スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

16球団構想候補地を判定してみた

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エスコンフィールド北海道における
2023年開幕戦での事態を踏まえ、
交通アクセスの面で大幅に変更を加えた。

ここでの判定を読む前に
noteに投稿した16球団構想に関する一連の記事
以前ブログにに投稿した「青空の下ではできない日本野球」
「16球団候補地の必要条件」、などを
先にいくらか読んでもらいたい。
そうじゃないとわかりづらい部分が多いのだ。

 

 

「16球団構想」の候補地について
主だった候補地を私なりに判定してみたいと思う。

 

各候補地の判定

NPB12球団の判定

現在の12球団についてはこうなる。

12球団本拠地判定

人口は
都市ではなく都市圏人口をさす。
都市圏人口200万人台はB、300万以上はA。
A+は2球団以上あっても問題ない地域のことで、
非常に人口の多い南関東はA+++でもいいぐらいだ。

気候
ドーム球場は関係なく安心して見られるので基本的にA、
南関東の屋外と広島は雨がかなり多いのでC。
甲子園は西宮のデータがわからなかった。
大阪並の暑さならD、神戸程度ならBになるが、
あの地域にしては雨も暑さも良好だったとすれば
甲子園があのような聖地になったのも
納得がいく。

交通は
チームの移動の話ではなく
来場する観客が用いる交通手段の話。
駅から遠いとされる球場は評価が下がるが
元の輸送力が非常に高い交通機関ばかりだから
2022年現在の12球団はどこもB以上をつけられる。
ただし
2023年から使用されるエスコンフィールド北海道は
最寄駅から1.6km以上*1離れており、
人混みなしでも徒歩20分以上が想定されるので
新駅の誕生まではCランクと判定した。

球場で唯一Bをつけたのはメットライフドーム
外野が芝生席なのが理由。
これでわかるように
芝や屋根のつけ方などは一切考慮しておらず、
判定の基本基準は座席の作りと
その座席の改修がどの程度必要かによる。
Aは少なくとも内野まで全席跳ね上げ椅子。
総合判定の基本最低条件はBだ。

 

MLBのホームは

次にMLBも比べてみよう。
ただし30チームと非常に多いので
一つ一つの判定は載せずある程度まとめている。

MLB本拠地判定

本来のMLB本拠地都市圏のうち
人口150~200万人はミルウォーキーしかない。
あとは8チームが200万人台。
2チームをかかえる3都市はいずれもA+になる。
シカゴは中京大都市圏とほぼ同じ人数、
アメリカで一番多いニューヨークが関西とほぼ同じだ。
気候は
暑さで有名だったレンジャーズのアーリントンが
2020年から開閉式ドームに変わったので
全チームがA-以上の判定となった。
A-は4月がやや寒い屋外球場が該当する。

交通は日本と少し判定基準を変えてある。
道路以外の公共交通利用が前提になる日本と違い
アメリカは基本的に車社会でもあるので、
駐車場と周囲の道路に充分な広さがあれば
車やバスのみの球場でもA判定にしてある。
公共交通無しでもA判定の駐車場とは
日本最高クラスの充実度をほこる球場でも
比較にすらならないレベル。

収容可能台数が数万台で
駐車場に新球場やフットボールスタジアムを建設しても
まだまだ余裕があるぐらいの広さ
だと思ってほしい。
B判定は駐車場がそこまで広くなく
交通機関とも徒歩10分程度の距離がある都市が該当する。
道路もアメリカだと
当たり前のように片側3~4車線が
球場周辺に何本もある。

オークランド・アスレチックス
本格的な移転に向けて動き出したとされるラスベガスは、
2010年時点だと都市圏人口が190万人台*2だったが
2018年には220万人台へ増えていたため人口がB判定。
現在のラスベガスには
2019年にオープンしたLas Vegas Ballparkがあるが
収容人数は10,000人弱で
周囲に観客席や駐車場を増設するスペースもなく、
そもそもラスベガスは非常に暑い土地なので
MLBの試合を屋外球場で行うのは無理がある。
用地買収の具体的な場所や
現在当地で進んでいるモノレール延伸などの
様子がわからないので
交通は評価をつけていないが、
密閉できる屋根のついた球場を作るなら
その時点で気候と球場はともにA判定となるだろう。

 

