スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

ドラフトの「補強ポイント」とは何か

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今年2023年は
「ドラフトでは
補強ポイントは無視して良い選手を獲るべきだ」
「補強ポイントより4年後が大事だ」などと、
ドラフトの識者が発言しているのを
Twitter上でよく目にするようになった。
中には
ドラフト直前に「各チームの補強ポイント」を
雑誌やネット媒体の記事、動画にしている人からも
しばしばこうした発言を見かけるという
字面だとなかなか奇妙な事態にもなっている。

 

ドラフトの「補強ポイント」について

ところで
ドラフトにおける「補強ポイント」の定義は何だろうか。
外国人選手やFAなどドラフト以外の話であれば、
今の時期の「補強ポイント」は
来年の一軍戦力強化・弱点補強
を指す言葉になる。
しかしドラフトの場合では
この定義は少し違うものになる。
大きくざっくり分けると
二つの意味に分かれると言っていいだろう。
もっともドラフト評論においては、
この「補強ポイント」の意味が
人によってまちまちである。
それどころか
もうこの時点で想像がついているかもしれないが、
同じ人物であっても
その発言の目的によって
定義がころころ変わるものなので
注意が必要なのだ。

 

① 〇年後を考えた「補強ポイント」

ドラフト評論で言われることが多いはずなのは
この「〇年後考えた『補強ポイント』」、
数年先の一軍戦力を
現在のチーム事情から推測し、
ドラフトで指名すべき
ポイントやポジションを考えるというものだ。
このブログの補強ポイント記事なども
こちらの意味で使っている。

ただこのブログでの「補強ポイント」では
たとえ「補強ポイント」のポジションには合致していても
まだプロ入りすべき実力に達してない選手を
指名しろとは言っていない。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる必要はない

これらは各補強ポイント記事にも
必ず書いている内容である。

 

② 来年のことだけを考えた「補強ポイント」

もう一つは
外国人選手、FA補強などと同じく
来年の一軍戦力のことに特化した「補強ポイント」だ。
ただしドラフト評論において
「補強ポイント」がこの意味で使われる場合、
基本的に
「目先のことしか頭になく将来を見ることができない」
という批判・否定の意味で使われる。
そしてこのパターンで昔から非常に多いのが
「5年先・10年先を見据えて高校生を獲れ」と
主張するケースで、
ドラフト評論が世に出た30年近く前から
現在までずっと使われ続けている論法である。

「基本的に」と書いたのは
②を否定しながら同時に②が主張されることも
しばしばあるからだ。
「目の前じゃなく将来を見て高校生を獲れ」と言いながら
「この高校生は1年目から絶対一軍戦力になる」と
言い出すパターンで、
投手よりもスラッガーと評される高校生野手に多い。
近年だと
7球団競合の清宮幸太郎などよりも
2015年の平沢大河や
昨年中日が1位ないし2位指名した場合の内藤鵬などに対して
この主張をする評論家やファンが目立って多かった。

 

なぜ今年は「補強ポイント」否定論がわき起こったのか

ところでこのような
「補強ポイント」を全て②の意味で用いる
「補強ポイント」否定論とも言える主張が
2023年に数多く飛び交うようになったのはなぜだろうか。
批判を承知で言ってしまうと、
これはもう
自分たちが気に入った選手を指名させたいから
この一点に尽きる。
実際、最初に書いた
「補強ポイントより4年後」などの後ろには
「(4年後)のスラッガー」という言葉が
ついていることも多いのだ。

今年のドラフト候補には、
ドラフト前日の時点で明言したチームが出てきている
大豊作とも言われる大学生投手や
ドラゴンズが公言した
ライトの度会隆輝などの野手がいる一方で、
もともと最大の目玉候補であった
佐々木麟太郎(花巻東高)をはじめ、
真鍋慧(広陵高)、明瀬諒介(鹿児島城西高)、
廣瀬隆太(慶應大)といった
体が大きく、打球の飛距離があり滞空時間が長いなどの特徴で
ファンやドラフト評論家を魅了する、
スラッガー」「アーチスト」と呼ばれる一塁手の上位候補
何人もいるのが特徴だ。
その反面一塁は、
たとえ外国人選手に頼らなかったとしても
現在チームの主力として活躍している日本人選手や
他の若手との関係で回される可能性がある有望株が
将来入る可能性があるポジション
であるため、
今チームにファーストのレギュラーがいるから
来年は獲得の必要がないという②型だけじゃなく
「数年先を想定した①型の補強ポイントであっても
補強ポイントにしづらいポジションとなる。
これはプロ野球が守備、スモールボール重視だからではなく
MLBのドラフトでも同様の傾向になっている。
それでもファンの目を
この「スラッガー」「アーチスト」たちに向けさせ
1位入札や競合などもありそうな空気を作るには、
「補強ポイント」という見方自体が
近視眼的で浅い無価値なものだという解釈を、
意識的にか無意識でかまではわからないが
人々に植えつけたかったのであろう。

 

感情で動く人の性

今までにあげたような例を見ても
たしかに「補強ポイント」とは
その言葉を使う人が恣意的に解釈することは可能だし、
対象チームへの好き嫌いで
「補強ポイント」やドラフト直後の採点基準が
変えられてしまうことも珍しくなく、
その意味では
「補強ポイントは無意味だ」と主張するのも
全くわからないでもない。
しかし実際のドラフト指名が
いったいどういう意図をもって行われたのかを
考え、理解するには
数年先のことを考えた補強ポイントを知ることが不可欠。
ましてや
「補強ポイントなぞ無意味」と主張する動機が
「自分のお気に入りのスラッガーを指名させたい」
「1位入札が大学生投手ばかりだと癪だから
スラッガーや高校生投手を持ち上げたい」では
ただの感情論で捻じ曲げられた「補強ポイント」と
やってることが全く同じではないか。

改めて言うが、
ドラフトにおいて補強ポイントは
そのチームの指名を見る上で必要なものである。
中には明らかに現状把握もままならないような
大御所評論家による補強ポイント記事などもあったが、
各チームの状況を知ることは
今日のドラフトを見る際の重要な手助けになるはずだし、
各チームのファンはそれらを参考にしながら、
実際に指名された選手たちを歓迎しよう。