スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

2011年ドラフトを振り返る

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天災に翻弄された社会人

2011年といえば東日本大震災が起こった年。
マチュア球界でその影響を最も受けたのが社会人で、
ちょうど震災の時期に開催されていた東京スポニチ大会をはじめ
都市対抗を除く全ての公式戦が中止、
対外試合はたまに行われるチャリティのオープン戦のみとなった。
そのため各球団のスカウトもたった1試合の中でその選手の素質を
感じ取る眼力がそれまで以上に大切だったようだ。
一方の高校野球大学野球は、
直接の被災地となった東北の大学リーグを除くと
震災直後のセンバツ大会も春季リーグも開催されており、
2011年中のリーグ戦開催すらも不謹慎という圧力が漂っていた
プロ野球とは対照的だった。

そんな2011年のドラフトの目玉はBIG3と呼ばれた3人の大学生投手。
すなわち菅野智之藤岡貴裕野村祐輔だ。
大豊作とされた前年の大学生候補に比べて数段すぐれた成績を残しており、
震災のあったこの年も順調に実績を積み上げていった。
また高校生もこの年は充実していて、
投手では武田翔太松本竜也釜田佳直、吉本祥二などが巷の人気を集め、
野手は高校通算71HRの高橋周平が注目された。
それ以外で1位候補と目されたのは中後悠平
伊藤隼太小林誠司同志社大)などの大学生が主だった。

ドラフト1位指名はこうなった。

  選手名 ポジ 出身 競合
1 藤岡貴裕 LHP 東洋大 3
1 高橋周平 SS 東海大甲府 3
3 菅野智之 RHP 東海大 2
4 野村祐輔 RHP 明治大  
4 伊藤隼太 RF 慶應  
4 十亀剣 RHP JR東日本  
4 武田翔太 RHP 宮崎日大  
8 松本竜也 LHP 英明高 2
9 武藤好貴 RHP JR北海道  
9 安達了一 SS 東芝  
9 川上竜平 CF 光星学院  
12 北方悠誠 RHP 唐津商業  
  入札 外1巡 外外1巡
M 藤岡貴裕    
By 藤岡貴裕 松本竜也 北方悠誠
E 藤岡貴裕 武藤好貴  
C 野村祐輔    
Bs 高橋周平 安達了一  
T 伊藤隼太    
L 十亀剣    
G 菅野智之 松本竜也  
F 菅野智之    
S 高橋周平 川上竜平  
H 武田翔太    
D 高橋周平    

一番人気は藤岡と高橋。
BIG3のうち野村は単独指名、
巷で人気だった高校生投手は武田が唯一の1位入札に。
そして案の定というか巨人以外拒否を表明した菅野には
日本ハムが特攻し、抽選を引き当てた。
外れ1位では松本が競合。
この年の12番目の指名はDeNAへの売却が決まっていた横浜だった。

 

パリーグ

ソフトバンク

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1位で獲った地元枠の武田は1年目から準主力として機能し、
課題の制球も4年目から改善され完全な主力になった。
最近は好不調の波がやたら激しくしかも長いのが引っかかるが、
こう感じるのも実力の高さゆえか。
2位の吉本は巷では1位候補だったが残念な結果に。
嘉弥真は高卒4年目だがJX-ENEOSでの在籍は1年*1
育成枠は前年に続き大量指名。
この年は大学生と独立、クラブチーム出身者で固めたものの、
亀澤が移籍先の中日でユーティリティとなった以外は一軍昇格なし。
釜元も昨年柳田悠岐の離脱で機会を得たが結果を残せなかった。

 

北海道日本ハム

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1位で競合した菅野は拒否され、
東海大系列との仲も致命的に悪化する…と思いきや、
系列校は2013年*2東海大自体からも2015年にドラフト指名している。
どうやってそこまで根回ししたのやら。
2位以下は高校生中心の指名。
近藤と上沢が早い段階から主力になっているので
この年は大成功と言えるだろう。
あとの2人は都市対抗完全試合を含め大活躍だった森内に
ソフトボール部の大嶋と話題性充分だったが、
こちらはいまいちな結果に。

 

