸、中村以外の大卒投手の力が
今年はかなりシビアに見られていたということか。
大競合が2つあったにも関わらず
リーグをまたいだ抽選対決は
宗山と石塚しかなく、
この点は2019年に近い。

全体で異変が起こったのは高校生野手。
高卒野手の本指名一桁は
4人までしか指名できなかった
1979年以来45年ぶりだった。
二刀流での育成が予想される柴田獅子を含めても10人で
これは2008年以来のこと。
野手自体は
社会人、独立リーグからの指名が増え
育成指名の高校生野手は例年通りだったので、
野手も高卒野手も軽視した結果ではないのはたしかだ。
低反発金属バットの影響が早くも出たからじゃ
なければいいが。
各チーム寸評
埼玉西武ライオンズ
主なポイント
①「毎年繰り返される投手偏重指名」の現実
②数年後のスラッガーよりも今年優先したいポイント




宗山の抽選を外した後は
長打力重視の指名を敢行。
投手も育成の佐藤爽以外高校生を指名したため
結果的には高校生偏重のドラフトとなった。
源田、外崎の後継候補育成は
間に合わないかもしれないが仕方がない。
2年目から使われ始めた松井稼頭央の平均超えは4年目で
中島裕之の本格的な起用も4年目、
浅村の起用は3年目からで5年目までは一塁だったので
齋藤起用への過剰な期待と首脳陣バッシングはしないように。
高卒1年目からショートで活躍した豊田泰光は
70年も前の選手である。
中日ドラゴンズ
主なポイント
①若手が多すぎて育てる場所が限られている野手陣
②「3年先を見据えた」投手指名の具体的な中身




高校生の大競合には特攻しても
大学生投手の大競合は可能な限り避けてきたドラゴンズが
今年は金丸に特攻し、
しかも抽選を引き当てた。
統一ドラフトでの中日の大社投手3球団以上競合は
1990年の小池秀郎以来34年ぶりである。
その後はこちらも評価の高い吉田を獲り、
野手は
補強ポイントになっていた
社会人捕手と高校生サードを獲得した。
一方で
これで補強ポイントは埋め終わったということなのか
5位以降と育成は
スカウト陣の好みが反映された高校生指名。
地元枠にはこだわっていないものの
この点はやや不安がよぎる。
オリックスバファローズ
主なポイント
①センターをどのようにして育成するか
②深刻な事態になりうる数年後の先発候補




センターの人材難を解消するため
1位入札はセンターにこだわる指名。
とはいえ1年目からの即戦力を期待するよりも
当面は中川、西川の復活を期待しつつ
杉澤、渡部、来田など外野全体で競争する中で
成長してほしいところだろう。
山中はほとんど守っていないはずの捕手指名だが
公式のコメントにも
「俊足、強肩を活かした守備」とあるので
基本的には外野での起用になるかもしれない。
投手は
怪我等に悩まされてきた寺西をはじめ素材重視。
東山はリリーフでの三振率が高いので
即戦力リリーフとして期待されているか。
東京ヤクルトスワローズ
主なポイント
①もう間に合わないポジションと間に合わせたいポジション
②「即戦力」に費やせる指名枠の数




今年は
投手の頭数が足りなさすぎると考えたのか
育成枠でも高校生投手を獲らず、
指名全体の指名数は
支配下、育成込ともに野手のほうが多かった。
その野手は
村上の抜ける再来年などよりも
現在の若手、中堅の後を考えた指名。
もっとも今年のスワローズや
筒香嘉智が渡米する2019年のベイスターズなど
1年以内にチームを去る予定の主砲の後継者を
その年の高校生野手で賄えると断言する論調のほうが
近視眼的と言わざるを得ないのだが。
社会人でもリリーフの荘司は
左のリリーフを期待されていると思われる一方、
公式のコメントを見る限りでは
中村優を1年目からの即戦力とは考えていないようで、
奥川など必ずしもうまくいってはいないが
現在のスワローズらしい考え方と言える。
また今回指名された根岸やくふうハヤテの大山盛一郎が
二軍で1年プレーしてどういう結果を残すかは
アメリカの大学留学を考える選手や各球団にとっても
重要な試金石となるだろう。
東北楽天ゴールデンイーグルス
主なポイント
①一軍成績以上に将来への弱点が多い野手陣
②投手は再び高卒、素材に走る危険性も




入札数の少ない選手どころか
宗山の大競合に特攻して抽選にも勝利。
「入江(と村林)がいるのに」
「左打者ばかり」といった批判も多いようだが、
ライバルとなる2人が右打者なので
ある意味左右のバランスはとれている。
吉納の指名で
外部から言われていた外野の強打者候補もとりあえず押さえた。
投手のほうは
高校生に走ることはなかったものの
故障が多い徳山に
リリーフの中込、江原。
徳山をうまく育てられないと
先発不足の早期解消は難しい。
広島東洋カープ
主なポイント
①獲っても獲っても足りないセンターラインとスラッガー
②早くに出てきそうな投手をどう獲得する




