スポーツのあなぐら

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東京ヤクルトスワローズ2024年ドラフト補強ポイント

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①「即戦力投手偏重」の裏にある極端なバランス志向
②もう間に合わないポジションと間に合わせたいポジション
③「即戦力」に費やせる指名枠の数

 

 

ドラフトの「補強ポイント」について

ドラフトにおける「補強ポイント」。
実のところドラフト評論において、
「補強ポイント」の定義は人によってまちまちだ。

  • 来年の一軍戦力を強化するための方針
  • 5年先、10年先の未来を想定した戦力拡大のための方針

一般的にはこのどちらかで用いられ、
FAや新外国人選手、現役ドラフトの場合が前者。
新人選択のドラフトで使われる場合だと、
評論家が非常に高く評価しているアマチュア選手を
1年目から一軍で使わせたいとき以外は
後者をうたい文句にしていることが多いが、
あえて前者の意味で解釈したうえで
自らが高く評価しているタイプの選手を獲らせるために
「補強ポイント」を無価値なものとして
広めようとすることもある。
特に多いのが
高校生のドラフト候補や、
ファースト、レフトにポジションが集中しがちな
体が大きく、打球の飛距離があり滞空時間が長い
「真のスラッガー」を大量に獲得させたい場合だ。

この記事では概ね
3~7年後のチーム構成を想定したものを
「補強ポイント」と位置付けている。
また一般的には
「1年目に一軍戦力として使われる」とされる
「即戦力」の定義もいささか異なり、
1~3年目にかけて一軍戦力として成長しそうな選手のことを
「即戦力」ないし「準即戦力」と記述している。
なお10年先のことは考えない。
現在の日本では
早くに若くして一軍で活躍する選手であればあるほど、
「10年先を見たドラフトと起用をしろ」と言う人たちの
主張通りの指名と起用を行えば行うほど、
獲得した選手が
10年後のチームにいない可能性が高くなるからである。

 

戦力・ドラフト傾向分析

過去10年の成績

S10年順位

2018年以外は
優勝か大きく負け越すかのどちらかで、
2012年を最後に3位と4位がないという
なんとも極端な成績になっている。

S10年順位2

得点力の高い年が多く、
失点のマイナスをある程度抑えられれば優勝、
打力でカバーできないぐらい失点を重ねるか
打力のほうもいまいちな年は下位。
2018年は
失点のマイナスがやや強いながらも2位に入ったが、
2012年以前に勝ち越した年は
ほとんどがこのパターンだった。

 

2024年の成績

S順位

S時期別順位

セリーグ内での成績が悪く
交流戦以外は下降線をたどる展開が続いたが、
9月に入ってからは投打ともに持ち直し
何とか最下位を免れてのシーズン終了となった。

 

過去15年のドラフト傾向

S15年1位指名

単独指名狙いの年は少なく
大競合への特攻が多い。
2000年代はくじ運がかなり良かったが
2010年代はくじ運が悪くなり、
1位抽選では奥川を当てるまで9連敗で
過去15年は1勝12敗。
ただし外れ1位以降では
その運も平均レベルへ戻っている。

S15年上位指名

2位はほぼ大学生と社会人。
投手指名が多いが
2巡のウェーバー順が9番目以降の年は
2011年以外全て野手を指名している。
2巡が序盤の年は3巡後半、
終盤の年は4巡後半で残っていなさそうな
ポイントとランクの選手を獲りに行った結果だろうか。

S15年指名数

2015年以降は
高校生を投手・野手とも1人ずつ、
大卒・社会人・独立リーグからも投手・野手1人以上を
獲得する年が多い。
昨年は9年ぶりに高校生投手の支配下指名がなかったが
高卒自体は育成指名で確保している。
1位での獲得が大卒・社会人投手中心で
即戦力志向と叩くスワローズファンも多いが、
指名数ではむしろ極端なバランス志向である。

S15年主な戦力

ある程度長く活躍する投手の数が少なく
中でも先発要員は片手で数えられる程度、
即戦力で長く活躍できたのは小川以降見当たらない。
外国人、トレード、自由契約などの補強が
それだけうまくはまっていた証でもあるが、
ドラフトでのスカウティングと育成も
もう少し精度を上げたいところだ。
野手も戦力になった選手の数は多くないものの
かなりの強打者は輩出できているため
他のポジションのハードルが多少下がっている。

