スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

16球団候補地の必要条件

スポンサーリンク

 

某週刊誌の記事で挙げられた
16球団構想の候補地を覚えているだろうか。
あの記事改めて考えると、
現実の動きに関する信憑性はともかく
意外とよく調べて書いてはいたなと思われるのが
ただどこの都市や地域じゃなく
都市圏に着目していたことだ。
たとえただの飛ばし記事だったとしても、
16球団構想がすぐに実現しないのを
精神論やナベツネのせいなどで片づけるよりは
よほどリアルで建設的な内容だと言える。
せっかくだから乗ってみようじゃないか、
というのが今回のお話。

なんて言ってみたはいいのだが、
実のところ正確なことは言えない。
というのも「都市圏」の算出法が日米で異なるうえに
日本は各省庁でバラバラだからだ。
あと今回の内容は
時間の関係もあってwikipediaをかなり参照しているので、
できるだけ公文書がソースと明記されている数字を使ってはいるものの
細かい数字のソースとしては弱い。
あらかじめご了承いただきたい。

30万人 vs. 200万人

以前、野球解説者の古田敦也氏が
人口30万人程度のシンシナティにもMLBのチームがあるのだから、
日本の地方都市でももっとNPBの球団は可能なはず
と言ったそうだ。
元になったTV番組を私は見てないのだが、
古田がこのような発言をしたこと自体は間違いないらしい。
たしかにMLBのホームがある全28都市を見ると、
人口がそこまで多くない都市も多い。

  都市 チーム
200以上 5 7
200-100 3 3
100-80 1 1
80-60 6 6
60-40 3 3
40未満 10  

(単位:万。以下同じ)

最少はシンシナティで30万人弱。
40万人未満の都市は全部で10ヶ所もあり、
100万人を超えるのは合計8ヶ所。
日本は
30万以上なら合計72ヶ所、
60万以上ですら23ヶ所もある。
だからこれらの都市、
それも地方都市にNPB球団を増やすのは十分可能なはずだ。
これが外部の16球団賛成派の主張になる。

一方で「プロ野球の集客には200万人の人口が必要」との説もある。
ただしこれも
具体的な統計ソースなどはなく
球団関係者が語ったことにすぎないので、
外部の16球団賛成派から
「球団の努力が足りないからだ」「ナベツネのせいだ」
で片づけられるのは目に見えている。

夢と1/30のリアル

そこで「都市圏」である。
たとえば日本ハムは人口6万人に満たない北広島市へ移転するが、
観客はその6万人からしか来ないことがありうるか?
これまでの阪神や西武は
50万人弱の西宮や34万人の所沢からし
観客を動員できていなかったのか?
基本的な集客力を周辺の大都市圏に求めているのは自明だ。
MLBでもこの点は同じことで、
「都市圏」を見ないとこうした疑問は解決しない。
アメリカの都市圏については、
2010年のMetropolitan Statistical Areasを用いる。

 

  都市圏 チーム
600以上 4 7
600-500 6 6
500-400 4 5
400-300 3 3
300-200 8 8
200未満 1 1

都市圏合計数が2減っているのは、
アナハイム(ロサンゼルス都市圏)と
オークランド(サンフランシスコ都市圏)の都市圏が重複したから。
約半分の14ヶ所18チームは
400万人以上の都市圏に置かれている。
そしてなんと200万人未満なのは
全30チーム中たった1ヶ所、
ミルウォーキー(約156万人)しかなかった。
「200万人」はMLB基準だと正しかったわけだ。
アメリカは超のつく大都市が少ない代わりに
数十万人程度の中心都市の周囲に
数万人、数十万人の人口を抱える都市がいくつもあることが多いので、
この結果になったと思われる。

ちなみに他のスポーツと比べてもMLBは多い人口を要求されていて、
私が調べたNFLNBAMLSには
もう少し小さめの都市圏も少なからずあった。
それでもほぼすべての都市圏が100万人以上。
45都市圏中唯一の例外はNFLグリーンベイで、
たったの30万人程度しかいない。
人気ありすぎだろパッカーズ

 

