スポーツのあなぐら

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堀江貴文氏の「スーパーリーグ」について考察してみる

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先日、堀江貴文氏が
北九州福岡フェニックスの設立と
九州アジアリーグへの参入申請を表明し話題になった。
その際堀江氏は
東アジア全体でMLBに匹敵するスーパーリーグの構想も打ち出したという。
ではこのアジアにおけるスーパーリーグとは
いったいどういうものなのだろうか。
ちょっと考えてみよう。

 

 

MLBに肩を並べる」とは

堀江氏は
「10年でMLBと肩を並べられる」と仰っているようだが
さすがに無理がありすぎではと思う。
選手1人あたりの年俸*1
NPBとKBOが約3.3倍、
NPBとCPBLが約6.5倍

NPBKBOおよびCPBLでは
それぞれに絶望的なまでの格差があり、
しかもNPBの平均年俸は
MLB契約の最低額にも届いていない

これは
観客動員などを含めた
各リーグにおけるチームの収益の差
と置き換えられる。
10年前、20年前に比べればそこそこ育ってきたとはいえ
韓国や台湾は
プロ野球の市場としては
日本よりかなり弱い*2のが現実なのだ。
当然のことだが
CPBL独立リーグでは
さすがにCPBLのほうが平均年俸は数倍高い。
堀江氏のことだから
観客動員などをあてにした球場現地での収入よりも
配信視聴者数による各種広告収入、
クラウドファンディングなど
ネットを活用した収入を重視する目論見なのだろうが、
果たして10年程度で
MLBクラスの選手数十人に対して
彼らの実力に見合った年俸を支払える球団を
何チームも作る
ことができるのだろうか。
それだけ高い実力を持った選手に対して
「野球をやらせてやってるんだから
マイナーリーグ程度の給与*3でも文句言うな」 などというわけにはいかないのだ。

安く獲得した若手を育成して
MLBNPBなどに高い値段で譲渡する、
MLBクラスとは育成された若手選手のレベルのことだ、
という戦略も考えられなくはないが、
すでにNPBにはこれに近い戦略をとってきたチームがあるし、
若手への最低保証についてもやはりNPBが先行している。
ましてやカーター・スチュワート・ジュニアは
1億円プレーヤーなのだ。

 

九州アジアリーグとの関係

今回堀江氏が参入を目指すのは
今年新しく始まった九州アジアリーグである。
しかしどうやら堀江氏は
現在のリーグと協調して行動する気は微塵もないようだ。
九州アジアプロ野球機構の田中代表のツイートを見ると
両者の関係はかなり不穏で、
どうもリーグとの水面下での交渉などは全て人任せにしつつ
自分のアピールにのみ邁進しているふしがある。
また堀江氏は
Bリーグライジングゼファー福岡に関わった際に
経営が行き詰ったチームから早々に撤退したこともあるので、
今回もご自身にとっての利用価値が減った時点で
さっさとチームを手放す*4可能性は
充分考えられる*5

 

考えられるリーグ戦略

と、素人目に見ても
不安材料だらけなのがわかるが、
豪語するからには
10年後の実現も夢ではない、
何かしらの方策がある、と思いたい。
あるとしたらそれは何だろうか。
簡単に思いつく範囲で考えてみよう。

 

リーグの形態

考えられるリーグは二種類。
まずはNPBKBOCPBLのうち
最低でも2つの機構が合併して
新リーグを作るケースだ。
新球団の誕生もありうるだろう。
この場合
NPBKBOCPBLの格差が非常に大きく
全てまとめて1リーグにすることはできないので
リーグの形態はJリーグのような開放型になる。
基本的には旧NPBが一部、
他のリーグと新球団が二部からスタートする形だろうか。

もう一つは
既存のリーグとは別な全く新しいリーグを作ること。
こちらだと新規チームが大半で
アメリカのNFLに対するXFLなどのような形態になる。
閉鎖型・開放型といった形態に関しては
その時の状況次第と思われる。
他のリーグと時期が完全にかぶって
ただ競合しても運営が厳しくなるので
沖縄、台湾あたりをメインとしつつ
オーストラリアや中国(香港やマカオ)などに範囲を広げて
北半球の秋、冬に開催される可能性もあるだろう。
これだとうまくいけば
リーグ自体が
堀江氏の名前を前面に押し出したものにできるので
ご本人の性格にもより適していると言えそうだ。

 

実現可能な夢なのか皮算用かそれとも商法か

どちらの場合でも
重要なのは多大な資金の確保だろう。
リーグと主要な数チームの経営が軌道に乗るまで
必要な資金を何年も出し続けられる団体の存在が必須だ。
おそらくは
NPBにない海外企業や出資グループを各チームのオーナーとし、
彼らの潤沢な資金で
選手、コーチ、設備などを賄うことになると思われる。
先ほどあえて中国を入れたのは
中国のスーパーリーグのような資金投入も想定したためだ。
それぐらいの資金確保ができないと
わずか10年で作り上げる「MLBに匹敵するスーパーリーグ」の
第一段階にも達しないのではないだろうか。
そもそも
ライジングゼファーでの失敗を教訓に
フェニックスの運営を軌道に乗せることができるのか

外から見ている人間としては
まだここから注目する段階なようにも思える。

最後にもう一つ、
昨年一部でアジアリーグ構想が主張されてから気になっていたのが
為替レートの問題。
国境をまたいだスポーツリーグでは
この為替レートと各国の経済格差が大きな障害になって
なかなか軌道に乗せられないことがほとんどだ。
独立リーグでもどうなるかわからないのに
大規模なリーグで
この問題を克服することができるのだろうか。
それともこの問題点を
仮想通貨などの別なビジネスに結びつける腹積もりなのか。
昨年アジアリーグ構想について堀江氏が言及したあたりから
そんな疑問がずっと頭に残っているのである。

*1:選手保有数については考慮していない。当然保有数が多ければ多いほどその差はさらに増す

*2:そこそこ伸びてきてこの差なので今後の伸びしろがそこまであるかどうかも不明

*3:前よりは少し増えたがマイナーリーガーにとってもまだまだ安すぎる

*4:この点は当時のライジングゼファーのCEOだった火の国サラマンダーズの神田球団社長も同様

*5:手放した後もチーム経営がしっかりと成り立つ基礎を築いたのなら別に問題ないのだが