①「若手は使えば育つか」実験の結果は来年に
②獲得しそうなのは外野手と高校生の二遊間
③投手も即戦力より素材か
戦力・ドラフト傾向分析
過去10年の成績
2012年にリーグ優勝、
2016年には日本一。
2013年の最下位からは短期間で立て直したものの
2017年以降は再建がうまくいかず
下位に沈んでいる。
単純に得失点のバランスが悪く
低迷すべくして低迷しているところではあるが、
投手の成績に対して失点がいささか多い。
2022年の成績
得点力が低く失点も多い。
去年は何とか最下位を免れたが
今年は無理だった。
ただ「若手の起用も多かった」ため
「ハムは若い選手が抜擢されてうらやましい。
それにひきかえ〇〇は全然若手を使わない」
という他球団批判や
「ファイターズは若手が抜擢されているから
後半戦で一気に浮上するはずだ」
という声もよく目にした。
「若手を何年も我慢して使い育てる」ための期間とは
長くても1、2ヶ月からたったのスタメン数試合、
そんなに短くて済むようなものだったのか。
過去10年のドラフト傾向
「その年最も良い選手に行く」を合言葉に
大競合への特攻を繰り返してきたが、
くじ運は確率通りの平均レベル。
ここ2年間は
単独指名も織り交ぜるようになってきた。
また2008~12年に限定すると
「一番人気」入札はたったの1回、
3チーム以上の競合も合計2回しかない。
もっとも
事実上の逆指名だった菅野や
MLB行きを表明していた大谷と
他球団が入札しづらい選手に入札したのも一因ではあるのだが。
2010~12年に
3年連続で高校生野手を指名した2位は
高校生野手と社会人投手が多い。
3位はあまり大きな特徴がなく、
その時残っていた選手から
状況に応じた指名が行われている。
支配下では相変わらず
高校生野手の比重が極端に高い一方で
2020年は14年ぶりに社会人野手が指名された。
昨年は地元枠以外の社会人野手も解禁されたわけだが、
主な戦力を見るとその理由がよくわかる。
野手は使われているが
故障などもあって
なかなか成績が伸びない選手のオンパレード。
大谷の次に打撃成績がいいのは
ファイターズファンにアンチも多い渡邉である。
また投手も先発がいまいち育っておらず、
育った選手は早くにMLBにも行ってしまうため
状況がさらに苦しくなっている。
ファイターズの投手指名は
しばらく大学生と社会人重視で
高校生はピンポイントの指名にとどめていたのだが、
2016年ごろから高校生の比率が増えている
野手補強ポイント
野手についての基本的な考え方
基本的な前提条件はこうだ。
- 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
- 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
- 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない
この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はないのだ。
2022年野手陣の状況
HRは少なくないものの
打率に比べて出塁率が非常に低い。
もっともこの点は
四球を極端に選んでいない若手が多いのが大きな理由なので、
彼らが本格的に
一軍平均レベルを上回る実力をつければ
ある程度は改善される可能性がある。
札幌ドームより狭い
エスコンフィールドへの移転も
うまく作用するか。
打率だけを覚えていると
「そんな数字になるわけないだろ」と
言う人が多いかもしれないが、
主な若手・中堅で
四球をそこそこ選んだのは清宮だけだったため
このような成績となった。
序盤から中盤は
とりあえず若手が打席に立つケースが多かったが
終盤は
ベテランの打席数も増えている。
ここ数年の外国人野手の失敗も
チーム成績に大きく響いており、
今より打撃優位になるエスコンフィールドが改善に結びつくか。
若手のキャッチャーと外野手で
ほぼ一軍にいる今川と万波は
昨年二軍で好成績。
支配下を外れることになった片岡、宮田に
怪我でなかなか戻ってこれない五十幡、
この2年間打撃でつまづいている細川と、
外野はセンター要員の人材不足が目立つ。
バッティングで苦戦しているキャッチャー陣は
古川も一軍経験を積んだ。
引退する速水は
BCリーグで好成績を残し続けた選手なので、
今期戦力外になった樋口や
やはりファイターズにいた海老原一佳とともに
リーグの実力を測る試金石となりうる選手だった。
…が、今シーズンのBCリーグは
再編に伴って投打のバランスが激変している。
注意しよう。
内野手も
野村や昨年一軍に定着していた高濱は
二軍でも結果を出しており、
昨年はいまいちだった清宮は
1年目に二軍平均を大きく上回る成績だった。
1年目の有薗は
前半に比べるとかなり成績を落としているが、
