スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

2008・2013年のドラフトは5年後・10年後の2018年に結びついたのか

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「ドラフトは10年先のチームを見ろ」の「定説」は正しいか

「ドラフトは今現在じゃなく10年先のチームを見ろ」。
これはドラフト評論家だけではなく
プロのスカウトも口にする言葉である。
また最近は
ドラフト評論家、元スカウトなどによる
ドラフト採点への批判として
このような書き込みを非常に多く見かけるようになったが、
なぜか
自分たちが批判している評論家と
全く同じ主張である。
「5年先、10年先じゃないとわからない」と言いながら
5年後、10年後の結果の検討を
自分では行わないのも同じだ。

このブログでは
過去のドラフトを年別に振り返ることも
多少やってきてはいるが、
そもそもドラフトの本義は
チームを強化し順位を上げることであり、
ドラフトによるアマチュア選手獲得と育成は
チームを強化するための数ある手段の一つ
にすぎない。
なのに
ドラフト評論・採点における「ドラフトの成果」は
「大成功の選手を1人でも輩出すること」しか見られず、
チームの成績や
大物選手を輩出すること以外でチーム成績に結びつく成果は
すべて排除されることがほとんどだ。

それでは
5年前・10年前のドラフトは
ちょうど5年後・10年後の将来のチームに
どのような結果をもたらしたのだろうか。
今回は
2018年から5年前・10年前のドラフトにさかのぼり
指名選手の2018年の成績とチームの順位を
見ていこう。

 

「10年先を見たドラフト」の5年後・10年後

5年後戦力になっていた高卒選手は

ドラフトにおいて
「5年後・10年後を見据えろ」と言う場合、
大学生だと5年後・10年後は27歳と32歳。
社会人は
大卒2年目でも5年後ならまだ29歳、
高卒3年目では10年後でも31歳と
まだまだ働き盛りな年齢のはずなのだが、
ドラフト採点*1では
大学生・社会人中心の指名は
「来年のことだけを考えた指名」、
高校生中心の指名は
「3~5年後の将来を見た指名」と言われる

ならちょうど5年後の2018年には
どのくらいの高卒選手が
どの程度戦力になっていたのだろうか。

2018 5年目

2013年指名の高卒選手は
5年後の戦力になった選手が非常に多い。
しかも
一軍実績もすでに3年以上の選手が大半で、
プロ入り後の成長速度がものすごく早かった。
強いて弱点を挙げると、
まず右に記したように
高卒選手の成長速度とチームの順位とに
相関は全く見られないということ。
もう一つは
この記事を書いたのが2022年終了後なので、
この選手たちの6年目以降の活躍度も
人によってばらばらだとわかっていること。
森や松井のように
球界を代表する存在として活躍している選手もいれば
怪我などもあって低迷期に入ってしまう選手、
さらには
5年目と同程度の働きは見せるも伸び悩んだことで
ファンからのヘイトがやたらと高くなった選手など
実に様々なパターンがある。

 

10年先のチームに貢献した選手は誰か

もう一つの「10年先」では
どの程度の選手が戦力になっていたか。
こちらは出自関係なく見てみよう。

2018 10年目

2008年指名で
10年後も主力になっているのは
ほとんどが高卒選手。
これを見て
大御所ドラフト評論家のごとく
「やっぱりドラフトは高校生だ」となるのは短絡的で、
他の年と比較してみると
高卒選手の数はほとんど変わらない。
この年に関してはむしろ
10年後も戦力になった大卒・社会人出身が極端に少ない
というのが正解だ。

もう一つの特徴はFA権。
この時点で既に
大野と野上がFA権を行使して移籍しており、
高卒勢でも
浅村と西がこの年限りで他球団へ移籍した。
このため
チームの順位も若干あいまいになっている。

 

パリーグチーム別

1位 埼玉西武ライオンズ

2018L

この2回のドラフトで
長打力も高い主力打者を3人獲得し
5年・10年後の優勝の原動力としたライオンズ。
二番手キャッチャーも獲得しており
野手は申し分のない大成功をおさめた。
一方で
投手は野上がすでにFA移籍、
豊田は1年目の酷使もたたったか
5年目は全く戦力にならないと
かなり厳しい結果になった。
浅村もシーズン終了後にFA権を行使、
移籍している。

 

2位 福岡ソフトバンクホークス

2018H

摂津が1年目から
リリーフ、先発でフル回転した2008年のホークス。
金と二保も一軍戦力へ成長したが、
2018年は
摂津に衰えが見えて
二保も登板数が多いものの失点も多く
10年後の戦力にはあまり結びつかなかった。
2013年のほうは
1年目から活躍していた森、
早くから一軍戦力になっていた上林に加え
加治屋、岡本、石川も一軍で躍動。
社会人中心ながらも
22歳以下をかき集めた指名が
5年後に見事結実した。
…と言いたいところだったが、
まだまだ若い加治屋、岡本に
20代前半の上林までもが
この後低迷してしまい、
改めて選手育成の難しさを感じさせる結果となっている。

 

3位 北海道日本ハムファイターズ

2018F

1年目から一軍戦力になっていた大野と谷元、
高卒3・4年目で
ほぼ一軍に定着した杉谷、中島と、
2008年のファイターズは
ドラフト自体はかなりの結果。
ただ10年後となると
大野と谷元はFA・トレードで移籍、
中島は守備型で
ムードメーカーの杉谷も
一軍スタメンには到っていない、と
やや微妙な結果にも思える内容だった。
この年5年目になる選手たちも
渡邉が台頭し
浦野、岡、高梨が戦力になったものの
リリーフ実績がある白村とともに
いまいち不安定な印象が強い。

