①主力打者の後継候補を育てるタイムリミット
②故障した主力を休ませられる存在は誰になるか
③若手の先発・リリーフ適性を見極めるタイミング
戦力・ドラフト傾向分析
過去10年の成績
5年連続最下位から脱出したのが2013年、
初のCS進出が2016年。
暗黒期を脱する過程が
過去10年の前半にあたる。
2016年以降は
2年に1回のペースでCSに進んでいる。
強力打線のイメージで語られることが多いチームだが
得点力が非常に高い年はほとんどなく
平均より少し高い程度。
2013年は突出していたので
この年のイメージが先行しているのだろう。
逆に失点は毎年多め。
2023年の成績
交流戦では
打線が力を見せて優勝したが、
リーグ戦再開後は
その打線の状態が急激に悪化し
交流戦の貯金がなくなったところでオールスターに入った。
交流戦でセリーグトップだった平均得点が
その後の21試合ではリーグ最下位である。
過去15年のドラフト傾向
戦力がある程度安定するまでは
大学生投手で戦力の底上げ、
安定した後は
高校生の入札も多くなってきた。
くじ運は非常に悪く、
2球団競合だとまだましなものの
3球団以上の1位競合は
ホエールズ、横浜、TBS時代を含めても
1984年と2013年(外れ1位)のわずか2勝で
勝率は1割を切っている*1。
2巡の高校生は
過去15年で高城だけ。
ただ1年目からの即戦力を狙っているかというと
そうとは見えない指名も多い。
3位は投手とショートが目立つ。
TBS時代は
大社偏重と高校生偏重を交互に行い、
2014年以降は
基本的に大学生と社会人を中心にしつつ
高校生も毎年2人以上獲得する流れ。
2019年から高校生の比率が増えたが、
高卒が増えたというよりは
チーム全体の指名数のほうを少し減らした印象。
これも戦力が安定し
入れ替えを無理に増やす必要がなくなった証か。
2011年以前は
先発投手がまるで育っておらず、
こちらの成果はDeNAになってから。
弱点の
キャッチャーとショートの育成に苦戦しているが、
打力の高い打者は
それなりの頻度で出現している。
最近比率が上がった高卒選手の成果は
まだまだこれから。
野手補強ポイント
野手についての基本的な考え方
基本的な前提条件はこうだ。
- 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
- 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
- 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない
この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はないのだ。
過去10年の打撃成績
長打率が安定して高めな一方で
盗塁が毎年少なく、
特にラミレス監督時代は
「小技を使わないから得点効率が悪い」と
叩かれることが多かった。
実際は
打率以上に出塁率が低かったうえに
成績よりも点が取れている年も少なくないため、
走塁全体ならまだしも
小技の企図数で得点効率が上がるかどうかは
はなはだ疑問が残る。
2023年野手陣の状況
打率と長打力がそこそこ高い構図は
今年も変わらない。
二塁打が全チームトップ。
盗塁は相変わらず少なく、
成功率が低いため仕掛けるメリットも少ない。
序盤絶好調だった関根が調子を崩し、
リーグ平均を超えている選手は多いものの
突出しているのは宮崎と牧の2人になった。
怪我をおして出場し続ける主力も少なくない。
山本は2020年にOPS.753を記録しており、
三振率*2なども考慮すると
今のところ山本を超えた選手はおらず
キャッチャーという
簡単に若手を使うわけにいかないポジションでもあるが、
ルーキーの松尾と上甲が
将来かなり楽しみな存在になってきている。
蛯名と梶原は
二軍だとある程度の結果を残しているのだが
今年の一軍ではまだアピールできておらず、
神里ともども
怪我がちな桑原を脅かす存在になれていない。
内野は
今年それなりの結果を残していると言えるのが
知野と西巻。
4年目の森もリーグ平均程度の成績だ。
逆に3年目の小深田と2年目の粟飯原は
かなりの不調にみまわれている。
しかし去年の森、今年の林と
しばらく一軍にいた選手が
二軍でも同程度にしか打てなくなるのは
何か理由があるのだろうか。
補強ポイント
二軍の若手で気になるのは
ファースト起用も増えている小深田の伸び悩み。
