スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

ドラフト改革案を何となく程度に考えてみた

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アメリカでは、NFLのドラフトが今週末に始まる。
さらに6月になれば、MLBNBA、NHLでもドラフトが行われる。
今年は野球関係でいけば昨年アスレチックスに1巡指名された
Kyler Murrayは結局NFL入りを表明した*1し、
何よりも6月のNBAではゴンザガ大学の八村塁が
アーリーエントリーを表明している。
日本での注目度も例年より上がる年になりそうだ。

ところでNPBのドラフトでは、
ドラフトの改革を求める声がしばしば見られる。
大半は1位入札を抽選ではなくウェーバーにしろというものだ。
普段だとドラフトよりも
FAの人的補償の話が出た際に主張されることが多いが、
今年はアメリカでのウェーバー制ドラフトに注目が集まることで、
いつもとは違う時期にこうした声が高まる可能性もある。
そこで今回は、
私なりのドラフトの改革案をいくつか示してみようと思う。
ただし、「私なりの」とは書いたが、
私自身がこう主張しているわけではないことは
あらかじめおことわりしておく。
細かいことは気にせず素人目線で考えたものなので、
まあ気楽に読んでほしい。

完全ウェーバー

最初にも書いたように、
ドラフト改革を求める人は
完全ウェーバー制を主張することが非常に多い。
プロ野球のシステムは、
戦力がある程度均衡していないと
人気チームも不人気チームと共倒れになる。
そのため、より戦力均衡を進めるための手段の一つとして、
完全ウェーバーにするのは理にかなっている。

一方で、反対派からよく挙がる懸念の一つは
1位指名の順番を早めるための敗退行為。
これに対しては、
CSに行けなかったBクラス6チームの順番を
NBAで採用されているロッタリーで決める方法もありだろう。
そのうえでCS進出の収益面でのメリットを増やし、
敗退行為の価値を下げることが求められる。
NBAプレーオフに進めるのは全チームの半数である。

現状維持

「現状維持」も、当然ながら選択肢に入ってくる。
特に1巡入札の上での抽選は
既に40年以上継続して行われているものなので、
鳴り物応援などと同様に
日本人の奥底に完全に根付いている節があるからだ。
これを変えて完全ウェーバーにした場合、
長く続ければまた定着していくかもしれないが、
いつまでたっても定着しないこともありうる。
問題点が多いとはいえ、
現行の制度をそのまま続ける選択肢の排除を
強制はできないだろう。

あとは現状維持の亜種というか折衷として、
現在の「偶数巡ウェーバー、奇数巡逆ウェーバー」を
「外れ1巡以降は下位からのウェーバーに統一する」
というやり方もありじゃなかろうか。

ショーアップ化、あるいは厳粛化

次は制度に関することではなく、
当日の演出について。
アメリカではNFLNBA、NHLのドラフト会場に多数の観客が詰めかけ、
他にもMLSでも候補選手とその家族が会場に招待される。
MLBはこの点、圧倒的に地味だ。
一方、日本では1,000人の観客招待に対して
毎年のように非難の声も聞かれている。

ショーアップ推進の場合

毎年かなり高い倍率をほこるというドラフト会議の観覧希望。
ショービジネスとしての伸びしろはかなり大きいと考えられる。
まあ有料化したとたん、
「ただじゃないと原価が」
と観客が激減する可能性も否定できないが。
それはともかく、NFLほど巨大規模ではないにしても、
NBAやNHLぐらいの演出を行う余地はありそうに見える。

会場は当然、もっと大掛かりになる。
現在の会場も非常に立派なところではあるが、
より大きな多目的アリーナやコンベンションセンターなどを
使用する必要があるかもしれない。
東京近辺だとさいたまスーパーアリーナあたりがふさわしいか。
あるいはNFLのように各地域での持ち回り開催も
視野に入れてもいいかもしれない。
また、ウェーバー制になった場合は、
各チームの監督に1巡指名、
有名OBに2巡指名選手の読み上げを担当してもらう、
といった演出もありだろう。

ショー要素を排除する場合

何かにつけて「不謹慎」を他人に押し付けてくる日本では、
ショーアップ化より
ショービジネス要素の徹底排除を要求する意見のほうが目立つ。
となれば、これらの「ファンのニーズ」にこたえて、
こうした方向の改革に舵がきられる可能性もある。
その場合、当然観客などはなし。
できれば中継も行わず、
映像は後で公式HPに乗せる程度。
ただの法事のように淡々と、
厳粛な空気のもとで進行させるのだ。
さらに完全ウェーバーになれば
全チームの代表が一堂に会する必要もなくなるから、
現在ならそれこそネット回線で
各チームの担当者に一巡目から指名を読み上げさせればいい。
ところでこれだと、
MLBドラフト11巡目以降の猿まねになるんですが
本当にいいんですかね、江本さん。
指名された選手の記者会見や胴上げなども禁止にしたり、
選手の当事者や進路先候補などを除いた一般には
春季キャンプ開始まで指名者名簿を非公開としたほうがいいんだろうか。
機械的にやれ」と言われていることだし、
いっそのこと読み上げもSoftalkか何かにしようか。
故・パンチョ伊東さん風に読み上げるソフトが開発されれば
もっといいが、
それだとかえってショー要素が強まってしまいそうだ。

