スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

ロッテのドラフトを振り返る

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これまでのロッテドラフトの評価

ロッテについては、
黄金期といえば2005年からの数年間を連想する人が多いかと思う。
その逆に暗黒期はいつだろうか。
まず1986年から2004年はAクラスが1995年だけ。
細かく見ると実は「?」と思う年もあるんだが、
この間は暗黒期と言わざるを得ないだろう。
あと今年は3位争いに加わっているが、「今も暗黒期だ」と言う人も多い。
ただし現在のこのチームはヤクルトと似ていて、
2008年以降でも3年連続Bクラスはない。
今年CS進出を逃したら15年ぶりに3年連続Bクラスになるので、
今を「暗黒期」と明言する「ファン」は
自分が応援するチームを負けるのを願うしかない。

次に、ドラフトに対する評価を見ておこう。
ちょっと大雑把な分け方になるが、
1993年以降ならだいたいこういう評価をされていると思う。

1993~95、2001~04
2018
2015、2017
1996~2000、2005~2008、2014、2016
× 2009~2013

はっきり言ってしまえば、
「評論家の評価が高い選手を獲る」
「1位で高校生か一番人気を入札し抽選を当てる」
「全体でも高校生の特に野手を多く獲り、大卒・社会人は少なめに」
評価基準はたったこれだけである。ずいぶん単純で分かりやすいですね。
もちろん、実際の結果がどうなったかは一切関係ない
何も考えずただひたすら高校生を獲る精神が大事なのである。

だが、このブログではそんな精神論じゃなく結果のほうを見ていこう。

黄金期前のドラフト

今回はまず、1993年から黄金期直前の2004年までを
実際の上位指名から。

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  高投 高野 大投 大野 社投 社野
1993   1     1  
1994   1     1  
1995   1     1  
1996       1 1  
1997   1     1  
1998       1 1  
1999         2  
2000 1   1      
2001   1   1    
2002 1 1        
2003 2          
2004         2  
93~95 0 3 0 0 3 0
96~00 1 1 1 2 5 0
01~04 4 2 1 1 2 0

評価が非常に高い93~95年は
全て高校生野手と社会人投手の入札になっている。
それ以外の年も高校生+大社か大社×2の指名が多く、
高校生2人を獲ったのは2002、03年の2回だけ。
2・3巡のみへの逆指名を使えない自由枠制度になってからだった。

全体での数字はこうなる。

  高投 高野 大投 大野 社投 社野  
1993 1 3     2 1 7
1994   4     3   7
1995 1 3     1 2 7
1996 1     2 2 1 6
1997 1 1 2 1 2   7
1998 1   1 1 1 1 5
1999   1     3   4
2000 1 1 1   2   5
2001   2   3 1   6
2002 1 3     3   7
2003 5     1     6
2004 1 1   1 2 1 6
93~95 2 10 0 0 6 3 21
96~00 4 3 4 4 10 2 27
01~04 8 7 1 5 8 1 30

高校生野手中心で投手は指名自体が少ない93~95年、
社会人投手が多い96~2000年、
投打ともに高校生が多い2001~03年の
3つの時期に分かれている。
2004年の当時の高評価は意外な感があるが、
その前の3年間の上位が高校生偏重だったことや
手嶌と久保の評価が高かったことに加えて、
竹原直隆大松尚逸スラッガータイプ2人を指名したからのようだ。
高卒至上主義がさらに加速した現在ならボロクソだろう、
石川歩の抽選を当てて井上晴哉を指名した2013年のように。

長く活躍する選手の成長法則

ここの結果は野手から見ることにする。

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のちの主力選手が大量に輩出されている。
高卒の活躍ぶりが光っているように見えるかもしれないが、
指名数自体高校生がかなり多いのだから当然である。
高校生は福浦、今江、西岡が出てくるのが早かったものの、
あとは一軍定着に5~6年、本格化は8~10年かかった。
大卒と社会人はこれから4~6年引いた数字で、
実のところ本格的に主力となる年齢はほぼ同じということになる。
福浦と今江もやや停滞した後に一皮むけたのはやはり26歳になってからだ。