埼玉西武

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2年連続で6球団競合を制していたこの年の西武は
大卒社会人投手の単独指名。
最近は30代に入って内容も落ちてきている感があるが、
ここまで毎年戦力になっている。
2位では同じく社会人の小石を獲った後、
3位以降は全員野手を指名したものの、
主力として活躍できている選手はいない。
高卒1年目から守備要員として出ていた永江は
源田壮亮や外崎修汰らの台頭で出番が減っている。
田代はヤクルト移籍後に打撃成績は良くなっているが、
いかんせんベンチ要員なので打席数が少ない。

 

オリックス

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前年に続き投手2野手8と野手偏重ドラフトを敢行した。
2008、09年が投手偏重だったので一応釣りあいは取れている。
ただし高橋の抽選を外したうえに
ショート3人をはじめ支配下8人中社会人が7人、
高校生は堤と育成の2人だけだったので
野手ドラフト大好きな人たちからの評価もすこぶる低かった。
三拍子の中でもバッティングに定評のあった安達は
エラー数が少なくないこともあってしばらく酷評されていたが、
UZRが公表されたあたりから巷の評価も上がっていった。
他の社会人出身選手は
高卒至上主義のステレオタイプ通りになってしまっており、
野手は打撃が伸びず川端の1年目以外控え要員、
佐藤と海田はリリーフでそこそこ程度にとどまっている。

 

東北楽天

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星野監督が就任した前年から上位投手、3位以下野手路線に戻った楽天は、
藤岡を外した後外れ1位で当時巷でほぼ無名だった武藤を指名。
2007年高校生に続く北海道枠での指名になったが、
4年目に60試合登板した以外はぱっとしなかった。
逆に甲子園の有名選手だった釜田は1年目からかなり使われたが、
その起用がかえって災いしたのが怪我も多く
こちらも通算成績はいまいち。
しかしこの年は野手が成功。
2年目から本格的な外野コンバートで出場機会を増やした岡島と
大学時代はレフトながら他の外野も守れる身体能力を持っていた島内が
良い働きをしている。
ただ最近打撃成績が落ちている岡島はともかく、
3年連続10HRを超えている島内がいまだに「アヘ単」扱いされていたり、
「打撃が伸び悩んでいる」「外様」で「今年27歳」の三好が
カープファンから「期待の若手」扱いされるなど、
別な意味での闇が見えるドラフトになっている。
もちろん選手たちに非は一切ないぞ。

 

千葉ロッテ

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前年の下剋上日本一から一転最下位に沈んだロッテ。
1位では一番人気の藤岡を抽選で獲得したものの、
ドラフト後の評価はかなり低かった。
投打とも戦力不足なのに少数指名だったことや
前年に抜けた西岡剛の穴を鈴木で埋められるか怪しかったことじゃなく
高校生を大量指名しなかったことが低評価の理由だったのだが、
改めて字面にすると何を言ってるのかさっぱりわからんな。
その鈴木は守備面のマイナスもあって 西岡の穴を埋めきったとまでは言い難いが、
大学4年にコンバートされたばかりのショートで
かなりの働きを見せ続けたのはたしかだ。
投手は微妙な結果。
藤岡は伸び悩みが年々顕著になっていき、
1位候補とされていた中後も制球難でほとんど使えていない。
そのぶん益田はやや不安定ながらもリリーフで活躍。
不調な年も少なくないが
好調な年はクローザー、セットアッパーとして機能している。

 

セリーグ

中日

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高校生嫌いと言われた落合監督退任直後に
3球団競合の高橋を含む高校生2人の上位指名で、
この年の中日はそこそこ*3賞賛された。
2年前にも上位2人が高校生だったり、
これで2位指名が4年連続高校生になったことは当然誰も見ていない。
高橋はルナや森野将彦の衰えが遅かったのもあって
完全なスタメン固定までは時間がかかったが、
中距離打者としてまずまずの活躍を見せ始めている。
他に活躍しているのは田島。
1年目から多投気味なのもあって不調な年が多いものの、
好調な年はかなりの出来になっている。
高校生は期待度のかなり大きかった西川もいたが伸びず。
辻は現在母校のコーチとしてプロ入り投手を多く輩出している。

