スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

2011年・16年のドラフトは5年後・10年後の2021年に結びついたのか

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「ドラフトは10年先のチームを見ろ」の「定説」は正しいのか

「ドラフトは今現在じゃなく10年先のチームを見ろ」。
これはドラフト評論家だけではなく
プロのスカウトも口にする言葉である。
また最近は
ドラフト評論家、元スカウトなどによる
ドラフト採点への批判として
このような書き込みを非常に多く見かけるようになった。
なぜか
自分たちが批判している評論家と
全く同じ主張である。
「5年先、10年先じゃないとわからない」と言いながら
5年後、10年後の結果の検討を
自分では行わないのも同じだ。

このブログでは
過去のドラフトを年別に振り返ることも
多少やってきてはいるが、
そもそもドラフトの本義は
チームを強化し順位を上げることであり、
ドラフトによるアマチュア選手獲得と育成は
チームを強化するための数ある手段の一つ
にすぎない。
なのに
ドラフト評論・採点における「ドラフトの成果」は
「大成功の選手を1人でも輩出すること」しか見られず、
チームの成績や
大物選手を輩出すること以外でチーム成績に結びつく成果は
すべて排除されることがほとんどだ。

それでは
5年前・10年前のドラフトは
ちょうど5年後・10年後の将来のチームに
どのような結果をもたらしたのだろうか。
今回は
2021年から5年前・10年前のドラフトにさかのぼり
指名選手の2021年の成績とチームの順位を
見ていこう。

 

「10年先を見たドラフト」の5年後・10年後

5年後戦力になっていた高卒選手は

ドラフトにおいて
「5年後・10年後を見据えろ」と言う場合、
大学生だと5年後・10年後は27歳と32歳。
社会人は
大卒2年目でも5年後ならまだ29歳、
高卒3年目では10年後でも31歳と
まだまだ働き盛りな年齢のはずなのだが、
ドラフト評論などでは
「5年後を見ろ」と主張する場合でも
高校生しか指さない
ことが多い。
ならちょうど5年後には
どのくらいの高卒選手が
どの程度戦力になっていたのだろうか。

2021 5年目

2016年の指名選手では
リリーフで戦力になっていた選手が多い。
先発でも山本と今井が好成績を残しているが
リリーフは堀、梅野、藤嶋が
1~3年目から活躍しており
当たり年と言っていいだろう。
一方の野手は坂倉が主力打者に成長。
高卒野手が2位以内で1人も指名されなかったにしては
悪くない年と言えるだろうか。
なお高卒が戦力になっていたチームの
平均順位は3.42。
チーム順位との相関は特に見られない。

 

10年先のチームに貢献した選手は誰か

もう一つの「10年先」では
どの程度の選手が戦力になっていたか。
こちらは出自関係なく見てみよう。

2021 10年目

戦力になったのは
高卒と大卒が多かった。
投手だと高卒が先発、
大卒と社会人がリリーフときれいに分かれたが
野手は全く違いが見られない。
唯一と言っていい奇妙な違いはチームの順位。
10年目の高卒選手が戦力になっていたチームで
CSに進出したのは3位のジャイアンツのみ。
たった1回のドラフトで
高卒の主力選手を1、2人育てられたことが
チームの順位に直結するわけではないと
改めて教えられる。

 

パリーグチーム別

1位 オリックスバファローズ

Bs

25年ぶりの優勝を決めたオリックス
5年前のドラフトは
山本、山岡のローテーション投手2人を獲得。
山岡がけがで離脱した後は
山崎が穴埋めの一角を担った。
10年前のほうは
社会人野手中心のドラフトで
選手はほとんど残っていない。
ただし
これまで高い守備力でチームを支えてきた安達が
2021年はセカンドに回り優勝に貢献。
海田もリリーフ陣が苦しい中で
それなりの登板数にはなっていた。

 

2位 千葉ロッテマリーンズ

M

2021年は最終盤まで優勝を争ったマリーンズだが
10年前、5年前とも
移籍した選手が多く、
交換トレードやFAで獲得した選手が
戦力になっているものの
直接貢献したドラフト指名選手の数は
結果的に少なくなった。
早くに一軍へ定着していた種市が
トミージョンで全休する一方で
佐々木がセットアッパーとして台頭。

3位 東北楽天ゴールデンイーグルス

E

2011年のドラフトは
下位の大学生野手2人が大当たり。
特に10年目の2021年は
長打力を強化した島内がさらに進化を遂げ、
近年不調が続いていた岡島も復活した。
1年目に好投した釜田は
4、5年目以外戦力になっておらず
不調がかなり長引いている。
一方5年前の2016年は
森原と高梨が早々にリリーフで開花。
今年は西口も戦力になり
成果自体はまずまずなのだが
藤平をはじめとした先発の育成がうまくいかず
新人王を獲った田中も伸び悩んでいるため
このような形で表にすると
どうしてもちぐはぐな印象に見えてしまう。