あえてAAAも判定してみた

ここでもう一つ、
アメリカ・マイナーリーグのAAAも判定してみよう。
AAAは
2021年のマイナーリーグ改変で
200万都市圏のサンアントニオ
160万人のポータケットに
100万人未満のウィチタとフレズノが削減され、
代わりに
130万人のジャクソンビルと
ボストン都市圏内にあるウースターに加えて
さらにシュガーランド(ヒューストン都市圏)と
セントポールミネアポリスセントポール)が
独立リーグから参入した。
4チーム中3チームがMLBと都市圏を共有しており、
特にミネアポリスセントポール
車で2、30分程度の距離、
それぞれの球場は
同じライトレール路線の東西の終点が最寄り駅である。
このほかローレンスビルとタコマが
それぞれアトランタ、シアトルの共有圏だ。

AAA判定

200万人台のBランク3チームは
MLBと共有していないものの
シャーロットにNFLパンサーズとNBAホーネッツ、
サクラメントにはNBAキングスがあり
削減されたサンアントニオにもNBAスパーズがある。
ジャクソンビルもNFLジャガーズがいるところだ。

AAAクラス程度だと
バス以外は公共交通のない都市がかなりあり、
MLBほど広い駐車場や道路を擁していないことも多い。
もっとも収容人数が平均11,500人程度、
平均来場者数も平均6,500~7,000人となると
そこまでの設備は必要ないとも言える。
球場の評価がB~Cになっているのも理由は同じだ。
外野は日本の地方球場と同じ芝生席の球場が大半で、
マイナーリーグでは不足のない設備でも
MLB用を想定した今回の基準では改修必至なためB以下としている。
ただ日本のような
外野の芝生に10,000~20,000人詰め込む設定の球場はなく、
内野の座席はほとんどがカップホルダー付の跳ね上げ席

一部の例外は跳ね上げと背もたれ付ベンチの併用だし、
NPBでも最近増えてきたテーブル席の充実している球場も目立つ。

気候はさすがに一部の地域しか調べられてないが、
フロリダ州がないので
雨でマイナス点がつく都市はないと思われる。
かなり暑い地域は
前述のシュガーランドなどいくつかある。

 

有力視されている候補地の判定

まずは何年も勉強会に参加しているという四都市から。

新潟

HARD OFF ECOスタジアム新潟 総合判定:C-

人口 気候 交通 球場 総合
D B- D C D

夏の気温はいいほうだが雨はそこまで少なくない。
さらに4月が若干寒いため
気候は仙台と同じB-。
球場はネット裏以外の内野席が単なる背もたれだけ、
外野が芝生と木のベンチなので
他の地方球場に比べれば良いほうではあるものの
できれば改修したい。
問題は人口と交通で、
150万人に満たない都市圏人口と
新潟駅からの距離がありすぎて
バス以外の公共交通機関がないこの球場では
週末の1、2日なら何とかなっても
平日連戦の集客がかなり厳しい。
なお先ほど書いた
「(駐車場が)日本最高クラスの充実度をほこる球場」とは
このエコスタのこと。
それでも収容台数は5,000台に満たない。
しかも道路が最大二車線なので
連日の数時間にわたる大渋滞は必至である。

 

日本海ドームシティプロジェクト」について

個人的な感想を先に書くと、
どうもこのプロジェクト
球団誘致よりもドーム建設が最優先事項に見える。
エコスタは年間1、2試合、
多くてもビッグスワンのように月2試合程度行うには
立派なスタジアムかもしれないが、
週3~6日も試合をしていいボールパークにするには
ハードルがあまりにも高すぎる。
しかも
エコスタ、ビッグスワン自体が
地方都市にありがちな
「交通が不便な郊外の空いた土地に作られたスポコン」なため
他のイベントなどでも使いづらいうえに
宿泊施設等の拡張も難しく、
地元財界でも持て余し気味なのではないか。
ここまでは容易に想像がつく。
新潟駅から遠くない朱鷺メッセなど
現有のイベント施設*3はそれなりにあるものの
新潟市全体の需要には追いついていないのだろう。
民間主導のプロジェクトなのは、
県や市のような自治体主導では
スポーツ施設建設に厳しい制限がかかり
エコスタの二の舞を強いられる可能性が高いためと思われる。

