3/17追記:NFLの新CBA結果を更新
プレーオフ出場数の平均
コロナの影響による開幕延期や16球団構想など
大きな話題がつきない今年のプロ野球だが、
この2つに賛成する意見にはどういうわけか
「CSを中止したいから賛成」
「とりあえずこのままCSを廃止しろ」などと
自分のCS廃止論に結びつけようとする人たちが多い。
このCSを嫌う理由については
「全チームの半分が出場できるプレーオフはおかしい」
「下の順位に勝つ可能性があるのはリーグ戦の意味がない」
が大半を占めているが、
もう一つよく言われていた
「アメリカはこんなことしてない」
が最近少なくなってきた。
MLBが以前の30チーム中8チームから10チームになったうえに、
ここにきて14チームまで拡大する案が出てきたからだろう。
もっともMLBは反対意見も多いので実現するかは不透明だが。
ところで最初に挙げた2つの理由もどうなんだろう。
日本は野球だとMLB、
サッカーだとヨーロッパしか知らず
他のスポーツの仕組みに関心がない人が少なくない。
実のところアメリカの中では、
MLBのプレーオフはむしろガラパゴス的存在に近い。
NFLは選手会が新CBAを承認したため、
2020年シーズンからプレーオフ枠が14に増えた。
今のアメリカは極端と言ってもいいぐらいプレーオフを好み、
「全チームの半分が出場できるプレーオフ」が当たり前になっている。
その中でMLBはプレーオフ出場チームが最も少なかったわけだ。
リーグの試合数も関係なく、
82試合と2番目に多いNBAとNHLのプレーオフ出場数は
いずれも50%以上になっている。
しかも各ディビジョン1位以外の出場チームは
全て勝率で決まるから、
下剋上の可能性は当たり前のようにある。
MLSは現在大拡充を続けていて、
2022年までにさらに4チームを追加予定。
合計30チームになるわけだがどういうプレーオフ方式をとるだろうか。
他のスポーツとも近く数字のキリがいいのは16チームだが、
昇格プレーオフ*1すら嫌っている人の多い日本では
考えられない光景だろうな。
チーム数が多いからと言われるかと思うが、
たとえば新興のXFLでは
8チーム2ディビジョン制のリーグで
4チームによるプレーオフを行う。
また1リーグのチーム数が少ない
アメリカのマイナーリーグではこうなっている。
AAAからRookie Adv.までの全てのリーグで
ディビジョン制や前後期制を用いたプレーオフが行われている。
16球団構想の際によく主張されるプレーオフは
パシフィック・コースト・リーグが同じ方式をとっている。
その一方で2チームしか出ないのはアパラチアン・リーグだけ。
前後期とも同じチームがディビジョン制覇したカリフォルニア・リーグは
わざわざワイルドカードの3チーム目が用意されている。
基本的に4チーム以上で行うのを前提とした
プレーオフ方式をとっているのがわかるだろう。
NPBより少ない8~10チームのリーグでも
年間約140試合のリーグ戦をこなす野球でも例外ではないのだ。
閉鎖型な開放論
以上のような現代のプレーオフの実態、
少しふれたような野球以外のスポーツでの反応を踏まえて考えると、
CS反対派は
あくまで現行のCS制度が嫌いなのか、
「プレーオフ」の存在自体が嫌いなのかが
全く見えてこなくなる。
たとえばドラフトで完全ウェーバーを主張する人は多いが、
現行のCSとウェーバーを組み合わせるNBA方式を提案する人は
残念ながらほぼ見ることがなく、
CS廃止とセットにする人ばかり。
前後期制復活の意見もまれに見かけるが
ほとんどは「NPBがCSをやりたいなら」とその実かなり否定的。
現実的には
雨が多い日本では日程消化問題が再燃するだろうし、
シーズン中盤の交流戦が冠大会になってしまっているため
前後期への分割が困難でもある。
だから難しいことは難しいのだが、
そのへんまで考える人は残念ながら見ない。
