スポーツのあなぐら

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二軍の3地区制再編について考える

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二軍再編と「二軍16球団」

2025年6月、
プロ野球の実行委員会で
二軍を現在のイースタン・ウエスタンの2リーグから
3地区へ再編する案が検討されているとの
報道があった。
主な理由は
オイシックスとくふうハヤテ、特にくふうハヤテの
移動距離の長さとそれに伴う必要経費の増大と
されている。
この新球団のバス移動時間については
新規参入の募集が始まった2023年に
「ファーム新球団本拠地に求められている条件は何か」
既に取り上げたが、
くふうハヤテがウエスタンリーグに組み込まれたことで
問題がより深刻な形で表面化したようだ。

清水庵原バス移動

特に静岡から筑後への移動時間は
休憩時間を含めると半日以上になる。
他球団の二軍は
新幹線停車駅の目の前という筑後の立地から
新幹線を利用している可能性も高く、
エスタンに入ったくふうハヤテの厳しさが
際立っている。

二軍再編に対して
個人的に良かったと安堵しているのが、
二軍球団のバス移動の辛さに対して
数十年来叫ばれ続けてきた
マイナーリーグ
もっと長時間の移動をひたすらこなして
ハングリー精神を養っている。
ぬるま湯で甘えるな」の声が
ほとんど出なかったことだ。
「移動が大変なのは参入前から分かってただろ」の
自己責任論はそこそこ目にしたものの、
二軍に対する外部の主張も
ここ数年で多少変化が出てきているらしい。
ちなみに
AA、High-A、Short-Aに属する9リーグのうち
静岡―筑後間を上回る移動距離を有するのは3リーグ、
移動時間では
AAのTexas LeagueとHigh-AのSouth Atlantic Leagueの
2リーグのみである。

 

「『二軍16球団』ならこの問題は解決する」?

ところで
この二軍再編報道のうち、
ヤフーに掲載された記事の一つ
エキスパートが
「参入を希望していた栃木と熊本を加えて
16球団四地区制にすればよかった」と書き、
それなりの賛同を得ていたようだ。

北部 北海道日本ハム 東北楽天 栃木 埼玉西武
東部 千葉ロッテ 東京ヤクルト 巨人 横浜DeNA
中部 くふうハヤテ オイシックス 中日 オリックス
西部 阪神 広島 福岡ソフトバンク 熊本

内訳はこうなっていて、
新潟と静岡、名古屋、大阪を中部にまとめてしまっている時点で
かなり雑で乱暴な分け方と言わざるを得ないのだが、
それ以上に大きな課題になるのが熊本である。

熊本バス移動

休憩時間を含めれば関西でも10時間近くかかる熊本は
静岡ほどではないにしても
移動がかなり厳しいものになっている。
もし当初の2チーム募集を変更して
4チームを一斉に加入させたなら
計4地区制ではなく
イースタン10、ウエスタン6の2リーグ制だったろうから、
名古屋行きが追加されて厳しさが増したはずだ。
このコメントを書いた横尾弘一氏は
社会人野球の雑誌、記事でもよく見かける方なので
長年一軍参入の意思を示してきた
熊本(鮮ど市場)ゴールデンラークスや
エイジェックに対する
思い入れが強かったのかもしれないが、
現在のくふうハヤテの困難は
中国・九州地方の移動距離の長さに起因する。
この難点を打開*1する
資金調達のめどがつかない以上は
タマスタ筑後よりも南にある熊本にも
当然同じ問題がふりかかるだけだ。

 

二軍の3地区はどう分けられるべきか

現在の各記事によれば

東地区 オイシックス 東北楽天 北海道日本ハム 千葉ロッテ 東京ヤクルト 埼玉西武
中地区 巨人 横浜DeNA くふうハヤテ 中日
西地区 オリックス 阪神 広島 福岡ソフトバンク

3地区はこのような区分けが有力らしい。
はたしてこの区分けは妥当と言えるだろうか。
3地区制に切り替える場合、
静岡のくふうハヤテは
最初から区分がわかりやすくできるから問題ない。
ポイントは二点、
新潟のオイシックス
君津に移転するマリーンズである。
ロッテの君津移転も
ヤクルトの守谷移転も
まだしばらく先の話なので、
まずは浦和、戸田での利便性だけを考え
両チームの移転後に
改めてリーグ再編を検討する前提でもいいのだが、
ここでは
君津と守谷移転後に焦点を絞って考えたい。

 

新潟は「何地方」なのか

どの地域からも微妙に遠くなる新潟は
北陸地方として区分されることも、
先述の横尾氏のように
中部地方としてカウントされることも
珍しくない。

新潟バス移動

東北や関東に比べて
東海、関西地方への移動距離が明らかに長く、
今回考える範囲での道路交通の点では
関東甲信越」の区分のほうが現実に近い地域と言える。
道路交通だと仙台がまだ近いほうになり
次に
鶴ヶ島インターから球場まではやや離れているものの
高速道路を降りる地点には到達しやすい
CAR3219フィールドが続く。
現在ロッテとヤクルトの二軍本拠地がある
浦和と戸田は
どちらも高速のICが近いので
そこそこ便利なはずだ。
また所沢の西武は
東京駅、大宮駅、羽田空港から微妙に遠く、
一軍だと
南関東のホームでは最も北に位置しながらも
北地区*2に分けるには5球団の中で最も不便な地域だが、
バス移動前提の二軍なら
新潟方面には向かいやすい地域である。