ただ
これらの交通その他の問題を解決する土地が
本当に存在していて、
しかも確保することが可能なのか
という疑問が当然出てくる。
何よりも新潟だけでもつらい
人口・集客問題を解決できる都市が
もう一つ出てくるのか。
最低でも
1年目の東北楽天レベルの資金を出資できる企業が
2社以上現れるのか。
というかそもそも新潟に対して手を挙げる企業がいるのか。
独立リーグがあるならプロ野球参入は簡単だ」
と主張する人は非常に多いが、
独立リーグのチームを運営できる程度の出資額では
プロ野球選手を10人そろえることすら不可能*4である。
ボールパークを作ります。
せっかく作って使わないのももったいないから
どなたか新球団に手を挙げませんか」
というのはMLBマイナーリーグなどでもよく見られる光景だが
以上の理由を考慮すると
今回の話はまさにこうしたパターンで、
スタジアム建設がまず先にあるのではないかと考えられるのだ。

 

静岡

草薙球場 総合判定:D+

人口 気候 交通 球場 総合
D(B-) D C D D+(C-)

沢村栄治の快投という
歴史的には非常に価値のある球場だが、
駅の近さ以外は良い点数をつけられない。
しかも静岡鉄道は2両編成のため
輸送力があまり高くないのが難点だ。
球場からはかなり離れている
JR東静岡駅への徒歩も活用しないと
駅前は連日深刻な混雑を引き起こすだろう。
球場は数年前の大改修でかなり近代化したものの
座席はあくまで「良い地方球場」レベル。
一軍の球団を誘致するには
2万人超しかない収容人数のこととあわせて
プロの常用レベルに改修しなければならない。
静岡そのものの都市圏人口は多くなく
東海道本線で1時間10分はかかる浜松を加えた
静岡・浜松大都市圏だと300万人弱となる。
また静岡市
降水量がほぼ毎月200ミリを超える
日本でも有数の豪雨地帯の一つであり、
暑さもあいまって夏の野球には向いてない。
逆に冬は本州の中ではかなり暖かく
サッカー文化が充実するのも納得である。

 

松山

坊っちゃんスタジアム 総合判定:D

人口 気候 交通 球場 総合
E D D C D

改めて考えた結果、
大きく判定を下げたのが交通。
市坪駅が4両編成しか止まれず
周囲の土地を見る限り改修が困難なことも一因だが、
予讃線は1時間に1~2本しかなく
しかも多度津から先の
香川県から愛媛県内は全て単線なので
所有数も臨時列車も増やしようがない。
これだと
1時間あたりの輸送力は
モノレールやライトレールにも大きく劣るのである。
近年は他の地域に比べて気温の上昇がやや激しい
気候も懸念材料だが、
もう一つそれ以上に厄介なのが人口。
松山都市圏全体でも100万人を大きく下回り
常時観客を集めるのが非常に困難な地域になっている。

市坪―高松距離

四国全体で考えればいいと単純に主張する人も多いのだが、
鉄道は先述の本数の少なさに加えて
四国全体の距離の長さと有料特急中心のダイヤがネックで、
日常的にはとてもじゃないが使えない。
収容台数が新潟ほど多くない駐車場は
川に阻まれて拡張も困難なうえに
松山外環状道路や国道が全然広くなく、
他県から足をのばすには
有料の高速道路か「四国の絶景」を
何時間も走らなければならないので
車での来場を前提にするのも無理。
これが
小さいと思われがちな四国の「真の大きさ」なのである。

 

那覇

沖縄セルラースタジアム那覇 総合判定:D-

人口 気候 交通 球場 総合
E D- C- E D-

3両編成化へ向けた工事が進んでいる
モノレールの駅が近く
1時間あたりの最大本数はかなり多いものの、
1本あたりの輸送力が静岡鉄道と同程度なことと
車社会の沖縄では大規模駐車場が近くにないほうが厄介なので
交通はC-。
那覇は本州四国九州よりも意外と気温が低く
風がやや強いため体感温度も悪くなく、
気候は南九州よりはほんの少しだけいい。
台風の多さを除けばの話だが。
しかしさらなる大改修を必要とする球場に加えて
何といっても人口が最大のネック。
那覇都市圏は松山より少し多い程度の人口しかなく、
100万人を大きく下回っている。
また今までにも指摘されていることだが
台風でチームの移動が困難になりやすいため
前後の他地域でのリーグ戦開催にも
しょっちゅう支障を及ぼす可能性が高い。
ブルーオーシャンズの見通しの甘さが次々と露呈し
完全に頓挫してしまった今となっては、
沖縄での一軍新球団の可能性は
しばらくは皆無に近い。

