スポーツのあなぐら

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中日ドラゴンズ2023年ドラフト補強ポイント

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①暗黒期初期とその後の「貧打」の違い
②二軍の起用法は今年の1位入札への布石なのか
③貧打の裏で表面化してきたもう一つの危機

 

 

戦力・ドラフト傾向分析

過去10年の成績

D10年成績1

ここ10年でAクラスはわずか1回、
それも唯一CSがなかった年だけとは
運にも見放されている。

D10年成績2

得点力があまりにも低いうえに
投手、守備でのプラス要素も多くない。
打力が少しだけ持ち直した2018年には
投手陣が崩壊。
投打のバランスが悪い意味でしかかみ合っておらず、
バンテリンドームの特性を
生かせないチーム状況も続いている。

 

2023年の成績

D順位

今年も得点力が極端に低く、
失点は少ないが突出しているわけでもない。
交流戦からオールスターまでは
平均得点がリーグ2位で
1つ勝ち越しているが、
逆に平均失点も2番目に多くなっている。

 

過去15年のドラフト傾向

D15年ドラフト1巡

基本的には特攻型で
地元枠にあたる1位候補がいる場合は
そちらを優先する傾向が強い。
2年連続での大学生・社会人1巡入札は
1997、98年の
川上憲伸福留孝介逆指名以来
24年ぶりとなる。

D15年ドラフト2・3巡

2位指名は
2008年から5年連続で高校生だったが
13年以降はほとんど大学生になっている。
逆に3位は
2008~15年までが全て大卒・社会人、
16年以降は高校生が多くなった。
上位3人で高校生を獲得していないのは
14年と21年の2回だけ。

D15年ドラフト指名数

行き過ぎた高齢化を是正するためか
2013~15年は社会人野手の指名が激増したが、
それ以外の年はあまり社会人野手を獲っていない。
支配下での高校生投手24人は
全チームで最も多く、
高卒率が50%に達しているのもドラゴンズだけである。

D15年ドラフト戦力

戦力の輩出度はかなり弱い。
長く活躍する中距離打者すらも
なかなか出てこない野手は言わずもがなだが、
指名比率の高い高卒投手も
戦力となるのは1位指名に偏っている。

 

野手補強ポイント

野手についての基本的な考え方

基本的な前提条件はこうだ。

  • 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
  • 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
  • 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない

この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はない
のだ。

 

過去10年の打撃成績

D10年野手成績

打率と盗塁が高めの年はあるが
長打率出塁率が極端に悪く、
得点力向上には全く結びついていない状況。
HRに加えて
四球数もかなり減っていることが
よくわかるグラフになっている。

 

2023年野手陣の状況

D打撃成績

今年も得点が極端にとれない。
HRがリーグワーストで、
二塁打だけは少なくないが
四球もリーグ最少。

DF年代表1

DF年代表2

岡林と現役ドラフトで獲得した細川以外は
状態がいまいち。
一時期不調にあえいでいた石川昂が調子を取り戻したが
木下が離脱するなど厳しい状況が続く。
宇佐見の補強がなければ
はるかに厳しくなっていただろう。
気になるのが
例年より四球数が激減している大島。
単に年齢による衰えのためなのか、
一刻も早い2000本安打達成をあせって
スタイルが崩れてしまっているのか。

D若手F1

二軍の若手キャッチャーに
バッティングの好調な選手はいないが
木下離脱で3人とも一軍を経験した。
内野も昨年一軍機会の多かった龍空が
調子を完全に崩すなど全体的に厳しく、
ルーキーでは昨年2位指名の村松
なんやかんやで一番結果を残している。

D若手F2

外野の若手は
2年目のブライト、鵜飼、福元の3人が
今年二軍で結果を残しているものの
大島が一軍スタメンを外れても
若い岡林と細川がいるので空きポジションが限られる。
特にブライトと鵜飼は
昨年の細川を上回っているのだが、
細川は
昨年以上の数字をかれこれ4年維持しており
昨年はむしろ成績の悪い年だった。

 

