スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

2013・2018年のドラフトは5年後・10年後の2023年に結びついたのか

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「ドラフトは10年先のチームを見ろ」の「定説」は正しいか

「ドラフトは今現在じゃなく10年先のチームを見ろ」。
これはドラフト評論家だけではなく
プロのスカウトも口にする言葉である。
また最近は
ドラフト評論家、元スカウトなどによる
ドラフト採点への批判として
このような書き込みを非常に多く見かけるようになったが、
なぜか
自分たちが批判している評論家と
全く同じ主張である。
「5年先、10年先じゃないとわからない」と言いながら
5年後、10年後の結果の検討を
自分では行わないのも同じだ。

このブログでは
過去のドラフトを年別に振り返ることも
多少やってきてはいるが、
そもそもドラフトの本義は
チームを強化し順位を上げることであり、
ドラフトによるアマチュア選手獲得と育成は
チームを強化するための数ある手段の一つ
にすぎない。
なのに
ドラフト評論・採点における「ドラフトの成果」は
「大成功の選手を1人でも輩出すること」しか見られず、
チームの成績や
大物選手を輩出すること以外でチーム成績に結びつく成果は
すべて排除されることがほとんどだ。

それでは
5年前・10年前のドラフトは
ちょうど5年後・10年後の将来のチームに
どのような結果をもたらしたのだろうか。
今回は
2023年から5年前・10年前のドラフトにさかのぼり
指名選手の2023年の成績とチームの順位を
見ていこう。

 

「10年先を見たドラフト」の5年後・10年後

5年後戦力になっていた高卒選手は

ドラフトにおいて
「5年後・10年後を見据えろ」と言う場合、
大学生だと5年後・10年後は27歳と32歳。
社会人は
大卒2年目でも5年後ならまだ29歳、
高卒3年目では10年後でも31歳と
まだまだ働き盛りな年齢のはずなのだが、
ドラフト採点*1ではよく
大学生・社会人中心の指名は
「来年のことだけを考えた指名」と非難され、
高校生中心の指名をしたときだけ
「3~5年後の将来を見た指名」と言われる

ならちょうど5年後の2023年には
どのくらいの高卒選手が
どの程度戦力になっていたのだろうか。

5年目高卒

高卒野手は
5年目で既に何年も一軍起用されている選手が多く、
結果を残せるようになった選手も増えてきた。
ドラフト当時との印象とは
少し違う気がしないでもないが、
高校生野手の当たり年だったことはたしかだろう。
全日程最終戦でマリーンズが2位に浮上したため
平均順位もかなり押し上げられている。
一方、投手はどのチームも大苦戦。
ジャイアンツ以外は壊滅的な状況で
この2人以外だと
前年に吉田輝星と根尾昂がリリーフで戦力になったぐらい。
戦力外や育成契約になった支配下選手も増えている。

 

10年先のチームに貢献した選手は誰か

もう一つの「10年先」では
どの程度の選手が戦力になっていたか。
こちらは出自関係なく見てみよう。

10年目野手

10年後に戦力となった野手のうち
リーグ平均を超えたのは森と岡の2人。
移籍した3人がいずれも
今年下位のチームから上位チームへの移籍だったため
平均順位が非常に高くなっている。

10年目投手

2013年は投手が充実していたようで
先発要員こそ
大瀬良、九里、平良の3人しかいないものの
10年後の戦力になっている選手が多い。
大卒と社会人が目立つが、
2010~12年の指名選手に比べると
高卒勢もかなり健闘しているほうだ。

 

パリーグチーム別

1位 オリックスバファローズ

Bs

2013年のドラフトでは
上位で1位候補の社会人投手を2人獲ったうえに
3位以下で
U-18代表とスラッガー候補の高校生野手を大量指名し
当時各所で大絶賛されたバファローズだが、
10年後の三連覇に貢献したのは若月1人。
長年課題だったバッティングも
毎年リーグ平均程度を残せるまで成長してきている。
あとはリリーフの柱として活躍した吉田一以外
いまいちうまくいかなかった。
一方の2018年は指名当時
太田の評価や大学生、社会人の多さで
採点も大きく分かれたドラフト。
太田がなかなか一軍スタメンに定着しきれないなか、
2023年は太田との競争に宜保も参戦している。
何といっても貢献度が大きいのが
首位打者の頓宮とセンター起用の多かった中川。
このように
2位以下が5年先の将来を支えるドラフトになったものの、
頓宮個人はともかく
オリックスの指名戦略」という観点では
2014~17年の1位指名*2同様に
全く着目されないドラフトである。

 