 

そのほかの16球団候補地の判定

宇都宮

宇都宮清原球場 総合判定:D+

人口 気候 交通 球場 総合
C C D(C-) D- D+(C-)

交通はライトレール開業でいくらか変わる。
ただ日本のライトレールや路面電車
車両数が多い欧米に比べて輸送力が大きく下がるので
どうしてもMLBより低い判定になる。
都市圏人口は新潟よりも多く、
雨が多いが暑さは南関東とほとんど変わらないので
気候も多少はまし。
記事は既に読めなくなっているが
地元栃木県で
社会人チームも持っているエイジェックが
NPBへの参入に前向きとの報道もあったため、
世間で有望視されている四都市よりも
有望な都市の一つと言えるだろう。
ただし球場の観戦環境はかなり劣っており、
座席の全改修が必要と考える。

 

浜松

浜松球場 総合判定:D

人口 気候 交通 球場 総合
D(B-) D D D- D(D+)

どうしてもこういう評価になってしまうのが浜松。
一番ましな交通も
一本あたりの輸送力に単線からくる本数の少なさ、
駅からの距離に歩道の狭さと
全ての面で評価を下げた。
静岡並の雨の多さもかなりネック。
静岡より唯一ましなのは10万人程度多い人口だが、
それでも150万未満に変わりはないので判定は同じ。
ここでは総務省の基準に沿って
静岡・浜松大都市圏も参考にしているが、
ターゲットとしては
1時間以上かかる静岡市よりも
中京大都市圏に入っておらず
浜松駅へ列車で35分程度で着ける
豊橋をメインに加えるべきなのだろう。
というかこれは既に
Bリーグの三遠ネオフェニックスがやっていることか。

 

浜松新球場

いくつかの建設案が出ているという
浜松の新球場計画
自然保護や箱物忌避などもあって
ややもめているこの建設計画に
プロ野球新球団誘致への布石は全く見られないのだが、
「静岡(県)」「新球場」「ドーム球場」のワードが出たことで
16球団構想との関連が騒がれる可能性があったため
ここに判定を書いておこう。

人口 気候 交通 球場 総合
D(B-) D C- C D+
D(B-) A C- C C+

この判定は
22,000人収容の球場が建設される場合。
13,000人なら将来的な誘致も100%ありえない。
左が屋外球場で右はドーム球場
ただドーム球場になったとしても
収容人数が22,000人は
プロ野球を誘致するにはかなり少なく、
最寄りの高塚駅への距離は約2kmで
エスコンフィールドよりもさらに数百メートル遠い。
東海道本線なので輸送力が高く
先ほど書いた豊橋から行きやすいのが利点にはなる。

おそらくだが
野球関係者が求めているのは
建設から約75年が経過し
老朽化が深刻になっている浜松球場に代わって
地元の草野球、高校、社会人で使用するための球場で、
財界が求めているのは
雨がかなり多い浜松でもイベント開催が可能な
大規模イベント施設。
両者の思惑が全く異なるなかで
それぞれの折衷案をとりつつ
西に見える総合水泳場とともに
この地を大規模スポコンとして開発しようとしている県、
という構図だろうか。

 

金沢

石川県立野球場 総合判定:D-

人口 気候 交通 球場 総合
E C D- E D-

金沢市の人口は46万人台と
北陸では新潟に次いで多いためか
候補に挙げる人がそれなりに多い都市。
しかし実は
周辺地域にはさほど人が多くなく、
隣の県の富山都市圏が100万人を超えているのに対し
金沢都市圏はわずか75万人弱しかいない。
周囲には
陸上競技場や産業展示館があり
高速道路のインターチェンジが近いものの
公共交通はバスのみ。
暑さはそれほどでもないが春先はやや寒く
新潟と比べて雨が比較的多めだ。
唯一の利点は
老朽化の進んだ球場の改修が決定していること。
一軍が年1、2試合行える程度にはなるようだ。

