スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

2022年阪神タイガース ドラフト補強ポイント

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①「野球は打力が大事」か「野球は守備と投手」か
②大学生の上位二遊間候補を獲る際に考えるべきこととは
③育成が上手なのに育成に苦労している投手陣

 

 

戦力・ドラフト傾向分析

過去10年の成績

T10年成績

投手陣が奮闘して失点を抑えており、
打線のほうはあまり強くないが
かつての暗黒期のような
得点が失点を大きく下回る年が少ないため
それなりに安定した強さを保ってきた。
こうしたチーム構造もあって、
タイガースは
「野球は打力が大事」と言われて久しいものの、
打線の補強がうまくいった2010年ごろは
「野球は守備と投手」と叩かれている。

 

2022年の成績

2022T順位

開幕からの連敗がひびき
しばらく最下位が続いたが
オールスター直前で
最大16あった借金を完済。
その後は再び借金生活に入るも
3位にすべりこんだ。
得失点は
交流戦直後にはプラスに転じ、
ピタゴラス勝率は
スワローズを上回るリーグトップ、
12球団で見てもホークスに次ぐ数字である。

 

過去10年のドラフト傾向

T10年1巡

1位の単独入札は大山だけ、
スワローズの高山公言に特攻した2015年以外は
全て3球団以上の競合になっている。
藤浪まで20年以上連敗していた時期に比べれば
くじ運もかなり良くなっているが、
外れ1位指名も含めた3球団以上の競合では
藤浪から佐藤輝までの7年間に
8連敗を喫している。

T10年2・3巡

2010~13年は高校生、
14~15年は1位獲得選手と同じチームの選手*1
一時期は妙な特徴を持つ2位指名になっていたが
最近はこれといった定型は見られない。

T10年指名人数

T10年戦力


長年野手の世代交代に苦慮してきたこともあってか
大学生野手の指名が多く
2015年以降はその流れがさらに加速した。
ただ何年も持続するような成果は
梅野と大山ぐらいで、
世代交代の完成は
社会人の糸原、近本でようやく形になったところ。
投手は量がかなり物足りなく感じるが
何年も活躍できている選手がおり
質でカバーしていると言えそうだ。

 

野手補強ポイント

野手についての基本的な考え方

基本的な前提条件はこうだ。

  • 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
  • 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
  • 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない

この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はない
のだ。

 

2022年野手陣の状況

2022T打撃成績

盗塁が多いこと以外に
数字上優れたところは見られず、
二塁打がリーグワースト。
チーム打撃成績は
ドラゴンズをも下回っている。
ただカープほどではないが
効率よく得点が取れたのが大きかった。

2022TF年代表1

2022TF年代表2

今シーズンは個人成績も低調。
リーグ平均以上の成績だった日本人選手は
大山、佐藤輝、近本だけだった。
30歳前後の選手が
軒並み成績を落としてしまったのは苦しい。

2022T若手F

成績が伸びなかったのは
若手も一緒。
既に一軍要員にもなっている小幡以外は
髙寺が存在感を見せたぐらい。
小野寺も二軍に下がったあたりで
調子を崩していたようだ。
1年目の前川も打席数が少ないとはいえ
まずまずの結果になっているが、
二軍の外野は
井上がほぼライトに固定されているため
レフト以外に鍛えられる場所がないのがちょっと痛い。

 

補強ポイント

本来なら
主力野手が30歳前後のタイガースは
主な課題がこの次の世代交代になる。
ただ
ここ2年間の梅野や今年の糸原の落ち込み方、
大山の起用法などを見ると
のんびりともしていられなくなってきた。
しかも二軍を見ると、
5年後の一軍主力入りを
ある程度見通せる選手が少ない。
若手の将来への伸びしろには期待しつつも
ドラフトでも新たに選手は確保しておきたい
状況だ。
特に何としても獲っておきたいのは二遊間。
来年からは
ショート小幡、セカンド中野が基本という話もあるが
これ以外の若手のオプションが
髙寺だけなのは心もとないので、
年代表から見た年齢バランス的には
高校生から大学生までのショートが欲しい。
大学生か社会人のセカンドを獲って
セカンド候補の枠を増やす手もあったが、
トレードで
懸案の一つである守備に大きな課題は残るものの
セカンドの渡邉と一応セカンドも可能な高濱を獲得したので
可能性はやや低くなったか。
なお
今年の大学生二遊間の有力候補は
大学3、4年次の牧はおろか、
中村奨吾や3年次の上本博紀*2
さらには社会人時代の糸原ぐらいの
成績を残している選手もあまりいない。
もし有力候補を獲れたとしても
一軍で活躍するまでに
最低でも3年かかることは想定すべきだろう。

