スポーツのあなぐら

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2015年、2020年のドラフトは5年後、10年後の2025年に結びついたのか

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2020年ドラフトの全体総評

「ドラフトは10年先のチームを見ろ」の「定説」は正しいか

「ドラフトは今現在じゃなく10年先のチームを見ろ」。
これはドラフト評論家だけではなく
プロのスカウトも口にする言葉である。
また最近はドラフト採点および
採点記事を書く
ドラフト有識者、元スカウトなどの批判を目的とした
このような主張を非常に多く見かけるようになったが、
「5年先、10年先じゃないとわからない」と言いながら
自分では5年後、10年後の結果の検討を行わないし、
そもそも
自分の贔屓チームに高得点がつけられてる採点や
逆にフロントに激怒している際の
自分と同じ低評価がつけられている採点に対しては
このような批判は行われない。

ところで
そもそもドラフトの本義は
チームを強化し順位を上げることであり、
ドラフトによるアマチュア選手獲得と育成は
チームを強化するための数ある手段の一つ
にすぎない。
なのに
ドラフト評論・採点における「ドラフトの成果」は
「大成功の選手を1人でも輩出すること」しか見られず、
チームの成績や
大物選手を輩出すること以外でチーム成績に結びつく成果は
すべて排除されることがほとんどである。

それでは
5年前・10年前のドラフトは
ちょうど5年後・10年後の将来のチームに
どのような結果をもたらしたのだろうか。
今回は
2025年から5年前・10年前のドラフトにさかのぼり
指名選手の2025年の成績とチームの順位を
見ていこう。

 

「10年先を見たドラフト」の5年後・10年後

5年後戦力になっていた高卒選手は

ドラフトにおいて
「5年後・10年後を見据えろ」と言う場合、
大学生だと5年後・10年後は27歳と32歳。
社会人は
大卒2年目でも5年後ならまだ29歳、
高卒3年目では10年後でも31歳と
まだまだ働き盛りな年齢のはずなのだが、
ドラフト採点ではよく
大学生・社会人中心の指名は
「来年のことだけを考えた指名」と非難され、
高校生中心の指名をしたときだけ
「3~5年後の将来を見た指名」と言われる

また近年の補強ポイント記事、ドラフト採点記事でも
「高卒野手を指名してすぐ使えば順位が大きく上がる」
という信仰は非常に根強い。
ならちょうど5年後の2025年には
どのくらいの高卒選手が
どの程度戦力になっていたのだろうか。

この5年目の高卒選手とチーム順位の関係性は
これまで何年分か見てきているが、
平均つまり3.5より少し良いか
起用された若手がBクラスに集中して順位は非常に悪いかの
どちらかになっている。
しかも
昨年の紅林弘太郎や長岡秀樹らのように、
高卒2~4年目に主力として優勝を経験したのに
5年目では順位が大きく下がるケースすらあるため
理由を考えても説明がつけられないのが現実だ。

5年高卒選手


今年は2パターンのうち順位が悪いほう。
優勝したタイガースから髙寺が出てきたものの
他に2位以上のホークス、ファイターズ、ベイスターズ
該当者がいない。
2020年指名の高卒野手は
長谷川、中山、内山をはじめ
二軍で早くに好成績を残し
一軍でも使われ始めていた選手が多い。
一方の投手。
今回はWARなどに合わせて投手の条件を大幅に緩和したため
最終盤に一軍復帰した山下ぐらいの成績でも
実働年数に加わるようになり、
二軍でしばらく先発として鍛えられ
たまに一軍での先発起用をされやすい高校生投手は
特に条件が緩くなった。
その中で高橋は
4年間主力の先発ローテとして活躍し続けている。

 

10年先のチームに貢献した選手は誰か

もう一つの「10年先」では
どの程度の選手が戦力になっていたか。
こちらは出自関係なく見てみよう。

10年野手


2015年に指名された今年10年目の野手は
主力打者、ベンチ入りどちらもかなり多い。
出自で4分割すると高卒勢が多いが、
ドラフト当時
野手の目玉候補とされた平沢大河、オコエではなく
サード、ショートの主力になっている村林や
内外野のユーティリティとして支えた廣岡などが光り、
打撃成績では
MLBに移籍して久しい強打者の吉田正尚を除けば
大卒2年目で指名され5年目から主力に定着した杉本、
高卒3年目で指名されずっと一軍にい続けている西川と
社会人出身選手の活躍が目立つ。

10年投手


逆に投手は活躍する10年目が非常に少ない。
今永と小笠原がアメリカへ行き
同じくアメリカ挑戦した後の
日本復帰が最終盤だった青柳晃洋がいないせいもあるが、
先発要員が加藤1人、
リリーフで30試合以上登板が中川1人は
ちょっと寂しく見える。

