故障・不調者続出の本命不在
もともと突出した評価をされるドラフト候補がいない中で
故障者が続出した2015年。
評価の高かった選手もあまり成長のあとを見せることができず、
甲子園やU-18などで各選手への評価は二転三転。
さらにドラフト直前には意外な選手への入札を表明するチームも相次いだ。
その結果、1位指名はこうなった。
選手名 | ポジ | 出身 | 競合 | |
---|---|---|---|---|
1 | 高橋純平 | RHP | 県岐阜商業 | 3 |
2 | 平沢大河 | SS | 仙台育英高 | 2 |
2 | 高山俊 | CF | 明治大 | 2 |
4 | 今永昇太 | LHP | 駒澤大 | |
4 | 吉田正尚 | RF | 青山学院大 | |
4 | 多和田真三郎 | RHP | 富士大 | |
4 | 岡田明丈 | RHP | 大阪商業大 | |
4 | 桜井俊貴 | RHP | 立命館大 | |
9 | 小笠原慎之介 | LHP | 東海大相模 | 2 |
10 | オコエ瑠偉 | CF | 関東一高 | |
10 | 原樹理 | RHP | 東洋大 | |
12 | 上原健太 | LHP | 明治大 |
入札 | 外1巡 | 外外1巡 | |
---|---|---|---|
E | 平沢大河 | オコエ瑠偉 | |
By | 今永昇太 | ||
Bs | 吉田正尚 | ||
D | 高橋純平 | 小笠原慎之介 | |
L | 多和田真三郎 | ||
C | 岡田明丈 | ||
M | 平沢大河 | ||
T | 高山俊 | ||
F | 高橋純平 | 小笠原慎之介 | 上原健太 |
G | 桜井俊貴 | ||
H | 高橋純平 | ||
S | 高山俊 | 原樹理 |
事前に公表していた1位指名のうち、
楽天が表明した平沢にはロッテ、
ヤクルトが表明した高山には阪神が入札し、
どちらも公言へ特攻した側が勝つ結果に。
そして最終的に一番人気になったのは高橋。
彼も夏予選前に故障が発覚し懸念されていたが、
U-18で多少アピールできたのも大きかったか。
外れ1位では高橋を外した2球団が小笠原で再び競合、
2013年に続いて日本ハムが12番目の指名を行った。
このチームは強運の時と一度外した時の落差が異様に激しい。
パリーグ
福岡ソフトバンク
圧倒的な強さを見せて日本一になったホークスは
この年も高校生偏重指名。
1位抽選を引き当てたこともあり、案の定大絶賛された。
これまで結果を出したのが高橋だけなのは仕方のないところだが、
育成のうち大学生の2人と高校生1人が既に現役を離れており、
支配下指名の小澤と黒瀬は現在育成枠。
野沢と渡辺もまだ育成枠のままで、
二軍でも戦力になりきれてないのはさすがに遅い感がある。
谷川原と川瀬も去年はあまり良い出来ではなかった。
ロッテに移籍した茶谷は今年支配下登録。
近い年代の二遊間が多い中で競争を勝ち抜けるか。
北海道日本ハム
2位指名までで高校生野手の指名がなかったのは
日本ハムとしては2009年以来6年ぶりで、
高卒至上主義の評論家からは「らしくない」と言われていた。
この2年前の渡邉諒も3回1位抽選を外しての指名だったのだから
途中で抽選に当たっていたらどうだったかわからないはずなんだが…。
全体ではこれまで通りの大社投手と高校生野手中心の指名。
特に投手はマニアに人気のあった選手を集めた形になっていて、
現状だと加藤と井口が戦力に。
上原は知名度のわりに大学でかなり伸び悩んでいた素材型なので
これからに期待せざるをえない。
長打力に定評のあった横尾は精彩を欠き、
やたらと使えと言われる平沼は
まだ中島卓也の守備の牙城を崩せるほどのバッティングではない。
こちらも今後に期待したいところ。
また戦力外になった田中は今年巨人育成枠。
千葉ロッテ
