今年、一部の人たちの中では
岡本和真、村上宗隆、安田尚憲といった
大型高卒サードのスタメン固定が期待されていたようだが、
今のところ岡本と村上はファーストが多く、
二軍で好調の安田は
レアードをはじめとした
入れるポジションの選手が皆
好調な安田の二軍成績をも上回っていて、
使いようがない状態になっている。
しかしそんな状況でも
「一軍で安田を固定しろ」という常軌を逸した記事が出たぐらいで、
高卒サード待望論は根強いものがあるようだ。
しかし以前も書いたが、
サードだった高卒選手がプロでサードに入ることは非常に少ない。
今回は平成に入ってからの
各チームのサードの変遷を簡単に見ていこう。
サード簡易30年史
広島
ロードン | 1989~90 |
山崎隆造 | 1990~91 |
水上善雄 | 1991 |
江藤智 | 1991~99 |
野村謙二郎 | 2000~2004 |
新井貴浩 | 2000~02、05~07 |
シーボル | 2008 |
マクレーン | 2009 |
小窪哲也 | 2010~11、14 |
バーデン | 2011 |
トレーシー | 2011 |
堂林翔太 | 2012~13 |
梵英心 | 2014~15 |
ルナ | 2016 |
安部友裕 | 2016~18 |
西川龍馬 | 2017~18 |
優勝した1991年から江藤が長年定着していた広島。
新井は意外とファーストでの起用も多く、
栗原健太のファースト固定でサードに回った。
新井のFA後はなかなか固定しきれていない。
ヤクルト
角富士夫 | 1989~91 |
長嶋一茂 | 1989、91 |
ハウエル | 1992~94 |
ミューレン | 1995~96 |
池山隆寛 | 1997~99 |
岩村明憲 | 1999~2006、2013 |
鈴木健 | 2003 |
飯原誉士 | 2008 |
宮本慎也 | 2009~12 |
川端慎吾 | 2013~16、18 |
藤井亮太 | 2017 |
80年代は角が10年以上にわたって固定されていた。
そこから外国人選手2人、ショートだった池山と続いたのち、
長期固定となったのが岩村。
しかし岩村がMLBへ行った後はやや苦戦。
宮本*1、川端とアベレージ型のショートが多い。
巨人
岡崎郁 | 1989~92、94 |
原辰徳 | 1993~95 |
長嶋一茂 | 1993 |
ハウエル | 1995 |
吉岡雄二 | 1995 |
仁志敏久 | 1996 |
元木大介 | 1997~99、2002~03 |
後藤孝志 | 1997~99 |
江藤智 | 2000~03 |
小久保裕紀 | 2004~06 |
小笠原道大 | 2007、09~10 |
古城茂幸 | 2008、11 |
脇谷亮太 | 2008 |
フィールズ | 2011 |
ライアル | 2011 |
村田修一 | 2012~17 |
マギー | 2018 |
巨人は1989年からショートの岡崎がサードに回ったが、
93年以降は原の復帰、ハウエル獲得などいろいろ試したものの
いまいちうまくいかなかった。
2000年にFAで江藤を獲得した後は前以上に選手が育たず、
トレード、FAと外国人選手に頼ることになる。
横浜
銚子利夫 | 1989 |
清水義之 | 1990~92 |
石井琢朗 | 1992~95 |
進藤達哉 | 1996~2000 |
川端一彰 | 1996 |
ポゾ | 1999 |
メローニ | 2000 |
金城龍彦 | 2000 |
小川博文 | 2001 |
グラン | 2002 |
古木克明 | 2002~03 |
村田修一 | 2004~2011 |
筒香嘉智 | 2012 |
中村紀洋 | 2013 |
バルディリス | 2014~15 |
白崎浩之 | 2016 |
エリアン | 2016 |
宮崎敏郎 | 2017~18 |
80年代後半は田代富雄が衰えた後にしばらく苦戦。
90年代の三遊間は石井と進藤が入れ替わりつつ10年近く固定された*2。
その後は2004年から村田が固定される時代になったが、
彼がFA移籍した後は再び人材難。
今年調子の上がらない宮崎が今後どうなるか。
中日
落合博満 | 1989 |
バンスロー | 1990 |
宇野勝 | 1991~92 |
前原博之 | 1992~95 |
仁村徹 | 1993~95 |
コールズ | 1996 |
ゴメス | 1997~2001 |
立浪和義 | 2002~06 |
森野将彦 | 2005~06、09~12 |
中村紀洋 | 2007~08 |
堂上直倫 | 2012、17 |
ルナ | 2013~15 |
