最後の分離ドラフト
2007年は再び栄養費問題が発覚し、
西武が高校生ドラフトの上位2人の指名権はく奪という事態に。
また希望枠制度が廃止され、
高校生と大学社会人の分離ドラフトもこの年が最後となった。
11チームが1位入札できるこの年の高校生ドラフトは、 快速球で甲子園を沸かせた佐藤由規、
最後の夏は甲子園に出られなかったものの夏に急成長を遂げた唐川侑己、
1年生から大型スラッガー兼投手として注目されていた中田翔が
BIG3と呼ばれた。
裏を返せばこの3人とそれ以外の選手は実力差が大きいと見なされていたわけだ。
一方の大社は、大場翔太、長谷部康平、加藤幹典の大学生3人が
高校生と同じくBIG3と呼ばれていた。
実のところこの3人は高校生のBIG3と比べても不安要素が大きかったのだが、
それ以外の候補はなかなか名前すらあがってこない状態だった。
強いて4番手をあげれば、社会人No.1とされていた服部泰卓か。
1巡指名
入札 | 外1巡 | 外外1巡 | |
C | 唐川侑己 | 安部友裕 | |
Bs | 中田翔 | 丹羽将弥 | |
S | 佐藤由規 | ||
E | 佐藤由規 | 寺田龍平 | |
By | 佐藤由規 | 高濱卓也 | 田中健二朗 |
L | |||
T | 中田翔 | 高濱卓也 | |
M | 唐川侑己 | ||
D | 佐藤由規 | 岩嵜翔 | 赤坂和幸 |
H | 中田翔 | 岩嵜翔 | |
G | 佐藤由規 | 藤村大介 | |
F | 中田翔 |
選手名 | ポジ | 出身 | 競合 | |
1 | 佐藤由規 | RHP | 仙台育英 | 5 |
2 | 中田翔 | OF,P | 大阪桐蔭 | 4 |
3 | 唐川侑己 | RHP | 成田 | 2 |
4 | 高濱卓也 | SS | 横浜 | 2 |
4 | 岩嵜翔 | RHP | 市立船橋 | 2 |
6 | 安部友裕 | SS | 福岡工大城東 | |
6 | 丹羽将弥 | OF | 岐阜城北 | |
6 | 寺田龍平 | RHP | 札幌南 | |
6 | 藤村大介 | SS | 熊本工業 | |
10 | 田中健二朗 | LHP | 常葉菊川 | |
10 | 赤坂和幸 | RHP | 浦和学院 |
高校生はBIG3に全11球団が入札。
11球団参加での全チーム競合は1978年以来2度目だった。
その内訳は佐藤5、中田4、唐川2だったわけだが、
セ4-パ1と圧倒的にセリーグの入札が多い一番人気では何か困るのか、
ドラフト評論の大御所たちは一番人気は中田(セ1-パ3)と言い張っている。
外れ指名もこの年から同時入札制になり、
高濱と岩嵜が2球団ずつ競合した。
入札 | 外1巡 | 外外1巡 | |
Bs | 大場翔太 | 篠田純平 | 小林賢司 |
S | 加藤幹典 | ||
L | 長谷部康平 | 服部泰卓 | 平野将光 |
C | 長谷部康平 | 篠田純平 | |
E | 長谷部康平 | ||
By | 大場翔太 | 小林太志 | |
H | 大場翔太 | ||
T | 大場翔太 | 白仁田寛和 | |
M | 長谷部康平 | 服部泰卓 | |
D | 長谷部康平 | 山内壮馬 | |
F | 大場翔太 | 服部泰卓 | 多田野数人 |
G | 大場翔太 | 篠田純平 | 村田透 |
選手名 | ポジ | 出身 | 競合 | |
1 | 大場翔太 | RHP | 東洋大 | 6 |
2 | 長谷部康平 | LHP | 愛知工業大 | 5 |
3 | 加藤幹典 | LHP | 慶應大 | |
4 | 篠田純平 | LHP | 日本大 | 3 |
4 | 服部泰卓 | LHP | トヨタ自動車 | 3 |
6 | 小林太志 | RHP | JR東日本 | |
6 | 白仁田寛和 | RHP | 福岡大 | |
6 | 山内壮馬 | RHP | 名城大 | |
9 | 小林賢司 | RHP | 青山学院大 | |
9 | 平野将光 | RHP | JR東日本東北 | |
9 | 多田野数人 | RHP | サクラメント・リバーキャッツ | |
9 | 村田透 | RHP | 大阪体育大 |
一方の大社もやはりBIG3に全球団が入札。
加藤が単独だったため全12チーム競合はならなかった。
また外れ1位では篠田と服部の両左腕に3球団が競合、
左の希少性が人気を集めた理由だろうか。
この年の大社1巡は全チームが投手を指名、
過去3年の希望枠・1巡で指名された大学・社会人野手は33人中3人と非常に少ない。
高校生1巡は35人中15人が野手、のちに野手コンバートされたのが+4人。
セリーグ
巨人
外れ1巡指名の藤村は4年目にセカンドで定着するが、
走力は高いものの出塁率が低すぎてスタメンで生かせない。
3巡の中井も6年目にセカンドで打ちまくり定着しかけたが、
こちらは大怪我で機会を逸した。
再び固定された2017年はバッティングもリーグ平均を下回っている。
大社1巡の村田は巨人で登板がないまま戦力外となり渡米。
AAAで防御率が5点未満になったのはMLB昇格と同じ2015年で、
さすがに国内球団がそこまで待つ余裕はなかった。
中日
外れ外れ1巡で獲得の赤坂はのちに野手へコンバート。
2015年に出場機会が増えたが、大成まではいかなかった。
大社は地元の投手を連続で入札している。
山内は実働が2011~12年にかけてのことで、
何とも評価が難しい。
高卒4年目での指名だった谷もバッティングが伸びなかった。
阪神
