クイズタイム
NPBのドラフトで「上位」というと、
だいたい2位までを言うことが多い。
これまでに指名人数が4人までの時代(ちょうど半分)や
6人までの時代(上位・中位・下位で分けられる)、
上位2人まで逆指名・自由枠の時代
があったので、こういう慣習が出来たのだろう。
ただ現代の指名人数を見てか、
たまに上位指名を上位3人まで見る人も中にはいる。
ではここで問題。
第1問。2008年以降のドラフトで、
上位指名の野手指名数は、セリーグとパリーグどちらが多いでしょう。
上位2位までの「上位指名」と3位までの「上位指名」を見た場合、
両方で答えなさい。
なお、その数は実際に入団した選手数とし、
プロ入りからしばらく後に野手へコンバートされた投手は野手として数える。
第2問。2008年以降のドラフト3位までの「上位指名」で、
野手の指名が最も多いチームと少ないチームはどこか答えなさい。
ちなみに前にも書いたが、
2位までに野手の指名が最も多いのは巨人、
最も少ないのは中日と西武だ。
セ・パの「上位」野手率
最初のクイズの答えは
一応「2位まではセリーグ、3位までならパリーグ」になる。
ただし、実は両リーグにはほとんど違いがない。
投手からのコンバートはセリーグが2位に1人、
パリーグが3位に2人いるので、
入団した選手の数はセ・パ全く同じ数字になる*1。
今年も交流戦の勝率はパリーグが優勢で、
「上位で野手を多く指名するチームほど強くなる」とされる
ドラフト評論の鉄則ではありえないはずのことだが、
現実はこうなのだ。
3位までの野手指名数が最も多い・少ないチームは
今度はチーム別。
まあさっきのヒントから
「ヒントにあった3チームではない」と思った人は多いだろうが、
それにしても答えは予想外なチームではないだろうか。
最も野手指名が多いのは阪神、
最も少ないのは広島だった。
阪神はコンバートされた一二三慎太を考慮しても
指名数は14人になり、全チームトップは変わらない。
そして2位の13人はこの2チームになるが、
オリックスは佐野皓大のコンバートがあるため、
指名した当時の野手数は楽天が単独2位となる。
「楽天は投手偏重ドラフト」のはずじゃなかったのか。
また、2位までを投手で固めるチームは、
3位で野手を獲りに行く傾向が非常に強い。
つい最近「上位で野手を獲っていない」と叩かれていたソフトバンク*2は
現在4年連続で3位に野手を指名しているし、
西武と並んで2位までの野手指名が最も少なかった中日にいたっては
3位指名が6年連続で野手になっている。
これは逆の場合も同じで、
巨人は3位が一昨年まで4年連続で投手、
広島も現在4年連続で3位指名は投手だ。
Conclusion
こうやって見ると、得られる結論は一つだ。
ドラフト上位で野手を多く指名すること自体は、
その後のチームの強化はおろか、
得点力増加とすらも何の関係もない。
いくら野手の育成には時間がかかると言っても、
打線の強化とドラフト上位指名数が結びついているチームが全く見られないのだ。
「チームを強くするためにとにかく上位で野手を獲れ」という主張は
はっきり言ってナンセンスもいいところである。
それどころか、
今年の両リーグ得点トップの2チームが
最も3位までに野手を指名しないチームになっている。
さらにリーグ戦では調子が上がっていないが、
今年の交流戦で最高勝率を残したヤクルトも
野手指名数ワースト2位である。
逆に、今年に限って言えば現在得点力両リーグ最下位の2チームが
3位までの野手指名数トップ2に入っている。
この現実と「上位で野手を獲ればチームを強くなる」の幻想を
どうやってつりあわせるつもりなのだろうか。
ただそれ以上に言えることがある。
それは、
「各チーム3位指名までの投手・野手比率が驚くほど近い」
ということだ。
全チームの指名数の差が2位までと3位までで全く変わっておらず、
やや多い阪神とやや少ない広島、ヤクルト、西武以外は
全チームが11~13人の狭い範囲に固まっている。
現在のNPBではこの18:12が、
3位までに指名される投手:野手の平均比率ということになる。
これは「ドラフトの指名順位は、チームにとってはあくまで相対順位」
であることと関連している。
無理に急いで上位で指名しなくとも、
狙っている野手は下の順位まで残ることが多いという意味でもある。
そういった駆け引きの様子がここからはうかがい知ることができる。
ドラフトの指名順位は
現実の契約金と年俸に順位が直結する選手には順位をあれこれ言う権利があるが、
彼らと何も関わっていない外部の評論家が
「野手を上位指名しないから弱い」
「その選手は上位指名される器ではない」
だのと批判できることではないのだ。