スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

日本の人工芝球場批判を信用してはいけない

スポンサーリンク

 

人工芝球場の数はいくつ?

先日、テニスの伊達公子さんが
日本に多く見られる
砂入り人工芝コートを批判する記事が出ていた。
こちらは現在の世界の主流である
ハードコートへの移行を推進するものであって
ウィンブルドンセンターコートのような
天然芝(グラスコート)への移行を訴えているわけではないのだが、
これが野球になると
天然芝*1への移行の話になり、
この伊達さんの主張に便乗して
人工芝球場を批判する人もいるようだ。

さてここで問題です。
今年のMLBで人工芝のホーム球場は何ヶ所あるでしょう?
① 1
② 2
③ 3
④ 4




















知ってる人はもうおわかりですね。
正解は⑤の「どれでもない」だ。
MLB
ミネソタが現在のターゲット・フィールドに移ってから
10年近く
トロピカーナ・フィールド、ロジャース・センターの2ヶ所だったが、
2年前からチェイス・フィールドが、
さらに昨年オープンしたグローブライフ・フィールドに加えて
マーリンズ・パークも人工芝に変わったため
現在の合計は5ヶ所である。

 

アメリカの人工芝事情

人工芝をめぐるデマ

MLBの人工芝事情に関しては
どうにもデマ情報が多い。
たとえば昨年2月下旬ごろには
某「喝!」の解説者が
MLBの球場は人工芝が多い」などとでたらめを言ったらしく
ネット上ではかなり批判されていたのだが、
その批判している人の大半も
MLBの人工芝は2or3ヶ所」と情報が更新されておらず
老害」を全く笑えない状況である。
もっとひどいのになると
MLBの人工芝はタンパベイだけ」と大嘘を拡散する人*2
MLBNFLは人工芝を撤廃しようとしている」と言い出す
自称スポーツアナリストもいるようだ。
またここからもわかるように、
日本は感情的なアンチ人工芝がやたらと多い。

 

現在のアメリカの人工芝

MLBで最近増えた3ヶ所は、
いずれもShaw Sports Turf社のB1Kを採用している。
売りの一つである廃棄物の環境破壊抑制については
実際に廃棄された後じゃないとわからないだろうけど、
野球専用になっている芝の性能の方は
そこそこ評判がいいらしい。
日本もいくつかの球場で国産の野球専用人工芝を採用しているが、
これがさらにB1Kかそれ以上に進化できれば
状況は変わってくるかもしれない。

またアメリカのマイナーリーグ独立リーグ本拠地は
天然芝がほとんどだが、
最近は人工芝に変えるところも出始めている。
ニューヨークのMCUパーク*3のように
多目的使用のため人工芝に変えたところもあるが、
大半は大学や高校と併用するためのようだ。
大学野球のホームも人工芝は少なくない。
こちらはさすがに金をかけられないのか
採用されるのはフィールド・ターフなどだ。

先ほど少し名前を出したNFLも見てみよう。

NFL芝

NFLでは2000年代中盤から
ターフ・トゥと呼ばれる人工芝の弊害が叫ばれていたはずなのだが、
人工芝は減るどころかむしろ激増している。
そのほとんどは開閉式を含めたドームか寒冷地で、
天然芝を使いたくても使えない、
育てたくても芝が育ちづらいスタジアムだ。
ラスベガスはちょっと変わっていて、
併用するNCAAのときは人工芝を用い
NFLのときのみ天然芝を運び込む
札幌ドームに近い形式をとる。

ここから総合すると
アメリカの考え方は非常にシンプル。
基本は天然芝だが
気候や利用数など何らかの理由で
天然芝を維持するのがあまりに難しいなら人工芝

こういう選択をしていることになる。

 

日本の場合

気候と利用数の問題

日本の場合、
アメリカで人工芝を採用される理由が
ほとんどの球場に当てはまってしまう。

まずは利用数の問題だ。
大学・高校・社会人全てが使用する
神宮球場ほど極端じゃないにせよ、
維持費や自治体の建設・使用目的などに対して
制約がアメリカよりはるかに大きい日本の球場は
プロ専用にするのが難しい。
MLBの球場も
野球専用を謳いながら
実はコンサートなどの多目的使用は少なくなく、
特に1990年代以降の新古典主義球場ラッシュを担った
ポピュラス社は
「多目的使用可能な専用スタジアム」をコンセプトに
アメリカの野球場やイギリスのサッカースタジアムを
設計している。
最近の日本で言えば
亀岡のサンガスタジアムなどが同様のコンセプトだ。
つまり
よく日本の球場で批判にあがる「多目的使用*4」は
野球専用の設計をしたうえで多目的使用を可能にすれば
MLB球場と同じ仕様になる。
むしろ問題なのは
マチュアや一般利用の多さではないのだろうか。
この点は実際に統計を取った研究を見てみたい。

そして気候。
プロ野球ではあまり見ないが
Jリーグだとしばしば芝枯れが問題になっている。
芝枯れは客席部分を屋根で覆ったスタジアムに目立っていて、
アメリカで経験を積んだグラウンドキーパーですら
苦戦すると聞く。
理由は日照時間や空気の滞留によるところが大きいとか。
野球で怖いのはMLBで人工芝になったのと同じ
開閉式ドームだろう。
開閉式天然芝になるエスコンフィールドでは
芝枯れが起こらずに済むのか。
たとえエスコンフィールドで芝の維持が可能だったとしても、
北海道よりはるかに高温多湿の本州でも同じ手法が通用するのか。
アメリカでも人工芝に切り替えている開閉式ドームは
比較的涼しいシアトル、ミルウォーキーではなく
かなり暑い地域に集中している。

日本という国の問題点

これらのことから想定される日本の問題点は
日本はあまりにも芝が育ちづらいのではないか」ということ。
そうでなければ、日本の球場には
なぜこんなにも内野が土の球場が多いのだろうか。
土俵などのように
芝生ではなく土の文化があるのも
結局は芝が育たないからではないのか。
日本という国は欧米と比べて
夏は蒸し暑いうえに雨が非常に多く
冬は寒さはそれなり程度だが雪が非常に多い
日本で天然芝を使わない理由が
「気候の関係で日本芝・西洋芝問わず天然芝が育たない」
「育つようにしても雨と猛暑で試合を開催できない」
ことにあるとすれば、
今のところ人力ではどうすることもできない
日本の天然芝至上主義者、人工芝アンチは
この点から目をそむけてはいけないのだ。

*1:外野のみ天然芝も当然含む

*2:野球関係者やスポーツライターではないものの、10万以上のフォロワー(フォロー返しの習慣でかき集めたのかもしれないが)がいる人間が野球を知らない人たちに嘘を拡散し続けているのは大いに問題

*3:ニューヨーク・ペン・リーグのホーム。元々は天然芝だったが2013年から人工芝

*4:なお日本の多目的ドームは札幌ドーム以外、アメリカで新古典主義が広がる前に起工している