全チームで唯一公言していた宗山の抽選は外し
次に入札したのは佐々木。
4HRを打った1年春以外の個人の実績には乏しいが
主将も務めているチームの実績は非常に豊富な選手で、
そのロマンと経験は巷でも高く評価されていた。
渡邉も獲得して
ただでさえ飽和しかけていた一、三塁が
とんでもないことになっているが
一、二軍合わせてどう起用していくのだろう。
センターは懸案の補強ポイントなのだが
ドラフトでひたすら獲り続けて
若手、中堅がありあまってる状態ではあるので、
彼らの育成を重視したものと思われる。
この選択を
ただのサンクコストととらえるか
雇用した個々の人間への保障ととらえるかは
人によって分かれるところだ。
投手指名も素材重視で
佐藤柳にかかる期待が大きくなりそう。
千葉ロッテマリーンズ
主なポイント
①野手育成にまつわる俗説への反証
②上位指名で投手を指名する意味




昨年三度抽選を外したマリーンズだが
今年は西川の抽選を引き当てた。
岡、藤原、怪我明けになるが高部などがいるので
いきなり一軍で使い続ける必要がないのはむしろプラス材料。
山本、西川、山口と外野の強打者候補は
右打者に寄っている。
藤岡の後継候補も池田だけでは不安だったのか
宮崎を2位で獲ってきた。
小柄な選手だがパンチ力もある。
投手は素材重視の指名になったが
必死のやりくりを続ける間に
彼らを育てられるか。
横浜DeNAベイスターズ
主なポイント
①次世代候補を一通り埋めたあとの野手指名
②ベイスターズに求められる流れ論と現実の投手事情




戦力外は野手が多かったが
ドラフトは投手主体の指名。
結果的に
戦力外になった投手と同じ年齢の投手が指名された。
竹田以外は
素材に重点を置いたドラフトと言える。
加藤は事実上3年連続の大学生ショート指名。
野球部を退部して独立リーグ所属だが
在籍している大学は石上と同じ東洋大である。
北海道日本ハムファイターズ
主なポイント
①昨年の野手ドラフトで獲り切れなかったポジション
②素材型投手に走りすぎないことが肝要




昨年の野手偏重から一転して
今年は投手偏重のドラフト。
野手もやはりと言うべきか
昨年指名しきれなかったショートを狙ってきた。
今年の二軍で投手育成にかなり自信を持ったのか
投手は
高校生偏重に大学生も制球や実績に乏しい2人と
徹底した素材重視の指名。
支配下の藤田と清水大が高身長なのも
自信の表われなのだろう。
二刀流の柴田を抽選で当てたのは
これまで作り上げたチームのイメージに
運も味方しているということか。
阪神タイガース
主なポイント
①意義が見づらくなっている上位での素材指名
②誰を狙っても一長一短ある1位入札




大卒社会人投手を1位で獲得したのは14年ぶり。
伊原はリリーフ評価とのことなので
この点でも榎田指名と似ているが
20代前半の先発候補が伸び悩んだ今年の状況に
合っているかは疑問符が付く。
今朝丸や投手経験の短い木下のほうが
将来の先発候補として考えられているのか。
木下は四球があまり多くなく
今までのタイガースの傾向と異なるタイプではある。
4位以下と育成は
全て独立リーグと二軍球団からの指名。
佐野は1球団相手とはいえ
長打が少なく四球が多い点で
遠藤と似ているが、
ショートに入れる右打者なのが大きかったか。
福岡ソフトバンクホークス
主なポイント
①野手の指名を左右する2人の若手捕手の位置づけ
②投手育成の成果はどこに出ているか




宗山、柴田の抽選を外した後は村上を指名。
高校生投手は今年もこの村上だけにしたかわりに
育成で6人を獲得した。
安徳は今年のリーグ戦では
四球が極端に少なく三振が非常に多い。
今宮の後継候補は
早めに庄子を指名して何とか補った形。
キャッチャー、ファースト、外野の支配下指名はなく
吉田と石塚の来年のポジションは
このドラフトでは不明なままだった。
大友が早くに支配下登録されるなら
どちらかは正式にコンバートとなるかもしれない。
読売ジャイアンツ
主なポイント
①菅野の離脱でも変わらない投手指名戦略
②1位入札に薦めづらい本来の補強ポイント




金丸の抽選を外したものの
野手指名に切り替えて石塚の抽選を当て、
上位3人が野手になった。
石塚に加えて浦田、荒巻を獲得したのは
時々噂にあがる岡本和の海外移籍に合わせて
内野全体を適宜入れ替える起用を想定してのことなのか。
ポジションがやや被る3人を
門脇、中山らも含めて
どういう形で育成していくかも注目される。
荒巻はHRがそこまで多くないものの
OPSは過去関甲新で抜きんでていた大山を上回る。
投手は宮原以外が全て高校生。
5年先、7年先に期待したい指名となった。