ドラフトを廃止する場合

ドラフト制度そのものに対しては、
読売の渡邉主筆などをはじめとして
職業選択の自由を阻害する憲法違反だ」という主張も根強い。
もしかしたら今後裁判でも起こって、
「ドラフトは憲法違反だから廃止」
という最高裁判決が出ることもありえる。
そうなったらどうするか。
この場合、ドラフト自体はすぐに廃止してもいいし、
何とかして1、2年の猶予期間をもらってもいい。
ただしドラフトとは別に、ある事柄への準備期間が必要だ。

まず2年間通常のシーズンを行う。
そして、その中から両リーグの下位合計2~6チームを二部、
勝ち残った他のチームは一部残留とする。
そう、この場合行わなければいけないのは
NPBのシステムそのものの再編。
アメリカ型からヨーロッパサッカー型、
閉鎖型から開放型への移行だ。
ドラフト制度自体は閉鎖型だからこそ成立するものだし、
逆に現行のままドラフトを廃止してしまうと、
かつての巨人中心のモデルが成り立たなくなってきている現状では
日本プロ野球自体の消滅にもつながりかねない。

メリットは新規参入がしやすくなる、
プロ入りする際の選手の選択の権利が保たれるということか。
デメリットは、正直なところよくわからない。
新規参入が増える代わりに
どのくらいの企業が撤退するか。
一度二部に降格すれば採算はより絶望的になるだろうし、
選手の年俸も大幅に下がる。
そもそも二軍戦をやりようがないから、
各チームの選手保有数が減るだろう。
など、他にも考えられることが多すぎて書ききれないのだ。
素人目には野球の裾野が広がる要素があまり見えてこないのだが、
このへんは専門家に任せた方がいいか。
ただ以前にも書いたが、
野球はサッカーやバスケットボールなどと比べて
興業形態がやや特殊なスポーツであることは
間違いないと思う。
単純にJリーグBリーグ
同じシステムを導入するわけにはいかないのだ。

「レイトエントリー」制度

最後に、ある種の人たちが涙を流して喜びそうな案を考えてみた。
名付けて「レイトエントリー」。
…大げさに言ってみたがたいしたことないな。
要は「アーリーエントリー」の逆である。

NFLNBAでアーリーエントリーが採用されているのは、
ドラフト指名の年齢に下限*2が設けられており、
基本的に大卒の選手しか獲得できないからでもある。
それだけNCAAの権限は非常に強く、
またアメフトとバスケでは
それを後押しするだけの人気も獲得している。
では、日本でこれらに近い人気のあるアマチュアスポーツは何かといえば、
野球なら高校野球だろう。
高校、特に甲子園で活躍した選手は
一般のファンからも非常に注目されるが、
即プロに行かず大学や社会人に進むと
とたんに忘れ去られるか、
覚えられていたとしても高校時代の記憶しか残っていない。
そんな状況なためか、
各チームは高校生の指名が多くないとファンから袋叩きにされるし、
露出度の高いドラフト評論家がその風潮を後押ししている。

そこで、だ。
まずドラフト指名年齢を18歳以下に限定する。
そのうえで、大学生や社会人でドラフト指名を希望する場合には
レイトエントリーを申請するという仕組みにするわけだ。
高校生は志望届なしで指名できる(もちろん拒否可能)が、
大卒・社会人はエントリーしなければ指名はできない。
また、他球団の指名拒否による囲い込みを抑えるため、
指名可能な選手数を2~3年で3人程度に制限し、
拒否した選手は現在と同様に大卒か社会人3年まで指名できない。

そして、レイトエントリーの選手は入団後にも制限を設ける。
25歳を超えた選手が
怪我以外の理由である一定の試合数に出場できなかった場合は
自動的に戦力外になるというものだ。
通常の高卒選手の場合は
「高校生は長い目で育成しなければいけない」ので、
年齢制限は10年目の28歳まで緩和される。

こうすることで、
高卒至上主義のMr.ドラフトらが夢にまで見た、
10代から20代前半の高卒選手ばかりで構成されるプロ野球が出来上がるわけだ。
最初にも書いたように、これは一般のファンのニーズとも相性がいい。
実際SNSなどを見ていると、
25歳以上の選手、あるいは22歳以上の大学・社会人出身選手を
すぐロートル・外様扱いするファンはしばしば見かける*3
ファンあってのプロ野球である以上、
こうしたファンの大きな声にこたえるのも
必要と言えるのかもしれない。
デメリットは山ほどあるが気にしてはいけない。

*1:全体1位指名の可能性が高いとも言われている

*2:現在のNBAでは19歳以上。アーリーエントリーも事実上大学進学が前提条件になる

*3:それも、ドラフトには詳しくないファンがほとんどだ