スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

ドラフト採点の傾向と対策

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ドラフト「採点」に対する批判

ドラフト会議後に
あちこちの媒体、SNSなどで行われるドラフト採点。
最近は
昨年の楽天のYouTube動画などをはじめとして
批判の対象になることも少なくない。
毎年のように怒っている人もいるが、
あらかじめ彼らの志向を知ることで
そうした苛立ちを緩和するためにも、
ドラフト採点の大まかな傾向について少し考えてみよう。

 

あらかじめのおことわり

ただし、
ここで取り上げる採点の傾向が
ある特定の人たちに偏ることは
あらかじめおことわりしなければならない。
というのも
ドラフト後の採点では、
元プロのスカウトだと1人1媒体まで、
それ以外では複数人で1媒体*1まで
というケースが目立つのだが、
逆にごく一部の評論家が
複数の媒体で採点記事を書く場合もあり、
しかもこの媒体数はかなり多い。
特に先述の動画で紹介されていた
二つのメディア記事は
動画内では「スポーツ紙」と「一般紙」となっていたが
これらの記事を書いたお二方は
多くの媒体に記事を書く代表と言っていい方々である。
また
もともとこの2人と似たような志向をもつ人、
あるいは影響を強く受けている人が
別な媒体で採点をすることも少なくないが、
当然ながら
「お前が書いたのと全然傾向が違うぞ」という媒体も
それなりにある。
この点は注意していただきたい。

 

点数が上がる「正攻法」

採点での評価が大きく変わるポイントはなにか。
それは
その採点をする評論家などが考える
「正攻法」のドラフトをしたかどうか
である。
つまりその「正攻法」さえ知れば
ドラフト採点の一般的な傾向はある程度わかるわけだ。

 

絶対評価至上主義

この人たちが考える「理想のドラフト*2」とは、
絶対評価が最も高い選手に全チームが入札する」ことだ。
選手のポジションや補強ポイント、
大競合による抽選に当たる確率の低下などは
よほどのことがない限り無視する。

またこの絶対評価
あくまで採点をする評論家の基準に基づくものであって、
実際のドラフト指名で
競合数が最も多かった選手ではない

そして採点者は
「No.1選手に向かう勇気が大事」と説くが、
実際の採点には
抽選に当たったかどうかの結果だけが反映される。
「勇気を持って競合へ特攻した」ことが
完全に忘れ去られて
過去のドラフトの「やる気のなさ」を批判されることも
しばしばだ。

 

高卒至上主義

点数の大きな基準となる採点者の絶対評価
この絶対評価にかなりの影響を与えているポイントの一つが
極度の高卒至上主義である。
これは
17~18歳という年齢からくる「ロマン」が最大の要因。
この傾向に関しては
評論家に限った話でなく、
採点を批判する野球ファンなどにも
非常に根強い。
また『マネー・ボール』を読む限りだと
日本人特有のものでもない。
日本特有の点を挙げると、
元々日本の高校野球
戦前から100年以上続く巨大人気コンテンツであること、
1990年代以降に形成された現代のドラフト評論そのものが
高卒至上主義のもとに確立されたことも大きいか。
さらに
逆指名制度の導入など
野球ファンに対して高卒至上主義への傾倒を促す要素が
積み重なっていったことも影響しているだろう。
ちなみに先ほど書いた「よほどのこと」とは
20歳ぐらいの高卒「有望株」がいるポジションに
より上位で指名された高卒選手や
新たに大卒・社会人の即戦力候補を獲得したときである。

 

「将来を見据えた」明日のロマン志向

先ほど
高校生を極度に好まれる理由を「ロマン」と書いたが、
他にもたとえば

  • 長打力・打球の飛距離
  • フォームが評論家好みで球が速い
  • 身体能力は抜群に高い
  • 無名な地方リーグの大学生

などといった「ロマン」を重視する傾向は
ドラフト評論家に限らず非常に強い。
2020年以降は
村上宗隆の早い大成もあってか、
ポジションなどは全く考えず
ただ長打力偏重の指名をさせようとする人が
これまで以上に多くなっている。
しかも
「将来を見据えてロマン重視で」と言うにしては、
「すぐに一軍で我慢して使えば
即一軍でも活躍する超大物になるはずだ」と
考える人がたくさんおり、
同じポジションにいて
今一軍の主力にもなっている中堅や若手ですらも
すぐにコンバートさせ
「ロマン」のための一軍ポジションを
無条件で与えようとするのだ。
また同じような結果を残している若手であれば
他の選手より横の体格がいい若手・中堅を獲りたがり、
成績がより粗いタイプの若手を重視している。

なお
高校生の「ロマン」と長距離砲の「ロマン」。
ドラフト評論で歴史的に重視されてきたのは
高校生の「ロマン」である。
たとえば1996年の週刊ベースボール*3では
大物スラッガー
井口忠仁松中信彦の逆指名をとりつけた一方で
高校生を1人も指名しなかったダイエー
優勝へつながる指名ではないと切り捨て、
上位3人が高校生だった中日が
「3、4年後を見据えたいい指名」と
最高に近い評価をされていた。

 

必要なのは心の持ちよう

まだまだ傾向はあるはずだが
とりあえずはここまでとしよう。
もしかしたら
後から項目を追加することもあるかもしれない。
実のところ、
ドラフト採点をめぐっては
ここで書いた内容以外にも
非常に大きな問題点が少なくとも二つある。
こちらに関しては
追加ではなく稿を改めて書こうと思っている。

では対策はというと、
実のところたった一つしかない。
あまり気にしないことである。
特に点数の「数字」は
足し算、引き算の基準がかなりあいまいだし、
また採点記事を書く側も
12球団分の点数を
一律の基準で
具体的に計算している時間はないだろう。
文章の内容はともかく、
ドラフト採点の点数を
自分の人生を左右する何かの試験の点数のように
考える必要などないのだ。
もしそれでも
自分の生死にかかわるかのように
一喜一憂してしまうというのであれば、
はっきり言う。
タイトルに「採点」「点数」とある記事は
一切読まず、
全く関わらないようにするのが賢明だ。
心の平穏に勝るものはない。

*1:12球団の担当記者が担当チームのみを採点する場合など

*2:あくまで現行の制度での話。完全ウェーバー論者はこれを見て激怒しないでほしい

*3:週刊ベースボール. 51(57)(2208);1996・12・9」(ベースボール・マガジン社、1996年12月)pp.114-116。