補強ポイント

この2年間で
野手をかなり入れ替えたため、
二軍の野手枠がほぼ埋まっている。
今年も野手を大量指名するのなら、
中堅・ベテランを徹底的に戦力外かトレードに出し、
普段「ベテランはいらない」と騒いでいたのに
「功労者を大事にしない」と手のひらを返し始める
中日ファンやOBをまた眺める状況にしないと
獲得できる野手の枠は増えない。

この前提条件通りの戦力外が行われたと仮定して
補強ポイントを考えると、
獲得しておきたいのは
むしろ若手がそろっている外野手か。
細川より上の世代を軒並み排除した場合、
ブライト、鵜飼、福元をある程度一軍に置かないと
一軍のメンバーが足りなくなるので、
そのぶん二軍に多少空きができるのだ。
内野は
サードで濱と石垣が多くなっているものの
二遊間の若手・中堅が多いため
この2つのスタメンを外れた選手が使われる枠として
用いられる側面もあり、
二軍で補強できるポイントではない。
ただし2年目の星野の使い方が奇妙なのも考慮すると
チームやスカウト陣は
今年サードかファーストを上位指名したがっている可能性はある。
キャッチャーは
味谷と山浅で枠の空きが少ない。
一軍の層の薄さを考えると
既存の一軍・二軍往復枠はそのままに、
すぐに一軍主力も見据えられる高いレベルの
大学生か社会人が欲しいところだが、
昨年の内藤鵬*1指名を要求するシュプレヒコールを見ていると
ファンやドラフト評論家の評価が上がるのは
高校生野手に特化したドラフトを行い、
しかもこの高卒1年目たちを
開幕から一軍に固定することだろう。

 

投手補強ポイント

投手についての基本的な考え方

野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される

  • 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
  • より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける

このような手法は
以前にもましてとりづらい。
それよりも

  • 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
  • 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない

これらがどのチームでも最重要課題になる。

 

過去10年の投手成績

D10年投手成績

打撃成績のグラフと比較してみると、
与える四球の数がわりと多いうえに
2017~20年にかけては
被HRもリーグ下位に低迷しており、
打撃だけではなく
投手もかなり厳しい状況だったことがうかがえる。

 

2023年投手陣の状況

D投手成績

一軍の防御率は良く
四球がやや多い以外に
あまり悪いところがあるようには見えない。

DP年代表1

DP年代表2

4試合に投げたメヒア以外
全てドラフト1位指名選手が登板している先発陣に
マルティネスをはじめとしたリリーフ陣も好調。
「ベテランを使いたがること以外たいした問題はない」と
思っているファンも多そうに見えるが、
現実には
二軍にとどまっている若手・中堅の調子が悪く、
エスタンの成績は
防御率に被HR、四球、三振率や被安打など
どの数字も圧倒的な最下位だ。
リリーフは
支配下登録された松山や
一軍ではリリーフに回った上田、
リリーフ起用が増えている根尾が良くなっていて、
二軍だと打ち込まれている橋本が
一軍だと好投するといった事態も起こっているので
まだいいのだが、
今あげた2人も含め先発がかなり悪い。

補強ポイント

ここ数年間も
不調に陥っていたベテランの復調で持たせていただけに、
過去に実績のある選手たちは
何とかなるかもしれない。
しかし一軍主力や有望株と言える選手のほとんどは
かなり早くに一軍で結果を残していて、
長く二軍でくすぶっていた選手や
二軍でも一軍でも結果を出す前から
一軍で我慢して使われ続けた選手はほぼいない。
なので
まだ実績を残せていない若手・中堅は
かなり危ない位置にいると言える。
長く怪我に苦しんでいる若手が多いのも厳しいところだ。
ここに今後のベテランの衰えを加味すると
今までのような高校生や素材偏重のドラフトを
している余裕は全くなく、
さらに
他のチームより支配下登録が多い野手枠を削って
少なかった投手を増やすぐらいのことをしないと
あと2、3年もすれば
相当厳しい状態になるだろう。
特に今後数年の高校生支配下指名は
競合レベルかつ地元枠のドラフト1位に絞っていい。