スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

年代表の落とし穴

スポンサーリンク

今回は
これからドラフトに向けて各雑誌や記事などで見かけることが多くなる
年代表を見る際の注意点について考察したい。

 

「見せる」ために必要な弱点

一般的な年代表はこんなところだろうか。
今年のソフトバンクの年代表で見てみよう。

2020H簡易年代表

まず先に私が出している年代表の欠点をあげておこう。

  • 表が大きすぎて見づらい

情報量はこれでも最小限にとどめているつもりだが、
それでも表が大きすぎるのは難点だ。

  • 打席の左右が不明

表をある程度見やすくするためには
何かを省かなければならず、
選手のポジションと左右はどちらか一方にせざるを得ない。
私は打席の左右よりも
まず打てるかどうか、
打てる選手がどのポジションに入れるかを重視するため
こちらを採用しているが、
それよりも左右のつながりを重視する編成をするチームがいれば
そのチームとのずれは生じていると思う。

雑誌等の年代表にも同じ理由で欠点が生じる。

  • 育成選手が行方不明

誰か育成選手が支配下登録されれば
「育成の星」と支配下指名選手以上の期待を寄せられ、
人によっては育成選手の大量指名を推奨することも多いのだが、
年代表にすると彼らはよく省かれている。
彼らの育成のために二軍・三軍の枠が埋まっていると
新しくドラフトで獲得した選手を育成する場所がなくなるし、
育成選手の有望株を把握することもできなくなる。

  • 野手のポジションがわからない

特に内野手全般に言えることで、
同じ内野手でもショートとファースト専任の区別がつかない。
さっきも書いたとおり
内野のポジションと打席はどちらか一方を採用することになるため
どうしてもこうなりがちである。

 

年代表に仕掛けられた罠

ここまでは
年代表を作り、見せるうえでどうしても出てしまう弱点の話。
ただその弱点を考慮しても
もう少し何とかしたほうがいいのでは
と思うことを書いておく。

 

若手の成長具合がわからない

この点は先ほど挙げた
年代表を見やすくするための弱点でもあるのだが、
特に昨今は
一軍の首脳陣や主力に少しでも不満を感じただけで
「二軍・三軍の若手を一軍スタメンに固定しろ」と批判*1する人が後を絶たない。
その場合引き合いに出される若手については
知名度でしか判断しておらず、
実際に若手が二軍でどう成長しているのか見ていないことが多い。
年代表にも
若手の成長具合を客観的に見る手段が必要なのである。
もっとも
「二軍で打率.200の若手のほうが一軍打率.200の主力より絶対に打てる」
というような発言も大量に見かけるので意味があるかは多少疑問だが…。
また今年の各補強ポイントでは
年代表とは別に若手の二軍成績も載せておいたが、
若手がどの程度育っているかを見るためには
年代表ぐらいのスタッツでは足りないのも事実だ。
だがファンやライターなどの主観や
マチュア、特に高校時代の知名度だけよりは
ましと考えられる。
ドラフトとは少し話がそれてしまったようにも見えるだろうが、
「主力のクビを切り若手を使えば二軍が空く」ので
「二軍で鍛える選手をどんどん獲れ」
という主張にもつながっていくのだ。

 

年代表に必ず生じる穴

ドラフトに際して年代表を作るのは
チームの中でどの年代に「穴」が生じているかを見出すためである。
しかし年代表の「穴」には
埋める必要のないものが存在する
この点が一般的な年代表と私が出す年代表との大きな違いと言える。

何が問題なのかは
ほぼ編成が完了した昨年時点でのホークスの年代表(左)と
今年の年代表(右)を見比べてほしい。
今度は育成選手も入れてある。

2020H簡易年代表α

太字が昨年ドラフト指名された選手。
つまり早生まれの高校生を指名しなければ、
これだけ高校生を獲得しても
また翌年には18歳が必ず穴になるのだ。
だが18歳の選手は絶対に必要な存在ではないし
18歳どころか20歳前後の若手も
チームを強くするために絶対必要なわけではない。
そもそも高校生を指名・獲得するのは
一軍の戦力を整え強化するための手段の一つにすぎない。
一軍はチームの勝利を追求する場であって
高校を卒業して間もない未熟な若手を眺めて
未来を妄想し続ける場ではない
のだが、
日本では
高校野球の大会と高野連と協賛するマスメディアが散々叩かれても
高校野球と高校球児の人気は依然として非常に高く、
ドラフトに関しては
こうした高校野球人気も背景とした
手段と目的が逆転した評論が
既に30年以上にわたって行われ続けている。

この風潮をさらに後押しするのが年代表の作り方。
18歳を一番上の見やすい位置に配置することで
年代表の「10代の穴」が強調されているのだ。
人によっては私と同様に年齢の高いほうを上にしていたり
正確なところは忘れたが
10代か20歳以下の選手をひとまとめに表記する*2雑誌もあったりするのけども、
結果としては*318歳の空きを読者に印象付ける形式に
なることが多いのである。

ドラフトの話は往々にして
有望なアマチュア選手の発掘と品評に主眼が置かれるが、
年代表が登場した時点で
この話の主眼はチームの編成、運営に移っていく。
年代表を見る際には
書く側も読む側も
もっと編成の視点から表を見る必要があると言えるだろう。

*1:主張ではなく批判

*2:私の年代表の40代と同じ作り

*3:表にすると一番上は最年少か最年長の二択になるため仕方のない点でもある