スポーツのあなぐら

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アジア・ウィンターリーグとバレンティンについての考察

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台湾で行われているアジア・ウィンターリーグで、
ホークスの砂川リチャード内野手が話題になっているそうだ。
全日程の半分弱を消化した段階でのことではあるのだが、
長打率が.900超に達していた*1のだとか。
ホークスは現在バレンティンの獲得を目指しているが、
「砂川や野村大樹、増田珠を使えばいい。バレンティンなんかいらん」
と主張するファンも少なくない。

ところで、
これまで行われてきたアジア・ウィンターリーグでは、
派遣された選手はどういうスタッツを残してきたのだろうか。
そのあたりを触れる人が皆無なため、
砂川の数字がどの程度のものかがさっぱりわからない。
今回は今までのアジア・ウィンターリーグ
日本人選手が残したスタッツを見ていくことにしよう。
なお今回挙げた成績は公式HPを参照した。

 

 

日本人選手の成績

各年のリーグ平均

年別のスタッツを見る前に、
まずは各年のリーグ成績を見ておこう。

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2012、13年に比べると2015、16年はかなりの打高投低。
2017、18年は再び2012、13年の水準に戻っているが、
それまでと比べると三振率が増え四球が減っているようだ。
なお今年はまだ正確に計算していないが、
チーム成績をざっと見る限りでは
2つの時期のちょうど中間に位置しているように思う。

 

2012年

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野手のほうはのちに活躍する選手が何人も派遣された。
ただし帰国後早くに活躍したと言えるのは
山田と中村に怪我までは良かった中井ぐらいか。
大田、牧原、中谷は活躍するまでに結構時間がかかったし、
桑原も本格的な活躍は2016年以降。

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投手ははっきり言って残念な結果。
このリーグでは悪くない選手も多かったのだが、
長く活躍する選手は現在まだ出てきていない。
小川と島本が結果を出し始めてきたので
7年以上たったこれからに期待ということになる。

秦と上野はCPBLからの派遣選手として出場。

2013年

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この年は野手も苦しい結果になった。
成績が良かったのは赤堀と猪本だがNPBでは活躍できず、
結果として一番出場機会の少なかった甲斐が
NPBの実績では圧倒する形。

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投手は2年連続で大成する選手が出なかった。
2年連続で派遣された徳山に歳内が2015年に1年奮闘した程度だ。

 

2015年

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この年の派遣選手も既に現役を退いた選手、
今年戦力外になった選手が何人かいる。
翌2016年にすぐ活躍した選手はおらず、
上林は2017年、岡本と高橋は2018年から。

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打高投低になったこの年にあって
派遣選手の中でも圧倒的な力を見せた岩貞が翌年先発ローテに定着。
翌年先発ローテ入りしたのは今村もそうだったが結果はいまいちで、
「抜擢じゃなく他にいないから使われただけ」と罵られた*2
他には加治屋、岡本、平良が3、4年後に力を見せた一方、
リリーフで素晴らしい数字を残した廖は
NPBでうまくいかなかった。

 

2016年

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1年目から一軍でOPS.854を記録した吉田正尚
とんでもない数字をたたき出した。
OPS.900を超えたのは他に4人いたが、
平沢は去年の.658が最高で2017年.457、今年.577。
網谷と溝脇はこれまでNPBで活躍できておらず、
網谷は今年社会人でOPS.700台前半だった。

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1年間活躍した選手は何人かいるものの、
3年後の現在活躍している投手は意外と少ない。
今年は調子が良くなかったり、
活躍したように思われているが
年間を通してみるとあまり出ていなかった選手が多いのだ。
そんな中で例外に名を連ねるのは青柳と原樹理になるか。

 

2017年

この年からはJABA選抜も参加している。

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好成績の選手が少なく、
故障やポジションなどの影響もあって
NPBで打撃が開花した選手はまだ見当たらない。

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こちらは種市、守屋、今村が今年それなりの結果を出した。
一方で既に戦力外となった選手も何人かいる。

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続いてJABA選抜。
27歳前後の中堅選手も何人か派遣されている。
ここからドラフト指名されたのは
今年の柘植1人だけ。

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投手のほうは
昨年のドラフトで坂本、荒西、生田目、勝野、
今年は岡野と鈴木が指名された。
ダイヤモンドバックスと契約した吉川は今年Advance-A。
なおこのほかに、
2017年は兵庫ブルーサンダーズに所属していた杉尾拓郎が
WBSCチームに在籍、3試合6回を投げている。