高橋周平 | 2013~17 |
福田永将 | 2016、18 |
亀澤恭平 | 2016 |
何年もサードを固定しきれない展開が続いていた中日で
長くスタメンに定着したのは外国人のゴメス。
その後はベテランの立浪、
ユーティリティの森野など日本人はショート出身がほとんどだ。
阪神
岡田彰布 | 1989 |
八木裕 | 1990~91、94 |
オマリー | 1992 |
松永浩美 | 1993 |
クールボー | 1995~96 |
和田豊 | 1996 |
星野修 | 1997~99 |
ハイアット | 1997 |
ハンセン | 1998 |
ブロワーズ | 1999 |
塩谷和彦 | 1999~2000 |
ハートキー | 2000 |
ペレス | 2001 |
エバンス | 2001 |
片岡篤史 | 2002~04 |
沖原佳典 | 2003 |
キンケード | 2004 |
関本健太郎 | 2004、06、08、12 |
今岡誠 | 2005~08 |
バルディリス | 2008 |
新井貴浩 | 2009~11 |
新井良太 | 2012~14 |
坂克彦 | 2013 |
今成亮太 | 2014、15 |
西岡剛 | 2015 |
北條史也 | 2016 |
ヘイグ | 2016 |
鳥谷敬 | 2017~18 |
大山悠輔 | 2018 |
阪神はやけに人数が多く、
86年から故障で急速に衰えた掛布の穴を埋められなかった様子が見える。
チーム事情からどうしても強打者が求められただけに、
横浜のような選手起用もできない面もあったかと思われる。
今後は今のところ大山次第か。
西武
石毛宏典 | 1989~94 |
田辺徳雄 | 1995 |
クーパー | 1996 |
鈴木健 | 1997~99 |
T・フェルナンデス | 2000 |
マクレーン | 2001、03 |
エバンス | 2002 |
平尾博嗣 | 2002、06 |
J・フェルナンデス | 2004 |
中村剛也 | 2005~11、15、17~18 |
石井義人 | 2006~07 |
ヘルマン | 2012~13 |
渡辺直人 | 2013、16 |
脇谷亮太 | 2014 |
ランサム | 2014 |
黄金期はショートからコンバートされた石毛が長く君臨。
鈴木は95、2000年がファースト。93、94、96年がDHでサードは意外と短い。
しばらくは外国人選手が続いたが、
2005年からは中村が台頭。
DHに入る年もあるが、概ねサードで定着し続けている。
ソフトバンク
藤本博史 | 1989~92 |
伊藤寿文 | 1989 |
馬場敏史 | 1990 |
ウィリアムス | 1991 |
森脇浩司 | 1993 |
若井基安 | 1993 |
松永浩美 | 1994~96 |
湯上谷宏 | 1995~96、98 |
柳田聖人 | 1996~98 |
小久保裕紀 | 1999~2002、07 |
川崎宗則 | 2003 |
ネルソン | 2003 |
本間満 | 2003~04 |
吉本龍生 | 2004 |
バティスタ | 2005 |
松田宣浩 | 2006~18 |
森本学 | 2009 |
ダイエー時代のサードは小久保のイメージが強いと思われるが、
セカンドの時期が長く、サードは意外とそうでもない。
ソフトバンクになってからは松田がずっと入っている。
ただ本格的なバッティングの開花は2011年以降で、
しばらくもたついていた印象もある。
日本ハム
古屋英夫 | 1989~90 |
小川浩一 | 1989、91 |
広瀬哲朗 | 1990、95 |
片岡篤史 | 1992~94、96~2001 |
田中幸雄 | 2002 |
林孝哉 | 2002 |
小笠原道大 | 2003~2005 |
木元邦之 | 2006 |
マシーアス | 2006 |
小谷野栄一 | 2007~14 |
陽仲寿 | 2007 |
稲田直人 | 2008 |
高口隆行 | 2008 |
近藤健介 | 2014 |
レアード | 2015~18 |
80年代は古屋、90年代は片岡、2010年代前半は小谷野。
非常に長く固定される中距離打者が多かった。
レアードがいなくなった今年は人選に苦労している。
近年のイメージからは想像できないだろうが、
高卒選手が非常に少ない。
オリックス
松永浩美 | 1989~92 |
小川博文 | 1993~94 |
馬場敏史 | 1994~96 |
佐竹学 | 1997~99 |
福良淳一 | 1996~97 |
五十嵐章人 | 1998~99 |
アリアス | 2000~01 |
進藤達哉 | 2001~02 |