東京ヤクルト

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ペナントレースでは最後まで優勝を争ったヤクルトだが、
故障者続出にCSでのスクランブル登板など
戦力、特に投手は完全に枯渇状態。
2位以下で大学生・社会人投手をかき集めたこと自体を酷評されたが、
選択そのものには何もおかしなところはなかった。
即戦力投手で固めないと
なぜか高卒至上主義者から叩かれる今とは逆である。
ただ肝心の投手が即戦力じゃなかったのが問題で、
木谷の2年目と徳山の4年目以外は内容が悪く、
古野もイニングイーターの域を出なかった印象だ。
高橋の抽選を外して獲得した川上は
内外野両方で育成されたが一軍出場はなし。
比屋根も打撃が伸び悩んだ。
大和高田クラブを経て今年は沖縄ブルーオーシャンズでプレー。

 

読売

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3年連続になる1位選手の「逆指名」、
2年間で支配下野手が1人しかいない「投手偏重ドラフト」と
高校生2人の上位指名以外巷から叩かれる要素しかない巨人の指名。
実際、それなりに批判は受けたが、
ドラフト直後に起こった「清武の乱」で
矛先が本社と監督周辺に集中し、
退任することになったGMは災禍を免れた。
さらに2年目終了後に大竹寛人的補償で移籍した一岡が
広島で活躍し始めたため批判がさらに拡大することに。
他の投手を見ると
今村は使われるのだが年間を通した活躍がまだできておらず、
リリーフ専任の田原は30試合以上となると2年しかない。
諸事情でのブランクから復活した昨年の高木は一発病が目立つ。

 

阪神

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長打力が再び落ち込んだタイミングで
1位が長打にも定評のある伊藤隼、
2位で甲子園の有名投手歳内と
これだけ見るといかにも高評価されそうな指名だったが、
この2人個人の評価に加えて
「30代中心の打線の改善には18歳の指名以外認めない(意訳)」
との理由から指名後の評価は低かった。
伊藤隼が伸び悩んだので結果的に批判は当たった形になっている。
支配下全体では高校生が半数を超えていて、
投手は歳内にセンバツ出場した松田、
監督が往年の名将古葉竹識であることでも知られた上位候補伊藤和と
区分としてはかなりのミーハードラフトだった。
その中で複数年戦力になったのは松田だが、
打ちこまれる年も多く30試合以上登板は2015年と昨年だけ。

 

広島東洋

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地元出身で単独指名に成功した野村は、
現在一軍公式戦全試合に先発して最低が15試合。
ただ規定投球回到達が4年なのもあってか一般的な評価は低い。
高校3年にやや調子を落としていた戸田も
3年目と早い段階で戦力になったが、
最近は怪我の影響もあって活躍できていない。
野手は菊池が1年目から攻守ともに大活躍。
衰えと故障が目立ち始めていた東出輝裕の穴を完全に埋めたが、
昨年末メジャー行きを断念したことで
彼を評価しないカープファンがかなりの数いることが露呈してしまった。
守備範囲や二番起用による犠打の多さばかりが注目されるも、
8年間で2桁HRを6回記録しているのは知られていないようだ*4
三家の数字はBCリーグを経た後に入団したロッテでのもの。

 

横浜

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TBS最後のドラフトは
二度の抽選を外した後に徹底した高校生偏重指名。
DeNAへの嫌がらせとまで言われていたが、
当時の横浜は即戦力偏重と高校生偏重を1年おきに繰り返しているし、
そもそも嫌がらせなら
一番人気の藤岡や1位有力候補の松本には入札しないはずである。
肝心の結果はというと、
野手はかなりの好結果…と言いたいところだが、
1年目から一軍機会の多い高城や
ことあるごとにバッティングを評価される乙坂も
一軍で結果を出すことができておらず、
桑原以外は微妙な印象を受ける。
一方の投手は横浜の弱点がものの見事に反映された素材偏重で、
ここまでの一軍登板はベイスターズ復帰した古村を含めても
伊藤の1年目と冨田の2年目だけ。
高卒の4人は3年目に全員戦力外になってかなり批判されたが、
ただでさえ戦力不足だったので仕方ないところだった。
伊藤は群馬ダイヤモンドペガサスを経て現在日本製鉄鹿島。

*1:ビッグ開発ベースボールクラブに3年在籍

*2:東海大甲府の渡邉諒。原貢氏死去は2014年

*3:野手が高橋だけな点が若干マイナスされていた

*4:現在は4年連続13~14HR