①チーム全体の総合力が維持できた2022年
②緊急ではないからこそ狙える野手
③急務の「即戦力」先発投手
戦力・ドラフト傾向分析
過去10年の成績
2007~21年の15年間で
ピタゴラス勝率が.500以上になったのは
優勝した2015年と21年だけ。
打線の状態が良くても
それ以上の失点を重ねる年が多く
投打のバランスがなかなかかみ合わないが、
かみ合う年は投打がとことんかみ合い
リーグ優勝と日本一を手にしてきた。
2022年の成績
交流戦前に首位に立つと
交流戦以降はさらに勢いに乗り
7月上旬には早くもマジックを点灯させた。
コロナ禍のあおりをもろに受けたあたりからは
投手陣が崩れ
完全に停滞してしまったが、
打力の高さで大崩れをすることもなくリーグ連覇を果たした。
過去10年のドラフト傾向
2000年代はくじ運がかなり良かったが
2010年代はくじ運が悪くなり、
1位抽選では奥川を当てるまで9連敗。
しかし外れ1位以降になると
その運も平均レベルへ戻るうえに
山田哲人、村上など
大物を引き当て育てることにも成功している。
抽選を一度外した後は大学生が多くなるが
1位入札は高校生が多い。
2位はほぼ大学生と社会人。
ただし一軍の弱点補強、
1位有力とされて残っていた選手、
将来を見たチームの補強ポイントなど
指名パターンは様々で、
ただ即戦力に飛びついたようには見えない。
逆に3位は高校生が多く
大卒と社会人でも将来性重視の指名が多い。
ずっと投手不足が続いているチームゆえか
投手の指名が多い。
しかし数年活躍する投手の数が少なく、
特に即戦力の見極めと育成に
かなり苦戦している様子がうかがえる。
野手もこの10年で成功した選手の数は多くない。
優勝する年は
外国人、ベテラン、トレード、他球団出身選手らが
全てうまくはまっており、
大物の育成・輩出ができるかわりに
チーム全体の戦力をなかなか揃えられないのが
強さが安定しなかった理由という印象を受ける。
野手補強ポイント
野手についての基本的な考え方
基本的な前提条件はこうだ。
- 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
- 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
- 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない
この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はないのだ。
2022年野手陣の状況
長打力が高く
アベレージも高く
出塁が多くて足もそれなりに使える。
バッティングの総合力では
頭一つ抜けていると言っていいだろう。
三冠王に輝いた村上以外にも
塩見、山田、サンタナが好成績。
中盤からはオスナが成績を伸ばし、
青木と中村、太田もリーグ平均超えと
打線はなかなか隙が見えなかった。
内山壮は高卒2年目のキャッチャーとしては
素晴らしい数字で、
3年目の長岡も
守備が優秀でこの数字なら申し分ない。
古賀は2020年の二軍OPSが.876。
一軍抜擢も納得の数字ではあったが
内山壮の急成長で一気に追い抜かれてしまった。
1年目にかなり厳しい成績だった並木は
2年目で少しずつ二軍に慣れてはきたようだ。
ルーキーの丸山も悪くない。
昨年一軍レギュラーになっていた元山が
今年は絶不調に陥り、
代わりに長岡が一軍レギュラーになっている。
守備もいいだけに
今後長岡以外の選択肢はないと考える人も多そうだが、
代役を当てづらいショートで
レギュラー候補の一人がけがや不調で苦しんでも
代わりの選手が何人もいるのは今後にとっても大きい。
補強ポイント
単純に選手の数が少ないのは外野。
内野、キャッチャーには
外野へコンバートするほどの打力を持つ選手が
あまりいないので、
ここ2年間で大卒選手を2人獲得したものの
外野手は今年も補強ポイントである。
どちらかといえば
ポジション以上に長打に比重を置きたい。
今年は大学生ではなく
高校生の可能性もある。
同じく支配下の数が少ないキャッチャーも
指名の可能性があるが
ここは出自・年齢にこだわる必要はなく
二軍で育成する要員の確保が第一。
内野は
ルーキーの小森がショートでの育成になりそうで、
また元山と武岡のショート調整もしておきたいため
ショートを獲る余地はない。
それよりは
時間をかけて育成する余裕がある
高校生サードの指名が考えられる。
このように見ると
野手は緊急性を要するほどのことにはなっていないが、
捕手、内野手、外野手のどれも
補強ポイントに入ってくる。
スワローズが他のチームと違うのは
一軍の長打力に多少の余裕があり
センターラインもある程度埋まっている点だろう。
おかげで
長打力の高い選手を
ポジションをそこまで気にする必要も
一軍での早い結果を無理に求める必要もない
じっくりとした指名と育成が可能になっている。
ある意味良すぎて
いつ日本からいなくなるかわからない村上と
普通なら年齢的に衰えが見えてくる山田の
長打力に頼れなくなるかもしれない5年先に備えた
長打力重視の指名をすることが可能な構成と言える。
投手補強ポイント
投手についての基本的な考え方
野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される
- 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
- より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける
このような手法は
以前にもましてとりづらくなった。
それよりも
- 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
- 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない
これらがどのチームでも最重要課題になる。
2022年投手陣の状況
序盤はかなり少なかった失点が
交流戦後はコロナ禍や乱打戦によって一時的に激増。
オールスター以降も
平均失点は4点を超えており
投手陣がかなり不安定な状態が続いた。
前半戦より調子を落とした先発が多く
二軍ではずっとリリーフ起用で支配下登録された小澤を
一軍に上がってから先発に回すなど
苦肉の策も用いて何とかしのいでいった。
それぐらいのことをせざるをえないほど
若手の先発はいまいち結果が伴っておらず、
なかなか厳しい状態となっている。
リリーフも成績を落とした選手はいるが
先発陣よりは悪くない状態を保ったまま
レギュラーシーズンを終えることができたようだ。
こちらも
若手やそれまで実績のなかった選手は
二軍で苦戦している。
その中で久保は一軍だと好投していたので、
調子の良し悪しを見極めての一軍起用が
来年以降はより重要になる。
補強ポイント
現在の投手陣を見ると
実は一軍の先発陣に
つい最近のドラフトで獲得した選手が少ない。
育成の早い成果はリリーフに集中していて、
奥川以外はかなり時間をかけた育成になっている。
さて
そんな状況の中で
現在の先発陣は数が足りていると言えるだろうか。
小澤の起用法一つを見ても
とても足りているとは言えない。
何としても欲しいのは本当の意味での即戦力の先発だ。
今年のドラフトも
投手は高校・大学・社会人問わず即戦力を狙いつつ
最低1人は高校生を獲る
という手法は変えないのだろうが、
今年に関しては
大学生と社会人で
素材型や故障持ちの選手を獲り
時間をかけて育成する余裕はほとんど残っていない。
野手の引退・戦力外が多いため
ドラフト指名全体では
野手を多く獲得する可能性は高いのだから
なおさらである。
おすすめ1位候補
特になし
スワローズの1位入札は、
誰にするべきかという選手はいない。
先ほども書いたように
野手は指名してもいいポジションが多く、
投手は余裕がないため
即戦力候補は必須と言っていい。
今年は怪我で戦線離脱しているが
奥川のように早々に育てられるというのであれば
高校生投手でもよく、
誰を入札しようと
不正解にはならないチームである。