 

2018年

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今まで見てきたように
ウィンターリーグ出場者が翌年すぐ活躍することはほぼなかったが、
今年は村上が一軍に台頭した。
その村上をはるかに上回る数字を残したチームメイトの塩見は
あまり一軍出場機会がなかった。

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今年一軍戦力になったのは椎野、本田、K-鈴木、榊原、梅野。
リーグでの成績と今年の成績がかみ合っていない印象がある。

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翌年(今年)プロ解禁の選手から26、7歳になる選手まで様々。
プロ入りは小深田1人で
近年の傾向を考えるとこれ以上のドラフト指名選手は出ない可能性大だが、
各チームの中で主力として活躍し続けるのだろう。

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前年に比べると派遣選手の数がかなり抑えられていた。
河野と立野が今年のドラフトで指名されている。
小島や阿部翔太、阿部良亮と20代後半の選手が入っているのも特徴。

 

ウィンターリーグの成績とのちの結果

ウィンターリーグの成績は今後の結果に反映されるのか。
結論から言うと、さっぱりわからない。
成績の良かった選手がNPBで大成する確率はお世辞にも高いとは言えないし、
良くなかった選手が数年後徐々に開花しだすケースもある。
この点は派遣された時の年齢の違いもあるから、
余計に一概には言えなくなってくる。

ただし、非常に高確率で起こることは一つだけある。
派遣された選手が翌年すぐに活躍することはないということだ。
一軍ですでに実績を積んでいた吉田正尚を除くと、
翌年から一軍で本当に活躍したと言えるのは山田哲人と村上宗隆だけだ。
それ以外では2年後の一軍スタメン定着すら少ないうえに
一度定着した1、2年後に不振に陥る選手もまま見受けられる。
投手の方も同様で、
ウィンターリーグでの好結果が
一軍での活躍に直結するパターンが非常に少ない。
こうした若手主体のリーグでの成績は
「活躍した選手に過剰な期待をする」というよりも
「選手の期待値を勝手に跳ね上げて一軍で使い続けない首脳陣を罵倒する」ことに
リソースが費やされる昨今だが、
今年の派遣選手に対しても無闇に期待値を上げないでほしいものだ。

 

ホークスのバレンティン獲得について

これらの結論を踏まえて
バレンティン獲得について考えてみよう。
バレンティンはホークスの若手起用にとって大きなマイナスになるのか?
答えはNOだ。

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まず二軍でも実績十分の増田珠は
ポジションがセカンドかサードなのでバレンティンとは全くかぶらない。
ポジションがかぶる可能性がある若手の有望株は
野村大樹や砂川リチャード、田城飛翔あたりになるが、
今年二軍経験を積んだ田城はもう少し二軍で鍛えたほうがよさそうだし、
野村と砂川にいたっては二軍実績すらない。
野村はよく一軍を経験させたなという程度の内容だ。
砂川の場合は
ウィンターリーグ(12/4時点)で四球を1つも選んでおらず、
三軍の出塁率のかなりの部分を死球で稼いでるのもひっかかるが、
ウィンターリーグに関しては先輩の上林も
大して変わらない内容から2年後に結果を出し始めたので
これに関してはそこまで関連性があるかは微妙なところ。
少なくともこの3人、特に野村と砂川については、
まず二軍で実績を残せるようになるのが先決だろう。

バレンティンに対するホークスの提示が5年などの長期契約だとしたら、
「若手の抜擢ができない」の主張もまだわかる。
だが実際に伝えられているのはたったの2年契約。
野村やリチャードが実力をつけて台頭するまで
チームに残っているかどうかすら怪しい年数だ。
バレンティンがこの契約で合意するとすれば
本人もそのあたりはかなり割り切った感覚でいる可能性が高く、
チームとしては内川聖一の衰えも目立ってきたうえに
デスパイネとグラシアルが離脱した際の層の薄さを
外国人枠ではなく日本人枠で補えるメリットもある。
バレンティンとの契約を
若手の存在を理由に大きなマイナスととらえるのは、
この「若手有望株」に対して
実際の成績を全く見ない評価の極端な高さと
選手が入るポジションを見ていない現実感の無さが
生み出した産物にすぎないと言えそうだ。

*1:12/4時点では.756

*2:私のツイッターへ巨人ファンから実際にこういう首脳陣批判が来たことがある