スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

「正攻法」に基づいたドラフト1位指名選手は誰か

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今回は
各年のドラフトで「正攻法」と呼ばれるであろう1位指名が
どういう指名だったか、
前回書いた基準をもとに見ていこう。

 

 

ドラフトにおける「正攻法」のおさらい

まずはこれまでに判明した
「正攻法」のドラフトをおさらいしよう。

  • 1位入札は絶対評価で「1位入札候補」と認定された選手を指名する
  • 抽選を外す確率は「最も成功率が高い」選手の期待値に含まれない
  • 外れ1位は「1位入札候補」がまだ残っていたらそちらを優先。その後「外れ1位候補」を入札する
  • 2位以下も流れは同じ
  • 選手の絶対評価は評論家等外部の評価に基づく。各チームの絶対評価や補強ポイントに沿っていれば許されるかはその人次第。形の上では


厄介なのは
絶対評価を基準にしていたはずが、
実際の指名が終わったとたんに
チームやリーグによる補正がかかることだ。
「ドラフト下手」と認定されているチームや
最近のドラフトで外部の識者を激怒させた場合には
問答無用で強烈なマイナス補正がつく。
補正を持ち直すには
単に評論家の評価が高い指名をするだけじゃなく
評論家好みの指名をし続ける「覚悟」を見せなくてはならない。
評価基準にはこうした振れ幅が存在するため、
同じ選手で競合したのにチームによって指名評価が変わる
ことがしばしば起こっている。

 

各年度の「正攻法」と「逃げ」

評価基準

「逃げ」

評価基準は以上の通り。
1位入札の「逃げ」は
「外れ1位以降」の評価であって、
内容は「外れ1位」から「3位以降」まで様々だ。
あとこの評価・判定は
あくまで当時の評論家や巷の評価の記憶をたどったもので
私個人の評価ではない。
実際この巷の評価に対して
「なんでこの選手こんなに評価が高い(低い)の?」と
私が疑問に思っていたケースは山ほどあるし、
それが眼鏡違いだったこともたくさんある。
皆さんもプロ入り後の結果で
当時の自分の記憶を書き換えている人が大勢いると思うが、
自身の本当の記憶を思い出しながら読んでいただけるとありがたい。

 

2008年

2008

今年(2020年)指名漏れが問題にされた
田澤純一*1MLB入りを表明し、
センバツ優勝投手の東浜巨
4年になって評価が急上昇した岩見優輝などもプロ入りしなかったため
1位入札候補がほとんどいなくなってしまった年。
No.1評価は直前にプロ志望届を出した大田、
次いで巽だったと記憶している。
右に挙げた浅村や上本も外れ1位となると微妙な扱いで
2位評価は多いが外れ1位までとなると12人そろえられない年だった。
それでも松本や野本は個人の評価だと1位入札候補だったはずだが、
まず中日の場合「大田を回避した」という理由で評価が下がった。
阪神は「ドラフト下手」「即戦力志向」のマイナス補正に加え
「大卒野手→社会人投手→大学生投手」の順番に
「一貫性がない」との補正が追加された結果である。

 

2009年

2009

この年は菊池の大競合と単独指名組に大きく分かれた。
単独指名で「正攻法」とされたのは筒香、今村、今宮、長野の4人。
外れ1位では岡田が「正攻法」にあたる一方、
二神、中澤は個人の点数が良くなかったのか
高校生指名を続けなかったので点数が下げられたのかはわからない。
あとの大社3人は指名順番が早すぎる*2との判定だろう。
逆に中村は外れ1位候補と言われていた記憶はないのだが、
「高校生」と「ドラフト上手」の日本ハムでプラス補正がついた。

 