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川井と加藤は数年活躍してから長いブランクがあり、
30代になって移籍後にまた数年活躍している。
2000年以前の指名選手に長く活躍した選手が多く、
大半が2005年以降も主力として多大な貢献をした。
こちらは社会人出身の活躍が目立つが、
指名数が圧倒的に多いのでこれまた当然の結果だろう。
特に高校生と大社で大成功した確率があまり変わっておらず、
社会人偏重もむしろチームにとっては良いバランスでの指名だったと言える。
2001年以降は活躍する投手の数が全体的に減っていて、
大活躍する選手とほとんど戦力にならなかった選手に二極化している。

「暗黒期」は本当に「ドラフトのせい」か

続いて2005年以降のドラフトを見ていこう。

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  高投 高野 大投 大野 社投 社野
2005 2          
2006 1 1        
2007 1       1  
2008         1  
2009         1 1
2010     1 1    
2011     2      
2012     1   1  
2013       1 1  
2014     1 1    
2015   1 1      
2016     1   1  
2017   1       1
2018   1 1      
05~08 4 1 0 0 2 0
09~13 0 0 4 2 3 1
14~18 0 3 4 1 1 1

分離時代は2年連続で希望枠を放棄して高校生2巡指名を選択。
2年連続は12チームでロッテだけだった。
外れ抽選までのどこかで必ずくじが当たり、
計11勝5敗、勝率.688という驚異的な運を見せている。
3球団以上の競合でも5勝5敗の.500。
なお大御所ドラフト評論家によるとこういう運も気持ちの問題だそうだ。
2位では高校生が1人もおらず、藤浪の抽選を外したこともあって、
しばらくは高校生の上位指名がなかった。

  高投 高野 大投 大野 社投 社野   高投 高野 大投 大野 社投 社野  
2005 3 1 1 1 2   8             0
2006 2 1 1 1 3 1 9             0
2007 3   1   3   7 1       1 3 5
2008 1   2   2   5 3 2     1 2 8
2009   1     1 2 4     1       1
2010   1 2 2 1   6 1   1   1   3
2011     3 1     4             0
2012   1 1 1 1   4             0
2013 1     2 2 1 6   1         1
2014 1 2 2 2     7             0
2015 2 1     4   7       1   1 2
2016 2   1 1 3   7         1 1 2
2017   1     3 2 6 1         1 2
2018 2 2 3     1 8         1   1
05~08 9 2 5 2 10 1 29 4 2 0 0 2 5 13
09~13 1 3 6 6 5 3 24 1 1 2 0 1 0 5
14~18 7 6 6 3 10 3 35 1 0 0 1 2 3 7

全体を見ると、
2008年までは投手が異様に多く、
本指名24:5、育成を入れても30:12。
この間のドラフトも評価は低い。
そして2009~13年は大学生と社会人偏重が顕著になり酷評され続けた。
本指名の投手数と野手数は同じ。
2014年以降は高校生の指名が増えている一方で、
2015・16年が投手偏重指名、
2017年が平沢の起用を「阻む」藤岡裕を含めた社会人偏重のため、
1位で高校生野手や大競合を制しているにも関わらず
年ごとのドラフトの評価は高くない。
なのに今年は平沢、安田、藤原がいるというだけの理由で
一部のドラフト評論家から優勝候補に挙げられたが。

酷評と実益の狭間で

こちらの結果は2005~08年から。

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野手は分母が少ないぶん確率としてはそれなりだが、
どうしても物足りなさが残る。
2011年以降の成績がメインになるため、さらにその印象が強くなるか。
投手はスタッツが良い選手は多いものの先発が少なく、
唐川以外の活躍期間が短い。
5年以上になるのが古谷と今年で実働5年になった西野だけだ。
早くに出てきた選手はけがに泣くことが多く、長続きしないのである。

