スポーツのあなぐら

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高卒ルーキーの一軍「抜擢」について

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昨日、負傷で離脱した中日の高橋周平に代わって
高卒ルーキーの石川昂弥が起用された。
最低でも1ヶ月近い離脱にはなるようなので、
今のままだと石川昂のサードスタメン固定が
しばらく続く可能性がある。
打席数もそこそこ伸びていくだろう。
この石川起用に対しては期待する人が多い一方、
起用が早すぎるのではと不安視する人もいる。
ただこういう緊急事態に対して
「育成のため」と称した若手起用を絶賛する傾向が
非常に強いのは間違いない*1

 

 

高卒ルーキーが使われ続けた例

ところで
実際に高卒ルーキーがある程度使われた場合、
その選手はその後どんな結果になっているのだろうか。
ちょっと見てみよう。
基準はいつもの通り100打席以上または1/3試合出場。
2005年以降に
この条件を満たしたのは7人いる。

高卒ルーキー抜擢

 

炭谷銀仁朗

炭谷銀仁朗

高校時代はバッティングの評価が高かった選手だが、
西武では守備が評価されたのか
2005年に守備面がいまいちだった細川亨に代わって
開幕スタメンの座を手に入れた。
その後は細川に次ぐ二、三番手としての起用が続くも
細川が怪我で長期離脱した2009年は一番手として起用されている。
2011年からは本格的に正捕手となるが、
打撃成績はこの時期より少し良くなった程度。
特に2014年以降は
バッティングの優れた森友哉が加入したこともあって
20代後半はずっと「聖域」と叩かれ続けた。
「10年後を見据えた起用」の最終評価がこれか。

 

高城俊人

高城

相川亮二がFA移籍して以降は
若手、中堅、ベテランの誰を使っても
キャッチャーのレギュラーが全く固まらず
大苦戦していた横浜。
チームも最下位だしそれならいっそと考えたのか、
8月ごろから黒羽根利規や鶴岡一成に代わって
ルーキーの高城がスタメン一番手として起用された。
高城の場合はバッティングがかなりネックになっており、
打席数はそこまで多くない*2ものの
OPS6割台と5割台が1回ずつ、
あとは4割台以下ではさすがにつらい。

 

大谷翔平

大谷翔平

言わずと知れた二刀流の怪物。
バッティングは3年目に低迷したものの
他の年は非常に優秀な成績を残した。
5年目オフに念願のMLB行き。
「規格外」ではすまない素質と実力の持ち主であることに異論はないが、
実力に対して人間の身体が耐えられるのか
現在も不安材料になっている。

淺間大基

淺間大基

ドラフト3位ながら
1年目からしばしば一軍スタメンで起用。
高校時代はかなりの有名な選手だったが
ドラフトでは3位中盤まで残っていたこともあり、
「さすがは指名・育成上手の日本ハム」と
大絶賛された。
2年目以降は怪我が多いうえに
外野がある程度埋まっているためか
なかなか結果を残せず、
最近はサードにも挑戦している。

オコエ瑠偉

オコエ瑠偉

非常に高い身体能力から
甲子園やU-18などで
平沢大河とともに非常に株を上げ、
ドラフトでは外れ1位で指名。
1年目から守備・代走要員込みでの一軍帯同が多かった。
2年目は身体作りが当たったかのような高打率を記録したものの
翌年から低迷している。

清宮幸太郎

清宮幸太郎

7球団競合の末日本ハムに入った清宮は
DHに入っていたアルシアの状態がいまいちなのもあって
1年目から一軍起用が増えていった。
ただし1年目はアルシア(.720)を下回っている。
昨年は開幕前の故障を抱えたこともあってか苦戦。

 

小園海斗

小園海斗

昨年は田中広輔が故障の影響か絶不調に陥り、
その代役として使われることになった。
打撃成績自体は
さすがに昨年の田中を大きく上回るものじゃなかったが
完全にブレイクしたと考えている人は結構多いようで、
今回の石川昂起用でも「小園と同様の」ブレイクを望む声が
かなり見つかる。
ルーキーの韮澤雄也と二遊間で併用されている今年は
今のところ二軍でも絶不調のようだ。
一軍に上げるならかなり調子を上げてからにしたい。
なお開幕当初から
「全然打てないんだからとっとと小園や羽月隆太郎に代えろ」と
叩かれている田中と菊池涼介
7/12現在それぞれ.772と.695。
羽月は二軍で.530。
「打てない」の定義とは。

 

おまけ:高卒2年目に一軍出場機会を増やした選手

高卒2年目抜擢

該当するのは以上12人。
坂本、村上のような
翌年以降も一軍スタメンに定着した選手だけじゃなく
陽や筒香のように数年後に本格化した選手もいる。
「最終的な」成功率は結構高いと言えるか。
また「高卒野手の起用が遅い」と叩かれ
「使え使え」と言われ続けた中日・高橋も
2年目以降は7年間毎年この基準をクリアしている。
初の規定打席到達は一昨年だが
国内FA権取得まではあと2年ちょっとだ。

 

起用成功率を100%にする方法

こうしてみると
高卒ルーキーの起用は大きな成功を収めることもある反面、
数年後に成功する保証もないうえに
1年目から打ちまくる選手などほぼいないのだから
リスクはでかい。
しかしこうして活字で表現すると
「そんなの当たり前だろ」と批判されるかもしれないが、
実際にこのような「若手の抜擢」を主張している人は
「100%成功する前提」でいると思うべきである。
その事実を示してくれたのは昨年の清宮。
状態が悪くても使われ続けた清宮と使った監督が、
「若手は状態が悪くても使い続けろ」と
常日頃主張している人たちから
「聖域にするな」と袋叩きにあった
のだ。

どういうことかと言うと、
起用が成功した時は
実際に使った首脳陣や本人ではなく
外から怒鳴ってただけの自分の手柄。
失敗なら
「首脳陣や編成、FA選手のせい」や
抜擢の事実そのものの抹消に
若手の聖域化を主張する普段の自分の言動を
棚に上げた「聖域」批判。
こうしたあらゆる手段を使って
抜擢失敗の事実を自分の記憶から消去し、
成功した時だけを成功例と見なす彼らの頭の中では
高卒ルーキーの成功率は100%なのだ。
考えてみてほしい。
もし表面的な成功率を見ているのなら、
むしろ1年は調子が良くても我慢してほぼ二軍で鍛え、
2年目になってから調子のよい時に起用したほうが
成功率はぐっと上がるはずなのだ。
それよりも1年目からガンガン使うべきと考え、
しかもうまくいかなかったときに
「うまくいかないこともよくある」とは考えていない時点で、
彼らに対するこの仮説は現実味を帯びてくるのである。

石川昂については
二軍34打席で10三振がかなりひっかかる。
オコエなどを見てても
まだこれぐらいの力だと
一軍で長く通用はしないことがほとんどな印象で、
同じ若手なら
昨年二軍でサードだった好調の石垣雅海、
あるいは打撃には目をつぶって
サード経験のある選手をとりあえず使うなどの手段もある。
むしろ石川昂を育成するためにも
彼の調子が落ちたら即二軍で調整させるべきなように思う。
この考えが否定されるのは
石川昂自身の性格が一軍での長期的な抜擢に向いている場合で、
これらの点は当たり前だが首脳陣のほうがはるかに詳しい。
少なくとも
首脳陣が抜擢し続けなかった場合、
石川昂が活躍し続けられなかった場合に
首脳陣を嬲り殺そうとすることだけはやめてほしい。

*1:ただし概ね高卒限定

*2:100打席未満は4年、昨年の12打席以外は61~76打席