1位入札

今年の1位入札は
2球団競合した佐々木をはじめとして
大学の好打者に入札が分散したため、
大競合が予想された立石は3球団止まり。
それでも一番人気だった。
立石と佐々木の抽選を
優勝したタイガースとホークスが引き当てたため
抽選廃止と完全ウェーバー導入を求める声が
かなり高くなっているようだが、
MLBでも既に廃止されている完全ウェーバー制では
その年のドラフト目玉候補を獲得するため
強すぎるチームの代わりに
弱すぎるチームを意図的に作り敗退行為に走る
タンキングが横行*1してしまうため、
現在の抽選とウェーバー―逆ウェーバーのほうが
戦力均衡にとってはるかに有効な手段となっている。

今年は上位指名が異変続き。
1位から3位まで全て大学生を指名したのが8チームもあり、
その結果
高校生野手が上位3位までに1人も指名されず、
社会人も投手が3位までで竹丸1人、
野手が5位まで指名されなかった。
それでも一度指名の流れができると
高卒野手と社会人野手は次々指名されていったが、
最終的に指名がかなり少なかったのが
高校生と社会人の投手。
支配下での高校生投手8人は歴代最少、
社会人投手5人も
1年目1965年の入団数4人に次ぐ2位タイ、
指名数だけなら1986年と並ぶ歴代最少タイだった。
これらにより、
高校生の指名率は支配下、育成込みともに
ドラフト史上初の20%台(26.0%、28.4%)*2、
野手率は2002年以来23年ぶりに50%を超えた。
ここ2、3年の流れを見ると
巷の評価に対して大学生の指名がかなり早く、
いわゆる順位縛りなどもあるのだろうが、
基本的に上位は
3~5年先の大成を見込んだ社会人に進む前の大学生、
高校生はあくまで7~10年先の開花を想定し
その原則を踏まえても上位指名する価値の高い逸材を獲る、
これが各チームの基本線になってきた可能性もある。
大学生優先のドラフトは評論などでよく
「来年の即戦力しか見てない」と批判されるが、
この批判だと
社会人の指名が前にもまして遅い説明がつかない。
各チーム寸評
※各チームの年代表が「詳細」に折りたたんであります。
なお補強ポイントの中に投手は入っていない。
なぜなら投手、特に先発投手は
全チームが補強ポイントになっていたからだ。
東京ヤクルトスワローズ
主なポイント
- 村上と山田両方の後継候補を兼ねられる野手
- 3~5年先を見据えた大学生か社会人のサード、外野手




1位はサードの松下。
佐々木麟太郎入札に動くチームもあったためか
単独指名に成功した。
補強ポイントの一つはこれで確保した一方、
他の野手は二遊間の守備力、走力を重視した指名で、
打力に関しては
現内野陣のサードや外野起用も含めて
底上げしていくつもりなのか。
投手は素材とリリーフ中心の指名。
山崎と増居がどの程度先発で投げられるかが鍵だ。
千葉ロッテマリーンズ
主なポイント
- 別ポジションの選手も守っているショートとキャッチャー
- 二軍が足りないセンター




今年3位までに高校生を指名した2チームのうちの1つで
高校生野手も真っ先に指名したのがマリーンズ。
前回最下位だった2017年も
最終的に高校生サードの安田を獲得し
社会人投手でもかなり素材重視の指名をしたので、
投打は違えど2位が即戦力狙いなのも含めて
結構似たところのあるドラフトと言える。
野手は完全に7年先、10年先を見た指名。
競合を制して獲得した石垣は
この有り余る素質のスタミナをどう鍛えるかが課題で、
先発としての開花は奥村のほうが早いかもしれない。
広島東洋カープ
主なポイント
- 上位で獲れ早くに使えそうな外野手
- 大学生ぐらいのキャッチャーとショート




入札を公言した立石の抽選は外したものの、
前評判通りにいけば
平川のほうがチームの現状に合っている。
勝田は長打力があるタイプではなく
セカンドでは人材がかぶっている印象もあるが、
長打力に関しては
一、三塁を過剰なまでに獲得してきたので
彼らの数年後に期待か。
投手は今年も大学生の素材が中心。
髙や佐藤柳、岡本など
大卒の戦力が徐々に出てきつつあるため
彼らの獲得で数年後の世代交代を加速する狙いだろう。
埼玉西武ライオンズ
主なポイント
- 投手も危機なら野手指名を長打力に振り切るのも一つの手
- 一、二軍を往復するか二軍でじっくり鍛える捕手




打力に定評のある小島入札を公言し
単独指名に成功。
一軍で守備とインサイドワークの英才教育をし、
もともとの高い打力を生かして
最低限の打撃成績も担保する狙いかもしれない。
昨年に続き今年も野手主体のドラフトで
今年はセンターライン中心の指名だったが
秋山はHRをある程度打っており、
ある程度打力を重視した指名でもあった。
一方の投手は
岩城も堀越も大学ではあまり長いイニングを投げていない。
先発に復帰する平良に代わるリリーフ候補なのか、
数年後の先発として育成するのか。
中日ドラゴンズ
主なポイント
- 投手を1位入札する理由にも当てはまる巷の「立石を入札すべき理由」
- 10代から20代前半が空いてきた外野手




上位3人を投手で固める指名は賛否両論と思われるが、
補強ポイントで書いたように
ホームランウィングは
若手打者の底上げにつながる可能性もある反面、
人材不足の投手をさらに崩壊させる危険性も秘めている。
ちなみにこの投手、
身長180cm台前半、170台前半、190台前半と
体格の異なる3人を獲得した。
あとは補強ポイント通り
年齢層の空いた外野手をまとめて獲ってきたが、
2021年とは異なり
個々の年齢が少しずつ変えてある。
東北楽天ゴールデンイーグルス
主なポイント
- サードを獲るなら一軍との往復可能な逸材
- キャッチャーと外野は年齢に関係なく