あとは
近本と島田がいるが
その下の年齢の候補が事実上一人もいないセンターに
バッティングのいいサードも
そろそろ確保しておき
数年かけて育てたい。
この二点は高校生でも問題ない。

 

投手補強ポイント

投手についての基本的な考え方

野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される

  • 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
  • より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける

このような手法は
以前にもましてとりづらい。
それよりも

  • 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
  • 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない

これらがどのチームでも最重要課題になる。

 

2022年投手陣の状況

2022T投手成績

投手のほうは
ほとんどの数字が優秀。
HRと四球が非常に少なく、
今年は被安打もかなり減っている。

2022TSP年代表

2022T若手SP

先発は
昨年までのメンバーと外国人選手に
ここ5年間苦しんでいた四球病が緩和された藤浪と
西純矢に加わった。
さらに才木、桐敷、村上も控えており、
高橋が離脱しているわりには頭数がある。
藤浪と西純の四球数が激減したのは
ここ2年間NPB全体で四球数が激減していることが
大きいと思われるが、
タイガースではこれまでにも
青柳、高橋が同様の進化を見せており、
そのノウハウがはまったときの爆発力の高さが
チームの大きな武器となっている。

2022TRP年代表

2022T若手RP

一方
開幕直後に苦しみぬいたリリーフは
今年台頭した湯浅や渡邉に加えて
開幕時絶不調だったケラーが調子を上げ、
しばらく続いた戦力不足も少しはましになった。
ただ昨年より成績を落とした若手・中堅も少なくなく、
来年以降へつなげるには
戦力になりうる選手の数そのものを
もっと増やす必要がある。

 

補強ポイント

先発のところで書いたタイガースの強みは
一方で弱点にもなっている。
タイガースは
高校・大学・社会人などのくくりに関係なく
素材重視の指名をし
戦力になる投手を2、3年で育てるのはたしかに得意。
ただ
この育成がピタッとはまる選手は
そこまで多くはなく、
また育てた選手たちが
故障や制球難などによって1、2年で崩れ
その後しばらく戦力にならなくなることもかなり多い。
毎年失点は少なく新戦力も台頭してくるのに
藤浪の復活に期待を持ち続けたり
毎年外国人頼みにもなったりするのは、
こうした事情によって
戦力の数そのものが
常に足りない状況が続いているからである。
開幕直後は
この弱点が最悪の形で表れたと言えるだろう。

この状況を少しでも緩和するには、
たとえ1、2年で崩れるとしても
毎年新しい戦力を次々と輩出するか
何年も続けて活躍できる実戦型の選手を獲っていくかだ。
また後者を実践しようとしても
指名した選手が全員戦力になるとは限らない。
いくら打線の弱さが目立っていても、
それとは別に即戦力級の投手は
常に確保しなければならないのだ。

 

おすすめ1位候補

特になし

現時点で最有力とされているのは
ジャイアンツが公言した浅野翔吾(高松商)。
若いセンター候補は
補強ポイントの一つでもあるので
この選択はありだ。
他の野手だと
地元高校の松尾汐恩(大阪桐蔭高)の名前が挙がるが
これはキャッチャーを1人
コンバートか戦力外にするならあり。
スポーツ紙で名前の挙がっていた高校生投手も
不正解ではない。
ただ一つだけ間違えないでほしいのは、
曽谷龍平(白鷗大)などの
大学・社会人投手入札も
全然間違っていない
ということだ。
ここ10年だと
タイガースの1位入札に対して
タイガースファンやドラフト評論家が
大学・社会人投手を推したのは
2016年の佐々木千隼ぐらいしか記憶にない。
タイガースの即戦力投手指名は
周りからそれだけ忌み嫌われている。
現状だと
競合数も少し絞られてきた浅野入札の可能性大だが、
抽選を外した後の
大学・社会人投手指名も充分考えられる。
もしそうなったときに
即戦力投手指名を批判することだけは
明確に間違っていると言える。

*1:2016年は大山と同じ白鷗大の中塚駿太が阪神より先に2位指名された

*2:4年になってからはかなり不調だった