 

君津移転後のマリーンズ

現時点だと具体的な建設予定地がわかりづらい
君津でのロッテ本拠地。
君津駅から南に約1kmで現在は農地の
2、3000人収容の球場が作れる場所となると
道路を潰さなければ球場が収まらない場所が多い。
そこで今回は
道路を潰す必要がない広さの農地の横にある
セブンイレブン君津貞元店を起点としておいた。
ところでロッテの場合
もう一つ考慮に入れなければならない点がある。
君津移転の際にOBから指摘されていた
寮生活していない選手の住居問題と
アクアラインの渋滞問題だ。
そして君津からの車移動を検索すると、
出てくるのはほとんどが
アクアラインを通るルートだけなのである。
これらを同時に、乱暴に解決する手段として
君津の寮周辺に住んでいない選手を
マリンスタジアム候補地でもある
幕張メッセ駐車場で拾う、
東京湾を大回りするルートもまとめて考察してみよう。
他球団も東京湾を迂回する場合は
すぐそばを走る高速道路を降りる以外
ほぼ同じルートが使われる。

君津バス移動

アクアラインを使わないルートでは
新潟だと30分程度の遅れで済むが、
東海地方や神奈川の南側は
1時間近い遅れが生じる。
そんな東京湾を回る場合でも
名古屋はともかく
静岡だと新潟、仙台よりかなり近くなるようだ。
ただここには載せなかった
東京のはるか東側にある
鎌ケ谷、守谷とのアクセスを考えると、
東海地域を含む中地区ではなく
東地区に分類せざるをえないか。

 

3地区の妥当な区分けと二軍を絶望に追い込む提言

これらから考えられる地区分けは

東地区A オイシックス 東北楽天 北海道日本ハム 千葉ロッテ 東京ヤクルト 埼玉西武
中地区A 巨人 横浜DeNA くふうハヤテ 中日
西地区 オリックス 阪神 広島 福岡ソフトバンク

東6、中4、西4に分けるA案か

東地区B オイシックス 東北楽天 北海道日本ハム 千葉ロッテ 東京ヤクルト
中地区B 埼玉西武 巨人 横浜DeNA くふうハヤテ 中日
西地区 オリックス 阪神 広島 福岡ソフトバンク

東5、中5、西4に分け
東地区と中地区を中心に常時交流戦を行うB案。
このどちらかになり、
現在最有力とされるA案は妥当な選択と言える。
現在の参加チームの本拠地に
一地区最低4チームを原則として考慮すると、
距離的には近い関東を分断していくしかない。
ファイターズが二軍も北海道に移転し
栃木のエイジェックが参入すれば解決と
思う人も出てくるかもしれないが、
実質的に航空機しか移動手段がない北海道、
特に国内線が羽田空港のみ帯広が本拠地になれば
今回の問題がより深刻になるだけだし、
その環境下で県内に空港がなく
最寄が茨城、成田、羽田の栃木が参入しても
さらに悲惨な結果を招くだろう。
小林至教授にとっては
「羽田と直通してるのだから全てを羽田で乗り継がせればいい」
ぐらいの感覚なのかもしれないが。

 

「2リーグ」を「3地区制」にする意味

しかし
2リーグ制を3リーグ制にするのではなく
1リーグ3地区制を採用する
時点で
今まで考察した内容は
そもそも前提が変わる可能性もある。
日本ではあまりなじみがないが、
1リーグだから、3地区だからといって
同じリーグや同じ地区の全チームとの対戦を
同じ数だけ組む必要はないからだ。
20チームが東西のDivisionに分かれている
AAAのInternational Leagueから
昨年地区優勝した2チームの今年の日程を例に出してみよう。

AAA試合数一例

EastのScranton/Wilkes-BarreもWestのOmahaも
同じリーグの19チーム全てとは対戦しないばかりか、
同じDivisionですらも
Scranton/Wilkes-Barreは2チーム、
Omahaは3チームとの対戦がない。
対戦数が3の倍数の奇数になるパターンもいくつかあり、
3連戦のカード数がホームとアウェイで
均等には分けられていないこともわかる。
そしてOmahaにいたっては
同じ地区ですら全チームと対戦しないのに
もう一つのAAAクラスである
Pacific Coast LeagueのSaltkakeとの
交流戦が予定されている。

これは
必ずしも平等な日程にこだわらなくていい
マイナーリーグだからなおさらやりやすいのだろうが、
同じことは二軍にも言える。
全チームの
総試合と主催試合の予定数さえ合わせれば、
東西の端にあるイーグルスとホークスが
対戦しなければならないわけではないし、
3地区制の検討が発表されてから
懸念材料としてさかんに言われているように
地区が別々になったチーム同士の対戦を
なくす必要もない。
少し遠いが同じ地区に属するチームとの対戦と
非常に近いが別地区に属するチームとの対戦を
同程度に組んでも
一軍と違ってそこまで問題にはならないのだ。
3地区制案が了承されるのか、
3地区制が決定したとして
実際の日程調整の結果がどうなるかはわからないが、
3地区制案は
イースタンウエスタンリーグ
東・中・西地区の枠組みを超え、
各二軍チームの事情に応じた
柔軟な日程を組めるようにする
ことが
大きな理由であるようにも思われる。

*1:新幹線・飛行機移動が可能になるなど

*2:「16球団構想」に関する2020年ごろのTV番組では古田敦也氏が埼玉西武北海道日本ハム東北楽天と同じ北地区に区分していた