次世代のサード候補としては
ルーキーの林と蓮もいるが、
もしこの3人がそろって伸び悩んでしまった場合
規格外の怪物となっている宮崎がいなくなると
チームの打力が極限まで低下してしまう。
年齢が年齢だけに
時間の猶予もあえて早めに見積もっておきたいところだ。
二軍が飽和状態にはなるが
大学生か高校生のサード、ファーストを
サード候補として上位指名するのもありかもしれないし、
準即戦力になると評価すれば
1位入札で大競合のファーストに特攻する可能性もある。
外野は
ある程度出場できる育成枠が3人いるので
支配下で育成する選手を増やすか
この3人をスタメンとしての育成を継続するかの選択になる。
それ以外のポジションは、
ショートは年齢バランス的に獲っておきたいが枠が足らず、
キャッチャーも支配下こそ少ないものの
上甲の存在とベテランの健在ぶりを見ると
こちらも獲得できる枠がない。
投手補強ポイント
投手についての基本的な考え方
野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される
- 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
- より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける
このような手法は
以前にもましてとりづらい。
それよりも
- 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
- 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない
これらがどのチームでも最重要課題になる。
過去10年の投手成績
四球が多いのが瑕だが
三振が結構多く、
共通する特徴を持った投手を
獲得し育てることに成功しているようだ。
それに対して
失点がやや多いのは
守備力とのバランスが取れていないのも大きな要因か。
2023年投手陣の状況
三振率がドラゴンズ、タイガース以上に高く、
今年は四球もタイガースに次いで少ない。
それに対し被安打は多いが
カープ、ジャイアンツと
あまり変わらない数字になっている。
一軍主力のほとんどは
中堅以上に固まっている。
一昨年から昨年にかけては中川や宮城、
昨年から今年にかけては
上茶谷、坂本、京山、阪口と
先発からリリーフへ回るケースが激増し
投手陣の再編が進められた。
このため
二軍の先発が大幅に入れ替えられた一方で
新たに先発要員となった若手の育成が
まだそれほど進んでおらず、
一軍の谷間を担えそうな選手が少ない。
中6日のローテに入れるには早いが
2年目の小園や深沢にも
一軍の先発機会が回ってくる、
というより回さざるを得なくなるかもしれない。
補強ポイント
今書いたことがもし実行されたら
「若手の抜擢」と手放しに喝采する人は多いだろうが、
これは結局
プロ入りから即戦力で使えた選手以外
ほとんどを先発として育成できていないということだ。
実際、前半戦に先発した10人のうち
1年目から一軍戦力になっていなかった日本人選手は
ジャイアンツに3年間いた後移籍してきた平良と
現役ドラフトで獲得した笠原しかいない。
25歳以下で二軍の先発に入っている4人は
全員1、2年目の選手なので
体力等も含めての育成が目的と思われるが、
今後は先発・リリーフ適性の見極めを
もう少し早めに行えるようにしないと
一軍で使える投手が枯渇する危険に
さらされることになる。
補強ポイントというか
現在何としても欲しいのは
井納や大貫のような存在になれる社会人投手だろう。
ハードルが非常に高い注文になってしまっているが、
まず現代の起用法において
先発は一軍に6人そろっている程度では足りず、
二軍の育成状況にかかわらず
先発候補は多いに越したことはない。
一方2010年代中盤のベイスターズは
上位で指名した大学生を
1年目から先発で使うことを得意としていたものの
東、上茶谷が怪我で長期離脱、濱口はやや不安定と
今永と石田以外は
2年目以降がもう一つしっくりこなかった。
こうした
体力的にまだ完成しきれていない大学生や
平良に続く二軍で育成途中の若手を
一軍で早々に使いつぶす危険を回避するには、
一軍で使い続けられるレベルの即戦力が
必要不可欠になっているのである。
井納、大貫がともに3位指名で、
このタイプは1位で野手や高校生を獲りにいっても
確保できないこともないのも大きなポイントだ。