①「野手が弱いから」だけで野手を獲れない事情
②野手指名は実利をとるか、ファン・OBの声を優先するか
③一軍でも二軍でもイニングを稼げる投手
戦力・ドラフト傾向分析
過去10年の成績
2013年以降は2020年以外Bクラスが続く。
バンテリンドームの特性もあって
得点力が上がらないのは
2010、11年のリーグ連覇時からあまり変わってないが、
恩恵を受けるはずの投手陣も悪化の一途をたどっていた。
その投手成績のほうは
ここ最近改善傾向にあった。
2022年の成績
一軍固定される若手が増えているが
打力はさほど上がっておらず、
得点力はリーグ最下位。
タイガースと違って
失点の少なさでカバーするほどの力が
投打ともになく
この順位は致し方ないところ。
今はそれこそ「我慢の時」のはずだが、
これまでのドラゴンズに対して
さんざん「我慢しろ」と批判してきた人たちには
自分も我慢する気配が一向に見えない。
過去10年のドラフト傾向
ドラゴンズの1位入札は高校生が多く
2年連続の大学生・社会人指名は
1997、98年の
川上憲伸、福留孝介逆指名までさかのぼる。
落合GMの時代でも2年に1回、
2017年からは4年連続で高校生であった。
2位指名は
2008年から5年連続で高校生だったが
13年以降はほとんど大学生になっている。
逆に3位は
2008~15年までが全て大卒・社会人、
16年以降は高校生が増えた。
行き過ぎた高齢化を是正するため
2013~15年は社会人野手の指名が激増したが、
16年以降の野手指名は高校生が多くなった。
支配下での高校生投手14人は
ジャイアンツと並んで12球団トップタイの数字。
問題はそこからの戦力の輩出度。
社会人野手は
2015年の指名選手が世代交代に一役かったものの
2014年指名組は打撃成績が伴っておらず
とても成功したとは言い難い。
そこに高卒主体の指名が行われたことで
戦力層は極端に薄くなった。
野手補強ポイント
野手についての基本的な考え方
基本的な前提条件はこうだ。
- 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
- 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
- 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない
この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はないのだ。
2022年野手陣の状況
HRがかなり少ないが
二塁打がタイガースよりかなり多いため
長打率はそこまで低くなっていない。
なお得点効率は
おそらくNPB史上でも類を見ない悪さだった。
運がもう少し良ければ
タイガースぐらいの得点はとれていたかもしれない。
シーズン中はさんざん叩かれていたが
個人成績のトップはビシエド。
打席数の増えたA・マルティネスと
中盤以降成績を上げた岡林以外は
リーグ平均を超えたのが
実績のあるベテランばかりになっている。
高橋周を上回った若手・中堅が
岡林と怪我で離脱した石川昂だけなのもしんどい。
若いキャッチャー2人は
打撃面で成長を見せているが
一軍だと結果は出せていない。
一軍でのスタメン起用は
郡司より石橋が優先されているようだ。
怪我から復帰後の鵜飼は
二軍で結果を残しているものの
大学時代同様に三振率が高く、
一軍での活躍を期待する際にややひっかかる。
内野は
二軍で好成績を残したと言える若手が少ない一方で
その若手の何人かが
既に一軍要員となっている。
最近のドラゴンズで気になるのは
若手・中堅が二軍でずっと伸び悩むだけじゃなく
伊藤や一昨年から昨年にかけての石垣などのように
1年調子が良くても
翌年大幅に調子を崩してしまうケースも目立つことだ。
特に石垣は
昨年三振率も極端に跳ね上がったため
原因はわからないが
何かしらの問題を抱えながら出場していたと考えられるほどだった。
このような事象が続くと
チームや首脳陣の管理やサポートなどにも
大きな難点があるようにも見える。
補強ポイント
得点力が大きな弱点になっているため
投手よりも野手を獲るべきと考える人はかなり多いだろう。
ただドラゴンズは
昨年野手を大量指名した関係もあって
野手の支配下登録人数が全チームで最も多く、
投手の支配下人数は二番目に少ない。
必然的に獲得できる野手の人数が限られるわけで、
第一次戦力外は野手が圧倒的に多かったものの
これでようやく
野手・投手半々の指名ができるかどうか
といったところだ。
外野は昨年のドラフトで
一軍はともかく二軍が飽和状態にあったが、
退団する選手が多く
レビーラとガルシアはレフト、ファーストのどちらかなので
今年も外野は補強ポイントになる。
年代表ではショート枠に入れている石垣と星野は
ショート以外での出場がほとんどで
根尾は投手コンバート、
ワカマツが戦力外となったため、
