スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

2025年プロ野球ドラフト会議総評

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1位入札

1位


今年の1位入札は
2球団競合した佐々木をはじめとして
大学の好打者に入札が分散したため、
大競合が予想された立石は3球団止まり。
それでも一番人気だった。
立石と佐々木の抽選を
優勝したタイガースとホークスが引き当てたため
抽選廃止と完全ウェーバー導入を求める声が
かなり高くなっているようだが、
MLBでも既に廃止されている完全ウェーバー制では
その年のドラフト目玉候補を獲得するため
強すぎるチームの代わりに
弱すぎるチームを意図的に作り敗退行為に走る
タンキングが横行*1してしまうため、
現在の抽選とウェーバー―逆ウェーバーのほうが
戦力均衡にとってはるかに有効な手段となっている。

指名数

今年は上位指名が異変続き。
1位から3位まで全て大学生を指名したのが8チームもあり、
その結果
高校生野手が上位3位までに1人も指名されず、
社会人も投手が3位までで竹丸1人、
野手が5位まで指名されなかった。
それでも一度指名の流れができると
高卒野手と社会人野手は次々指名されていったが、
最終的に指名がかなり少なかったのが
高校生と社会人の投手。
支配下での高校生投手8人は歴代最少、
社会人投手5人も
1年目1965年の入団数4人に次ぐ2位タイ、
指名数だけなら1986年と並ぶ歴代最少タイだった。

これらにより、
高校生の指名率は支配下、育成込みともに
ドラフト史上初の20%台(26.0%、28.4%)*2
野手率は2002年以来23年ぶりに50%を超えた。
ここ2、3年の流れを見ると
巷の評価に対して大学生の指名がかなり早く、
いわゆる順位縛りなどもあるのだろうが、
基本的に上位は
3~5年先の大成を見込んだ社会人に進む前の大学生、
高校生はあくまで7~10年先の開花を想定し
その原則を踏まえても上位指名する価値の高い逸材を獲る、
これが各チームの基本線になってきた可能性もある。
大学生優先のドラフトは評論などでよく
「来年の即戦力しか見てない」と批判されるが、
この批判だと
社会人の指名が前にもまして遅い説明がつかない。

 

各チーム寸評

※各チームの年代表が「詳細」に折りたたんであります。

なお補強ポイントの中に投手は入っていない。
なぜなら投手、特に先発投手は
全チームが補強ポイントになっていたから
だ。

東京ヤクルトスワローズ

主なポイント

  1. 村上と山田両方の後継候補を兼ねられる野手
  2. 3~5年先を見据えた大学生か社会人のサード、外野手

S

 

S人数

SF


SP

1位はサードの松下。
佐々木麟太郎入札に動くチームもあったためか
単独指名に成功した。
補強ポイントの一つはこれで確保した一方、
他の野手は二遊間の守備力、走力を重視した指名で、
打力に関しては
現内野陣のサードや外野起用も含めて
底上げしていくつもりなのか。
投手は素材とリリーフ中心の指名。
山崎と増居がどの程度先発で投げられるかが鍵だ。

 

千葉ロッテマリーンズ

主なポイント

  1. 別ポジションの選手も守っているショートとキャッチャー
  2. 二軍が足りないセンター

M

 

M人数

MF


MP

今年3位までに高校生を指名した2チームのうちの1つで
高校生野手も真っ先に指名したのがマリーンズ。
前回最下位だった2017年も
最終的に高校生サードの安田を獲得し
社会人投手でもかなり素材重視の指名をしたので、
投打は違えど2位が即戦力狙いなのも含めて
結構似たところのあるドラフトと言える。
野手は完全に7年先、10年先を見た指名。
競合を制して獲得した石垣は
この有り余る素質のスタミナをどう鍛えるかが課題で、
先発としての開花は奥村のほうが早いかもしれない。

 

広島東洋カープ

主なポイント

  1. 上位で獲れ早くに使えそうな外野手
  2. 大学生ぐらいのキャッチャーとショート

C

 

