①大連敗の結果「借金」はいくつ増えたのか
②三軍の「育成」から一軍へ到達する条件とは
③チームにとっての即戦力を見極められているのか
戦力・ドラフト傾向分析
過去10年の成績
10年間で日本一が6回、
得点と失点も常にトップクラスなのだが
なぜかリーグ優勝は4回どまりで
4位も2回。
得失点ともに
平均以下を記録することがほとんどない。
しかしここ2年間は
バファローズの後塵を拝している。
普段の試合では妙に勝ちきれないチームである。
2023年の成績
前半戦最後の9連敗で
いかにも負けが込んでいそうに思えるが、
交流戦後から連敗開始直前までが9勝3敗だったため
交流戦前より「借金」は-1増えた状態。
投手陣は交流戦とあまり変わっていないものの
得点力が大幅に低下している。
過去15年のドラフト傾向
7年連続で投手に入札した後は
4年連続野手に入札と
やや極端な傾向になっている。
まあ2017~19年に
野手の抽選を外し続けたのだから仕方ないか。
なお野手の1位抽選を当てたことは
南海時代から一度もなく、
野手の抽選を引き当てたのは
1991年3位の浜名千広が最後で
既に30年が経過している。
2位、3位では
高校生野手が最も多く
1~3位でも高校生が半分以上を占めるが、
近年は2位で大学生・社会人の指名も増えてきた。
指名全体でも高校生が極端に多い。
支配下指名の半数以上が高校生なのはホークスだけである。
2013~18年の6年間の支配下野手は全て高校生。
ところが
これだけ獲得した高卒選手があまり戦力になっていない。
まず投手は
戦力になる選手自体が
武田と千賀以降なかなか出てこない。
野手のほうは
今宮、牧原、甲斐、上林、栗原、三森が
戦力になっているのだが、
野手指名が極端に高校生に偏っているため
もっと戦力になる選手が増えないと
一軍に必要な野手がそろわないのだ。
大卒と社会人も素材重視の傾向がかなり強く
成果というにはまだまだ物足りない。
2010年代中盤に獲得した野手陣が
20代後半に入って
どの程度一軍戦力になるか。
野手補強ポイント
野手についての基本的な考え方
基本的な前提条件はこうだ。
- 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
- 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
- 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない
この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はないのだ。
過去10年の打撃成績
ここ数年
打率に対して出塁率が低いこと以外、
ほとんどの数字がリーグ上位に位置している。
長打率が毎年高く、
ホームランテラスの影響もあるだろうが
長打が大きな武器となっていたことがよくわかる。
2023年野手陣の状況
今シーズンは長打の数が全般的に少なく
HRは実質的にリーグ最少。
近藤健介が加入したこともあってか
四球は多少増えているが、
三振もリーグで2番目に多い。
その近藤は例年より打率が低いかわりに
HRが大幅に増え、
柳田とともに打線の主軸となっている。
しかしそれ以外の選手は成績が良くなく、
リーグ平均より上が中村と栗原だけ。
キャッチャー陣は成績の斑が激しく、
今シーズンは全員の状態が良くない。
甲斐は打力の弱さも長らく批判されてきたが
今の若手・中堅で
24歳時の甲斐と同等の成績を残したことがある選手は
1人もいない。
若手内野手の成績で目をひくのは
リチャードと野村大。
ただリチャードは相変わらず三振率が極端に高く、
野村*1は二軍だとほぼファースト起用のため
やや使いにくいところでもある。
他の選手は調子が悪く
ウエスタン平均を超えているのは
井上と一軍経験も豊富な三森だけ。
外野はルーキーの生海と
内野の項でとばした増田がまずまず。
前半戦途中からは
二軍の外野スタメンが
レフト生海、センター笹川、ライト増田で
ほぼ固定されているため、
この2人を共に一軍で使うには
近藤と柳田の主力2人を外すかDHに固定するしかない。
補強ポイント
とにかく世間から賛美されることが多い
ホークスのファームの育成だが、