単独指名に成功した藤原は
京滋大学野球で四球がイニングの約半数のロマン型。
チームの先発が全然足りないので
1年目からローテ入りする可能性もあるが
時間をかけて育てたいタイプだ。
早川と同じ早稲田大で実績豊富な伊藤と
都市対抗で橋戸賞の九谷は即戦力の期待がかかるか。
繁永は打撃成績にかなりムラがある選手で
黒川が完全に一軍要員となった今
二軍でじっくり鍛えたい存在。
読売ジャイアンツ
主なポイント
- 吉川の後継候補
- 将来最低でもライトが守れそうなスラッガー候補




岡本のポスティングを容認した中での竹丸入札公表は
賛否両論を巻き起こしたが、
岡本流出への数々の備えが
一定の成果をあげている現状では
確実に抽選を外しているスラッガー大競合へ
わざわざ特攻する意味はない。
下位や育成で獲得した大学生、社会人等の野手も
スラッガーではないが
長打力が全くないタイプでもなく
そこまで問題とは言えない。
むしろ素材、リリーフ中心になっている
投手のほうがやや心配で、
リリーフ陣にかかる負担を
今後数年でどこまで緩和できるかが課題になる。
オリックスバファローズ
主なポイント
- 一、二軍を通して人材不足なサード
- 二軍で使えるキャッチャー




各チームが大学生を指名するなか
上位で高校生投手をかき集めたバファローズ。
採点では「即戦力志向に惑わされない精神」が
かなりの高評価をされそうなドラフトだった。
実は大学生や独立リーグと高校生の違いはあるが、
オリックスの上位3人も
身長が180cm台、190台、170台各前半で、
ドラゴンズやカープの支配下投手と
全く同じ戦略になっている。
支配下唯一の高校生以外の野手は
投手で呼ばれた石川ケニー。
現在はジョージア大在籍だが
今春のシアトル大では野手としても活躍しており、
ここでも二刀流としてカウントした。
来年のMLBドラフトや
移籍したジョージア大でプレーする前に契約するのか、
この点も注目される。
横浜DeNAベイスターズ
主なポイント
- 宮崎の代役に筒香が入っていたサード
- センターかライトの有力な外野手




1位入札はサードではなくファーストの佐々木、
抽選を外した後もファーストの小田を指名した。
小田は身体能力も悪くないため
宮崎の後継候補としてのサード、
一定の足の速さを生かしてのライトなど
様々な育成方針が考えられる。
投手2人は
大卒の島田は数年先の素材、27歳の片山は即戦力として
どちらも先発で期待したいチーム状況だが
特に片山はどちらでの起用になるか。
ショートの宮下と成瀬はどちらも守備力重視。
それにしてもベイスターズは石上、
在学のまま退部し独立リーグでプレーした加藤に続き
3年連続で東洋大のショートを指名したことになる。
北海道日本ハムファイターズ
主なポイント
- 次世代につながるキャッチャー
- 7年先、10年先を見たスラッガー候補の高校生外野手




1位で立石、平川の抽選を外した後は
同じ大学の毛利ではなく大川の1位指名。
大学はリリーフだったが
将来的には先発転向も見越しているようだ。
その後は一昨年同様の野手偏重指名で、
大学生のほうのスラッガー候補
エドポロ・ケインが2位。
大塚も小柄なショートだがパンチ力はある。
あとは高校生キャッチャーの藤森も獲り
最低限の補強ポイントはしっかり押さえた指名だった。
阪神タイガース
主なポイント
- 佐藤輝の次を担うサード
- 中川が事実上外野へコンバートされているキャッチャー




2018年以来7年ぶりに1位から野手3人を指名、
しかも今年は
立石の競合抽選を引き当てての指名となった。
立石とポジションが被る谷端まで獲得したが、
開花までのスピードが
立石とは異なりそうなタイプでもあるため
数年後の佐藤輝流出の可能性も考えると
そこまでおかしな指名にはなっていない。
立石が早くに開花した場合は
佐藤輝のような外野や
セカンドでの起用なども想定されるが
そもそもDH制導入の再来年頭に台頭するなら
何一つ問題はない。
オイシックスからの支配下指名となった能登は
二軍という点を考慮しても
被HRが78.1回で1本と非常に少ない。
福岡ソフトバンクホークス
主なポイント
- 周東に代わる選手が多くないセンター
- 若手のバッティングの伸び悩みが目立つキャッチャー




一時期の高校生偏重路線からは脱却しながらも
支配下で高校生を獲り続けたホークスだが、
今年は支配下での高校生指名がゼロ。
ホークスの支配下高校生指名なしは
1999年以降絶賛されている
あの1996年ドラフト以来29年ぶりのことである。
怪我明けで先発に復帰したばかりの稲川、
長らくエースとして投げ続けている相良、
サイドスローの鈴木と
投手のタイプはそれなりに多彩だ。
支配下の野手2人はどちらもスラッガー候補。
佐々木に関しては
早々に拒否されるのか、
MLBドラフトで指名後
翌年のNFLドラフトの結果を待つ契約を結んだ
カイラー・マレーのように
来年のMLBドラフトの結果を待つのか、
スチュワート・ジュニアの最終結果のように
MLB指名を蹴ってでも契約にこぎつけるのか。