 

4位 オリックスバファローズ

2018Bs

エース格に成長していた西は
この年も先発ローテの柱として活躍。
ただしこのシーズン終了後に
FA移籍していった。
2013年の指名選手
吉田一がリリーフの主力に定着し
若月はバッティングはいまいちだったものの
正捕手の地位を確立していっている。
1年目から先発ローテに入っていた東明は
この年防御率は良かったが
勝ちがついてこなかった。
指名全体では
知名度の高い選手がそろった高卒野手が
若月以外戦力にならなかったのが痛かった。

 

5位 千葉ロッテマリーンズ

2018M

支配下指名がいまいちな結果に終わったかわりに
育成指名から西野と岡田が成長した2008年ドラフト。
ただ2018年は
西野も岡田もかなりの不調で
一軍戦力とはならなかった。
岡田はこの年限りで引退。
一方の2013年組は
既に実績豊富な石川と二木に
毎年100打席程度は与えられていたものの
結果を残せていなかった井上が29歳で開花し
主砲として一軍に定着した。

 

6位 東北楽天ゴールデンイーグルス

2018E

チームはリーグ最下位に終わったが
日本一に輝いた5年前の指名から
戦力になっていた選手は多い。
2年目からクローザーで活躍していた松井以外にも
長打力が期待されている内田と
先発候補の古川が
一軍でかなり起用されていた。
2人はその後イーグルスの戦力にはなっておらず、
チームが低迷したから使われたと見るべきか。
10年前の指名だと
辛島はすでに主力として長く活躍している選手。
内田の前に
主砲候補として期待されていた中川は
ベイスターズへ移籍している。

 

セリーグチーム別

1位 広島東洋カープ

2018C

この年リーグ三連覇を達成したカープだが
10年前に獲得した主力は少ない。
中田は4年目に一軍へ台頭し
前年もリリーフの主力として活躍しているが
むらが極端に激しく、
数年に一度しか戦力になっていない。
岩本は控え要員に回って久しく
出場試合数もあまり多くない。
大当たりだったのは
ちょうど5年前の2013年ドラフトで、
大瀬良と九里は先発ローテに定着し
田中が5年間ショートスタメン。
前年先発ローテに入っていた中村は
結果を出せなかった。

 

2位 東京ヤクルトスワローズ

2018S

4年目から主力キャッチャーとなっている中村は
この年も正捕手。
バッティングのほうは4年ほど不調が続いており
打撃成績が良くなるのは翌2019年から。
5年目の選手では
西浦が正ショートに定着し、
藤井は「戦力」基準には達しなかったが
控え要員としてそこそこ一軍に出場した。
やや不調だった秋吉は
シーズン後ファイターズへトレードされ
杉浦と再びチームメイトになっている。

 

3位 読売ジャイアンツ

2018G

2008、13年ともに
高校生偏重の指名となっていたジャイアンツ。
ジャイアンツでなかなか結果を出せなかった大田は
前年からファイターズへ移籍し、
センター候補として一軍に定着していた橋本は
2018年は怪我で全く出場できず
金銭トレードでイーグルスへ移籍した。
2013年支配下指名選手では
5年目の時点で移籍しているのが奥村と平良。
どちらもFAの人的補償だ。
平良はちょうど2018年から
一軍での先発起用が増えた。
守備力を買われ正捕手となっている小林に
2年目に早くも先発ローテに入った田口と、
チームに残っている選手も
重要な戦力になっている。
ただ小林は
大城卓三の加入などもあって出番を減らし始め、
田口もこの年から数年調子を落とした。

 

4位 横浜DeNAベイスターズ

2018By

2008年は
当時の戦力不足も手伝ってか
一軍で使われた選手は多いのだが
結果を残せた選手が少なかった。
10年後NPBに残っていたのは山崎のみ。
2013年は
1年目から三上がリリーフで活躍し、
砂田が2年目には戦力になっている。
バッティングがいまいちではあるものの
嶺井も一軍主力。
平田と関根も
2年目から使われていたのだが
この時点では安定感に乏しく
かなり伸び悩んでいる。

 

5位 中日ドラゴンズ

2018D

2球団競合で獲得した野本は
ある程度使われたが一軍スタメンに定着できなかった。
バッティングが伸びなかったことに加えて
センターを守れる守備力がなかったのが
大島洋平平田良介に後れをとる要因となったか。
早くから一軍で使われていた伊藤をはじめ
この年のドラフトは
戦力となった年数が非常に短かった。
5年後の2013年は
又吉と祖父江が即戦力。
2022年の時点で
2人とも9年連続戦力となる活躍ぶりである。
どちらの年も
支配下指名の後半3人が地元・準地元枠なのだが
上位の伊藤、鈴木も含め
成功する選手があまり出ていない。

 

6位 阪神タイガース

2018T

17年ぶりの最下位に終わった
2018年のタイガース。
しかし5年目に戦力となっていた選手は多く、
先発ローテに定着していた岩貞に
正捕手の梅野、
ファースト、外野、サードで
ユーティリティ的に使われた陽川と
成績も悪くない。
前年からリリーフに回った岩崎が
やや不調だったのは痛かったか。
10年目の選手では
前年までセカンドレギュラーだった上本が
大怪我で離脱。
かなりの好成績を残していたものの
この年の戦力とはならなかった。

*1:少なくとも複数の媒体で採点をする人の場合