集中と分散の激しい国

そしてここで残念なお知らせ。

関東 37,273,866
近畿 19,302,746
中京 9,363,221
北九州・福岡 5,538,142
静岡・浜松 2,842,151
札幌 2,636,254
仙台 2,256,964
広島 2,096,745
宇都宮 1,655,673
岡山 1,639,414
熊本 1,492,975
新潟 1,395,612
鹿児島 1,126,639
松山 706,883

2015年の国勢調査による
総務省規定の大都市圏の人口だ。
日本国内のデータは全てこれを参考にしている。
もう200万人を超える都市圏は、
中心都市が東西に大きく分かれていて
球団本拠地として考えるとかなり微妙な位置にあたる
静岡・浜松しか残っていない。
つまり、2005年に
MLB基準だとスモールマーケットの部類に入る
札幌、仙台、広島が全て埋まったことで、
新しくリーグを拡張する余地がほとんどなくなってしまったわけだ。
ミルウォーキーを基準としても
追加できるのは宇都宮と岡山まで。
16球団には足りない。

日本は関東が
アメリカで圧倒的に多いニューヨークの
さらに2倍近い人口を抱えているうえに
2位の近畿にもニューヨーク並の人口がある。
3位の中京はアメリカで3位のシカゴと同じぐらい。
一方で国交省基準の都市圏とも並行して見ていくと、
近畿を3分割(大阪、京都、神戸)することで
京都が200万人超の大都市圏になるものの、
それ以外だと100万人を超えるのは
ここで載せた地域と前橋、富山しかない。
50万以上100万未満の都市圏はそこそこ多いのだが、
有力候補とされる松山や
実際にNPB入りも目指すという那覇
この100万未満の都市圏にあたる。
日本一部の地域に人口が集中しているうえに
各県にやや細かく人口が分散しているのだ。
ちなみに都市圏人口50~100万は
マイナーリーグAAAの最低基準程度。
30チーム中50万人未満はリノだけで100万人以上が18ヶ所、
そのうち150万以上は11ヶ所もある。

またJリーグBリーグでもよく批判される東京圏への集中も、
都市圏人口を考えると当然の結果だと気づくだろう。
半分が関東圏にあった17年前はさすがに多すぎだったが、
日本全体の30%弱を抱える関東に4~5球団程度なら
そこまでおかしなことではない。
ましてや16球団まで増えるならなおさら。
J1・J2の36チーム中11チームはほぼ数字通りになるし、
Bリーグにいたっては
たとえB3の埼玉ブロンコス、八王子ビートレインズが昇格しても
36チーム中10チームだ。

4都市をひねり出す

例の週刊誌の記事、
その意図していたところはわからないが、
もし16球団推進の動きを加速させたかったのだとすれば
むしろ墓穴を掘ってしまったようだ。
リアルを伝えたかったのならかえって良かったと思うけどね。

「16球団構想」が可能な都市を都市圏から考えると、
静岡と浜松の中間地点と京都の2ヶ所に絞られてしまう。
いっそエコパスタジアムの横の山を切り開いて新球場を作るか。
いや半分冗談じゃなくて。
どのみち静岡県は雨が多すぎるから、
プロ野球が数十試合をこなすには
ドーム球場がないと持ちこたえられないのだ。
そこに何とかしてねじ込むとすれば宇都宮と岡山。
長年有力候補とされてきた
新潟、松山、那覇は人口が乏しく、
特に松山と那覇
NPBで必要とされる観客動員が非常に厳しいのが現実になる。
今挙げた4地域にしてもプロ野球としては
スモール・マーケットとさらに極小のマーケットに分類される。
90年代の人口は見てないので正確なことは言えないが、
250万人超のデンバー、セントピーターズバーグ(タンパ)と
400万台のフェニックス、500万台のマイアミがまだ残っていた
MLBとはずいぶん大きな違いだ。

外部にいる「16球団構想」賛同者は拙速なうえに
ただの精神論、陰謀論があまりにも目立ちすぎている。
今はコロナ問題もあって進展がさらに困難になっていると思うが、
それを「気合」や「ナベツネ」などで片づけられては、
王会長をはじめとした
実際に球団増へ向けて動いていると思われる人たちや、
「できないと言う人たちは100年たっても…」と言っていた川淵三郎氏らへの
風評被害にしかならない。
外側にいて内部の事情が分からないのなら、
まず外からでも調べられるリアルを見るところから始めてはどうだろうか。