4位 福岡ソフトバンクホークス

H

2016年ドラフト組は
主戦とは言えないが
田中と古谷が少しずつ良くなってきている。
終盤かなり調子を落としても使われ続けた三森や
二軍ではそこそこ打てている九鬼もいるので
さらに5年後すなわち10年目が
楽しみな存在にはなっているか。
一方2011年組は
嘉弥真がやや不調。
武田はここ数年に比べれば調子を上げたが
ちょうど5年目の2016年にエース格だったことを考えると
その後2021年まではかなりつまづいたと言える。

 

5位 北海道日本ハムファイターズ

F

「10年先を見据えたドラフト」の結果と順位が
最もかみ合っていないチーム。
2011年は菅野に拒否されたものの
高校生野手中心の指名をし、
2021年時点のチームで最も良い打者である近藤と
エース格の上沢を獲得、育成できた。
どう見ても大成功のドラフトである。
しかし10年後のチームは3年連続5位、
2021年は最終盤まで最下位に低迷していた。
5年目の選手たちは
戦力になっている選手こそ多いが
堀は四球、玉井は三振率、石井はバッティングと
それぞれ伸び悩んでいる印象も強い。
入団拒否した山口は
JR東日本で少しずつ使われるようにはなっている。

6位 埼玉西武ライオンズ

L

こちらは
5年前の成果と現在の順位が
かみ合わない例となった。
1年目から戦力となっている源田、平井に
四球は多いがある程度抑えられるようになってきた
今井と田村の台頭で
5年後の成果はかなりいいほうなのだが
2021年は42年ぶりの最下位だった。
10年前の2011年ドラフトも
十亀が現役で戦力になっている。
このライオンズといいファイターズといい、
戦力の流出が前提になってしまうチームだと
5年後・10年後ばかりを見ている
余裕などないという証明にはなっているか。

セリーグチーム別

1位 東京ヤクルトスワローズ

S

ファイターズとは逆の意味で
10年前の成果と順位がかみ合わない例。
2011年のドラフトは
ある程度一軍出場したのが比屋根のみ。
木谷、古野、徳山も
成功したというには活躍期間、内容ともにいまいちで
ドラフトとしては大失敗の部類に入ってしまう。
10年後はすでに現役選手がいない。
2016年のほうは
梅野がまずまずの働きを続けているものの
中村悠平の後継候補一番手となっている古賀と
防御率ではいまいちの星の2人は
5年後の戦力として
そこまで貢献しているとは言えない。
しかし2021年のスワローズは
見事リーグ優勝を果たした。

2位 阪神タイガース

T

首位とゲーム差なしの2位だったタイガースも
2011年のドラフトが10年後に結びついていない。
長打力を重視して指名した伊藤隼がうまくいかず
多く指名した高校生では
松田がリリーフで戦力になったものの
10年後はすでに現役を退いている。
一方の5年前は
ドラフトそのものは成功。
投手がそろって伸び悩んでいるが
大山、糸原と主力野手を輩出しているので
この2人で充分すぎるほどの成果は出ている。

3位 読売ジャイアンツ

G

清武GM最終年となった2011年は
2年連続投手偏重のドラフト。
高木と田原が1年目から、
一岡がカープへ移籍した3年目から
リリーフで戦力になったが
10年目に戦力になっているのは
今村と高木の2人である。
その5年後、2016年も
支配下は投手偏重のドラフト。
指名数の少なかった野手から
吉川に加えて松原も台頭し
投手では畠と大江が戦力に。
5年目では
かなりの成果を出す結果になった。

4位 広島東洋カープ

C

交流戦でのマイナスが大きく
チームはBクラスとなったが
10年前、5年前のドラフトからは
主力選手が出ている。
10年目の菊池は
ここ5年の中で最も良い成績。
野村が完全に落ち込んできているのがつらいところか。
2016年指名組は
坂倉が主戦として開花し
床田も先発ローテの一角を担う。
素材型の加藤(現・矢崎)に
怪我による長期離脱を経験した高橋とアドゥワが
伸び悩んでいる印象ではあるものの
坂倉と床田だけでも
5年先につながったドラフトと言える。

5位 中日ドラゴンズ

D

2021年時点での野手は
プロ入り後しばらくしてから転向した
宋以外の3人が現役。
ただ3人とも10年目・5年目の今年は打撃が不調で
打線低迷の一因になってしまっていた。
石垣の二軍OPSは.693である。
投手のほうは
5年目の柳と藤嶋がかなり好調なうえに
田島が復活の兆しを見せたため
5年後・10年後の成果は充分に出せているのだが
チームの順位には結びつかなかった。

6位 横浜DeNAベイスターズ

By

TBS最後のドラフトだった2011年は
藤岡を外した後に高校生偏重指名を敢行。
偶数年に大社偏重、
奇数年に高校生偏重を繰り返す
TBS後期の流れを踏襲したドラフトになった。
10年後の2021年は
しばらく不調だった桑原が復活する一方で
NPBレベルに達した投手はいなかったが
伊藤*1が社会人の主力クラスに成長している。
2016年のほうは
佐野が主砲の一角として活躍し
濱口と京山もやや制球に難が残るが
先発ローテに入っている。
このようにベイスターズ
指名選手はチームの将来を支えているものの
チームの順位にはつながらない結果となった。
細川は二軍では好調だが
今回取り上げた桑原と佐野がいるため
スタメンで使えるポジションがない。