スポーツのあなぐら

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巨人が「強奪」をやめたとき

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「『育成の巨人』へ帰れ」

今年の巨人は、FAで丸佳浩炭谷銀仁朗を獲得、
さらに岩隈久志なども獲得とかなり精力的に動いている。
これで2013年以降は毎年FA選手を獲得したことになる。
それでいて優勝からは4年連続で遠ざかっているため、
「補強は一切せずにひたすら育成しろ」
という声もかなり強くなっている。
そういう時に引き合いに出されるのは
他球団なら広島や西武、日本ハムなのだが、
「清武時代に戻れ」という過去の記憶を持ちだす人も多い。
たしかに、巨人は2008~10年オフにかけて
「強奪」を控えるようになった。

 

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それまでの2005~07年は
3年間でFA選手4人、他球団在籍の外国出身選手を5人獲得している。
逆に小久保、上原が流出しているという事情はあるが、
3年間で1年あたり3人の獲得というのは
近年にもないペースだ。
特に外国出身選手に出て行かれたチームのファンからは、
「代価が払われている今の方がまだまし」
と言われてもおかしくはない。
「育成の巨人」を賛美する人は
どういうわけかこの時代の記憶を喪失しているが。

それが2008年以降は、一応「強奪」という形にはなるが
自由契約にも近かった藤井秀悟だけ。
他球団から強奪しない「育成の巨人」とは、
実のところ2008年以降の3年間のことでしかない。
もっともドラフトでは、
希望枠制度がなくなった後に
長野久義澤村拓一菅野智之に逆指名させているのだが。
もっと言えばこの3年間のFA宣言は海外か残留前提の選手が多い。
単に獲れる選手が少なかっただけではないかとも見える。

しかしその3年間でチームはどうなったのだろう。

現実の2011年

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結論から言うと、チームはかなり弱体化した
ちょうど2008年には何人かの選手が台頭したのだが、
その後に新しく出てきた選手が少ない。
制度にない逆指名で獲得した長野、澤村を除くと、
2年目以降の低迷から復活した金刃と
足は速いが出塁率が低い藤村だけになってしまう。
一軍の投手で二番目に若い東野はこの年から急激に劣化した。
打線は高齢化が加速し、
統一球の導入も手伝ったのか、
ベテランの落ち込みと若手の伸び悩みが同時に訪れていた。
2011年にセンターから外された松本は二軍でもこの状態だったのだが、
やはり「一軍で我慢すれば良くなっていた」とでも言われるのだろうか。
あと、形としてはスタメンを奪ったのが同い年の長野になるんだが*1

この時点での二軍有望株は中井と橋本になるか。
中井は2013年にセカンドスタメン定着したところで怪我、
橋本はに書いたように一軍でバッティングが伸びなかった。
大田は5月ごろから外野にコンバートされており、
二軍でもまだ三振がやたら多い状態。
センター固定で使われていた理由は
今の大田を見ると何だか納得がいく。
他は年齢的に全盛期を迎えていた隠善と加治前を
代打要員以外にもう少し使ってほしかった、
と言えなくもない。
一方の投手は中堅からベテランに近づいてきた選手が多い。
若い選手も2013年以降の伸び方を考えると、
統一球の恩恵を受けた選手が大半だったようにも見える。
翌年ブレイクしかけた高卒1年目の宮國椋丞はこの年二軍4試合。

「強奪」に潰された若手はいずこへ

巨人は2008年の時点で
一軍に30歳以上のベテランが多く、
二軍に23~25歳の選手がそろっていた。
そこで18歳の高校生を獲り5~7年の年齢差を作っておく
という野手戦略自体は、なるほど理にはかなっている。
ただ、2011年になると中堅層はスタメンを奪うまでには至らず、
高卒3~4年目の若手はまだもう少しかかる。
しかも衰えたベテランのポジションと若手のポジションが
いま一つかみ合ってないという状態。
高卒生え抜きさえスタメンとローテにいれば勝てなくても楽しいというのは
ごく一部の若手至上主義のファンと
なぜか高校生にしか興味のないドラフト評論家ぐらいだろう。
そんな中での2011年オフの野手強奪は村田だけなのだから、
中井は多少機会を奪われたと言えなくもないが、
橋本は機会を奪われることなど当然ないし、
ましてやコンバートから数か月経過している大田もありえない。
そういえば村田を獲得した当時、
「大田が潰される」という声は大量に聞いたが、
「中井が潰される」の声はほとんど記憶にない。
ただの記憶違いならいいのだが。

投手はそもそもいくらいても足りないものだ。
FAのベテランより下にいる若手のほうがよさそうなら
そちらが優先的に使われることは多いし、
若手を早く投げさせすぎて壊すようでは
選手にもチームにも大きなマイナスでしかない。
のちにある程度使われた選手も多く、
強奪で潰されたと言える選手はいない。

今年の「大補強」の意図を考えてみる

最後に、現段階での「大補強」の意図を私なりに読んでみよう。
現在の巨人のチーム状態は2011年などよりも、
かつて大補強をした前の2005・6年ごろに近い。
それどころか、今後打線の核になりそうな選手が
ファーストの岡本和真に
年齢的にショートでは危なくなってきそうな坂本だけとなると、
阿部、二岡→坂本のようにセンターラインに揃っていない分、
今のほうがつらいとすら言えるかもしれない。
今の若手・中堅のセンター候補に
長打力まで兼ね備えた選手はさすがに見当たらない。
丸を何としても獲得したかったのはそうした事情もあったのだろう。
炭谷はよくわからないのだが、
巨人の投手陣は小林誠司に全幅の信頼を置いているようなので、
小林が使えない状況になってしまったときなどの保険か、
あるいは小林の上位互換扱いなのか。
炭谷獲得で立場が一番危なくなるのは
若手・中堅よりも今年最年長だった小林な気がしてくる。
中島宏之は金額的にはたしかに大補強だが、
そこまで大補強だろうか。
これで岡本のスタメンが奪われるとはとても思えない。
代打要員と岡本やビヤヌエバが使えなくなったときの保険だろう。
保険に15,000も支払えるあたり「金満」なのは事実だがね。

投手のほうは菅野以外が先発・リリーフともかなり不安定。
実績のある山口俊、田口麗斗らに
プロスペクトの高田萌生や
外国人などをローテに入れても数は全く足りていない。
若い(高卒)投手が1人ローテに入れば
今後数年間の投手陣は毎年安泰だという風潮が相変わらず根強いが、
それは巨人の東野や宮國、今年の田口などでも否定されている。
岩隈1人の補強に目くじらを立てる方が間違っているのだ。

一方で、今年の巨人は2008年に近い戦術も用いている。
ドラフトで徹底的に高校生を指名したこと*2だ。
ただしその後の巨人は「強奪」を控えて弱体化し、
「育成」はドラフトの逆指名で補うのが関の山だった。
今はさすがに逆指名をさせるのは無理がありすぎ、
ドラフト抽選は3年間で6戦全敗。
これらの要素を組み合わせると、案外
「育成の巨人」と「同じ轍を踏まない」こと
「強奪」の裏コンセプトなのかもしれない。

*1:実際にはファーストから回った高橋由伸に奪われたと言うほうが適切だとは思う

*2:2008年は1~5位まで高校生、今年は2位以下が全て高校生。本指名の高校生は投手3、野手2で同じ。