2010年

2010

今思うと2010年は
誰が1位入札・外れ1位判定だったのかいまいちわからない。
少なくとも入札の4人は間違いなく「正攻法」…だと思う。
2位指名では加賀美、南、一二三、吉川、
3位以下でも岩見優輝、榎下陽大あたりは
外れ1位候補とされていた記憶があるんだが。
逆に個人評価で点数を下げられたのは須田と後藤。
榎田は評価が高いが「阪神がまた即戦力に逃げた」ので低評価。
伊志嶺も「ロッテがまた即戦力の外野を獲った」ので低評価。
また高校生ショートでは
山田より「立浪の後継者」とされた吉川のほうが人気があった。

 

2011年

2011

1位単独指名で絶対評価が高くなかったのは十亀ぐらいだろうか。
伊藤は個人評価こそ高かったはずだが
例によって「阪神の安易な即戦力志向」での逃げ判定。
一方外れ1位と外れ外れ1位以降は大荒れと言って良く、
評価されたのは松本入札だけだったと思う。
人によっては外れ1位候補だった安達は
阪神同様「オリックスがまた即戦力に走った」ので逃げ扱い、
2位で外れ1位候補の釜田を獲った楽天
外れ1位の低評価を払拭するほどの点数は与えられなかった。
藤岡の抽選を当て、外れ1位候補の中後も獲得したロッテは
3年連続で即戦力に走ったので指名全体が逃げ扱い。

 

2012年

2012

1位入札で「逃げ」扱いされるかもしれないのは
地元出身の大学生福谷を指名した中日。
1位全体で確実に「逃げ」とされたのは
ヤクルトの石山ぐらいだろう。
白崎、松永、増田、松葉も
2巡以降で挙げた5人と比べると
当時の評価からは「逃げ」と判定されてもおかしくない。
その後の結果はお察しください。
改めて見ると
佐藤と伏見まで獲っているオリックスは高評価されて当然なはずだが、
ドラフト後の採点はかなり低かった。
抽選を2度外したことによる補正以上に
オリックスと「即戦力」への
マイナス補正がかかった結果としか思えない。

 

2013年

2013

1位入札の5人は個人評価こそ充分高いはずだが、
ヤクルト、ロッテ、巨人はチームそのものへの即戦力マイナス補正、
阪神はチーム補正に加えて
「森に行かなかった」補正がついてこの評価となった。
外れ1位以降では
鈴木や小林にもチーム補正と即戦力マイナス補正が発生してしまう。
別な意味で気になるのは
12番目と13番目の指名を行うことになった日本ハム
チーム自体は常にマイナスがつかないので問題ないけども、
もし他のチームがこの状況で浦野、渡邉の順に指名していたら
実質的な結果は同じでも採点がどこまで下げられていたか。
前年とは打って変わって最高評価を受けたオリックス
2位ぐらいの評価だった若月健矢、園部聡、吉田雄人
スラッガー候補の奥浪鏡と
有名な高校生野手を集めたことが高い点数につながった。
上位の社会人2人だけだったら間違いなく低評価だったろう。

 

2014年

2014

この年はもともと
巷の個人評価と実際の指名との乖離がはげしかったうえに
2、3年後になって評論家による各裏補正が明らかになるなど、
当時の評価が非常に見えづらくなっている。
中でも「セリーグは抽選から逃げるから当たらない」は強烈。
有原、安樂入札は日本ハム楽天なら「正攻法」、
セリーグ4チームは「逃げ」扱いとされていることが発覚した。
大成している岡本も
巨人にいること自体なかったことにされている可能性が高い。
中村と野村の「逃げ」は
個人評価よりチームとGMへのマイナス評価のほうが大きい。

 

2015年

2015

個人評価で確実に「逃げ」とされるなら桜井。
高山に対しては
チームの即戦力補正と江越大賀への高評価による補正が加わり
ヤクルトの明言を恐れず抽選へ特攻した
阪神のみが「逃げ」扱いになる。
高橋と平沢に入札しなかったあとの5チームは
人によって判定が分かれるだろう。
2位以降で巷の評価が確実に外れ1位以上だったと言えるのは
熊原、木下、茂木の3人。
小笠原と木下の2人を獲れた中日は高評価されてもおかしくないはずだが
この年の採点はやはり低い。
ドラフト候補への絶対評価
谷繁後の捕手不足に悩まされていたチームの補強ポイントも、
高卒至上主義とGMへの感情の前には
全くプラスに働かないことを証明した。

