スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

広島黄金期前のドラフトの変化とは

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先日は2004年の自由枠時代までを見たが、
今度は2005年以降について。
現在3連覇中のカープのドラフトは、
あたかも昔と変わらないような印象が植えつけられている。
…もっとも、「変わっていない昔のドラフト」自体が
間違いだらけだったのはこのあいだ説明した通りだが。

大きな変化はない上位指名

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  高投 高野 大投 大野 社投 社野
2005 1 1        
2006 1       1  
2007   1 1      
2008 1     1    
2009 1 1        
2010     2      
2011     1 1    
2012   2        
2013     2      
2014     1 1    
2015     1   1  
3 4 8 3 2 0

上位指名については、極端に変わったところがない。
強いて言えば、2位での高校生が減ったことと、
社会人投手も減ったことぐらい。
大学生の指名が多くなり、
投手と野手の比率は以前と変化がない。

黄金期10年前に起こった変革

全体では黄金期到来のちょうど10年前になる2006年から、
これまでの広島になかった変化が起こっている。

  高投 高野 大投 大野 社投 社野 高投 高野 大投 大野 社投 社野  
2005 3 1 1   1 1 7           1 1
2006 1 1     3 1 6 1           1
2007 1 2 1 2     6       1     1
2008 1 1 1 1     4 1           1
2009 2 2 1   1   6 1 1         2
2010 1 1 2   3   7 1   1       2
2011 1   1 2     4   1 2   2   5
2012   3   1   1 5 1     1     2
2013 1   2   1 1 5             0
2014 2 2 1 1 1   7   1       1 2
2015 1 1 1   2 2 7             0
  11 13 10 7 11 5 57 5 3 3 2 2 1 16

 

本指名 高校率 野手率 投手中高校
88~92 61.8% 47.1% 61.1%
93~97 67.7% 41.9% 55.6%
98~05 55.6% 44.4% 56.7%
06~15 42.1% 43.9% 34.4%
総計      
88~92 56.1% 51.2% 55.0%
93~97 67.7% 41.9% 55.6%
98~05 54.5% 45.5% 56.7%
06~15 43.8% 42.5% 38.1%

 

全体を見れば一目瞭然で、
高校生が減ったことだ。
野手はほぼ同じ。
高校生が多めだが大卒・社会人も万遍なく指名する
スタイルが続いていた。
一方の投手。
1年あたり2人以上の指名が当たり前だった
高校生が大幅に減少
し、
本指名では1年に1人程度となっている。
しかし投手と野手の比率は前とそれほど変わっていない。
高卒が減った分、大卒と社会人の投手が増えたわけだ。

得意分野は生かし、苦手を克服する

戦力になった選手を2013年指名まで見てみるとこうなった。

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野手はこれまでと同様に、
大卒と社会人の指名がうまい。
そこに高校生からも會澤、丸、鈴木誠也が大きく羽ばたき、
現在の強力打線が作られていった。
ここは80~90年代からの育成の流れがそのまま引き継がれている。

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投手はというと、
リストに載る高校生がかなり多い。
この点だけを見せることで
「高校生は質も確率も高い。だから高校生ばかり指名しろ」と主張するのが
これまで評論家などに多く見られた手法だった。
しかし、カープはこれまで高校生投手を大量指名しては失敗し続けてきた。
そんなチームが、高校生の指名数を減らしながらも
質を向上させることに成功
したわけだ。
これが一点。
そしてもう一つ。
長い戦力にはならなかった大卒・社会人の質が、
以前の1年だけイニングを投げて終わった高卒よりははるかに高いことだ。
数年単位で見れば投手は野手よりも水物。
それなら、
高確率で0で終わる高校生を10年近くチームに置いて
支配下枠を圧迫し続けるよりは
少しでも戦力になる大学生と社会人を置く方が、
長い目で見てチームの戦力強化・維持につながる。
それが良くわかる変化だ。

ここ最近のドラフトにある危険な兆候

現在の苑田聡彦スカウト統括部長が
スカウト部長に就任したのは2006年。
ここまで見て来た変革とどこまで関係があるのかどうかは
これだけではわからない。
単に昔より大卒・社会人の投手を指名しやすくなった、
即戦力級の高校生も獲りやすくなっただけかもしれない。
ただここで唯一挙げられるのは、
広島が高卒投手の指名を減らしてチームが強くなったという事実だけだ。
今までは育つのが難しい選手ばかりを大量指名してきたが、
2006年以降はカープが育てられそうな高校生に絞って獲得してきたことが
この結果に結びついたと言えるだろう。
闇雲にただ高校生だけを獲らせようとする一部の評論家やマニアは
絶対に口にしない点でもある。

一方で、ここ3年間のドラフトには危険な兆候が見てとれる。
一軍野手の固定化とともに世代交代の時期が迫っていることだけではない。

  高投 高野 大投 大野 社投 社野 高投 高野 大投 大野 社投 社野  
2016 3 1 2 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0
2017 2 2 2 0 0 0 6 3 0 0 0 0 0 3
2018 1 4 1 1 0 0 7 0 0 0 1 0 0 1

高校生投手の指名がまた増えてきているのだ。
世代交代が急務になりつつあるわりに
野手が高校生一辺倒になっているのも危ない点だが、
私はそれ以上に高校生投手のほうが気になる。
今まで中日と横浜で見てきたように、
野手の全盛固定期に「投手の指名が高校生に偏る」と
そのまま暗黒期につながる前例があるからだ。
カープのドラフトは、
因果関係はいまいち見えてこないのに
なぜか同じ路線と運命をたどった

両チームに近い状態になっているように見える。

その高校生投手からは既にアドゥワ誠が台頭しているし、
トミー・ジョン手術で今季の新人王は無理だが
個人的にも非常に期待している高橋昂也など、
それ以外にも有望株は少なくない。
ただ、そんな有望株が結局0で終わってしまった時の
備えが足りているように見えないし、
そういった有望株がことごとく戦力にならなかったのが、
2000年ごろから延々と続いたカープの姿でもあった。
今後のドラフトでは野手の世代交代を一気に進められる人材とともに、
素材で終わらない投手を大量に獲得することが求められるだろう。