スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

1998年ドラフトを振り返る

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終結果が特殊な「松坂世代」年

今までこのブログでは
1993年以降の各チームのドラフト大当たり年・大外れ年を検証してきたが、
この1998年に限定してみてみると
ちょっとおかしな現象が見られた。
当たり年でも外れ年でもない普通の年がないのだ。
内訳はこうなる。

大当たり 中日、巨人、広島、阪神、西武、日本ハム、ロッテ
大当たり次点 横浜、オリックス
大外れ ヤクルト、ダイエー
大外れ次点 近鉄

大当たり年のチームが多いので
ドラフト全体としては当たり年に入れていいだろう。
問題はどういう選手が当たったから「当たり年」なのか。
実は
松坂世代」高校生から大当たりが複数出たチームは
松坂大輔赤田将吾のいる西武しかない。
あとは横浜で古木克明小池正晃が出たぐらいで、
逆に中日、巨人、ロッテは
高校生の大当たり選手が1人もいないのに
大学生と社会人だけで複数の大当たり選手を輩出。
さらに言えば西武と横浜からも大社出身の当たり選手が出た。
つまりこの年は
高校生以上に大学生・社会人の当たり年だったと言える。

2020年現在は状況が状況でもあるので
今当時のドラフト後評価をチェックすることができないのだが、
松坂を獲れなかったものの
逆指名で目玉の1人矢野英司を獲れた横浜と
逆指名で目玉の選手を獲った巨人が最高評価で
上位2枠をどちらも高校生に使った3チームと
福留孝介の逆指名に成功した中日が高評価。
松坂を獲った西武は
少数指名のマイナス補正がかかっていなければ最高評価だろう。
特攻する「勇気」を評価されたオリックス
新垣渚の入団にこぎつければという条件付きでそこそこの評価。
あとの逆指名使用チームは
高校生指名数と評論家好みの高校生を獲った順番に
順位づけが行われ、
最低評価は下から逆指名2枠行使のロッテに
上位2人とも大学生になった近鉄
といったところではないかと推測される。

 

横浜

By

この年日本一の横浜は前年に引き続き高校生を1位指名。
とはいえ相手が地元の大スターなので
上位2枠逆指名路線を続けていたとしても
ここは松坂に行く可能性は高かったと思われる。
2位逆指名の矢野は松坂の先輩にあたる地元枠。
結果はうまくいかなかったが
当時の評価は即戦力では最有力候補の1人だったようだ。
金城が野手転向2年目で大成した一方で
古木と小池は最終的には準レギュラーの印象が強く、
小池のほうは移籍後の活躍も目立つため次点としていた。
ところで横浜ファンは
4年目終盤に古木がサードで台頭し始めたのを見て
本当に喜べたのだろうか。
当時のファームも詳しかった人たちに一度聞いてみたい。

中日

D

上位指名で高校生を狙うことも多かった中日は
初めての逆指名2枠。
2人とも1年目からずっと活躍し続ける即戦力だった。
さらに本格化までは時間がかかったが小笠原も一時期主力になり
蔵本は長く守備要員として貢献する大当たりドラフト。

巨人

G

1995年以外は全て逆指名を2枠行使してきた巨人。
この年も高校生の上位指名はなく逆指名2人になった。
評論家も不満を募らせていたと思うが、
人選が2人とも超のつく大物だったので
例年よりは高評価されそうな指名である。
3位からは高校生と大社3人ずつを獲得したものの
こちらは全員失敗。
巷で名前の知られる存在になった選手もいるが
基準に沿っていくと当たり選手とはできない。

ヤクルト

S

川口知哉新沼慎二と競合に特攻した97年とは異なり
上位2人は単独指名を選択した。
本社の経営状態などに問題があり
逆指名争奪戦にも何度か敗れたとはいえ、
4年連続での高校生2人上位指名はさすがにやりすぎ感しかない。
成功したのは3年目から戦力になった河端1人。
一軍戦力としては高橋のほうが早かったが
すぐに怪我してしまい現役自体も4年で終わった。
石堂は6年目に我慢して使われ続けた*1
残念ながらこちらも育たないまま。

広島

C

意外と逆指名もしっかり狙いに行くチームではあるが
この年は狙っていた選手の争奪戦に敗れ
上位2人とも高校生の指名になった。
高卒勢は外部の期待が非常に高く、
パワプロの世界では大成を約束された逸材だったものの
現実にはなかなか伸びてこなかった。
東出が戦力になったのは1年目から4年間と8年目以降。
一方大学生は逸材揃いで、
彼らがいなければどれだけ悲惨なことになっていただろうか。

