カーター・スチュワートのNPB入り
先日、昨年のMLBドラフトでブレーブスから1巡指名をされていた
カーター・スチュワート・ジュニア投手が
ソフトバンクと契約したと発表された。
これはついにMLBに勝ったという単細胞な話ではなく、
今までその年での指名契約を拒否した選手がとってきた、
進学や進級、独立リーグなどの選択肢の中に
NPBが入るようになったというだけのことで、
もしNPBで活躍したら早い段階でMLBと大型契約する、
と考えるのが自然だろう。
スコット・ボラスのことだから、
全体8位指名の上限金額に対して
かなりふっかけたんじゃないかと勘ぐってしまう。
もっとも現在のMLBもMLBで、
ボラスの批判も真っ当と思うぐらいケチというか
安く使い捨てる傾向が強くなってきているので、
どっちもどっちという気もしないでもないが。
ところで、スチュワートが今年大学でプレーしていることは
公式発表や各ニュースではしっかり書かれているのに
あまり注目されていないように見える。
今シーズンのスチュワートのスタッツはこうなっていた。
M | W | L | IP | H | HR | BB | SO | R | ER | ERA | K/9 | K/BB | K-BB | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 13 | 2 | 2 | 74 1/3 | 41 | 3 | 26 | 108 | 26 | 14 | 1.70 | 13.08 | 4.15 | 28.3% |
Div1とはいえ、
NJCAA*1でこれぐらいだとどうなんだろうか。
素材はたしかだが四球もやや多く、
2、3年後を見たMLBの即戦力とは考えづらいようにも見える。
それもあって今年のドラフトを回避したのかな。
しかし、この選手が日本でどれぐらいやれるのか、
様々な意味で今後の試金石になるので、
面白い存在であることは間違いない。
さて、来週からはMLBドラフトが行われるが、
現在アメリカの大学でプレーしている
日本人選手は決して少なくない。
今回はそんな日本人選手を何人かピックアップしてみた。
ただし私はそちら方面の専門家でもなんでもないので
知らない選手もかなり多いと思うし、
知っているがここでは紹介しない選手も数多くいる。
もし情報があれば皆さんもどしどしコメントしていただけると幸い。
NCAA所属の日本人選手
Takahiro Yamada
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2017 | 59 | 12 | 1 | 0 | 0 | 11 | 9 | 0 | 0 | 1 | 0 | .203 | .220 | .300 | .520 |
2018 | 158 | 46 | 4 | 1 | 3 | 28 | 14 | 12 | 3 | 3 | 6 | .291 | .386 | .381 | .767 |
2019 | 156 | 41 | 8 | 0 | 1 | 25 | 32 | 15 | 1 | 0 | 5 | .263 | .333 | .431 | .765 |
高校(コロンバス・イースト高校)からアメリカでプレーしており、
現在はNCAAのDiv1、デイトン大学(Atlantic10)に在籍。
今シーズンはサードからセカンドに回っているようだ。
長打力がネックになりそうではあるが、
現在、MLBドラフトを目指すと公言されている日本人選手は
この選手だけだと思う。
今年のドラフトでどうなるだろうか。
山崎真彰
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018 | 178 | 55 | 9 | 0 | 2 | 13 | 23 | 2 | 2 | 5 | 4 | .309 | .393 | .392 | .785 |
2019 | 182 | 56 | 5 | 0 | 2 | 14 | 20 | 1 | 1 | 1 | 5 | .308 | .368 | .379 | .747 |
東京学館浦安高校から東京国際大学に進んでいたが、
2年春(2015年)を最後に名簿から外れた。
姉妹校であるウィラメット大学へ留学したと思われる。
現在、ハワイ大学(Big West、Div1)でショートとして活躍。
こちらも長打力はいまひとつで、
ドラフトという視点に立つと
24歳の年齢もネックになりそうだ。
浦田力樹
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2017 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | .000 | .000 | .250 | .250 |
2018 | 9 | 2 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | .222 | .222 | .364 | .586 |
2019 | 139 | 31 | 0 | 0 | 0 | 26 | 18 | 3 | 5 | 3 | 1 | .223 | .223 | .325 | .548 |
サンフランシスコ大学(West Coast、Div1)に在籍しているショート。
高校からアメリカへ渡っている。1997年生まれ。
過去2年間は控えだったが、
今シーズンからスタメンに定着するようになった。
牛丸京輔
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018 | 118 | 33 | 4 | 2 | 1 | 22 | 11 | 4 | 1 | 4 | 1 | .280 | .373 | .356 | .728 |
2019 | 178 | 60 | 8 | 2 | 3 | 21 | 12 | 4 | 10 | 3 | 3 | .337 | .455 | .386 | .841 |
シトラス大学でプレーしたのち、
NCAA Div2のカリフォルニア州立大学イーストベイ校へ編入。
外野全般を守るが、レフトに入ることが多い。
長打はやはりいまいちだが、足を使うことが多い選手のようだ。
大塚虎之介
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018 | 174 | 55 | 6 | 1 | 0 | 14 | 13 | 5 | 10 | 2 | 7 | .316 | .362 | .380 | .742 |