外れ1巡では高濱のくじを引き当てた阪神。
1位入札以外での抽選獲得は1989年4位以来18年ぶり*1だった。
3年目終了後に人的補償でロッテへ移籍したときは激しく叩かれたが、
この年二軍でOPS.448だったバッティングは
その後もいまいち伸びてきていない。
他の選手は、白仁田が8年目に移籍先のオリックスで43試合に登板した以外に
活躍した年はない。
横浜
外れ外れ1巡で獲得したセンバツ優勝投手の田中は、
しばらく先発で育成されたが芽が出ず、
8年目から左のワンポイントで台頭した。
高校生はさらに太田、佐藤と甲子園出場選手を集めたが、
1年目から一軍登板はするも活躍には至らなかった。
大社の2人も1年目から起用されたがやはり伸びてこない。
桑原が戦力になったのは阪神移籍後のプロ入り10年目になってからだ。
広島
広島史上でもかなりの当たり年と認識されている年。
中でも高校3巡の丸が4年目からセンターで定着したのが大きい。
高校1巡の安部はスタメン要員となったのが9年目。
小窪は梵英心の不調などもあって起用は1年目から多かったが、
徐々に内野ユーティリティの控え要員になっていく。
遅咲きと言えるのが松山で、
28歳ごろから本格化しだし30代の今全盛期を迎えている。
投手はいまいち。
外れで3球団競合の篠田も大学での実績を考えれば致し方なしといったところか。
ヤクルト
高校では5球団競合で佐藤を獲得。
少しずつ、しかし着実に成長していた4年目に故障してしまい、
その後4年間一軍登板なし。
山本は先発14試合中12試合が2011年のものだった。
この年は大社中心の指名をしたヤクルトだったが、
1巡の加藤が実績通りの結果に終わってしまう。
鬼崎はショート不足になった西武で奮闘するもバッティングが伸びず。
三輪が代走・守備要員として戦力になっている。
日本ハム
4球団競合の末獲得した中田は3年目中盤から一軍に定着。
統一球の影響で見た目のスタッツはいまいちだが着実に成長し、
リーグ有数のHRバッターになった。
現状、全盛期が6年目とやや早熟でとどまっているのが惜しい。
高田GMがいなくなったこの年は高校生主体の指名だったが、
それ以外の高校生は1年目の開幕から使われた選手もいるが失敗となった。
大社1巡は外れ外れで多田野。
防御率は良くないがローテの穴を埋める働きは見せた。
3巡後半まで残った宮西は11年連続50試合以上に登板。
この年の大社の中ではかなりの当たりドラフトになった。
ロッテ
この年は本指名が全員投手、野手は大量指名した育成で確保するという
のちの巨人やソフトバンクの先駆けのような指名だった。
2球団競合の唐川は、登板数では全ての年で戦力に。
ただ内容は、6年目以降に先発で防御率4.50未満が1年しかない。
現状だとイニングイーターとしての功績が高い選手になっている。
阿部はずっと期待されているのだが、いまだ使える目途が立っていない。
大社外れで3球団競合の服部は6年目にワンポイントではたらいた。
指名された年は24試合で151 1/3回を投げたが、
大場ほどではないにせよこのイニング数がたたった可能性もあるだろうか。
伊藤は4年目までで221試合に登板、4年目途中からは怪我に悩まされた。
ソフトバンク
外れで2球団競合した岩嵜は、先発での活躍は2011・12年。
リリーフとして完全に開花したのは9年目ということになる。
ファーストながら身体能力が優れていた中村が
外野でスタメンに定着したのは大きい。
大社6球団競合を制した大場は、一番人気としては残念な結果。
前にも書いたが、どうしても4年生で
212 1/3回*2を投げたダメージの影響に見えてしまう。
3巡の久米も1年目だけで、あとは故障もあって伸びないままだった。
楽天
投手の指名数が野手を上回ったのは、創設4年目で初めてだった。
高校生は地元で5球団競合の佐藤を外したあと投手3人を並べる。
唯一そこそこ投げている菊池が先発で17試合投げたのは8年目。
大社5球団競合の長谷部も2013年以外良いとは言えず、
投手はいまいちな結果に。
一方の野手は3年目からスタメン定着の聖澤が活躍。
HRの少ない選手だが、
2011~13年にリーグ平均をセンターで上回ったのは
もっと評価されていいかもしれない。
内村もまずまずの出来だったが、
それ以上に創設直後のBCリーグの地位向上につながったのではないか。
西武
高校生は3巡までの指名権を失った西武。
そんな年に、1位以外では22年ぶり*3となる高卒投手の戦力を輩出するのだから、
世の中何が起こるかわからない。
もっとも武隈が戦力になったのは7年目からなので、
高卒時点での獲得が適切だったかは疑問な点でもあるのだが。
斉藤は控え要員として貴重な戦力に。
大社では投手2人を獲得するが、伸びたとは言えなかった。
特に平野はチームの1年上にこの年指名漏れの摂津正がいたので、
いくら地元枠*4とはいえ、
西武の投手の目利きと育成の微妙さが際立って見えてしまう。
オリックス
3回の抽選を外したオリックス。
高校生では3年連続で地元関連の選手に向かい、全てくじを外したことになる。
それでも前年に続く高校生中心の指名だったが、
この年は珍しく伊藤が4年目から一軍定着し、6年目に開花。
ただリード面の評価が低い上に
ここ数年はバッティングも急速に悪化してしまった。
最近は捕手で出続けると早くに打撃の劣化する選手が多い気がする。
小瀬は2年間まずまずの内容だっただけに惜しまれる。
投手のほうは全員戦力にならなかった。