シェルドン | 2002 |
大島公一 | 2003 |
塩谷和彦 | 2004 |
塩崎真 | 2005 |
後藤光尊 | 2005 |
中村紀洋 | 2006 |
ラロッカ | 2007、09~10 |
北川博敏 | 2008 |
フェルナンデス | 2009 |
バルディリス | 2010~13 |
ヘルマン | 2014~15 |
小谷野栄一 | 2015~18 |
中島宏之 | 2015 |
大城滉二 | 2016、18 |
西野真弘 | 2018 |
10年以上定着した松永がトレードされた後、
3年以上固定できたのはバルディリスぐらい。
オリックスもトレードの代償は決して小さくなかったようである。
松永からの世代交代にはどのみち間に合わなかったかもしれないが。
ロッテ
水上善雄 | 1989 |
初芝清 | 1989~98、2000~02、04 |
佐藤幸彦 | 1991 |
酒井忠晴 | 1999 |
フェルナンデス | 2003 |
フランコ | 2004 |
今江敏晃 | 2004~15 |
青野毅 | 2007 |
中村奨吾 | 2015~17 |
鈴木大地 | 2018 |
ちょうど平成に入ったところで初芝がサードに定着したロッテ。
その約15年後からは今江。
サードはこの2人が固定される時代が非常に長かった。
不調の年が少なくなく固定の弊害も見られるが、
チームの精神的支柱でもあったということなのだろう。
近鉄
金村義明 | 1989~94 |
大島公一 | 1993 |
中村紀洋 | 1994~2004 |
80年代後半から20年近くを
ほぼ金村と中村だけで乗り切っている。
その前の羽田耕一も10年以上活躍しており、
30年強のサードをたった3人でまかなう
非常に珍しいチームであった。
楽天
ロペス | 2005 |
トレーシー | 2005 |
フェルナンデス | 2006 |
山下勝充 | 2006 |
草野大輔 | 2007~10 |
中村紀洋 | 2009~10 |
高須洋介 | 2011~12 |
岩村明憲 | 2011 |
枡田慎太郎 | 2012 |
マギー | 2013 |
松井稼頭央 | 2014 |
後藤光尊 | 2014 |
ウィーラー | 2015、17~18 |
今江敏晃 | 2016 |
内田靖人 | 2018 |
チーム黎明期は草野が大きな役割を果たした。
草野の後は様々な方法で選手を集めているが、
現在もウィーラーを超えられる選手は出てきていない。
それよりも必要なのは
ウィーラーと茂木をダブルコンバートできるショートか。
皆無に近い高校生サードのサード
最初の話に戻ろう。
ここまで見てきた選手の中で、
高校時代に三塁専任だった高卒サードは果たして何人いただろうか。
まあ正確にはどこかで間違いがあるかもしれないが、
何年かサードで活躍した選手では判明している。
答えは、たった1人。
鈴木健だけである。
それ以外は
プロの一軍ではずっとサードに入っていた選手でも
大半がショート、
あるいは投手かキャッチャーをやっていた選手が多い。
高卒の3人が非常に長かった近鉄も
羽田はショート、金村と中村は投手だ。
もう一つの例外としてはファースト出身がいて、
これは中村剛也と後藤孝志が当てはまる。
平成では、
三塁出身の高校生がプロのサードになるのは
極めて難しかったことがわかる。
しかもこうして改めて見てみると、
実は平成になってからの特徴ではなく、
昭和の時代からずっと続いてきた可能性が出てきている。
だとすると、1つ妙な点がある。
なぜこれまで岡本、村上、安田らのスタメン固定を主張してきた人たちは、
サードでの起用にこだわるのだろう。
少なくとも過去の例から学んだわけではないことはたしかだ。
しかも、こういう声は高卒選手に限定される。
大卒や社会人出身の選手に言われるのは、少なくとも私は聞いたことがない。
たとえば、今年のルーキーである大卒の頓宮裕真は
ドラフト指名後にキャッチャーからサードへコンバートされた選手だが、
果たして今後ファーストやDHで起用しても
「せっかくの大砲候補だからサードで使って育てろ」
と言われるだろうか?
一方で去年、岡本がファーストで起用された際に
巨人の首脳陣がこっぴどく叩かれたのは記憶に新しいところだ。
高校時代のポジションに戻っただけなのに。
しかし現実の高校生サードは、
身体能力が高ければより難しいポジションに回り、
守備の負担を打撃に大きな影響を与えるようなら
レフトやファーストに回す、
そういった位置づけのポジションになっている。
大学生や社会人出身でもこうした傾向がみられるのだから、
高校生ならなおさらである。