 

京都

わかさスタジアム京都 総合判定:C+

人口 気候 交通 球場 総合
B(A+) D A C- C+

人口Bは京都としての判定で、
関西大都市圏だとA+になる。
駅が近く交通はAをつけられる。
ただし雨がそこそこ多く暑すぎる気候は大きなマイナス。
球場はネット裏が跳ね上げ式になっているため
ここだけは改修しなくてもいいか。
とはいえ全体で20,000人収容の球場なので、
一軍が入るには
この狭い敷地の中でかなり無茶な改修が必要になりそうだ。

 

岡山

マスカットスタジアム 総合判定:C+

人口 気候 交通 球場 総合
C C B C C+

中庄駅からは広い歩道を歩け、
車両編成と本数の総合力もそこそこ高いため
交通面は他の12球団本拠地と変わらない評価。
都市圏人口は宇都宮とほぼ同じだ。
跳ね上げ式の座席はネット裏にしかないが
内外野とも個別席なので、
改修後も収容人員はさほど減らないと思いたい。
雨がそこまででもないぶんC判定にはなるけども
元々ギリギリのラインだった気温が
近年さらに上昇しているのが気がかりだ。

 

北九州

北九州市民球場 総合判定:C

人口 気候 交通 球場 総合
A C C E C

2022年に九州アジア独立リーグへ参入した
北九州下関フェニックスのホーム。
北九州が他の都市と違うのは
人口がそこそこ充実していること。
福岡・北九州都市圏は
2チームがあるサンフランシスコ都市圏より人口が多く
ジャイアンツとアスレチックスのホーム*5よりは
かなり距離が離れている。
保護地域の条件が緩和され
スモールマーケット*6を覚悟するなら悪くない都市だ。
まあオークランド
NBAウォリアーズ、NFLレイダースに続いて
アスレチックスも去りそうなんだが

他はかなり微妙。
気候は岡山よりほんの少し涼しい程度、
モノレールの駅からはやや距離が離れている。
しかも球場が住宅地のど真ん中にあるので
狭い歩道に人がごった返す形になるうえ
改修の余地が全くないに等しい。
ドーム球場を建てられるの土地を見つけられればチャンスだが、
小倉駅周辺はミクニワールドスタジアムなどで埋まったので
北九州市内にふさわしい土地が残っているかどうかが難点。
最近やけに
楽天、「ナベツネ」などを強調し
Bリーグは1年で投げ出したあの人物が、
独立リーグぐらいならともかく
ドーム球場NPB新球団に必要な資金を
自分で出資する気があるか自体にも疑問符がつく。

 

熊本

リブワーク藤崎台球場 総合判定:D-

人口 気候 交通 球場 総合
D E D E D-

南九州も
一定の人口と福岡からの距離があるためか
新球団への期待が大きい地域である。
しかし現実はかなり厳しい。
球場には背もたれがなく座席全改修必須、
都市圏人口は150万人をやや下回る少なさ。
路面電車の停留所は近いものの
定員が100人未満なので
輸送力は低い評価にしかできない。
さらに気候がひどく、
熊本はかなり暑い上に
6、7月の雨量が月平均400mmを超える
日本有数の多雨地域
と言っていい。
火の国サラマンダーズに
NPB参入への熱意と期待はあるようだが、
残念ながら
一軍の試合を
屋外で何十試合も予定していい都市ではないようだ。

 

鹿児島

平和リース球場 総合判定:E+

人口 気候 交通 球場 総合
D E D- E E+

熊本と評価は似ているが、
市電停留所とはやや距離が離れているうえに
都市圏人口は110万ちょっとと熊本よりもかなり少ない。
熊本以上にお勧めできない都市と
言わざるを得ない。
球場は熊本よりほんの少しましにも思えるが
全改修が必要な点は同じ。
雨も7月は熊本ほどじゃないが
6、8、9月は熊本以上の豪雨地帯。
やはり屋外での連戦はしんどいだろう。
新サッカースタジアム計画でも
かなりもめているので、
新球場の可能性もほぼなさそうだ。

 