1位では楽天が公言した平沢に向かっていき抽選を当てる。
ここまでなら大絶賛だったのだろうが、
その後の支配下は投手のみの指名で巷の評価を下げた。
平沢はとにかく若手至上主義からの評価の高い選手だが、
ショートに入った時のバッティングの伸び悩みが目立っている。
投手の方はお世辞にも良い出来とは言えない。
JR東日本の2人は関谷が1年目のみで低迷、
逆に東條は4年目の昨年一軍戦力になった。
全国の舞台に出て知名度の高かった成田と原は
まだ戦力にはなっていない。
埼玉西武
支配下で大量10人、そのうち投手8人と
投手偏重の指名を敢行してきたこの年の西武。
個人的には実績の乏しい投手が多くどうかなという印象だったのだが、
現段階では多和田と野田が活躍しているものの、
それ以外は本田と松本が少し頑張っていた程度なので、
私の不安はやや的中した形になっている。
二刀流として知られていた川越もやはり投手としてはかなりの素材型で、
野手転向までかなりの回り道をした印象すらある。
前年の外崎修汰と同じくセカンドからの指名になった呉は
その外崎が大成したことで出番を増やす機会が乏しい。
愛斗は二軍ではよく打つのだが打撃が粗いのか
一軍ではその片りんを見せることができていない。
秋山翔吾がいなくなり競争が激化する今年は正念場だ。
オリックス
1位単独指名に成功した吉田正尚は1年目から高い打力を見せている。
守備位置が若干ネックになる部分はあるが、
全体ではそのマイナスをはるかに補う結果を残しているはずだ。
近藤も1年目はいきなり故障で1年を棒に振ったが、
2年目からはリリーフとして3年連続50試合登板。
現状だとこの2人で充分成功ドラフトと言えるだろう。
4年になって絶不調に陥った大城はプロでもやや伸び悩み。
昨年はそのバッティングにも成長の兆しが見えていたが、
今後は太田椋や宜保翔へのファンの期待が高まることが予想されるので
正念場と言える。
さて、支配下・育成合わせて12人の大量指名を敢行した
この年のオリックスだが、
うち6人は既にNPBの現役を離れている。
東北楽天
1位から4位まで野手、
投手は全9人中石橋だけという徹底した野手偏重ドラフトを行い、
投手不足の不安よりも絶賛のほうが圧倒的に多かった。
強打者として知られてはいたが故障も多く、
登録がセカンド、実際にはサードでプレーしていた茂木が
ショートコンバートで成功するまさかの展開に。
支配下指名は吉持以外全員何らかの形で出場機会を増やしており、
その点では大成功のドラフトと言えるだろう。
野手はほぼ全員バッティングが課題になっていて、
1位指名のオコエも二軍では好成績だが細かい数字を見ると粗さが目立ち、
現在も一軍スタメンには定着できていない。
堀内は一軍経験を積ませる狙いでの抜擢なのだろうが、
打てない中で使い続けるとかえって伸びないのではと危惧してしまう。
小関翔太の前例もあるだけによけいに。
唯一の投手石橋もかなり苦労していたが、
エースが軒並み離脱した昨年ローテ投手として開花した。
セリーグ
東京ヤクルト
1位競合で外した高山の部分は山崎で補い、
外れ1位は東都の原を指名。
安定感はなく先発リリーフを行ったり来たりする年も多いが、
イニングは稼げており投手難のチームとしては特に貴重な戦力になっている。
優勝したことも影響しているのか、
この年は高校生中心の指名。
ショート2人に左投手2人を指名した。
廣岡はこの2年間序盤から不調でも使われ続け、
高橋も昨年かなり打たれていたがローテに入り続けた。
今年か来年あたりまでにはこの起用にこたえる成長が見られるか。
現在将来のセンター、ライト候補の絶対数が足りないので、
外野に回った渡邉はここでアピールしていきたい。
読売
支配下8人、育成8人の超大量指名を行った。
ただし育成3位の松澤は怪我のため入団を辞退、
翌年改めて育成8位で指名され入団した。