C人数

CF


CP

入札を公言した立石の抽選は外したものの、
前評判通りにいけば
平川のほうがチームの現状に合っている。
勝田は長打力があるタイプではなく
セカンドでは人材がかぶっている印象もあるが、
長打力に関しては
一、三塁を過剰なまでに獲得してきたので
彼らの数年後に期待か。
投手は今年も大学生の素材が中心。
髙や佐藤柳、岡本など
大卒の戦力が徐々に出てきつつあるため
彼らの獲得で数年後の世代交代を加速する狙いだろう。

 

埼玉西武ライオンズ

主なポイント

  1. 投手も危機なら野手指名を長打力に振り切るのも一つの手
  2. 一、二軍を往復するか二軍でじっくり鍛える捕手

L

 

L人数

LF


LP

打力に定評のある小島入札を公言し
単独指名に成功。
一軍で守備とインサイドワークの英才教育をし、
もともとの高い打力を生かして
最低限の打撃成績も担保する狙いかもしれない。
昨年に続き今年も野手主体のドラフトで
今年はセンターライン中心の指名だったが
秋山はHRをある程度打っており、
ある程度打力を重視した指名でもあった。
一方の投手は
岩城も堀越も大学ではあまり長いイニングを投げていない。
先発に復帰する平良に代わるリリーフ候補なのか、
数年後の先発として育成するのか。

 

中日ドラゴンズ

主なポイント

  1. 投手を1位入札する理由にも当てはまる巷の「立石を入札すべき理由」
  2. 10代から20代前半が空いてきた外野手

D

 

D人数

DF


DP

上位3人を投手で固める指名は賛否両論と思われるが、
補強ポイントで書いたように
ホームランウィングは
若手打者の底上げにつながる可能性もある反面、
人材不足の投手をさらに崩壊させる危険性も秘めている。
ちなみにこの投手、
身長180cm台前半、170台前半、190台前半と
体格の異なる3人を獲得した。
あとは補強ポイント通り
年齢層の空いた外野手をまとめて獲ってきたが、
2021年とは異なり
個々の年齢が少しずつ変えてある。

 

東北楽天ゴールデンイーグルス

主なポイント

  1. サードを獲るなら一軍との往復可能な逸材
  2. キャッチャーと外野は年齢に関係なく

E

 

E人数

EF


EP

単独指名に成功した藤原は
京滋大学野球で四球がイニングの約半数のロマン型。
チームの先発が全然足りないので
1年目からローテ入りする可能性もあるが
時間をかけて育てたいタイプだ。
早川と同じ早稲田大で実績豊富な伊藤と
都市対抗橋戸賞の九谷は即戦力の期待がかかるか。
繁永は打撃成績にかなりムラがある選手で
黒川が完全に一軍要員となった今
二軍でじっくり鍛えたい存在。

 

読売ジャイアンツ

主なポイント

  1. 吉川の後継候補
  2. 将来最低でもライトが守れそうなスラッガー候補

G

 

G人数

GF


GP

岡本のポスティングを容認した中での竹丸入札公表は
賛否両論を巻き起こしたが、
岡本流出への数々の備えが
一定の成果をあげている現状では
確実に抽選を外しているスラッガー大競合へ
わざわざ特攻する意味はない。
下位や育成で獲得した大学生、社会人等の野手も
スラッガーではないが
長打力が全くないタイプでもなく
そこまで問題とは言えない。
むしろ素材、リリーフ中心になっている
投手のほうがやや心配で、
リリーフ陣にかかる負担を
今後数年でどこまで緩和できるかが課題になる。

 

オリックスバファローズ

主なポイント

  1. 一、二軍を通して人材不足なサード
  2. 二軍で使えるキャッチャー

Bs

 

