スポーツのあなぐら

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【再掲】ソフトバンクの「育成上手」と「金満」

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※ニコニコのブロマガにあげた内容を加筆修正したもの。

ホークスの「育成上手」とは何か

先ほどあげた再掲ネタで書いたように、
「育成上手」とは非常に曖昧かつ恣意的な使われ方をする単語である。
そのため、「全ての育成上手」が「全て同一の手法」としてとらえられることも多いが、
現実にはそれはありえないことだ。

ではソフトバンクの育成はいったいどのようなものなのだろうか。
ポイントをあえて叩かれそうな一言で書いてしまうと、それは「金満」だ。
まず「成功率を上げることは考えず、総指名数を単純に激増させる」ことで
当たり選手の人数的期待値を増やしている
(ドラフト評論でとかく称賛されるのもこのあたりが要因の一つと思われる)。
しかしこれを行うには70人枠では足りない
そのためにこのチームは、特に2011年から本格的に三軍を導入し、
かつ育成枠を大量に確保することで対処している。
当然、三軍の導入や給与その他の選手コーチにかかる維持費、遠征費などは
莫大なものになるはずだ。
この戦略は育成枠を含めても70人以内で賄わざるを得ない
緊縮財政のチームでは不可能である。
つまり、この戦略をとるには「金満」である必要があるのだ。

そしてただでさえ育成枠、つまり本指名から漏れた選手たちを大量に確保、
しかも本指名も含めて高卒、その中でも完成度は低い素材型主体の指名をするのだから、
「彼らの育成期間は往々にして長くなる可能性が高い」。
そしてこれらの育成をするためにもう一つ必要なものは、ずばり巨大戦力である。
選手が育つ前の無理な一軍起用や、戦力と枠数の不足からくる選手の早めの解雇、
これらの要素は極力排除しないとこの戦略は成り立たないのだ。
一軍戦力が過剰なほど充実しているからこそ、二軍・三軍での長期育成ができる。
そのためには当然大補強や強奪も惜しまない

「金満」の二点目はここにある。こうした補強があってこその育成なのだ。

実際、ソフトバンクの育成選手は少しずつだが登録期間の長い選手が出てきている。
2012年ドラフト組ぐらいまでは、かなり早い段階で支配下登録されるか
2~4年で切られるかの二択になることが多かったが、
そうした中で伊藤大智郎は昨年まで7年間育成として在籍していたり、
2014年の育成指名8人のうち4年目でまだ4人(全員高卒)が育成選手として残留している、
といった具合である。
ただし高卒はなんだかんだで4年目までは在籍していることも多く、
残っている4人も今年は瀬戸際と言っていいだろう。
なお2014年組は3年目までに高卒2人を含む4人が既に切られたことになるが、
中村恵吾や高卒の金子将太がそれぞれ1年・2年で切られても
巨人のように批判されることは全くなかった。

  

「金満」だからこそ可能な育成戦略

少し話がそれたが、
こうした部分が、ソフトバンクの育成戦略の一面である。
しかもこれらの戦略が他のチームにとれたかというと、
金満チームでもどうだったかはあやしいところだ。
一時期九州(福岡・長崎)に進出しようとしたアイランドリーグとの提携や
HAWKSベースボールパーク筑後の新設などは、
その地域性や時期に恵まれた部分もあったように見えるからだ
(特に2011年に関東や東北のチームがこうした戦略をとれたかといえば・・・)。
しかも2010年以降にこの戦略をとったということは、
巨大戦力をかき集め、維持し続けられる状況が
整いつつあった時期とちょうど重なっていることになる。

足りない部分も少なからずあるとは思うが、
それでもホークスの戦略が「金満」と「巨大戦力」をフル活用したものであることは
少しは説明できたのではないかと思う。
また私はこの戦略を「『育成上手』とは少し違う」と考えているが、
「『育成上手』とは少し違う」の意味をネガティブにとらえているわけでもなければ、
「金満」という世間一般ではネガティブにとらえられがちな言葉もまた、
あくまで数ある手段のうちの一つととらえている。
このこともわかっていただけるだろうか。
また、出てこられそうな選手数の期待値は増やしているのだから、
人(定義)によってはこれを「育成上手」ととらえてもそれは何の不思議もないのだ。

もっとも、育成出身で一軍で複数年活躍した投手は
2年目で支配下登録された千賀滉大と飯田優也はいい結果を出しているが、
3年目以降の支配下登録となった山田大樹、二保旭、石川柊太は
まだ大成功とは断言できない。現状では石川に期待か。
また上位指名された川原弘之や吉本祥二などを見てもわかるように、
2008年以降大量指名している高卒投手のうち本指名から当たったのは
2008~11年の10人中、武田翔太だけ。
この間の育成枠3人に千賀がいるとはいえ、
この成功率が現在のチームに不穏な気配をもたらしているのも事実なのである。