①やけに人材が固まっているあるポジション
②苦戦しているショート後継候補
③「高卒投手が少ない」とされるジャイアンツの現実
戦力・ドラフト傾向分析
過去10年の成績
ここ10年で優勝は4回あるが
日本一からは10年間遠ざかっている。
外部からの補強がうまくはまらないと
優勝できない構図は
もう20年以上変わっておらず、
補強の効果も2年程度しか持たないことが多い。
2010年代中盤は
失点はある程度抑えられる一方で
打線の状態が上がらなかったが、
ここ2年は
得点力の落ち込み以上に
失点が増えている。
2023年の成績
交流戦で作った貯金を
前半戦終了までに全て吐き出してしまった。
打線の状態がかなり悪くなり、
投手陣の調子も好転しないので
チーム状況もなかなか良くならない。
過去15年のドラフト傾向
「育成の巨人」の一翼を担ってきた
逆指名制度が廃止された中での逆指名も使えなくなり、
最近は大競合への特攻が目立っていたが全敗。
3球団以上競合は
1992年の松井秀喜を最後に15連敗で
1位指名限定でも
2位以下も重複抽選だった時代を含めても
歴代最多記録を更新中だ。
昨年の浅野も
一番人気だが競合は2球団である。
2012年以降の2位は大学生が多く、
社会人3人は全員高卒3年目。
3位指名は比較的高校生が多かったが
ここ2年は大学生投手になっている。
高校生偏重と大卒・社会人偏重の年、
投手偏重と野手偏重の年とが
何度か連続で発生している。
数年間の合計でバランスをとっているのだろうか。
高卒投手の支配下指名は
ドラゴンズの24人、ホークス22人に次ぐ3位で
育成指名もホークスと3人差の2位。
原監督再就任後の2018年以降に限定すると
支配下指名が全チームトップ、
育成指名もホークスと並んで最多タイである。
戦力の構成を見ると、
長く活躍している選手の中に
野手は打力の高い選手が、
投手は先発が少ない。
大田、一岡、平良と
本格的な活躍が他球団の選手も何人かいるので
表の見た目より
戦力は揃っていない。
野手補強ポイント
野手についての基本的な考え方
基本的な前提条件はこうだ。
- 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
- 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
- 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない
この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はないのだ。
過去10年の打撃成績
2014年以降低迷していた打力が
2019年から急上昇。
前年からスタメンに定着した岡本和に
丸の加入、大城の台頭*1などが
大きな要因と思われる。
今は
FAや外国人ではカバーしづらいポジションが
急務になっているので、
それらのポジションで
バッティングの優秀な選手が早々に開花するか
他のポジションに
とてつもなく優秀な選手が複数現れないと
今後はかなり苦しくなりそうだ。
2023年野手陣の状況
HRがリーグトップだが、
序盤に比べると二塁打がかなり減った。
また今シーズンは四球がかなり少なく
打率はリーグ2位なのに出塁率が5位。
走者が塁にたまらないことが
HR数を生かしきれない原因にも思える。
岡本和、秋広、坂本、中田と
バッティングは好調な選手が多いが、
坂本をはじめ故障者が出やすくなっているうえに
ポジションの重複もあるので
チーム全体の打力にはそこまで直結できていない。
キャッチャーは山瀬が好調だが
大城も打てる選手なので
大城が不調に陥るか怪我をしないと
山瀬や岸田の出番は限られる。
外野の若手も
高卒1年目としてはまずまずの浅野に
萩尾と岡田と好調者は多い。
丸、ブリンソン、梶谷の状態が
大城より良くないため
こちらはもう少し出番が増えそうか。
逆に内野の若手は苦戦している。
昨年悪くなかった増田陸と湯浅が不調で
菊田は岡本和がいるのでポジションがない。
一軍で打てていないショートも
ルーキーで二軍を経験していない門脇はともかく、
中山は2年連続でイースタン平均を上回っているため
二軍で中山を上回る結果を出し続けないと
その立場を奪い取るのは難しいだろう。
一方の門脇は守備が既に一軍レベルということで
こちらのハードルもなかなかに高い。
補強ポイント
補強ポイントではなく
補強ポイントにならないポジションを先に考えると
これはファーストだろう。
ショートの守備が衰え怪我も増えた坂本や
年齢を重ねた後の岡本和が入る可能性ももちろんだが、
それ以上に重要なのは
有望な若手がファーストに入る可能性があることだ。
秋広はもともとファースト起用が多く
外野にも有望な若手が少なくとも3人はいるので
世代交代が完了した際には
秋広がファーストに回ることも考えられる。
菊田は岡本和がいる間はサードが空かないため
こちらもファーストに入る可能性がある。
このようにファースト候補の若手が多いので
今年新たにファースト候補を上位指名するのは
かなり微妙な選択になるのだが
チームやファンはどう判断するだろうか。
補強すべきポイントはセンターライン。
センター候補に関しては浅野と萩尾を指名したため、
残っているセンターラインは二遊間とキャッチャー。
大城がいて
岸田や山瀬などが控えているうちに
高校生キャッチャーを上位から中位で獲っておくのは
悪くない選択になる。
門脇と中山がほぼ一軍にいるショートが
少し難しいところで、
三軍から二軍へ上げられる選手がいない場合は
すぐに二軍で使っても充分戦える
高校生か大学生のショートを
支配下で指名してもいい。
投手補強ポイント
投手についての基本的な考え方
野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される
- 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
- より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける
このような手法は
以前にもましてとりづらい。
それよりも
- 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
- 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない
これらがどのチームでも最重要課題になる。
過去10年の投手成績
2010年代中盤は安定していた失点数が
昨年激増。
それまで良かった与四球が増え始め、
被HRもやや増加傾向と
優勝した2019年ごろから
このような結果につながる兆候は見えていた。
2023年投手陣の状況
奪三振率、四球、被HRなど
どの数字も突出してはいないが
満遍なくリーグ下位に位置している。
菅野が復帰した先発陣は
調子の上がらない赤星や若い井上、
支配下登録された松井などを加えれば
何とか頭数は確保できる状況。
ただリーグが投高打低なので
この数字ではどうしても不安定な感がぬぐえず、
加えてリリーフ陣がしばしば打ちこまれるため
勝ちにつながっていない。
補強ポイント
外部から高卒投手の指名と育成を
また強く求められている昨今。
しかし球速の低下など気になる点もあるが
今のところ一軍で使われている
25歳以下の高卒は5人もおり、
とりあえず戦力になっている選手の数を見ると
ジャイアンツはまだ育成できているほうだ。
高卒投手重視のドラフトを続けているのだから
当然ではあるんだが。
ただ、
だからといって高卒をさらに大量指名したとしても
戸郷のように2、3年で戦力になるのは
ほんの一握りにすぎないし、
5年目で横川と直江が加わったところで
その間に4人以上戦力が減っては
5年後のチームにもプラスにならない。
結局のところ
投手陣を再建するには
短期間で戦力にできる大学生や社会人を獲得して
育成しなければならないのだが、
ジャイアンツは
即戦力の指名と育成が非常に苦手である。
この弱点を克服しないことには、
たとえ甲子園のエースを大量指名して育成できても
それ以外のローテもブルペンも足りなくなって
優勝が遠くなるだけだ。
たしかにそういう意味では、
大量の高卒ドラ1投手を獲得した80年代を見直して
野手が一番人気の年にあえて投手を獲りに行く選択も
一考してみるといいのかもしれない。
*1:吉川は2019年に関しては怪我で離脱している