スポーツのあなぐら

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もし佐々木麟太郎がアメリカの大学へ進学したら

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高校通算140本塁打を放ち
一昨年から2023年ドラフトの目玉候補とされてきた
花巻東高校の佐々木麟太郎選手の動向に関して、
先日
アメリカの大学への留学を検討しているとの報道があった。
NCAAの強豪リーグの一つである
Southeasternカンファレンスに所属する
強豪校ヴァンダービルト大からオファーがあったとも聞く。
そうなると将来も
春秋制秋春制とのブランク期間で
年齢的にかなり不利になる日本のドラフトではなく
直接MLBのドラフト指名を目指す可能性が
高くなるわけだが、
ここでは佐々木の留学の是非ではなく
佐々木がアメリカの大学へ進学したうえで
MLBのドラフト指名を受けるために必要なものは何か、
この点について考えてみようと思う。

 

MLBドラフトの傾向

まずここ2年間の
MLBドラフトの傾向を見ておこう。

2022,23契約数

2022年と23年に指名されたうち
契約した野手と投手の比率は
MLBも日本と同様に投手のほうが高い。
野手率は2022年が43.3%、23年は43.0%で
2021、22年の日本より1~3%低くなっていて、
投手の指名数が多くなるのは
日米に共通した傾向である。
ちなみにTWPはTwo way player、
日本語で言う「二刀流」のことだ。
野手のうち
指名数が多いのは内野手
その半数以上がショート。
次いで外野の指名が多く
ファーストとセカンドはほぼ同じ。
プロ野球のドラフトでも
他のセンターラインに比べて
セカンドの指名は非常に少ないが、
ここも日米で大きな違いはないようだ。

一方、
現在のMLBが日本と大きく違うのは
高校生の契約が極端に少ないことだ。
MLBでは高卒選手の契約が
契約成立選手全体の15%にも満たず、
ショートだとまだそこそこ指名されているのに対し
ファーストの契約はこの2年間でたった1人*1
セカンドにいたっては指名すらされていない。
MLBのドラフトでは
将来の上位指名、他スポーツでの活躍などを目指した
契約拒否に加えて、
4年制の大学生でも
2年以上かつ21歳から指名のチャンスが続くことや
この表のJCにあたる
短大やコミュニティカレッジなどでアピールしている間にも
指名がありうること、
日本には社会人(野球)の進路もあることなども
大きな理由として考えられる。
「日本のドラフトのほうが
MLBより大学生(と社会人)が指名されにくい環境にある」
と言ったほうが実態に近いのかもしれない。

 

MLBで指名されたファーストの現実

それでは
この2年間にMLBドラフトで指名・契約したファースト、
特に大学生のファーストについて見ていこう。

 

指名後のポジション

まず指名されたファーストは
大学時代どのポジションを守っていて、
マイナーリーグでどのポジションにつくのか。

ポジション

ファーストとして指名された選手の中で
4年制大学でプレーしていた27人は
大学でもほとんどがファーストかDHのみ。
他のポジションはせいぜい1、2試合という選手が22人、
ファースト起用が中心の選手は24人にも及び、
他はサードやキャッチャーが中心、
投手とDHの二刀流だった選手が
それぞれ1人ずつしかいなかった。
一方、
まだマイナーでプレーしていないSam Brownを除く
ファースト指名28名のうち、
マイナーリーグ
ファーストかDHでのみ出場しているのは18人。
それ以外は
レフト併用が7人にサードが3人となっている。
大学でもファースト中心だった場合は
プロでもファースト主体で使われるケースのほうが
多いようだ。
ただ
大学最終年ではほぼファースト専任だったものの
その前の年やサマーリーグでは
サード等でプレーしていた選手も少なくないし、
先述のとおり
ファースト専任は指名自体が少ない。
2023年の1巡11位で
エンゼルスから指名されたNolan Schanuelが
指名からわずか1ヶ月でメジャーデビューを果たしており、
チームの中でファーストが空けば
こうした早い抜擢と活躍もありえなくはないが、
大学で他のポジションを守れるようになるなら
それに越したことはないだろう。
なお2023年時点だと、
2020年以降に指名されたファーストで
MLBの舞台に上がったのは
Schanuelだけである。

 

指名時の年齢と契約金

次に指名された当時の年齢を見よう。
契約したファーストのうち
高校生は18歳だが
4年制大学と短大・コミュニティカレッジの大学生は
どうなっているだろうか。

指名年齢

指名が解禁される3年目の選手が多く、
日本と同じ4年目の選手は4人。
その一方で
卒業後に別な大学へ移籍して1年プレーする、
あるいは留年してもう1年、
といったパターンもあるためか
23歳、24歳の選手が指名されることも
珍しくない。
ただしそういう選手はおおむね契約金が低く、
たとえば同じファースト指名でも
2022年5巡148位のDiChiaraは
5巡150位のMartorellaの
32万5000ドルよりかなり低い17万2500ドル、
9巡267位のAndrew Jenkinsが16万2900ドルに対して
8巡240位のGriffin Doerschingは2万5000ドル、
といった具合である。
今年11巡で指名された西田陸浮もそうだったが、
やはり解禁年で指名されるに越したことはない
ということだろう。
ちなみに
1巡11位指名のSchanuelは525万3000ドルで
2022年1巡29位のXavier Isaacが254万8900ドル、
同年2巡43位のIvan Melendezは140万ドル。
上位指名までいけば
日本の1巡指名よりも高い契約金を得られるわけだ。