酷評がさらに悪化した2009年以降は2014年まで。
f:id:Ltfrankc:20190917072843j:plain岩下は今年17試合に先発したので該当者に入れておいた。
突出している野手はおらず控え選手もいるが、
なんやかんやでまずまずの結果を出している選手が多い。
リーグ平均が90~00年代より大きく下がっていることを踏まえれば、
2004年以前の成功選手に全くひけを取らない数字と言えるだろう。
投手はしばらく続いた投高打低傾向の恩恵を受けた感があるものの、
こちらも思いのほか良い数字を残した。
ただ少数精鋭指名になったこともあって、
戦力の数自体は全く足りていない状況が続いている。
0で終わらない選手の確率をもっと上げたかった。
というか、戦力になった野手の確率が高すぎで、
むしろこの時期いかに戦力不足だったかが示されている。
もし高卒至上主義の言うとおりに高校生を乱獲していたら、
と思うとぞっとする。
選手数が全く足りないため大量の抜擢が必要になることで
年齢層だけは実際より4~6歳若いものの、
昨年までとは比較にならないレベルで点が取れない、
80~90年代の暗黒期並みかそれ以上の散発打線が
何年も続いているのが見え見えだ。
本格的な暗黒期に足を踏み入れずに済んでいたのは、
酷評されていたドラフト指名の功績によるところが大きいのだ。

成功選手への過小評価

ここまでの数字で気づいたかもしれない点を挙げておきたい。
93~04年、特に95年までの指名から成功した野手を見ていて
「おや?」と思わなかっただろうか。
福浦とサブローが抜きんでていて、次が橋本なのはわかる。
だが立川、大塚に対して、
諸積やその次にいる小坂の数字がたいして変わらないのだ。
それでいて実働年数や打席数ははるかに上なのである。
立川はもっと上、諸積はずっと下だと思っていた人が多いんじゃなかろうか。

イメージが作られる理由の一つは数字からも明らかで、長打力の違いだ。
長打の比重が高いOPSではいくらか差がついているのに
出塁の比重が高くなるwOBAでは全く差がなくなっている。
現在でも球場や中継で実際に出される数字は打率とHRと打点が大半なのだから、
ましてや少し昔の選手なら推して知るべしだろう。
他にも長打力の違いと似ているが「1、2番タイプ」とそれ以外の違い、
高卒と大卒・社会人へのステレオタイプなども影響していると思う。

こうした傾向は、現在のマリーンズで顕著にみられる。
チームの打線全体に対するイメージ、
「高校生がいないから弱い」という宣伝と先入観、
その時々の選手個人に対するヘイトなどが主な要因だ。
角中がここまで打っていると知っていた人はあまり多くなさそうだし、
荻野貴、清田、鈴木は通算でこの程度打っていると思われている風がない。
反対に評価がやたら高くなるのは概ね高校生。
当然ここには出せていないが平沢と安田などは
一軍で既にOPS.750~.800は残しているかのような異常な高評価がなされている。
投手でも同じようなことが起こっているが、
投手の場合は同じ高卒選手の中でこうした現象が見られそうだ。
特に評価が低すぎると感じるのは唐川。
唐川と西野や大嶺祐の実働年数にこれほど差があるとは
ほとんどの人が思っていないんじゃなかろうか。

こうした現象が起こるのは、
思い込みやイメージばかりが先行して現実が見えていないからだ。
ロッテがAクラスは多いが3位が大半で2位もあまりない。
これは現実。
編成やドラフトに問題があって優勝を狙うには戦力が不足しているから。
これも現実。
だが「投打ともにリーグの中で圧倒的に悪いから」。
これは非現実だ。
そんなチームはそもそも3位にすら何度もなれないはずである。

これはドラフト戦略にも当てはまる。
実益が乏しい精神主義のドラフト指名をしたところで
高卒にしか興味のない一部の評論家やファンが喜ぶだけで、
チームが強くなるわけではない。
見なければならないのは目の前の現実だ。
その現実すら見れない編成が真の暗黒期を作るのである。