野村がいるので
ある程度時間をかけられる。
さてこれらの表を見てもわかるように、
ファイターズは
極端な高校生偏重ドラフトを続けたこともあって
二軍にいる若手野手の頭数は非常に多い。
ただし前にも指摘したことなのだが、
二軍の平均レベルを超える若手の数は少なく
現在も
2010年代中盤から後半よりは少しましかなという程度。
また1年目は調子が良くても
2年目以降に成績が降下するケースが多く、
高卒1年目にしては悪くない有薗や
指名された年の大学・社会人時代より二軍成績が良かった
上川畑、水野も安心はできない。
補強ポイント
二遊間とサード、ライトを
獲得した形になったのが昨年のドラフト。
今年の第一の補強ポイントは
支配下を2人外したセンターになる。
また
ショートとセンターの両方に入っている
細川もバッティングがひどく伸び悩んでいる。
上川畑を一軍に置くことも考慮すれば
二軍のセンターとショートを
どちらも獲る余地が残っていると言える。
一軍即戦力も狙うのであれば
社会人か上位候補の大学生、
若手偏重路線をとるなら高校生になるが、
今年のセンターには
指名有力とされる大学生と社会人の候補は少なく、
準即戦力の位置づけで
高校生を獲りに行く可能性も否定できない。
人不足が続き
これまで若手を使い続けてきたキャッチャーは
今のところ戦力外を出していないが
支配下を8人に増やすかどうか。
投手補強ポイント
投手についての基本的な考え方
野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される
- 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
- より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける
このような手法は
以前にもましてとりづらい。
それよりも
- 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
- 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない
これらがどのチームでも最重要課題になる。
2022年投手陣の状況
今年のファイターズも失点は多かった。
被HRだけは少ないのでFIPは悪くないが
他の数字がどれもぱっとしない。
先発は
中盤以降にポンセ、上原、根本が入って
頭数を何とかそろえてきたが、
その次に位置するのが
どう見ても金子と杉浦なので
不安要素のほうが強い。
伊藤をクローザーにすると
さらに人手不足になるのが厄介だ。
リリーフのほうは
若い吉田と北山が奮闘したものの
全体的に打たれる展開が続いた。
伊藤がクローザーに入ると
試合の締めはそれなりに安定するかもしれない一方で
代わりに鈴木が先発に回っているので
人材不足はほとんど解消できていない。
石川直が3年ぶりに復帰したが
今度は堀に勤続疲労の色が濃くなっているのも気になる。
一軍実績も1年投げられるだけの力もないが
素材はいい若手を繰り返し一軍へ上げては
慣れられて攻略されるまで何試合粘れるか、
そんな短期間の自転車操業に
頼らざるを得ない状況ですらある。
ただでさえ厳しい人材不足に加えて
不安要素となりうるのが
エスコンフィールド。
HRが非常に出にくい札幌ドームからの移転で
被HRまで激増してしまうと
投手陣がさらに壊滅する危険性をはらんでいる。
若干狭くなったことと芝とで
HR以外の長打を大幅に減らせるのなら
逆にプラス材料となるのだが。
補強ポイント
先発要員が全く足りておらず
育成にもかなり苦戦してる状況を踏まえると
とにかく欲しいのは先発。
それも
何とかして即戦力を集めたいところなのだが、
昨年のドラフトは
背が高いか最高球速が速い高校生中心の指名をし
大学生も6位の長谷川と8位の北山だけ。
高卒勢は
どちらの条件にも該当しない根本以外の
伸び悩みが顕著で、
上原がここまでで7年かかっているように
大卒や社会人でも育成にはかなり難儀しているものの、
チームは
現在の戦力と育成力にかなりの自信を持っているようだ。
これらを踏まえると
投手指名は今年も素材型の高校生中心、
大学生と社会人も
あまり実績のない選手や高卒3年目の社会人が主体となる
可能性が高いか。
おすすめ1位候補
矢澤宏太(日本体育大・公表済)
今までの傾向から考えると
ファイターズは入札で一番人気を獲りに行きたがるのだが、
昨年の達のような
スケール感を重視する傾向も強い。
それでいくと
二刀流の矢澤は
浅野翔吾(高松商業)や曽谷龍平(白鷗大)などの
ポジションがある程度固まった選手よりも
ファイターズが非常に好むタイプの選手である。
当初は1位入札を公表しないと言っていたものの、
他のチームの公言が続いたので
少しでも競合数を減らすために
方針を撤回したのだろうか。