スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

阪神に対する高卒野手への異常な期待感

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阪神に限らないいつもの光景ではあるけども、
プロ野球では打力がいまいちなチームに対し
判で押したように「高卒野手を指名しないからだ」と批判される。
今年の阪神の場合は開幕直後の打線が絶不調で、
2015~17年の3年間に高卒野手の入団がなかったため
「高卒野手を指名しないからだ」批判が大量に沸き起こり、
高卒1年目の井上広大の一軍スタメン固定を主張する輩が
SNS、メディアをはじめ続出した。
現在は外国人選手3人や大山悠輔の復調もあって
打線全体の状態が上がり
あまり言われなくなったが、
少し状態が落ちればまたすぐ叩かれるだろう。
状態がいい今も「助っ人依存」と叩かれているし、
たとえ数年後日本人選手主体になったところで
今度は「高卒の若手が少ない」「助っ人が当たらない」と
叩かれるのがオチだ。
案の定期待値が異常に高まっている井上にしても
出てくれば「もっと前から高卒ばかり獲り続ければ良かった」、
出てこなければ「育成力がない」「抜擢しないのが悪い」と
批判の材料としてだけ利用されるのは目に見えている。

 

 

2015、16年指名高卒野手の一軍成績

ところで、
阪神が高校生野手を指名しなかった*1
15、16年にプロ入りした高卒野手は今一軍でどうなってるんだろう。
シーズン始まってからまだ一ヶ月だから
長いシーズンの今後活躍度が大きく変わる可能性は充分ある。
しかし一軍レギュラーを開幕シリーズの1~3試合で見切って
数年間高卒の若手だけを起用させ続けようとするよりはましなはずだ。
この2年間と同じく高卒野手の入団がなかった2017年は
清宮幸太郎と安田尚憲を入札しているので
「獲ろうとしない」と叩くのは筋違い。
なお、ここでの内容は
阪神以外の批判されることがかなり多いチームでも
同じことが言える。

15-16指名高卒野手2000一軍

7月23日の時点で
一軍出場を果たしたのはこの11人。
活躍していると言えるのはセンターで定着しつつある鈴木に
控え、二番手として機能している坂倉と廣岡、渡邊。
古賀や三森はポジションが空いたのでチャンスなんだが
一番手に躍り出るほどの打撃成績ではない。
とはいえ高卒4、5年目でこのぐらいなら
当たり年ではないにせよ
今後の伸びは他の選手も含めてまだまだ期待できる。
それにしても
高卒至上主義の評論家から
「打ち方が悪い。すぐ出てきそうな感じがしない」*2
昨年名指しされていた鈴木が
現在世代一番の出世頭として台頭するとは。

 

2015、16年の高卒野手は二軍でどうなってる

ここまでの一軍出場選手の中に
2015年1位指名の平沢大河やオコエ瑠偉
昨年までいくらか一軍に出ていた
愛斗、堀内謙伍、村林一輝、平沼翔太などは
入っていない。
彼らを含めた同世代の高卒選手たちは今どうしているのだろうか。
こちらも見てみよう。

15-16指名高卒野手2000二軍

OPSで目立った成績を残しているのは
細川、村林、平沼の3人。
しかしこの3人も一軍で使うには難点を抱えている。
細川は三振率がまだまだ高く、
状況次第で空く可能性のあるセンターを守る選手ではない。
レフトとライトは一軍が充実しているので、
現状ではここに大きな穴が出来た時の準一軍要員として
二軍で待機している段階と考えられる。
ショートの村林も細川と似た状況と言えるだろう。
逆に一軍の内野全般が不調者と故障者だらけになっている平沼は
彼自身が3週間二軍戦に出場していない。
正式発表は見つからないが
一軍に上げたくても使えないと考えるのが自然だ。
あとの選手は二軍成績が悪いか
スタメン出場が少なすぎる選手ばかりで、
現段階では一軍昇格や支配下登録は難しい。

 

2017、18年指名高卒野手の一軍成績

せっかくなので2017、18年指名の高卒野手も
一軍出場選手だけ見ておこう。

17-18指名高卒野手2000一軍

2、3年目にしてはかなり選手が多く
17年指名6人、18年指名2人の合計8人。
17年は完全に一軍主力になっているのは村上、
あとは安田と清宮のドラ1勢が出場しており、
清宮と安田の抽選を外した阪神はこの3人を獲ることが不可能。
しかもポジションはかなりかぶっている。
2018年組から出てる野村と太田は飛ばす能力が長けているが
他のポイントを見ると調子が持続していたかは未知数。
また阪神
太田入札時には辰己涼介の抽選を外しており、
野村はたとえ獲りに行ったとしても
同じサードの大山や外国人選手の出番が消えるだけ。
ボーア、サンズ、大山の調子が上がった現段階では
「だから何だ」としか言いようがないし、
「5年先10年先を見て高校生を獲り続けろ」と言いながら
「2、3年で育成しろ」とは矛盾にも程がある。

 

三歩で忘れる「暗黒ドラフト」の記憶

さて最後にもう一つ奇妙な点を指摘しよう。
阪神はドラフトで高校生を獲らないから弱い」は
阪神を批判する際に
いつどこの時期でも言われることだが、
一方阪神でよく「暗黒ドラフト」とされるのは2006、07年。
たしかにこの2年間のドラフトは失敗と言っていい結果になっている。
しかし06、07年のドラフトがどういう形式だったのか
皆さんは忘れてしまっているらしい。
2005~07年は高校生と大学・社会人の分離ドラフトだ。
当時の阪神はバランス型の指名をしており、
2年間では高校生6:大社7(+育成1)を獲得した。
高校生のうち野手は4人、
高校1巡は入札、外れ1巡とも全て野手。
この間の「暗黒ドラフト」は
高校生野手の失敗が大きな一因だったわけだ。
それとも
「もっと高校生に傾注して大社を獲らなければよかった」
とでも言いたいのだろうか。
大社指名の失敗も当然「暗黒」の一大要因なのは間違いないが、
それにしても
「暗黒ドラフト」をしたフロントやスカウト、監督を批判しながら
「『暗黒ドラフト』と同じドラフトをしろ」
とは
異様な主張である。

*1:育成指名を含めると、阪神に高校生野手の入団がなかったのは1995年以来20年ぶり

*2:2:21:59ごろから