※(2018.11.3追記)2018年シーズン終了後の考察をあげました。
先日、慶応大からJX-ENEOSに行った谷田成吾外野手がJX-ENEOSを退団し、
アメリカでMLB球団の入団テストを受けていることが報じられた。
大学時代から大型ドラフト候補として騒がれていた選手だが、
大学、そして社会人でも解禁となった昨年もドラフト指名はなかった。
大学では通算15HRを記録した選手が大学でも社会人でも指名漏れ。
人によっては「希少な大砲候補をなぜ獲らない」
「長打より守備・走塁にばかり目が向くNPBの駄目な点が出ている」
と主張される可能性もある。
そんな谷田成吾はなぜ指名漏れしてしまったのだろうか。
中には「東大専門だったから」「東大以外打てなかったから」と
主張する人も少なくないが、これもまた本当なのだろうか?
データから考察してみよう。
大学4年の谷田
では実際のスタッツを見ることにする*1。
なるほど、たしかに全15HRのうち半分以上の8本が東大から打ったものだ。
このHR数の影響なのか、リーグ戦と東大戦を除いたスタッツとを比較すると
長打率に大きな差が出ていることがわかる。
しかし、どうだろう。
最もよかった大学3年はそこまで大きな差ではなく、
東大戦以外でも良い数字を残している。
一方でドラフト解禁となる大学4年でのOPS.778。
この数字自体はそもそもそんなに良い数字なのだろうか。
次に同じ年に東京六大学出身で上位指名された3人を見てみよう。
この3人のうち、ヤクルトが入札を公言した高山俊はまだ知られていたが、
坂本誠志郎と重信慎之介は大学野球とドラフトのマニア以外には
全くと言っていいほど無名だった選手である。
おわかりだろうか。
谷田ほどではないが4年で調子を落としていた高山や
持ち前の走力に加えて出塁率が非常に高かった重信はおろか、
守備型捕手で阪神にとっては地元枠でもあった坂本ですらも、
谷田よりリーグ戦でのOPSが高くなっているのだ。
3位以下の指名選手も見ておこう。
青字が谷田のOPSを下回った選手になる。
谷田を下回ったのは4年になって絶不調に陥った大城と、
谷田以上に東大戦と他の試合との乖離が大きかった東大戦以外の山本だけ。
ドラフトで指名された7人のうち、
ショートを守っているこの2人しかいなかったのだ。
大学でもライト専任で長打力を武器とする谷田がこの状態では、
指名は難しいと言わざるを得なかった。
ドラフト解禁年に調子を崩す谷田
大学時代と同様、2年目の昨年に大きく調子を崩している。
昨年はスタメンに入る機会も減り、
スタメン出場の場合もレフトやDHに回ることが増えてきた。
そのうえスタッツでも都市対抗のHRで注目された若林や、
ずっと一番センターで出場していたが無名だった塩見を下回る結果になっていて、
肝心の長打力でアピールもできなかったのは痛かった。
谷田の場合、センターを守れないことから
ドラフトでのアピールポイントがどうしても打撃優位になるため、
重信のように走力と出塁能力を兼ね備えるか、
ここには掲載していないが
昨年指名された後輩の岩見雅紀ぐらい長打を量産する必要があった。
それらの要素が伴わず、
好調が隔年にとどまっていたのがドラフト指名をされなかった理由と言えるだろう。
とはいえ、隔年で調子を取り戻すということは今年は好調の年のはず。
アメリカでアピールをしてMLB昇格を果たすか、
日本に帰ってきて指名を受けるかなどはわからないが、
向こうでぜひ進化を遂げてほしいところだ。