 

大学での成績

今度は
ファーストの選手が
MLBのドラフトで指名されるには
どの程度の成績を残す必要があるか、
大まかな目安を探っていこう。

この成績の対象とするのは
4年制大学の中でも
NCAAのDiv1に所属する各リーグに
指名された年に在籍していた選手25人。
Div2のリーグに在籍していた2人は含めていない。

HR数

高校通算140本塁打をはじめ
スラッガータイプ」として高い評価を得る佐々木だけに
おそらく日本で最も注目を集めるであろう
HR数は最多が32本。
2巡指名のMelendezが67試合315打席で記録している。
リーグやチームによって試合数が変わるので
全く同じ基準で見るのは難しいが
HR11~15本の選手が最も多く
最少は315打席で4本、
指名前年にいたっては179打席で0本という選手もいる。

OPS

OPSで見ると最多が1.483、
最少でも.920で.800台は一人もおらず
基準値が一気に跳ね上がった。
セカンドの西田陸浮が.837で11巡指名されたことを考えると、
走力やポジション補正と守備力などによる上乗せが
どうしても乏しくなりやすいファーストは
成績のハードルもそれだけ高くなるようだ。
また指名前年に1.260を記録したGriffin Doerschingは
その年が大学4年目だったが指名されず、
ノーザンケンタッキー大からオクラホマ州立大へ移った
5年目にようやく指名されることとなった。

三振率

世間や識者から注目されているかはわからないが
三振率についても見てみよう。
20%台後半の選手もいるが、
ある程度長打力の高い選手がそろっているわりには
三振率も20%未満に減らした選手が大半を占めている。
そしてHRが19本ながら
OPSは最高の1.483、三振率は最少の4.84%だったのが
全体11位指名のSchanuelで、
OPSはその前に指名された3人の大学生野手、
直後に連続で指名された4人の大学生野手よりも高い。
加えて2年連続10盗塁以上。
ファースト以外が守れれば
評価はもっと上がっていたかもしれない。

さてここで挙げた3つの表、
実は左の列と右の列の合計数が違う。
これは前年に
NCAAのDiv2以下や
短大などをはじめとするNCAA以外のリーグに在籍していた選手が
各リーグ戦やサマーリーグなどでのアピールに成功し
NCAAのDiv1に所属するチームへ移籍したからである。
西田陸浮も
渡米から2年間こうしたリーグでアピールし続けたのち
Div1の強豪チームにスカウトされた選手の1人だ。
しかし
アメリカの大学選手全員が
同じ環境からキャリアを積むわけではなく、
1年目からDiv1所属の大学に入学できるケースもある。
そして4年制大学からのファースト指名27人のうち、
大学1年目にDiv1に所属していたのは22人。
その後コミュニティカレッジ、短大等を統括する
NJCAA所属のリーグへ一度移籍した選手を除いても、
大学入学後
サマーリーグ以外ずっとDiv1に所属していた選手は
27人中20人にも及ぶのだ。
1年目からDiv1のチームに在籍し続けられるということは
MLBのドラフト指名を目指すうえで
有利な立場にいると言えるだろう。
もちろんその後もしっかり戦力になるなど
チームに在籍し続けなければならないのだが、
Div1のなかでも
かなりの強豪リーグに所属する強豪校から
オファーを受けたと報道されている佐々木麟太郎は、
実際に入学が認められれば
どうしてもアピールしづらいリーグから
スタートすることになりがちな留学生の中では
かなり有利な位置でのスタートとなる。
もちろん強豪校であればあるほど
活躍するためのチーム、リーグの壁も
非常に厚くはなるのだが、
この点が
アメリカ留学を後押しする大きな要因と
なっているのだろう。

 

佐々木麟太郎に求められそうなもの

最後に
もし佐々木麟太郎がアメリカの大学へ渡ったら
強制されるとは限らないが
変えたほうがいいかもしれない
もの、
これについて考えてみよう。
ずばり体重である。

体重

公式に伝えられている佐々木の体重は113kg。
ここ2年間で指名されたファーストでも
この体重を超えているのは
110kg台の3人しかおらず、
100kg未満の選手が半数以上を占めている。
しかも身長は
佐々木の184cmを下回っているのがわずか4人。
身長と体重だけを見ると、
アメリカの大学生でも
佐々木と似たような体型の選手は
185cm、119kgのDiChiara*2ぐらいしか
見当たらない。
大学側と本人の意向次第なので
絶対とは言えないし、
佐々木の体重を揶揄するような主張、報道が
こうした事実を踏まえているかは甚だ怪しいものの、
佐々木が大学でさらに体を作っていく際に
具体的な減量を命じられる、
あるいは自然と体重が絞られていくということが
充分ありえるのはたしかである。

*1:契約不成立は2人いる

*2:2022年5巡148位、23歳でLAAから指名