 

2016年

2016

柳に関しては以前説明したとおり。
大山は大卒サードとはいえ4年連続OPS.700超でも低評価。
完全に覚醒した今年ですらいまいち評価が成績に見合ってないのは
この「逃げ」評価が大きな原因になっているように思う。
この年は何と言っても外れ1位での佐々木5球団競合。
1位入札候補なのに残った佐々木へ全チームが競合した光景に
「これぞドラフトのあるべき姿」と
さぞ溜飲を下げたことだろう。
外れ外れ1巡のうち個人評価による低評価は加藤のみ。
吉川と濱口はチーム補正によるものだ。

 

2017年

2017

1位入札で叩かれるのは東だけ。
おそらく1位入札候補とまでは評価されていなかったうえに
安田の入札がなかったこと、
史上初の12球団競合を見られなかったことなど
評論家から恨まれる要素が揃いすぎていた。
村上はここでは外れ1位候補としておいたが、
彼らが高校生スラッガーの外れ1位競合に歓喜したとはいえ
キャッチャー評価も込みだと
外れ1位候補とまで評価していた評論家はいたかどうか。
他にそこまで評価されていなかったと言えるのは
齊藤と吉住ぐらい。
石川、増田以外の外れ1位候補となると
マニアの知名度が高い選手は何人もいるのだが
大学生と社会人が多いのもあって選定が難しかった。

 

2018年

2018

高校生野手3人に11球団が入札したこの年、
単独の松本も1位単独候補ではあるので
1位入札で「逃げ」とされるチームはなかったはずだが、
以前書いたように
小園がそこまで評価されていなかった可能性が高い。
外れで4球団競合の辰巳もおそらく同じだ。
甲子園のスター吉田が外れ単独入札だったのには
怒り心頭だったんじゃなかろうか。
外れ1位の「逃げ」判定は近本、太田、高橋、清水。
代わりに評価されていたのは右の5人だ。

 

2019年

2019

Baseball kingの仮想ドラフトを見る限り、
1位入札候補だったのは森以外の4人まで。
次点が西、河野の順と思われる。
森はせいぜい2位、
小深田と佐藤は3位以下のようなのでこうなった。
堀田の評価も直前の報道で急上昇した印象だが
最近の巨人はチームマイナス補正が減っているからどうだったか。

 

2020年

2020

1位入札で確実な「逃げ」扱いは横浜のみ。
広島は言及が少ないため本音はどうなのかわからない。
今年の場合どうにも引っかかるのが外れ1位。
渡部はそうでもないかもしれないが
井上は本人の絶対評価が結構高い。
しかもチームマイナス補正のほぼありえないホークスが
なぜか低評価だったのだ。
高卒野手4人を指名したこともマイナスにならない人たちなので
よけいに謎が深まる。
あくまでサード候補不足による繰り上げ評価だったのか、
増田、野村大樹、リチャードがつぶされるのを懸念しているのか、
牧の評価がそれほど高かったのか。
ただ三番目だと横浜の評価が回復しない理由がわからなくなる。
あるいは回復してようやくあの点数ということか。
逆に大社偏重だったにもかかわらず高評価なのが阪神
佐藤の競合を制したとはいえ
数十年続いた即戦力マイナス補正が嘘のような手のひら返しである。
前年の高校生有名選手偏重が
補正をプラスにしたとしか見えない。

*1:ドラフト関係の評論家、ライターでNPBの田澤指名回避を批判した人はあまり見ないが。単純に選手としての絶対評価が低かったのだろう

*2:古川、荻野は外れ1位以降、戸村は2位以降