2位 千葉ロッテマリーンズ

M

2013年のマリーンズは
長く活躍する先発投手2人に
主力打者と控え内野手を獲得する大当たり年だったが、
10年後の2023年は怪我人が続出し
ドラフトの成果とは裏腹に
出場機会があったのは井上だけだった。
一方の2018年も
東妻と小島がそれぞれリリーフと先発で活躍し続け、
山口も主力打者の一角を担うまでに成長している。
山口と藤原は1年間の中でむらが極端に激しく、
また藤原は
戦線離脱から復帰後に成績が急降下するなど
怪我が多いのもネック。
このあたりが改善されれば
彼らもチームも
もう1ランク先へ進めそうだ。

 

3位 福岡ソフトバンクホークス

H

高校生を含む二度の抽選を外したためか、
しょっちゅう高卒偏重指名を行うホークスにしては
珍しく大学生、社会人投手重視となった両年。
ただし23歳以上は板東と奥村だけと素材重視でもあった。
2013年は
森がセットアッパー、クローザーとして活躍し続けるも
最近は苦しんでいる。
他にも4、5年目に一度レギュラーをつかんだ上林や
ここ数年先発ローテで活躍し続けていた石川も
10年目は調子が上がらない一方で、
チームを離れた加治屋が50試合に登板した。
2018年指名選手では甲斐野と板東が活躍。
ここ3年で戦力になっていた泉は苦しい1年だった。
巷で期待される選手が多い高卒野手勢は
渡邉が二軍でもOPS.500台の絶不調、
野村は一・二軍の合計HR数がわずか1本かつ一塁専任、
水谷は柳田悠岐、近藤健介がいる両翼専任と
一軍スタメンで使うには
まだ中途半端な存在にとどまっている。

 

4位 東北楽天ゴールデンイーグルス

E

2013年の1位入札で5球団、
18年の外れ1位入札では4球団の競合に勝利し
強運ぶりを見せたイーグルスのドラフト。
松井は10年後クローザーとして活躍し続け、
辰己は苦戦していたバッティングが向上しつつある。
それ以外の2013年組は
実働が短いか楽天では活躍できていない選手が多く、
今野の4年は全てスワローズへ移籍後のものだ。
2018年組は
打撃のむらが激しいものの
太田が5年間一軍でプレーし、
小郷と鈴木も
欠かせない戦力として台頭してきた。
一時期先発ローテに入っていた弓削と
ユーティリティとしてあちこち守れる渡邊が成長すると
もう少し楽になるのだが。

 

5位 埼玉西武ライオンズ

L

「10年先の将来を見越したドラフト」が
これほどあてにならない例も珍しい。
森は高卒1年目から打撃が即戦力級で
ずっとチームの主力として活躍し続ける
驚異的な選手だったが
驚異的であるがゆえにFA権取得も早く、
10年目は同じパリーグチームの三連覇に大きく貢献した。
諸事情で山川が使えず、
森とともに一軍帯同の多かった岡田が怪我で
森流出のカバーをできなかったのも痛かった。
2018年指名は
松本と森脇が一軍に定着し続け
シーズン後半は佐藤にも成長の兆しが見えたものの、
主力の流出が続くチームにとっては
補充が全く追いつかない状態だ。
今まで当たり選手が多かった3位指名の
山野辺がなかなか結果を出せず、
1位候補との声もあった地元枠の渡邉も伸び悩んでいる。

 

6位 北海道日本ハムファイターズ

F

抽選を3度外した2013年の指名選手のうち
現役選手は全員トレードで移籍済み。
そのなかで2023年に活躍したと言えるのは岡だけだが
高梨はスワローズでリーグ連覇に貢献、
渡邉もチームの正セカンドとして
それなりの働きは見せていた。
一方の2018年は
一度抽選を外したものの
前年に引き続き高校生の目玉選手を1位指名、
その後も高校生の有名選手を次々に獲得し
評論家評価の高い即戦力候補も確保した。
そして万波が主力級に成長し
野村もリーグ平均を超えるぐらいまでになったが
5年後のチームは2年連続の最下位。
他の年に獲ったセンターラインが
なかなか育たないため
全体の得点力はさほど高くなっておらず、
投手も
2年間で大量に獲得した高卒勢が伸び悩み
即戦力候補も長続きしないか期待外れ。
打撃優位なポジションの
世代交代につなげるので精一杯だった。

 

セリーグチーム別

1位 阪神タイガース

T

2013年と18年のタイガースは
どちらも2回抽選を外した上に
高校生が少なく当時酷評されたが、
10年先、5年先のリーグ優勝に貢献したのは
この時指名された大卒と社会人出身選手だった。
10年前の2013年からは
岩貞と岩崎の2人がリリーフで活躍し、
近年バッティングが低迷しているものの
梅野も主力として働いた。
2018年の指名選手では
近本がHRこそ一桁ながらも
そこそこの長打力に高い出塁率と走力、守備力で
チームに多大な貢献を見せ、
結果的に小幡との正ショート争いを制した木浪も
まずまずの働き。
クローザーを期待された湯浅が
リーグ戦で不調に苦しんだのはやや誤算だった。

