スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

ロッテ即戦力指名についての補足

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コメント欄に対する返信がかなり長くなりそうなので、
新しく記事を作ってみようというのが今回の話。
ちなみにコメントを承認制にしているのは、
一度無制限許可制にしてみたら、
毎日英語のスパムだけが書き込まれるようになったから。

 

「5年先、10年先を見据えろ」とは

ドラフトの世界ではよく、
「5年先、10年先を見据えた指名をしろ」と言われる。
ただしその後には必ず「だから高校生を指名しろ」と
付け加えられるのだが。
そんな中でロッテは2009~13年にかけて
高校生をほとんど獲らない大卒・社会人主体のドラフトを展開した。
5年間で本指名24人、育成5人を指名し、
そのうち高校生は計6人。
本指名ではたったの4人しかいなかった。
そのためこの時期のロッテは
「明日のことしか考えない」などと叩かれ、
時には「経営をする気がない」とまで言われる有様だった。

代わりに指名できた選手は誰か

ここでは、2009~13年ロッテがどういう指名をしたのか。
そしてもしロッテの指名が間違いだったとすれば、
代わりに誰を指名すべきだったのか、
どの当たり選手が指名できたのかを検証してみよう。
他チームの当たり選手については実際の順位ではなく、
「次のマリーンズの指名までに指名された選手」を同じ順位で記載してある。

2009年

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もし荻野に入札せず他の選手を指名した場合、
単独で確実に獲れたのは岡田と加賀になる。
菊池、筒香、今宮、今村は競合になっていたので獲得できる保証はない。
ちょっとびっくりさせられるのは2位以下で、
ロッテの指名選手、特に大谷、清田より当たっている選手が少なすぎる。
中でも大学生は悲惨な状況。
高校生も秋山、原口と、使えるようになるまで7~8年かかった選手しかいない。
となると、代わりに獲っておくべきだった選手は社会人になる。
やっぱり実があるのは即戦力ドラフトじゃないか。

2010年

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この年はロッテとしてもほぼ外れになっている年。
「だから高校生を獲っておけば」などという声もあがりかねないが、
1位で大当たりの山田や西川を獲得するには伊志嶺のくじを外さなければならず、
以降の大当たりは大学生外野手の柳田、秋山になる。
この年本指名された高卒で戦力になっていると言えるのは中谷、塚原、中崎で、
そのうち中谷と塚原は8年目の今年まで見てもちょっと物足りない。
あとは育成に千賀がいるが、
これで「だから高校生を」とは、とてもじゃないが言いづらい。

2011年

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1位は外れ指名の選手が安達以外厳しい年で、
一番人気だった藤岡は物足りないが
他の外れ指名よりはずっといいというレベル。
2位の中後も巷では1位評価をされていた選手なので、
この指名への批判はもはや自分の評価を忘れた後付けでしかない。
なおこの年のロッテはウェーバー順1番のため
3~4位以降がこのような表記になった。
他球団の4・5位には当たり選手がそれなりにそろってはいるが、
彼らを獲るには代わりに
将来の正ショートかクローザー・セットアッパーのいずれかを逃さなくてはならない。
5位以降ももっと多く選手を指名していれば、
と言えるのは6位以降の5選手ということになる。
そのうち高校生は上沢だけ。

2012年

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この年は高校生投手がかなり厳しく、
大谷か藤浪の抽選に当たらなければ獲っても現状大外れになっている。
そして当のマリーンズは藤浪を入札し抽選で外した
高卒野手は鈴木と田村以外が6年目の今年もあまり良くない状況で、
ロッテはそのうちの1人田村を確保している。
2位は前年同様に前評判、特に識者の評価が非常に高かった川満である。
これだとロッテの指名を批判するのはいいが、
同時にもう一つ疑ってしかるべきものがあるんじゃなかろうか*1

2013年

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1位は抽選で獲得した石川が当たりの部類で、
石川以降ロッテの2位までに残っていた主だった選手も大半が社会人である。
2013年も正直なところまだ物足りない指名に終わっているが、
野手は上林、山川、田中と大物が高校・大学・社会人に1人ずついて、
それに次ぐのは小林。
以下若月やここには挙げなかった梅野隆太郎、岡田雅利などやけに捕手が多く*2
それ以外は西浦直亨と井上が並ぶといったところか。
この年のマリーンズの野手指名はまだましな部類に入るようだ。
珍しく当たり年になっている高校生投手は
ロッテも二木を獲得した。
のはいいんだが、5年目の今年は
砂田以外の高卒投手の調子が4人ともかなり悪い。謎だ。

代わりに目先の18歳を獲っていればどうなったか

「5年先、10年先を見据えろ」というのは
ドラフトでの目標としては重要なことなのだが、
実際には
「実働までに時間のかかりやすい高校生と野手を獲らせる」
「大学生・社会人を中心とした指名を叩く」
ための手段として用いられることが多い。
その自覚がないまま用いている人もいるだろうが、
この言葉はもはや手段と目的が逆転しているのが現状だ。
もう一つ言うと、
マリーンズファンがこの批判を発した場合の本音は
「ロッテが指名した高卒以外の当たり選手はいらない。これまでの功績も一切認めない」 ということだろう。
批判の矛先をざっと見る限りでは、
清田、鈴木、益田あたりに特にそのヘイトがたまっているようだ。
ただし彼らの代わりに高校生ばかり獲っていたらどうなっていたかというと、
当たり選手をミスなく獲れるだけ*3獲っていても
今年Aクラス争いができたかどうかはわからない。
ただし2011年から6~7年連続Bクラスはほぼ確実だろう。
上に挙げた3選手を含めたマリーンズ指名の当たり選手や
他のチームで当たった大卒・社会人の獲得はほぼ絶望的だ。
二遊間、特にショートはクルーズ以外人材がおらず*4
外野は2014、5年頃まで角中、岡田で何とか頑張らせるしかない。
投手は「早く出てきたが半端で短命」「最近やっと出てきた」タイプが大半で、
全てを結集しても「毎年少ない人材を使いつぶす」のが関の山だ。
その人材の数もここ数年のロッテよりさらに劣る可能性は高く、
年齢以外に勝っている部分が見当たらない。

改めて書くと、2009~11年のドラフトは、
2013、15、16年のAクラスにそこそこ貢献した指名になっている。
高校生偏重の指名では、5年後に「まだ期待したい若手」が何人かいる程度だ。
今から数年後の「10年後」となるとさすがに厳しそうだが、
数字通り「5年後の将来」につながった指名だった。
むしろせっかく指名しても育ちづらい高校生ばかりを獲る指名は、
「目先の18歳」を追い求めただけにすぎないのだ。

*1:ロッテの育成に全てをなすりつける人が大半かもしれないが

*2:つまり田村がいて吉田・江村らも控えているロッテでは必要がない

*3:忘れてはいけないのが、1つの順位で選手は1人しか指名できないという事実だ

*4:ここは「2016年開幕から平沢を固定していれば今頃坂本以上になっていた」と思っている人が多いのかもしれない