京田と溝脇より下の年齢のショートが
実質的に土田しかいなくなった。
なのでショートは
かなり緊急性を要する補強ポイントになる。
いっそのこと
巷の評価も高い大学生か社会人の上位候補を獲って
ドラゴンズファンやOBからのヘイトが極度に高い
京田に代えてのスタメン固定を促すのもありかと思っていたが、
今これをやって
実際に来年ショートで起用すると
「土田の起用を阻害した」ヘイトをためられるだけの
可能性が高い。
戦力を優先するなら
大学生・社会人1人か大社と高校生の両獲り、
ファンやOBの心理を優先するなら
高校生を指名すべきだろう。
石川昂が使えないと
どうしても高橋周に役割が回ってくるサードでも
同じことが言える。
また高校生サードの指名を強く主張する
ファンやドラフト評論家も多いのだが
高校生サードを本当に1、2年目から一軍に固定できるのか、
故障の多い石川昂を本当にセカンドへ回せるのかなど
問題点が非常に多い主張である。
あとは
A・マルティネスが退団し
山下が戦力外になっているキャッチャーもポイント。
支配下人数が6人に減ったので
最低でも育成枠までには指名してくると思われる。
投手補強ポイント
投手についての基本的な考え方
野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される
- 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
- より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける
このような手法は
以前にもましてとりづらくなった。
それよりも
- 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
- 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない
これらがどのチームでも最重要課題になる。
2022年投手陣の状況
交流戦までいまいちだった失点数は
最終的にはかなり少なくなった。
バンテリンドームの性能もあって
被HRは少ないものの
打撃成績でのマイナスのほうがかなり大きい。
先発は
柳がやや調子を崩した感があったが
10試合以上先発した5人はまずまず。
6人目以降は
故障したり一軍では打たれてしまったりで
あまりうまくいっていない。
現時点だと
実績の乏しい若手・中堅は
既に8試合に先発した上田以外
全て出尽くした感がある。
リリーフは
先発だと結果を出せていなかった
清水と山本が戦力になったのが救い。
ただ根尾が先発に回り
30代のベテランに限界が来ると、
代役で出てきそうな若手が皆無に近いのが難点だ。
補強ポイント
このように
一見良さそうに思われがちな投手陣は
不安要素がかなり多い。
しかも
元々投手の支配下登録数が少ないうえに、
故障で長く離脱している若手は
まだ二軍でも結果を出していないか
ほとんど投げられないまま離脱した選手が多い。
小笠原のような
怪我からの復活の夢を見れそうな若手も
かなり限られているのだ。
そんな最近のドラゴンズの投手指名は
徹底した高校生・素材重視で、
何人かの高卒投手がうまく戦力になっても
故障や不調、年齢による衰えなどへの対処には
全く足りておらず、
戦力数不足をさらに助長する形になっている。
補強ポイントは
残った投手に過剰な負担がかかることを防ぐためにも
すぐにイニングと登板数を稼げて
早い段階で一軍でも投げられる選手。
「すぐに」といっても
全員が1年目からではさすがにハードルが高すぎるが
できれば2年目までには
一軍に出てこられる選手に絞りたい。
大学生や社会人、独立リーグ、高校生問わず
一軍レベルに達するまで
あきらかに時間がかかる素材や故障持ちに行く余裕はもはやないのだ。
おすすめ1位候補
特になし
最近の報道で名前が挙がったのは
斉藤優汰(苫小牧中央高)、イヒネ・イツア(誉高)、
曽谷龍平(白鷗大)、森下翔太(中央大)、
吉村貢司郎(東芝)の5人。
記事で一番手に出ていたのは森下だが、
高校生・大学生・社会人と投手・野手の名前が
満遍なく出すぎのきらいがあり
本当の狙いは読みづらい。
ところでドラゴンズファンには
野手の1位指名、
それどころか2年連続の野手偏重ドラフトを
主張する人も多いようだが、
実際は
即戦力投手も重大な補強ポイントなので
不正解にはならない。
むしろ
チームが1位候補と明言はしていないにも関わらず
ファン・ドラフト評論家人気が非常に高い内藤鵬のほうが
ドラゴンズの現状には合ってない指名になる。
5年後の一軍定着を目指して
二軍中心で鍛え続けるつもりなら
別に間違いにはならないが、
外部で内藤を推すのが
「一軍で300打席我慢すると公言さえすれば
1年目からすぐ村上宗隆になれる」と
思ってる人間ばかりなので、
この人たちの言う内藤推しだと不正解になるのだ。