エスキモーもいない土地で氷は売れない

判定を覆せない要素

日本の各球場の判定をまとめるとこうなった。

16球団候補地判定

総合判定Cでも新球団は厳しいという評価なのだが
B判定を出せる球場・都市は一つもなく、
CやC+すらほとんど出せない
非常に厳しい判定となってしまった。
現在の12球団や
MLBの本拠地がいかに恵まれているかわかるだろう。
それでも16球団賛成の外部の人は必ずこう言うのだ。
「やってみなければわからない」
「できぬは工夫が足らぬ」
「やる気がないだけだ。敢闘精神が足りない」と。

ところで皆さんは、
この判定材料表のうち
右にいけばいくほど
工夫次第で何とかなる要素だとお気づきだろうか。
既存の球場は
建蔽率などの問題は多いが
行政、資金などと相談しながら改修していけばいいものだし、
実際に楽天は長い時間をかけてこの作業を進めてきた。
その楽天誕生前の仙台を同じ基準で判定したのが一番下になる。

次に交通と気候。
これを覆す方法は新球場の建設だ。
交通は新球場の場所次第で判定が変わるし、
気候そのものは人為で変えることができないが
収容人数を確保したドーム球場が作れれば何とかなる。
当然、球場そのものの評価にも関わってくる。
この発想と似たような形になったのは札幌。
札幌ドームができる前だと
球場は駅からかなり遠く、
4月に試合ができないため
気候面は最悪である。
気候に左右されないドームの存在がいかに大きかったかがわかる。

その一方で、
各球団の努力ではどうすることもできないのが人口。
エクスパンションを推進している古田敦也氏は
よく「都市」の人口をMLBと比較するけども
実際に重要なのは観客の移動可能範囲にあたる
「都市圏」の人口だ。
アメリカは国土が広いので
人口が各地に分散するだけじゃなく
中心都市の人口に対して
周辺都市の人口もかなり分散しており、
都市圏人口200万人以上の地域が
2010年時点で30ヶ所もある。

日米大都市圏人口

しかし日本の200万人都市圏はわずか8ヶ所。
日米の総人口比約2.5倍に対してこちらは3.75倍と
非常に大きな差となっている。
200万人以上の都市圏にほぼ集中しているMLBには
人口だけならまだ何ヶ所も参入可能な地域が残されているが、
日本には
どう見ても範囲が広すぎる静岡・浜松都市圏しか残っていない。
2005年の楽天誕生で
有望なNPB参入地域は事実上出尽くしてしまったのだ。

しかもこの問題は経済、交通と気候にも関わってくる。
大型新球場建設の時点で大金を使うことになるうえ、
大都市の少ない各地域に
果たしてドーム球場を作り維持する経済力があるのか。
建たないと気候的にきつすぎる地域がほとんどなだけに、
この点は本当に重大な問題と言える。
人口と経済力のある地域に強豪チームが集中するのは
日本だと地域密着のモデルにされることの多い
サッカーなどでも当たり前の話で、
たとえばイングランドのサッカーでは
上位のプレミアリーグ、チャンピオンシップのうち
30%強のチームがロンドンに集中しているし、
ドイツブンデスリーガ一部リーグには
西側との経済格差が非常に激しい
旧東ドイツのチームが1チームもない。

 

マイナーリーグ」レベルにMLBを作り出せるのか

非常に残念なことに、
新球団のエクスパンション候補とされることが多いのは
後から何とかなるポイントだけが優れている都市ばかりで、
それ以外のより重要かつ改善の非常に難しいポイントは
むしろより厳しいマイナス点だらけになっている。
中でも特に推奨されやすい
新潟、松山、那覇、南九州は
球場改修程度では経営が到底成り立たない都市だ。
単に日本地図を見て「このあたりが空いてる」
あるいは「推進するソフトバンクがいるから何とかなる*7
程度に考えているのかもしれないが、
現実は非情である。
もともと人口が充実しているにも関わらず
ドームが建てられるまで環境が悪すぎた札幌と
球場をうまく改修さえできれば
環境は良好だった仙台に球団がなかった2002~04年時点とは
状況が完全に逆*8
なのだ。

交通や球場面でも日本は分が悪い。
マイナーリーグの駐車場がいくら広くないと言っても、
北広島や新潟ぐらいのものを持っていて
ようやくAAA、AAに並ぶかどうか程度のランクである。
それにたとえ駐車場ではエコスタのほうが勝っていても
道路事情でやはり分が悪いことが多い。
球場設備も日本の地方球場では有数の充実度と思われる
エコスタ、倉敷マスカット、松山坊っちゃんですら
アメリカと比べた場合には
マイナーリーグの下のレベルにすぎないのだ。
もっとも
日本の地方球場の観客席は
野球道にいそしむ一般市民による草野球を
好奇心で見に行く人用に作ってある*9

