スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

2018年ドラフト全体総評

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総評というかちょっとした考察。

 

1位抽選の運

今年は1位入札で大競合が続いたが、
3チーム以上の競合でセリーグパリーグに勝ったのは
2013年柿田裕太(外れ1位)以来5年ぶり、
最初の入札では2012年藤浪晋太郎以来6年ぶりだった。
78年以降の1位*13球団以上競合をまとめるとこうなった。

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「今年は逃げなかったから」というのは嘘で、
この5年間では有原航平、佐々木千隼と
セリーグ優位の抽選でもパリーグが勝利している。
それが今年はセリーグ優位の根尾昂が中日、
パリーグ優位の藤原恭大がロッテ、
同数の小園海斗と辰己涼介がそれぞれ広島と楽天
「珍しく確率通りに収まった」と言った方が正しい。
ここ11年のトータルではこう。

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セリーグの勝率は少し良くなったが、
負けの数も当然ながら多いので
運の格差を大きく縮めるまでにはいたっていない。

2018年上位指名の本当の特徴

今年の1位入札は史上初の高校生野手11チーム。
2位までの上位指名で高校生野手7人は
2008年以降はおろか、
予備抽選制から同時入札になった1978年以降で最多の数字*2だった。
ただし本指名全体での高校生野手は20人で、
ここ11年では最多だが歴代最多ではない*3ので注意しよう。

そんなことだから今年は「高校生野手が全ての年」、
あるいは「プロが俺の言うとおりに高校生野手を重視するようになった」
と思わせようとする人は非常に多いだろうが、
今年の上位指名はそんな単純な話ではなかった。

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大学生野手も上位指名が多い。
こうして全てがかみ合った結果、
今年は野手の上位指名そのものが非常に多い年になった。
今までも高校生、大学生、社会人のどれかの野手が多い年はあったが、
高卒野手と大卒野手の両方が多いことはあまりなかったのだ。
なお2番目のグラフは3位指名までのもの。
分離時代はこの数字を出せないので省いてある。

また、昔との比較をする場合に見ないといけないポイントがある。
最初は投手登録だった選手の野手転向だ。
最近の上位指名選手に対してはあまり行われなくなっているが、
以前は1年に0.75人ぐらいのペースで発生していた。
そしてその大半は高卒投手である。
プロ入りから数年後の野手コンバートと入団拒否を追加するとこうなった。

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これだと高校生野手最多は2002年*4の8人で、
7人以上は41年で7回目、
ここ11年でも2010年以来8年ぶりの数字ということになる。
今年は吉田輝星がよほどの重傷を負わない限りは
野手転向する上位高卒投手は出ないだろうから、
2002年の数字を上回ることはないと思われる。

投手は万遍なく減少した

野手の上位指名が多かったということは、
当然投手の上位指名が少なかったわけである。
それも、指名が多いととにかく叩かれる大卒・社会人投手だけではなく
高校生投手の上位指名も少なかった。
高校生野手以外に
高校生全体の上位指名も増やさせようとする人たちの
目論見通りにはいかなかったようだ*5

それだけ今年は、野手に比べて
投手に突出した選手があまりいなかった、ということになる。
高校・大学・社会人どれをとっても
例年より打高投低というわけではなかったのだから、
あとはその中でも突き抜けた選手の存在の問題なのだ。

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今年のような現象が生まれた一因と考えられるのは、
根尾昂に代表される投手もできる野手の増加ではないだろうか。
昔であれば「エースで四番」として全試合1人で投げていたような選手が
投手以上に野手主体で育成されるようになっている、
チームの中で最も身体能力の高い選手が
投手ではなく野手に入るようになってきた、ということだ。
近年、上位指名高校生投手の野手転向が減ってきたのも
これを裏付けてはいるように思われる。
その中でも特に今年は
有望株がプロで上位指名されることが多いショートに集まったため、
このような上位指名の増加につながったのではなかろうか。
もっともこの仮説もデータ的な裏付けはないので
本当に実態と合っているかどうかは定かではないのだが、
可能性の一つとして提示しておく。

上位指名の先鋭化説

他に要因として考えられるのは、
各チームの上位指名がその年の候補に合わせてより先鋭化している
ということだ。
約10年での平均をとれば安定した数字に落ち着くだろうが、
ここ2年上位で高卒野手の指名が多い一方で
「高校生野手の上位指名0」という
44年ぶり2度目の珍事が起こったのは一昨年*6である。
「各チームが高校生野手をやっと重視するようになった」
とは明らかに矛盾している。
「(高校生)野手を繰り上げてでも上位で獲らなければならない」
というような教条主義ではないし、
「自分の信仰にプロがようやく目覚めた」
と思っているファンや評論家がいたとしたら、
それは驕りか妄想の産物だ。

その他ちょっとした小ネタ

阪神の野手指名

今年の阪神は1位で外野手を徹底的に入札した後、
3位までが全て野手、4位から6位では投手を指名した。
統一ドラフトで阪神が3位まで野手を並べたのは1996年*7以来2回目。
また投手が全員入団する場合、
統一ドラフトで1位から野手3人指名したチームに投手が3人以上入団するのは
1996年ダイエー以来史上2例目となる*8

横浜の指名「バランス」

数を集計すると今年妙に面白い指名になったのが横浜。
高校生投手・野手・大学生投手・野手・社会人(独立)投手・野手の
本指名数がきれいに1人ずつ並んでいる。
2008年以降では2012年阪神以来2回目。
2012年の阪神は「バランスも非常にいい」と大絶賛されたが、
今年の横浜はどう評価されるか。
もし「バランスが悪い」と言われたら、
そのときは「1位藤浪、2位北條の上位高校生」と
「1位上茶谷、2位伊藤裕の上位大学生」の違いと考えるよりほかにない*9
まあ投打のバランスはいいが高校生5:大社2の日本ハム
「バランス取れた」と評価する評論家がいる時点でお察しだけども。

*1:93~00年は1位と同時入札の2位も含める

*2:77年以前の最多は分離ドラフトだった1966年。
統一ドラフトでは1965年と76年が7人で今年は史上3回目となる。

*3:1993年の逆指名制度以降では2000年、2002年に22人指名されている。
それ以前にはもっと多い年もある

*4:高井雄平、吉田圭がのちにコンバート

*5:ここ11年間では2008、09、11年のほうが多い

*6:のちに仲根正広と中井康之が野手転向している。
2016年は今のところコンバートされそうな上位高校生投手が見当たらず、
実質的には史上初になるかもしれない

*7:今岡誠関本健太郎濱中治

*8:ただしドラフト外入団は計算していない

*9:現状だと見当たらないのが救いだ