阪神

T

1位は2年連続で高校生。
逆指名導入から6年目だが高校生の上位指名は6人目で
逆指名2枠を使ったのはまだ95年の1回だけになっている。
2位逆指名の金澤も高卒2年目*2
上位2人とも最初の台頭が4年目と
なんやかんやで若さと素材に特化した上位指名だった。
藤川の本格化は6~7年目で
金澤はその後4年戦力になった後
13年目に移籍した4球団目のソフトバンクで4年活躍。
1年目から戦力になったのは3位の福原だが
こちらも完全な本格化は6年目。

西武

L

地元横浜以外なら社会人入りを表明していた松坂の説得に成功し
赤田も6年目から主力として開花したため、
12球団で唯一高校生が2人大当たりしたチームになった。
さらに星野は左のワンポイントとして活躍し
柴田も短期間ではあるが戦力に。
4人指名とはいえ失敗選手が1人もいない大成功ドラフト。

日本ハム

F

1位で松坂の抽選を外したあとの外れ1位は實松。
3年目から使われたがバッティングが伸びず
2学年上の高橋信二の後塵を拝す結果に。
ただし現役生活は20年、
一軍戦力とは違った意味でチームに貢献する存在に成長したと言えるか。
全体では社会人中心、
特にこの年廃部のNTT関東3人を獲得した。
その社会人から建山と立石が戦力になり
高校生も森本が大成する大当たりドラフトである。
ここまで見てうすうす予想がついた人がいるかもしれないが、
この年3位以下の高校生で大成したのは
森本と小池しかいなかった。
確率2/18。

オリックス

Bw

97年同様に
1位が競合した高校生、2位以下は全て大卒・社会人の指名になった。
ダイエー志望を公言していた新垣は入団拒否。
逆指名の川越が1年目から戦力としてはたらいたため
指名そのものに関しては
それなりに元が取れたドラフトと言えるだろう。
相川と徳元は成功とするには微妙な存在なのだが
2人の貢献とオリックス補正とを合わせて
何とか当たり年次点にはできるかなといったところ。

ダイエー

H

1位で新垣に入札し3位では小椋を指名。
高卒投手の入札は斉藤和巳松本輝以来3年ぶり、
3位以下での指名は吉武真太郎以来5年ぶりだった。
小椋はドラフト評論家から非常に高い評価を受けるも
初めて戦力になったのは10年目。
高校生は小久保裕紀の後釜を狙ったと思われる
地元のスラッガー吉本を獲るがうまくいかず、
逆指名した松と福山の大卒勢が失敗、
水田もなかなか一・五軍の枠を抜け出ることができず
こちらの基準での戦力になったのは9年目34歳。
終結果は大失敗のドラフトとなってしまった。

近鉄

Bu

1・2位は地元高校から近畿大にすすんだバッテリーを指名。
逆指名は宇高だけ。
関西学生リーグを代表するエースだった宇高は結果を出せなかったが
藤井は守備型捕手として3チームを渡り歩いた。
あとは守備型内野手の山崎が
7年目に広島、11~12年目にオリックスで出場機会を増やしたものの
バッティングが伸び悩み大成には至らなかった。

ロッテ

M

松坂世代」の高校生は寺本1人だけ。
小林を含めた上位3人が3人とも首都大学リーグ出身者*3
なるほど
ドラフト評論家から叩かれる要素しかない指名*4と言える。
その結果はというと
小林が1年目から一軍主力になり、
里崎も捕手ゆえ時間はかかったが5年目から長いこと主力に定着し
川井も2年目から5年連続で一軍戦力。
首都リーグ勢大成功のドラフトだった。
特に手許にある成績を見ると
打率とHR数がそこそこ優秀でヒットの半分は長打になっている
強打の捕手里崎は一見高評価されそうなんだが、
なぜ酷評されたのかいまいちよくわからない。
村上宗隆と同じで捕手としての評価が低かったからか*5…?

*1:16試合先発、防御率6.93

*2:廃部による特例

*3:小林は日体大東京ガス

*4:ドラフト評論では甲子園、U18以外の同じ大会、リーグ、日本代表候補から複数の選手を指名することを「手抜き」として忌み嫌う傾向がある

*5:3年まではDHでの出場。私が調べられた2年秋~3年秋、4年秋の4シーズンでは打率.250~.368、HR0~4。当時知られてなかったOPSだと.732~1.275、1点超2回