二軍で結果を出しても
一軍で結果を残せないのはもちろんのこと
三軍から二軍へ上がった選手も
結果を出せないまま数年がすぎることがかなり多く
二軍の若手のほとんどは
このまだ二軍で結果を出せていない選手になっている。
ホークスのメディア戦略のうまさや
世間で横行している
「若手」を自分自身に置き換えた
「若手抜擢」「老害排除」主張などもあって、
ホークスの若手に関しては
一軍主力に定着していない選手の育成成果が
強調されがちであるものの、
実際には二軍でもあまり結果には結びついていないのだ。
そしてベンチ要員も含め
一軍で多少なりとも戦力になった選手は
1年目から二軍でプレーしているか
プロ入りから1、2年で二軍へ上がった選手ばかり。
二軍の壁も突破する確率とそれまでの時間には
個人差があるが、
今のところ一軍戦力になったのは
二軍定着という関門を
早々にクリアした選手ばかりなのが現実である。
なので支配下での指名は
1年目から二軍に定着できる「二軍の即戦力」が必要だ。
特に急務なのはショートで、
小林、川原田、勝連の伸び方を見ると
三軍で少しずつ出場するようになってきたイヒネが
来年二軍ですぐ結果を残せる状況でもない限り、
現有戦力では
今宮の後継候補に間に合いそうにない。
大学生か社会人から
せめて周東、川瀬と併用できる選手が欲しい。
キャッチャーも
先ほど書いた現在の若手・中堅の不安点があるので
新しい後継候補を獲りたくなるが、
キャッチャーの支配下登録が多すぎるのがネック。
投手補強ポイント
投手についての基本的な考え方
野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される
- 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
- より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける
以前にもましてとりづらい。
それよりも
- 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
- 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない
これらがどのチームでも最重要課題になる。
過去10年の投手成績
2015年以降は被HRの多い年が増え、
さらに四球も毎年かなり多い。
そのため
これらの数字に左右されやすいFIPも
あまり良くないのだが、
三振率がかなり高く
ここには載せていないが被安打も非常に少ない。
HR以外のヒットを減らすことに特化した
投手陣と守備力で失点を防いでいる。
2023年投手陣の状況
新しい戦力があまり出てきていないわりには
三振がさほど減っておらず四球も増えていない。
一発長打が多いものの
序盤に比べ被安打も減ってきている。
連敗中は
先発がやけに打ちこまれる試合が多くなった。
安定感の高かった藤井が離脱しているのが痛く、
悪くないリリーフ陣からもモイネロが離脱するため
厳しい状況になってきた。
二軍で好投しているリリーフは
既に一軍で何試合か登板し打ちこまれた選手ばかりで
ほぼ投げていないのは椎野と笠谷の2人。
ルーキーの松本晴や支配下登録された木村光の
先発起用も出てくるかもしれない。
補強ポイント
大関のように
大学時代にあまり結果を出せていなかった選手を
わずか2年で開花させるような手腕を
見せることもある反面、
上位や支配下で獲得した高校生を
ほとんど開花させられないままなケースも
数多く見られるなど、
育成にはかなり斑があるというか
ホークスの育成にあった選手を
まだチームとして見いだせていない印象がある。
大量の育成指名による分母の多さで
何とかしのいではいるものの、
一軍の需要に対して供給が追い付いていない以上
せめて支配下では
今までのような
「支配下でしか獲れない素材型」から一旦離れて
「ホークスの育成に合わせた即戦力候補」に
狙いを絞った指名をしていきたい。
チームの育成にあっていて
2、3年で戦力になりそうなら
別に高校生主体でも問題ないが、
現状はそうなっていないし
時間がかかる選手を支配下で獲れば獲るほど
一軍で投げられる選手の枠は
圧迫されていくのだ。