スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

ワールドカップから考える「専用スタジアム」の現在

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ここでは
あるスポーツのファン、
特に屋外スポーツのファンが
自分の好きなスポーツに対して求めることが多い
「専用スタジアム」について、
W杯での実態から考察していきたい。
ただしW杯といっても、
昨年のカタール大会でもなければ
オーストラリアで行われた2023年女子大会でも、
台湾での野球U-18W杯や
バスケットボールでもない。
9月からフランスで行われているラグビーのほうだ。
秩父宮建設計画に対しては
神宮再開発そのものへの反対とともに、
多目的化への反対と
ラグビー専用の現秩父宮」存続なども
一部で叫ばれているが、
こうした声をあげる人たちが言うように
「専用スタジアム」を「軽視」するのは
日本だけなのだろうか。
2019年の日本大会を除いた
2015、2023、2027年(予定)を見てみよう。

 

ラグビーW杯と「ラグビー専用」スタジアム

2015年イングランド大会

2015イングランド

イングランド大会では
イングランド代表が使用するTwickenham Stadiumや
ウェールズ代表のPrincipality Stadiumなどが
使用されたが、
Principalityはかつて
サッカーのウェールズ代表と併用されており、
Twickenhamはサッカーでは使われないものの
コンサートやアメリカンフットボールに用いられるため
どちらも完全なラグビー専用使用ではない。
このほか
サッカーのイングランド代表が使う
Wembley Stadiumに加えて
サッカー・プレミアリーグの本拠地が多く、
ラグビーのリーグ戦で使われているのは
わずかに2ヶ所で、
どちらも収容人数が1万人台にとどまっている。
London Stadiumが改修され
ウェストハムのホームになったのはこの翌年からだ。
芝はほとんどがハイブリッド芝。
Kingsholmは2021-22から人工芝となったため
2015年当時の芝が天然芝かハイブリッドかまでは
わからない。

 

2023年フランス大会

2023フランス

フランス大会には
ラグビー専用のスタジアムは一つも使われていない

開幕戦や決勝が行われるStade de Franceは
1998年サッカーW杯に合わせて作られた
トラックを隠せる可動式の陸上競技場で、
2024年のパリ五輪メイン会場にもなっている。
映像で見る限り、
球技で使用する際の観客席最前列の距離感は
日本で言うと札幌ドームに近いか。
そしてそれ以外の8会場は
全てリーグ・アンのホームスタジアム。
ラグビー代表の試合に用いるスタジアムこそ多いが
リーグ戦で使用されるスタジアムが一つもない。
秩父宮のモデルとなっている
Paris La Défense Arenaのような人工芝はないものの
ほとんどのスタジアムがハイブリッド芝。

 

2027年オーストラリア大会

2027オーストラリア

ヨーロッパでは見られないオーストラリアの特徴は
クリケットでも使われるスタジアムが多いことだ。
それどころか
ラグビーやサッカーのリーグ戦にも
円形フィールドのクリケット場が多数使用されており、
W杯では2ヶ所が使われる予定
である。
陸上競技場ほどではないが
観客席最前列からはそこそこ距離が離れている
現在ホームとするチームがラグビーだけなのは
キャンベラとタウンズビルの2ヶ所だが
どちらもサッカーやコンサート等に用いられるため、
この大会でも
ラグビー専用使用のスタジアムは一つもない。
またOptus Stadiumは現在人工芝。
4年後の大会では
イングランドやフランスのリーグ戦同様に
人工芝で試合を行うのか、
あるいは2026年のサッカーW杯のように
期間限定で天然芝フィールドを作るのか。

 

「専用スタジアム」の現実

ラグビーW杯におけるラグビー専用スタジアムの比率

今回は2019年日本大会以外の3ヶ国を見たわけだが、
3ヶ国計34会場のうち
完全な「ラグビー専用スタジアム」と言えるのは
たったの1ヶ所しかなかった。
しかもその1ヶ所は最も収容人数が少ないスタジアムである。
ラグビー専用」の定義を
ラグビー以外のスポーツでほぼ使わない」に拡大すれば
Twickehnamも「ラグビー専用」にはなるが、
ほとんどの会場は
近年日本でも広まってきた
サッカー、ラグビー等の球技中心で
さらにコンサートイベントなどでも使用可能な
球技スタジアムである。
そもそも新秩父宮の件でも
「スポーツ以外での使用」に激怒している人が多いため、
現在の秩父宮
実際にTwickehnamのような運用にしたら
やはり激怒する人が大半だろうし、
万が一「イベントで芝が損傷した」ともなれば
怒り心頭どころではなくなるに違いない。
秩父宮でもしばしば見られる
ラグビーでの使用過多による芝の損傷に対しては
施設管理側の「怠慢」を叩くばかり
なのが
いささかひっかかるが、
いずれにせよ
Twickehnamをはるかに上回る厳格な専用使用を
要求しているラグビーファンが
日本には少なくないのはたしかだ。

 

サッカースタジアムは「サッカー専用」じゃなければならないのか

さてここまで根気強く読んできた
サッカーファンの人は
はたして何かを考えていただろうか。
今回見たプレミアリーグリーグアンなどのスタジアムが
全てラグビーでも使用可能ということは、
逆に言えば
これらは全てラグビーでも使用可能ということ、
すなわち
イングランドの「サッカーの聖地」Wembley Stadiumをはじめ
これらの国にサッカー限定の大規模スタジアムは存在しない
という意味になるのだ。
日本のサッカーファンには、
前述の多目的使用可能な球技スタジアムの増加を求め
近年の傾向を歓迎する人が増えてきた一方で、
埼玉スタジアムのような
サッカー以外のスポーツ、イベント等を一切行わせない
大規模サッカー専用スタジアムとサッカー専用使用を
「世界の常識」として全国各地に求める人も
かなり存在している。
しかし
このタイプのスタジアムが使用可能な球技が
サッカー以外あまり人気のない国ならともかく、
どちらも日本並かそれ以上に充実している国では
大規模スタジアムが
サッカー、ラグビー等の各球技併用になっているのは
当たり前になっているのだ。
国土が極端に広くなく
スタジアムを大量に作れない国ならなおさらである。
ましてや
今までの日本で同様の役割を担ってきた
Jリーグ発足前後までに作られた各陸上競技場から
陸上トラック等を取り払った球技スタジアムの増加を
求めようというのなら、
偏狭な「自分専用」にばかりこだわるのは辞めて
球技に限らず各種イベントなども
それぞれの立地に合わせて共闘していくのが
ベストなのではないのだろうか。