上位指名の桜井や重信をはじめほとんどの指名選手が
巷の評価に対してかなり順位が高かったため、
当時は「来てもらえる選手だけ獲った」などと揶揄されていた。
近かったのは大学日本代表候補にもなっていた宇佐見ぐらいか。
大半の選手が実績不足だったのは事実で、
本当に好成績と言えたのは打率と出塁率が非常に高かった重信と、
同じチームの吉田侑樹が調子を落とす中で
実質的なエースとして活躍していた中川ぐらい。
その一方で、ドラフト候補の多かったチームの中では
あまり目立たない存在だった山本が、
強打者として知られた横尾よりも
通算打撃成績が上というのも面白いところだ。
球場特性の違いがあるとはいえ。
育成からは昨年増田が一軍に定着したものの、
それ以外で現在チームに残っているのは山下(現・橋本)篤郎のみ。
現在育成に下がっている與那原と巽も含めて
全体的にさびしい結果になっている感は否めない*1。
阪神
深刻な貧打に悩まされていたチームが野手2人の上位指名、
しかも公言されていた選手に競合を恐れず向かっていったわけだが、
さほど評価が高くなかった大学生の指名だったため
ドラフト後の評価は低かった。
4年前の夏甲子園優勝メンバーと地元高校出身選手なのに*2。
結果は現状あまり良いとは言えず、
1年目新人王になった高山も
肩に定評のある坂本もバッティングが伸び悩んでいる。
投手は高校・大学・社会人1人ずつも全員素材型の指名。
指名された年は怪我でほとんど登板がなかった竹安や
高卒の望月にしてもかなり伸びているほうだが、
大学時代からは考えられない伸び方をしているのが青柳。
少なくなかった四死球も昨年大幅に向上し、
大学4年次に5点台止まりだった三振率にいたっては
一軍で4年連続6点台以上を記録している。
広島東洋
1位単独指名で1年目からローテ入りしていた岡田は
徐々に制球難が目立ち始めて昨年大きく崩れた。
現在の広島投手陣は
高卒投手が実際に残している数字をはるかに上回る評価をされているため、
今年は大活躍できないとファンからクビ扱いされる可能性が高い。
この年は当初1位候補になっていた横山をはじめとして
既に4人がNPBの現役から離れている。
仲尾次は現在日本製鉄かずさマジック、
船越は今年から古巣の王子でプレー。
そんな中で1年目から使われたために叩かれていた西川が
一軍で好成績を残し続けている。
中日
1位では大方の予想を「裏切って」高校生を連続指名。
しかし2位からは前年に続いて大社偏重指名をしたため
ドラフト後はボロクソに叩かれた。
木下は巷で1位候補とされてたのだが、
それもいつの間にかなかったことにされている。
大社中心のドラフトではあったが
1年目からの即戦力と言える選手はほとんどいなかったので、
現在の結果は物足りないどころかむしろ予想以上の出来だと思う。
小笠原しか期待してなかった人が非常に多いだろうけど。
高校時代から評価の高かった福や育成の三ツ間もさることながら、
二軍で2年連続OPS.600台前半だったのに30歳の昨年.742を記録した
阿部の成長はかなり驚かされた。
むしろこの2年間何をさせてたんだろうというレベルである。
横浜DeNA
DeNAになってからは3年連続で3チーム以上の競合だったが、
この年は4年次に怪我でほとんど活躍できなかった今永の単独指名。
不調の年もありやや一発病のきらいもあるが、
エース格として先発陣を引っ張る活躍を見せている。
2位以下は評価が難しい。
1位候補と言われていた熊原はここまで活躍できた年がない。
1年目から使われた戸柱はバッティングもいまいち伸びておらず、
移籍してきた伊藤光の後塵を拝している。
一方こちらもバッティングが伸び悩んでいた柴田は
昨年終盤に調子を上げており、
二遊間の一軍レベルの人材がやや不足気味な中今後に期待がもたれる。
なお他の6人は今のところNPBから離れている。
網谷は現在ヤマハでプレイ。