Bs人数

BsF


BsP

各チームが大学生を指名するなか
上位で高校生投手をかき集めたバファローズ
採点では「即戦力志向に惑わされない精神」が
かなりの高評価をされそうなドラフトだった。
実は大学生や独立リーグと高校生の違いはあるが、
オリックスの上位3人も
身長が180cm台、190台、170台各前半で、
ドラゴンズやカープ支配下投手と
全く同じ戦略になっている。
支配下唯一の高校生以外の野手は
投手で呼ばれた石川ケニー。
現在はジョージア大在籍だが
今春のシアトル大では野手としても活躍しており、
ここでも二刀流としてカウントした。
来年のMLBドラフトや
移籍したジョージア大でプレーする前に契約するのか、
この点も注目される。

 

横浜DeNAベイスターズ

主なポイント

  1. 宮崎の代役に筒香が入っていたサード
  2. センターかライトの有力な外野手

By

 

By人数

ByF


ByP

1位入札はサードではなくファーストの佐々木、
抽選を外した後もファーストの小田を指名した。
小田は身体能力も悪くないため
宮崎の後継候補としてのサード、
一定の足の速さを生かしてのライトなど
様々な育成方針が考えられる。
投手2人は
大卒の島田は数年先の素材、27歳の片山は即戦力として
どちらも先発で期待したいチーム状況だが
特に片山はどちらでの起用になるか。
ショートの宮下と成瀬はどちらも守備力重視。
それにしてもベイスターズは石上、
在学のまま退部し独立リーグでプレーした加藤に続き
3年連続で東洋大のショートを指名したことになる。

 

北海道日本ハムファイターズ

主なポイント

  1. 次世代につながるキャッチャー
  2. 7年先、10年先を見たスラッガー候補の高校生外野手

F

 

F人数

FF


FP

1位で立石、平川の抽選を外した後は
同じ大学の毛利ではなく大川の1位指名。
大学はリリーフだったが
将来的には先発転向も見越しているようだ。
その後は一昨年同様の野手偏重指名で、
大学生のほうのスラッガー候補
エドポロ・ケインが2位。
大塚も小柄なショートだがパンチ力はある。
あとは高校生キャッチャーの藤森も獲り
最低限の補強ポイントはしっかり押さえた指名だった。

 

阪神タイガース

主なポイント

  1. 佐藤輝の次を担うサード
  2. 中川が事実上外野へコンバートされているキャッチャー

T

T人数

TF


TP

2018年以来7年ぶりに1位から野手3人を指名、
しかも今年は
立石の競合抽選を引き当てての指名となった。
立石とポジションが被る谷端まで獲得したが、
開花までのスピードが
立石とは異なりそうなタイプでもあるため
数年後の佐藤輝流出の可能性も考えると
そこまでおかしな指名にはなっていない。
立石が早くに開花した場合は
佐藤輝のような外野や
セカンドでの起用なども想定されるが
そもそもDH制導入の再来年頭に台頭するなら
何一つ問題はない。
オイシックスからの支配下指名となった能登
二軍という点を考慮しても
被HRが78.1回で1本と非常に少ない。

 

福岡ソフトバンクホークス

主なポイント

  1. 周東に代わる選手が多くないセンター
  2. 若手のバッティングの伸び悩みが目立つキャッチャー

H

H人数

HF


HP

一時期の高校生偏重路線からは脱却しながらも
支配下で高校生を獲り続けたホークスだが、
今年は支配下での高校生指名がゼロ。
ホークスの支配下高校生指名なしは
1999年以降絶賛されている
あの1996年ドラフト以来29年ぶりのことである。
怪我明けで先発に復帰したばかりの稲川、
長らくエースとして投げ続けている相良、
サイドスローの鈴木と
投手のタイプはそれなりに多彩だ。
支配下の野手2人はどちらもスラッガー候補。
佐々木に関しては
早々に拒否されるのか、
MLBドラフトで指名後
翌年のNFLドラフトの結果を待つ契約を結んだ
カイラー・マレーのように
来年のMLBドラフトの結果を待つのか、
スチュワート・ジュニアの最終結果のように
MLB指名を蹴ってでも契約にこぎつけるのか。

*1:もしCSを廃止し優勝以外の価値をなくすとその危険性がさらに高まる

*2:MLBでは12年連続で30%未満