こうした指名傾向や成果とは別に、
2017年以降のスワローズのドラフトは
他のチームと比べて非常に奇妙な特徴がある。
ドラフト評論、
それも普段「野手」「高校生」を極端に重視する評論家から
「補強ポイントは即戦力投手」と言われることが多く、
2017、18年のような野手、スラッガー候補の入札が
やけに批判されるのだ。
「野手、それもスラッガーを獲れ」と言われる年もあるのだが
それは20、21年のような
少し前に獲得したスラッガー候補が二軍にいて
投手とセンターライン重視の指名をした年だけ。
そして翌22年や前年が投手偏重指名だった2017年は
「野手より即戦力投手」と言われる謎仕様である。

 

野手補強ポイント

野手についての基本的な考え方

基本的な前提条件は

  • 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
  • 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
  • 全盛期を過ぎた選手は成績がいつ大幅に下降してもおかしくない

この前提条件を踏まえつつ
現在の若手・中堅の具体的な成長速度と
ベテランの衰えかたなどから
数年先の各一軍ポジションに入る選手を推測し、
補強ポイントを見定めることになる。
その一方で
今年のプロを志望するドラフト候補の中に
ポイントに該当しつつ実力も高い選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はない

またこの記事では
打席の左右についてもこだわらないことにしている。
右打者と左打者とのバランスよりも
一軍の空いたポジションで戦力になることのほうが大事。

 

過去10年の打撃成績

S10年打撃成績

打力は概ね充実しているのだが、
チーム全体では
どこかが突出して高いというところはなく
満遍なく高い印象。
不調の年も同様に
満遍なく落ち込んでいる。
打率に対して出塁率が高い年が多いのは
長打力の高さも一因か。

 

2024年野手陣の状況

S打撃成績

今年も打率が高くないが四球は多い。
その一方で犠打が極端に多いのも特徴。
主力打者と他の選手との落差が激しいのも理由だろうが
二番打者だけでここまで犠打が増えることは考えづらい。
むしろ下位打線への信頼のなさの表われだろうか。

SF1

SF2

好成績の選手とそれ以外のポジションとの
差が非常に激しい。
村上と外国人選手2人は例年通りだったが
塩見の離脱が痛かった。
長岡は最終盤やや息切れしたか。

S若手F1

一軍ではあまり結果を出せなかったが
今年の岩田と丸山は澤井を上回る成績。
二軍全体の打撃成績は良くないが
この年代の選手たちは
そこそこの結果を出している。

S若手F2

下の年代の若手はかなり苦戦。
今年もサードで起用された西村や
序盤健闘していた鈴木なども
かなり厳しい結果となった。
怪我明けの内山以外の22歳以下は
まだ時間がかかりそうな状況と言える。

 

補強ポイント

現在の補強ポイントは
青木、山崎の引退に関係なくセンターだろう。
ここ最近大怪我が多くなってきた塩見は
センターでの負担を減らすためにも
両翼へのコンバートを視野に入れる必要がある。
またサンタナがいつチームを離れるか
常に様子を見なければならず、
外野は
最低でも2枠、最大3枠全てを
2、3年以内に入れ替える前提で
チーム作りを進めたいところ。
その場合
センター要員の丸山、岩田、並木、濱田に
澤井、増田が候補になるが、
現在の成長具合からいくと
センター候補がもう一人は欲しい。
イムリミットが来年に定められたサードは
今からドラフトで獲りに行っても
リミットにはもう間に合わない。
今年獲るなら
今チームにいる北村恵、増田らで対処しつつ
3年後、5年後の成長に期待だ。
キャッチャーは
単純に支配下の選手が少ないので
ここも補強ポイント。

 

投手補強ポイント

投手についての基本的な考え方

野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
さらに近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される

  • 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
  • より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける

このような手法は
以前にもましてとりづらいばかりか、
二軍の若手を早々に長期離脱させ成長自体を遅らせる
大きな要因にすらなっている。
そのため

  • 一軍で起用可能な投手、二軍で鍛え続けられる選手の絶対数を増やす
  • 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにしない
  • 目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返さない