自治体はそのような運用を強制される立場でもあるので、
アメリカの大半の球場に見られるような
観客が楽しむためのエンターテイメント用に作られている球場と
大きな違いがあるからといって
作った側をただ責めるわけにもいかない。
野球にせよサッカーにせよ
観客席やビジネス的なことを視野に入れたスタジアムが
自治体ではなくチーム・企業によって
作られるケースが増えているのもこのためと思われる。

そしてとにかくきついのが気候と都市圏人口。
チームや行政、企業がどうにかしようとしたところで
いかんともしがたいものがある。
試しに各球場が上手く改築された場合の判定を見てみよう。

候補地改修後

このように
球場を改修してもそこまで大きな効果にはならず、
B判定を下せる球場は
16球団のために最低限必要な4ヶ所にも届かない
また
新球場が作られたとしても
球場と駐車場を作れるだけの広い土地がなければ
浜松のようにたいした規模の球場は作れず、
交通インフラの整備が追いつかなければ
北広島をはるかに超える大混雑を余儀なくされる。
気候はドーム球場じゃなければ解決しないが、
「早急に16球団を実現しろ」と主張するライターなどが
ドーム球場を推奨するのは
夏の高校野球が行われている時だけで、
プロ野球に対しては
たとえ猛暑だろうと大雨や台風に見舞われようと
日本以外の屋外総天然芝球場にしか
その価値を認めない。
このように「16球団構想」には
新チームやNPBどころか
各行政ですらどうすることもできないマイナス要素が
重くのしかかっている。
しかもここに
現実には存在しない「偽の16球団構想」が介在するので
巷での議論はさらにややこしいことになっている。

プロ野球は観客に見せることを前提とした興業である。
だが観客に試合を見せたくても
熱心なファンが応援するチームの試合を見に行きたくても、
見に行けるファンの上限が乏しい都市では
努力の限界も早く訪れてしまう。
特に野球は他のスポーツと違って
週5、週6ペースで試合を行えるため
ほぼ毎日大量の観客を集めなければならない
のだ。
アメリカ基準でも
1試合平均10,000人を大きく下回る日本の都市圏で
週6日間1試合平均20,000人以上
どうやって集めようというのだろうか。
「努力不足」だのナベツネ陰謀論だので
どうにかなるような問題ではない。

それでもこれらの候補地に新球団を置くのなら
これまでのMLBNPBがとってきた戦略を根本から覆し、
人口も気候問題や交通問題にもとらわれない
観客動員と試合消化を全く考えなくていい経営戦略
構築する必要がある。
あるいは
全チーム一律に
選手・スタッフ数や給与などの経営規模を大幅に縮小する、
閉鎖型リーグから開放型リーグに変更する、
などといった転換*10が不可欠になってくるだろう。
それで野球人口の減少に歯止めをかけ、
トップ選手になったとしても
国内では見合った収入が得られるかどうかも怪しくなった
未来のプロ野球選手を目指す少年の数を
大幅に増やせると言えるのなら
の話だが。

*1:札幌ドームは0.8~0.9km、ZOZOマリンスタジアムは1.2km。サッカーなら埼玉スタジアムは1.3km

*2:市の人口は60万人台

*3:なおBリーグのホームは長岡にあり新潟市の都市圏には入らない

*4:簡単な例を出すと2005年楽天の選手平均年俸は2900万円、2019年四国アイランドリーグで最も収益をあげた愛媛マンダリンパイレーツの総収入は1億6800万円弱

*5:海を隔てているので移動距離はそれなりにあるが直線距離では17km弱しかない

*6:それでも北九州市だけで松山、那覇都市圏の人口は超えている

*7:これは南九州の場合が該当する

*8:これは1988年の福岡も同じだ

*9:野球場に限らず日本の「体育施設」は背もたれや屋根が極端に少ない。旧国立競技場などがいい例だ

*10:経営格差が極端に激しくなるアジアリーグ構想などの場合は特にこうなる