①目の前の補強ポイントよりもドラフト戦略を左右する要素
②即戦力と将来性とポジションの微妙なバランス
③即戦力が重要なのは大社より高校生?
戦力・ドラフト傾向分析
過去10年の成績
2013年の最下位から
チーム力が急激に上がったものの
2016年に日本一となった後は
Aクラスが1回だけ、
それも5位か6位が続いている。
単純に得点がとれず
失点が多少抑えられても
打力の弱さをカバーしきれていない。
2023年の成績
ここ最近のどん底に比べれば
投打のバランスはだいぶましになってきた。
ただ今シーズンは
バランスの改善が勝利に結びついておらず、
前半戦を最下位で終える大きな要因になってしまった。
過去15年のドラフト傾向
「その年最も良い選手に行く」を合言葉に
大競合への特攻を繰り返してきたが、
2008~12年に限定すると
「一番人気」入札はたったの1回、
3チーム以上の競合も合計2回しかない。
もっとも
事実上の逆指名だった菅野や
MLB行きを表明していた大谷と
他球団が入札しづらい選手に入札したのも一因ではあるのだが。
2010~12年に
3年連続で高校生野手を指名した2位は
高校生野手と社会人投手が多い。
3位はあまり大きな特徴がなく、
その時残っていた選手から
状況に応じた指名が行われている。
高校生野手の比重が極端に高かったが
2020年には社会人野手が14年ぶりに解禁、
昨年は13年ぶりに高校生野手の支配下指名なしと
高校生偏重の野手指名戦略が
完全に破綻した様子が見てとれる。
主な戦力を見ると
野手は一軍で使われているが
故障などもあって
なかなか成績が伸びない選手のオンパレード。
投手も先発がいまいち育っておらず、
育った選手は早くにMLBにも行ってしまうため
状況がさらに苦しくなっている。
野手補強ポイント
野手についての基本的な考え方
基本的な前提条件はこうだ。
- 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
- 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
- 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない
この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はないのだ。
過去10年の打撃成績
一時期かなり高かった盗塁数にばかり
目が行きそうなグラフになっているが、
札幌ドームでもそこまで悪くなかった長打力も
2017年以降かなり下がっている。
パリーグに
ホームランテラスを導入する球場が増えて
球場の特性が相対的に極端になった
側面もあるか。
2023年野手陣の状況
HRをはじめ長打はある程度出ている一方で
打率と出塁率が低い。
得点効率も極端に悪いということはないが
交流戦の後は全般的に調子が落ちている。
マルティネスと清宮、万波が好調を維持する一方で
加藤豪がかなり調子を落とし、
野村と松本もなかなか状態が良くならない。
また
ファーストに野村と加藤豪、
キャッチャーにマルティネスと郡司といった具合で
ポジションが渋滞を起こしているため
DHでの起用を含めても
打線全体ではそこまでプラスになっていないのも痛い。
キャッチャーは梅林と古川が
イースタン平均程度の成績を残せるようにはなっている。
郡はほぼユーティリティとしての起用。
外野は三振率こそ高かったが
一昨年の万波が突出している一方、
他の若手は
怪我の多い五十幡も含め伸び悩みが目立つ。
現状ではルーキーの矢澤と
こちらも怪我が多いものの
淺間と今川に期待するほかない。
内野陣だと
ルーキーの奈良間と3年目の細川が好調。
一軍では上川畑を下回る成績*1にとどまっているが
今後もまた出番はありそうだ。
有薗はまず
絶不調だった一昨年の清宮を超えるのが
最初の目標となるか。
補強ポイント
登録選手の数が少ないのは外野で、
一軍・二軍ともに人の数は多いが
一軍戦力に乏しいのが二遊間。
キャッチャーも
下の年齢層が薄くなったので
年代表の中には空きがある。
一軍の戦力が
センターライン以外のポジションに偏っているため
打てるセンターラインは
何としても欲しいところだ。
清宮、野村、万波が一軍で使える間に
ファースト、サードの候補を
もう一人獲得して育てる選択も悪くはないが、
万波もファーストに回ることが多く
ここに大物すぎるファースト候補を加えても
「FAで四番打者をかきあつめた」昔の巨人と
やってることが全く同じになる。
しかしこのチームのドラフトを考えるうえで
もっと大きなポイントは
エスコンフィールド、いやFビレッジ全体で
現在の新球場特需が下火になった後に
どの程度の収益を上げられるか。
実際にどの程度の収益を
恒常的に上げるめどがたつかどうかで、
国内の他チームへFA移籍する選手を減らしつつ
状況に応じて大物のFAにも参戦するか、
今までどおり
主力の大半が移籍する前提で戦略を考えるか
決めていく必要がある。
そしてかつてのような
高卒偏重の大量指名が可能なのは前者の場合で、
後者ならここ最近以上に
即戦力にも目を向けた指名が必須となる。
既に6年目の清宮、5年目の野村、万波が
国内FA権を取得するのはそう先のことではないのだ。
投手補強ポイント
投手についての基本的な考え方
野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される
- 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
- より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける
このような手法は
以前にもましてとりづらい。
それよりも
- 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
- 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない
これらがどのチームでも最重要課題になる。
過去10年の投手成績
2018年以降は
被HR以外に四球もかなり減少していた。
ただそれにしては失点がやや多く、
得点力の減少をカバーできていない。
投手陣と守備力のバランスが
かなりいびつだったということだろうか。
2023年投手陣の状況
序盤は調子が上がらない投手陣を
打線がカバーする形だったが、
交流戦あたりから
投手が失点を防ぐチームになっている。
三振率が低いものの
四球数が少なく抑えている。
今シーズンの投高打低を考えると
調子がいまいちな選手も少なくないが、
それなりに安定感はあるか。
リリーフの代役候補は二軍にもいるが
先発候補となると
残っているのは根本ぐらい。
また上沢と加藤貴の三振率が
例年より低くなっているのも気になる。
補強ポイント
単純な補強ポイントは左投手。
選手数こそ多いものの一軍戦力は少なく、
一軍で使える投手は先発、リリーフ問わず
欲しいところだろう。
とはいえこれは右でも同じこと。
チームを支えてきた上沢などが
いつまで投げられるかも予測しづらい。
それよりも引っかかるのは
10代~20代前半の投手が多いわりには
今年の戦力も今まで戦力になった選手も
あまり多くない点で、
なおかつ戦力になったのは
かなり早くから活躍する即戦力がほとんどだ。
しかも上原、鈴木のように
大卒や社会人出身では数年かかった選手がいるのだが、
高卒のほうは
2、3年以内には一軍で活躍しないと
その後も戦力にならないケースばかりなのである。
高校生を獲る場合は
上位指名、下位指名に関係なく
大学生や社会人以上に
将来の素質よりも今現在の完成度を
重視する必要がありそうだ。