 

2位 広島東洋カープ

C

リーグ三連覇に大きく貢献した
2013年ドラフトの成果は10年後も健在。
大瀬良と九里が先発ローテで活躍し、
しばらく低迷が続いていた田中広は
序盤絶不調だった小園らの穴を
しっかりと埋める働きを見せた。
その小園も後半は調子を上げてチームに貢献。
他の2018年組では
島内が5年連続で戦力になる一方で、
ずっと期待されている
林と羽月が伸び悩み、
最近は二軍でも苦戦する状況が続いている。
三連覇3年目のこの年は
世代交代を狙う高校生野手中心の指名だったが、
5年後に世代交代までたどり着いたのは
小園のみだった。

 

3位 横浜DeNAベイスターズ

By

2021年に小園健太の抽選を引き当てるまで
「即戦力しか獲らない」「逃げてばかりで正攻法じゃない」と
批判され続けたベイスターズだが、
2013年と18年の1位入札はどちらも一番人気の高校生。
2013年は
リリーフ3人にキャッチャー、期待の外野手と
多数の戦力を輩出するも
10年後の2023年は全体的にいまいち。
一軍の打撃で結果を残せてはいなかった関根が
序盤大活躍でいよいよ本格的に開花かと思われたが
中盤以降は調子を崩してしまった。
2018年組は
大貫が5年連続で活躍し上茶谷がリリーフで復活、
宮城が終盤一軍で台頭し始めるなど
こちらも投手の成果が出ている一方で
野手はいまいち。
俊足の知野は意外と一軍での出場試合数が少なく、
チーム内にポジションがなくなっていた伊藤は
イーグルスへ移籍し徐々に力を出し始めている。

 

4位 読売ジャイアンツ

G

2008、2013年から5年後のジャイアンツは
この年も高校生偏重指名。
戸郷が2年目から一軍先発の主力になり
5年目の2023年は横川も一軍機会が増え、
この年の高卒投手に関しては
ジャイアンツの独り勝ち状態なのだが
チームは2年連続4位にとどまった。
唯一の大卒髙橋がいまいち活躍し続けられないうえに
前年期待を持たせた増田陸は不調、
1年目に二軍で活躍した山下が
怪我の影響かその後バッティングが低迷するなど
野手育成もうまくいっていないのが痛い。
山下は社会人でもまだスタメン定着にいたっていない。
2013年も状況は似ていて、
小林以外が全員他球団へ移籍してはいるものの
移籍先で戦力になっている田口、平良と
通算でも活躍したとはいまいち言えない
和田、奥村との差が激しい。

 

5位 東京ヤクルトスワローズ

S

前年にリーグ連覇を果たしたスワローズも
2023年は投打がかみ合わず5位。
10年前のドラフトでは
通算実働年数の多い3人がいたものの
2023年に戦力となったのは杉浦だけ、
しかも3人とも既にチームを離れている。
5年前の2018年は
外れ1位で指名し続けた即戦力投手より野手、
それも将来の長打力を重視した指名。
濱田は5年目としてはまずまずだが
中山は2年目以降低迷してチームを去った。
投手のほうは
清水がリリーフの主力として連覇に貢献する一方、
高卒の2人は5年目の今年戦力外となっている。

 

6位 中日ドラゴンズ

D

ちょうど2013年から暗黒期に突入したドラゴンズ。
その2013年のドラフトは
12球団で唯一2連続で高校生投手を入札するも
鈴木はいまいち戦力にならず。
大卒1年目の又吉と大卒4年目の祖父江が
10年連続で一軍戦力として活躍した。
桂は現在、日立製作所でコーチ兼任。
2018年は4球団競合の根尾を引き当てたうえに
前評判の高かった梅津や石橋を獲得し絶賛されたが、
5年後は球団史上初の2年連続、
この11年間では3回目の最下位となった。
根尾はバッティングが伸び悩み、
投手転向2年目の2023年は先発で四球病に苦しんだ。
梅津は怪我が非常に多く、
石橋はプロ入り後に木下拓哉が開花したため
どちらも一軍での実働が少ない。
高卒3年目で指名の地元枠勝野は
先発だと今一つの状態が続いたが
今年はリリーフで本格的に活躍した。

 

 

*1:少なくとも複数の媒体で採点をする人の場合

*2:つまり山崎福也、吉田正尚、山岡泰輔、田嶋大樹の1位入札