これらがどのチームでも最重要課題になる。
投手の場合は
来年の一軍戦力や
一軍・二軍以下を合わせたイニング数確保などを
優先的に考えることのほうが、
「5年先・10年先を見据えた指名」よりも
5年後の将来の結果につながることが
往々にしてよくあるのだ。

 

過去10年の投手成績

S10年投手成績

打線とは真逆で
投手成績はどの数字も満遍なく良くない。
2021年こそ
大半の数字が大幅に向上したものの
翌2022年中盤あたりから
再び状態が悪くなっていた。

 

2024年投手陣の状況

S投手成績

打ったHRよりも多い被本塁打数など
投手陣は今年も
打線のプラスを吐き出す内容で終わった。
二軍のFIPはリーグワーストではないが
三振率がかなり低い。

SP1

SP2

主力に好成績の選手は少なかったが
26歳の投手に数少ない好成績者が集中しているのは
プラス材料とも言える。
今までずっとリリーフ起用だった清水など
先発、リリーフの配置転換も
いくらか行われ始めているようだ。

S若手P1

S若手P2

一軍では打たれても使われ続けた山野は
二軍での好成績があっての起用だろう。
それぐらい
二軍で結果を出せた若手は少なく、
完全復調とはとても言い難い奥川が
一軍で使われるのも納得の陣容である。

 

補強ポイント

特に先発陣の高齢化が目立ち
若手の伸び悩みと故障者が顕著な投手陣は
先発の即戦力候補を狙いたいところ。
最近のプロ野球全体の傾向から言って
1年目から活躍する選手は無理としても
2、3年目には出てくる選手を
1人でも多く欲しい。
もちろんリリーフも状況は同じだが、
例年通り
高卒投手、高卒野手、大社野手を1人以上獲得するなら
支配下で大社投手に費やせるのは
多くても2、3枠しかない。
大怪我による急速な衰えといった
想定外の事態は仕方ないと割り切るにしても
すぐに成長させられる選手を
ピンポイントで獲得することが要求される。

 

おすすめの1位入札

ここでは様々な媒体の記事でよく見られる
「1位入札は誰がいいのか」について考えてみたい。
ただし一般的な
「〇〇はこの選手を1位で入札すべきだ」とは少し異なり、
「巷で1位入札候補とされている選手なら
誰を入札したほうがいいか」に
重点を置く。
よって基本的には
大学生投手

  • 金丸夢斗(LHP、関西大)
  • 中村優斗(RHP、愛知工業大)

大学生野手

  • 宗山塁(SS、明治大)
  • 西川史礁(CF、青山学院大
  • 渡部聖弥(CF、大阪商業大)

高校生投手

高校生野手

この選手たちに視点を絞っている。
また他の記事や評論にしばしば見られるような
一番人気や高校生の入札を回避すること、
もしもっと高評価している選手がいて
一般的な評価よりも繰り上げて1位入札することに
何ら目くじらを立てるつもりはない

この点はあらかじめおことわりしておく。

西川史礁、金丸夢斗、中村優

補強ポイントであるセンターに
今年1位入札候補で当てはまるのが西川史礁と渡部。
二遊間を確保するのも悪くはないが、
ショートの守備力にも定評のある宗山だと
長岡とタイプがかぶってしまううえに
どちらかを二、三塁へコンバートすると
せっかくの彼らの良さが薄れてしまうのが難点。
それなら大学でも神宮を本拠地にしている西川史礁で
3年後、5年後の世代交代を狙いたい。
渡部でもいいが
外野からサードへコンバートされた西村の現状を見ると
大学でも現在挑戦しているサードでの起用は
あまり考えたくないところだ。
投手も有望な若手な数が全く足りないので
大学生投手の入札に行くのも
悪くない選択だが、
外れ1位での投手指名は
リリーフで活躍する大学生を獲りがちなため、
1位抽選を外した後はあえて高校生野手を獲得し
早めに指名できる2位で
社会人の先発投手を狙うほうがいいかもしれない。
もちろん中村を単独で獲れるなら
もっとおいしいのだが。