2019 | 171 | 49 | 7 | 1 | 2 | 25 | 24 | 9 | 3 | 2 | 1 | .287 | .374 | .402 | .776 |
NCAA Div1、サンディエゴ大学(West Coast)でプレーする外野手。
ランチョ・バーナード高校*2を経て現在に至る。
プロフィールによると、
父はパドレスとレンジャーズでプレーした元メジャーリーガーとのこと。
そう、近鉄などでも活躍した大塚晶文氏の息子である。
今シーズンは長打力の底上げをテーマにしていたのか、
三振と四球も増えている。
この他、NCAA Div3の大学に所属する選手もいる。
NAIA他所属の選手
留学する日本人選手の場合、
まずはジュニアカレッジなどでプレーした後、
より上の学年のリーグへ編入することが多いのだが、
NCAAではなくNAIA*3所属の大学へ進むケースも目立つ。
ここでは、NAIAなどで活躍している選手の一部を列記しておこう。
藤枝直孝(SS、サウスウェスタン・カレッジ(NAIA))
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018 | 171 | 59 | 8 | 1 | 1 | 12 | 19 | 6 | 13 | 5 | 3 | .345 | .421 | .426 | .847 |
2019 | 125 | 44 | 9 | 0 | 0 | 13 | 19 | 3 | 8 | 4 | 0 | .352 | .424 | .449 | .873 |
日大高校(2014年度卒)―モントレー・ペニンシュラ大
薄田翔太(2B、ジョージタウン・カレッジ(NAIA))
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 162 | 45 | 12 | 4 | 6 | 39 | 25 | 3 | 5 | 2 | 2 | .278 | .512 | .378 | .891 |
高校不明―シトラス大
1997年度生まれ、札幌羊ヶ丘リトルシニア出身
風間航(SS、ベルビュー・カレッジ(NAIA))
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 104 | 35 | 5 | 0 | 2 | 8 | 15 | 1 | 5 | 0 | 1 | .337 | .442 | .425 | .867 |
小山台高校(2015年度卒)―サセックス・カウンティ・コミュニティ・カレッジ
海野貴嗣(RHP、シエラ・カレッジ(CCCAA*4)
M | W | L | IP | H | HR | BB | SO | R | ER | ERA | K/9 | K/BB | K-BB | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018 | 16 | 2 | 1 | 32 | 22 | 2 | 10 | 29 | 8 | 5 | 1.41 | 8.16 | 2.90 | 14.8% |
2019 | 18 | 5 | 3 | 34 2/3 | 31 | 0 | 14 | 41 | 13 | 12 | 3.12 | 10.64 | 2.93 | 18.1% |
水戸葵陵高校(2016年度卒)出身
サラサル・アレキサンダー・英二(RHP、リバーサイド・シティ・カレッジ(CCCAA))
M | W | L | IP | H | HR | BB | SO | R | ER | ERA | K/9 | K/BB | K-BB | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 17 | 6 | 3 | 81 | 62 | 0 | 39 | 90 | 26 | 18 | 2.00 | 10.00 | 2.31 | 14.8% |
近江高校(2016年度卒)―天理大学
来年はキャンベルズビル大学(NAIA)でプレーするとのこと。
こうしてみると、
日本人選手は投手で活躍する選手が非常に少ない。
アメリカ在住の日系選手はBig West Conferenceに2人いるのだが、
こちらも活躍とまでは言えない状態である。
そういえば、以前NPBでドラフト指名された藤谷周平*5や高橋慎之介*6も
制球力など課題が多い選手だった。
単に留学を選択する選手に投手が少ないだけかもしれないし、
アメリカの大学野球が極端な打高投低だからかもしれないが。
そういう意味では、活躍してもリーグ平均を少し超える程度の
野手のほうが重症と言えなくもない…のか?
最近アメリカの大学でプレーした選手
寺嶋大賜
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016 | 199 | 59 | 9 | 1 | 0 | 12 | 17 | 7 | 8 | 4 | 0 | .296 | .352 | .382 | .734 |
2017 | 159 | 47 | 5 | 2 | 0 | 15 | 16 | 8 | 8 | 3 | 2 | .296 | .352 | .401 | .753 |
2017年までNCAA Div1のセントボナベンチャー大学(Atlantic 10)で
プレーしていた外野手。
青森山田高校では京田陽太と同期だった。
卒業後、昨年から日本ハムの通訳兼広報になり、
週刊ベースボールや日刊スポーツなどでも紹介された。
秋利雄佑
AB | H | 2B | 3B | HR | SO | BB | HP | SB | CS | DP | AVG | SLG | OBP | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2015 | 210 | 60 | 11 | 3 | 3 | 51 | 25 | 8 | 11 | 4 | 3 | .286 | .410 | .388 | .797 |
2016 | 200 | 58 | 11 | 4 | 2 | 37 | 24 | 8 | 23 | 2 | 4 | .290 | .415 | .398 | .813 |
Big westのカリフォルニア州立大学ノースリッジ校で
2016年までプレー。
MLBドラフト指名を目指しており、
2015年にBSの番組で取り上げられて話題になった。
現在は三菱重工名古屋不動の二番ショート。
といってもバント型ではなく、クリーンアップとして活躍している。
『グランド・スラム』によると
今年はNPBドラフト指名を目指すとのこと。
27歳の野手だとどれだけ実力があっても
NPBではまず指名されることがなく、
厳しい道だと思うが
どれだけアピールできるか注目したい。