どうやら「日本シリーズ以外のプレーオフはいらない」が本音のようだ。
そんなに「リーグ戦が大事」なら
別に12チーム1リーグでいいんじゃないかと思うが、
これもやっぱり嫌がる。
CS反対の16球団賛成派も
本当は2ディビジョンやプレーオフはいやで、
慣れ親しんだ日本シリーズのみの2リーグ以外全部反対なんじゃなかろうか。
改革や開放を求めるわりには
求める改革の中身が非常に画一的かつ閉鎖的に感じるのだ。
リーグ戦と一発勝負の二択
その一方で、
どういうわけか日本人は一発勝負も大好きだ。
最近はあまり聞かれなくなったが、
「4勝制の日本シリーズはだらだらしてつまらないから1試合にしろ」
という意見も一昔前は少なくなかった。
またトーナメント戦をやらせるとこの嗜好が顕著で、
シングルエリミネーション以外の方式を
異常なほど嫌う傾向が強い。
野球などのスポーツだと
大半の人がWBCでしか見たことがない*2からだろうか。
アメリカの野球だと大学野球の全国大会などで
敗者復活ありのトーナメント方式をとっているが、
日本は代表数が多い地区の都市対抗予選以外、
大掛かりな大会はどこもシングルエリミネーションだ。
高校の予選や大学はアメリカと違って休み期間じゃないから
時期的に仕方ない部分はあるけども。
あと一発勝負に関していつも理解に苦しむのが
ドラフト候補の評価だ。
全国大会などでの「勝負強さ」を重視する人がかなり多いのだが、
同じ相手と何度も対戦する長いリーグ戦で
何年も活躍する選手を探しているはずなのに、
何度も対戦している相手との試合より
対戦したことがない相手との
一発勝負の結果やパフォーマンスを重視するのはなぜだろうか。
こんなところからも一発勝負への
妙なこだわりというか神聖化が垣間見える。
ちょっと横道にそれたが、
CS廃止を訴える人たちの本心*3は
CSの形式云々の問題じゃなく
リーグ戦か完全勝ち抜きトーナメントかの
二極化した形式以外納得できないのではなかろうか。
プレーオフそのものが
彼らにとって「中途半端」な存在でしかないのだ。
そして少しでも弱点があると、
もうその形式を楽しむことができなくなる。
野球以外のスポーツでもこうした傾向が強いのを見ると、
おそらく野球に限った問題でもないだろう。
これだと厄介なのが、
最初にあげた「CS反対のための16球団賛成」派。
プレーオフそのものが根本的に理解できず楽しめないのだから
どのような形のプレーオフでも結局反対する可能性がある。
それも案の時点では賛成していたのに
実際にやってみてから
最初から分かっていた粗を持ち出して
「こんなはずじゃなかった」と手のひらを返しかねないのだ。
少しはましな仮説
ここまであれこれ考えてみて、
もしかしたら16球団のプレーオフのうち、
2リーグ2ディビジョン制なら
実際にやってみて多少欠陥が見つかっても賛成するかもしれない
とも思われる仮説にたどり着いた。
それは、この人たちは「敗者復活が嫌い」なんじゃないかということだ。
シングルエリミネーションにやたらこだわるのもそうだが、
「リーグ戦が大事」なのも「優勝の価値」などではなく
「リーグ戦の敗者に復活チャンスがあるのが許せない」
のだとすれば説明がつく。
もしそうなら、
ディビジョン制のおかげで敗者復活扱いにはならない
4チームずつの2リーグ2ディビジョン制1位だけが戦う方式であれば
たとえ他に粗が見つかっても賛同し続けるかもしれないが…。
何だか外れていてほしい仮説になってしまったな。
理論としてはそれっぽくなってはいるが
同じヒトとしてはどこか嫌なものがあるね。
*1:現在のJ1・16位が参加する前のJ2・3~6位がトーナメントを争う方式。ヨーロッパのサッカーリーグで用いられることが多い
*2:eスポーツなど早い段階でダブルエリミネーションが導入された競技では定着しているようだ
*3:自分でも気づいているかはわからない