 

パリーグチーム別

1位 福岡ソフトバンクホークス

H2015

 

H2020


今年は序盤で大苦戦を強いられるも
5月以降は本来の強さをいかんなく発揮したホークス。
5年前と10年前も圧倒的な強さで優勝しており
そんな余裕もあったのか
どちらの年も高校生偏重のドラフトとなった。
しかし3球団競合の高橋は
怪我もあってあまり活躍できず、
小澤と茶谷の実働は全て移籍後。
川瀬が成長したのが救いと言えよう。
20年指名組も
ベンチ要員として定着した緒方以外
まだ一軍主力となる選手はおらず、
今後の可能性はほぼ井上と笹川にかかっている。

 

2位 北海道日本ハムファイターズ

F2015

 

F2020


2015年と20年はどちらも
長く活躍する先発の柱を獲得した。
2020年の1位入札は
単独指名も一番人気の競合を避けたのも8年ぶり。
15年は井口がリリーフで長く働き
ずっと素材という印象の強かった上原が
近年それなりの力を出している一方、
主力打者としての成長を期待したと思われる
平沼、横尾が伸び悩む。
20年のほうは、
五十幡が自慢の俊足を存分に見せているものの
バッティングのほうは伸び悩み、
主力打者を期待した今川や
早くに一軍へ出ていた根本もいまいちな状況。
細川は近い年代にライバルが多く
激しい競争の中で毎年アピールし続けるしかない。

 

3位 オリックスバファローズ

Bs2015

 

Bs2020


2015年のドラフトでは
結果的に打の主力を2人も獲得し
6年後からの三連覇につなげた。
大城は大学4年からの不調を引きずったかのように
バッティングが伸び悩んだものの
ベンチ要員なども含め一軍を縁の下で支えている。
怪我の多い近藤や1年ごとの登板数が少ない吉田凌など
投手陣はトータルでの内容がいまいち。
5年前の2020年指名からは
怪我や不調の時期がやや長いものの
調子の良いときは手のつけられない山下がおり、
来田や川瀬なども一軍出場機会を増やしているが、
高校生中心のドラフトばかりが注目、絶賛されるなかで
戦力になっていた阿部や宇田川の指名も見逃せない。

 

4位 東北楽天ゴールデンイーグルス

E2015

 

E2020


2015年には合計9人中野手が8人、
2020年には合計7人中投手が6人と
正反対の指名をしたイーグルス
どちらも翌年の2016年に投手偏重、
2021年に1~3位を野手で固めるドラフトをし
バランスをとっている。
2015年は
茂木が1年目から主力となり
村林がここ数年主力として活躍している一方で、
ドラフト当時目玉候補の一人とされたオコエ
100~200打席程度止まりが毎年続いているため、
この点は微妙なラインと言える。
2020年は
4球団競合で1年目からローテ入りした早川をはじめ
質の面で微妙なところもあるが
藤井、内とイニングを稼げる先発を育てられてはいる。

 

5位 埼玉西武ライオンズ

L2015

 

L2020


かなり厳しい状況だった投手陣を改善するため
投手偏重の指名を行ったのが2015年。
この年獲得した愛斗からスタートした
次世代野手育成のスピードが
山賊打線主力の流出、衰えに追いつかなくなり、
早川の抽選を外した後
野手重視ドラフトに切り替えたのが2020年。
前後の年も踏まえると
こういう構図になっているのがこの2年のライオンズだ。
10年前のドラフトは故障者や伸び悩みが続出し
全体では短命な選手が多い印象。
2020年も上位2人をはじめ
大卒・社会人出身の故障・伸び悩みが続出した一方、
二軍で早々に結果を出した長谷川をはじめ
戦力不足もあって早くに使われ始めた高卒勢が
一軍でも少しずつ成果を出しつつある。

 

6位 千葉ロッテマリーンズ

M2015

 

M2020


2015年と20年の1位指名はどちらも
2球団競合での抽選を制しての獲得。
当時最大の目玉の一人とされた平沢は
2年目から一軍でよく使われたが
ショートへのこだわりを強く持っていた間に
バッティングの成長が止まってしまった。
東條は遅咲きの選手で
一軍で活躍した年数は思ったより少ない。
2020年の指名選手では
守備力を買われた小川が早くに一軍に定着し、
今年はチームが低迷したこともあってか
山本が一時期一軍の四番に固定された。
現在もチームに在籍している投手は
先発要員が河村だけで
鈴木、中森の上位2人がリリーフなのが
若干もったいなくも見えるか。

 

セリーグチーム別

1位 阪神タイガース

T2015

 

T2020


スワローズが公言した高山に入札し
見事当たりくじを引いたのが2015年。
その高山は2年目以降がいまひとつだったが、
1年目から
大学時代とは比較にならない成績を残した青柳や
守備力を背景に一軍に定着し
打撃でも今年キャリアハイだった坂本など
まずまずの当たり年になった。
そして史上屈指の当たり年とされるのが2020年。
4球団競合の佐藤輝に伊藤、中野が
1年目から一軍主力として大成し、
村上と石井も早くに一軍に定着。
今年は髙寺が一軍で結果を残し始め
成果がさらに上乗せされた。
そんな中結果を出せなかった佐藤蓮も、
ドラフト当時は一部マニアから
伊藤や村上よりもはるかに高く評価された
存在だったことは付け加えておこう。

 

2位 横浜DeNAベイスターズ

By2015

 

By2020


2015年と20年の1位はどちらも単独入札。
故障明けだった今永は
プロ入り後完全復活し1年目からエース格に。
柴田と戸柱は
打撃で結果を出せたシーズンが少ないものの
かなり手薄だったポジションで
貴重な一軍戦力となった。
入江を単独指名した2020年は
1位評価もされていた牧を2位で獲得し
1年目から期待通りの活躍した一方、
ジャイアンツへ移籍した石川以外の
下位、育成指名選手が活躍できておらず
この点が2015年同様にネック。
牧が獲れたことに加えて
素材の印象が強かった入江も
早くにリリーフで台頭しているのだが、
ドラフト直後は
「『正攻法』のドラフトをしろ、逃げるな」と
有識者からの批判が殺到した。

 

3位 読売ジャイアンツ

G2015

 

G2020


2015年、20年とも
支配下でも多くの選手を獲得したうえに
育成選手の大量指名を行った。
育成での大量指名はホークスのほうが有名だが、
2010年やこの20年のように
ソフトバンクが育成指名数上限の緩和を行う直前には
巨人がその先駆けのような指名を敢行する*1ことが多い。
ただしその成果はこの2回のドラフトで
増田と戸田ぐらいしか見当たらずやや寂しい。
それでも支配下のほうは、
いろいろあって独自路線気味だった2015年も
主力打者と先発投手こそいないが
セットアッパーやクローザーも任された中川、
内野のユーティリティとなった山本などまずまずの成果。
さらに2020年は
トミージョン手術で最終年全休していた山崎伊が
2年目から一軍ローテに定着、
中山が一軍で結果を残し始めている。

 

4位 中日ドラゴンズ

D2015

 

D2020


2015年と20年はどちらも
地元枠の大物高校生投手である「高橋」を入札。
再入札での抽選を引き当てた小笠原と
単独指名に成功した高橋宏が
そろってエースに成長した。
15年のドラフトは2位以下が社会人主体で
前年同様に落合GMが酷評されたが、
この年は木下、阿部が
数年の雌伏期間を経た後主力に定着、
福もまずまずの働きを見せた当たり年だった。
逆に高校生中心だった20年は
高橋宏以外の高卒、大卒、社会人がまだいまいち。
二軍の打撃成績が向上してきた土田が
今後一軍でどこまでやれるか。

 

5位 広島東洋カープ

C2015

 

C2020


1位入札はベイスターズと同じく
2年とも単独指名。
2015年では
西川が1年目から一軍控え、
2年目にはスタメンに定着する活躍。
岡田は短命に終わったがリーグ三連覇に貢献した。
2020年は
1年目からクローザーを任された栗林に加え
森浦、守備力の高い矢野が何年も主力に。
現状投手が全員リリーフで矢野が守備型なのが
若干瑕だがまずまずの成果と言える。

 

6位 東京ヤクルトスワローズ

S2015

 

S2020


2015年にリーグ優勝したスワローズは
公言していた高山の抽選を外した後
高校生主体の指名。
成績もまずまずなのは原と高橋で、
現在3球団目の廣岡は
打席数なども考えると
10年目の今年がシーズンベストと言えるだろう。
抽選を二度外した2020年は
再々入札で獲得した木澤が2年目から一軍に定着し、
今年は怪我明けで主に外野での起用だった内山も
2年目から一軍の機会が増えた。
ところでこの年最下位だったヤクルトは
翌年からリーグを連覇、日本一にも輝くが、
今年のスワローズのドラフト採点などで
最下位だから目玉選手への入札」を主張する人には、
スワローズのリーグ優勝も
「一番人気の早川に入札したから」になるのだろうか。

*1:育成7人以上は2006年ジャイアンツと08年マリーンズもあるが、ホークスの7人指名は11年から、10人以上は21年から